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第十三章 巨星に挑む
パレード
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「何か問題でも? ルナレイクの方々にドレス姿を見てもらったとして、誰も気付かないもの。私はいつもこの格好で出歩いていましたし、彼らが想像する私の姿を見せたいと思うのです。誰だお前? なんて思われたくありませんし」
「そうですか。いや、そこまで気が回りませんでした。確かに民たちには慣れ親しんだ格好がよろしいかと存じます」
猛反対に遭うのかと思えば、モルディン大臣はすんなりと受け入れてくれました。
程なくルークの準備も終わり、私たちは用意された馬車へと向かいます。
「アナ、一体何の冗談だ? 修道服だし、ラマティック正教会の紋まで入ってるじゃないか?」
「不服かしら? ああ、修道服じゃ胸がよく見えないものね?」
「そそ、そんなんじゃねぇよ!!」
からかい甲斐のあることで。着飾った私を期待していたのなら、ごめんなさい。
私は私らしい姿を見せたいだけなの。仲良くしてくれた全ての人たちに。
「しっかし、これって結婚祝賀パレードとかで使う馬車じゃないの?」
モルディン大臣が用意した馬車は純白であり、屋根のないオープンタイプ。
流石に荷馬車でパレードはないと考えていましたが、これ程までに豪華なものを用意するとは予想外でした。
「モルディンのやつ、何を考えてんだ?」
「何も考えてないんじゃない?」
私の返答にルークは大笑いしています。
どう考えても授爵記念のパレードに使う馬車じゃないものね。
婚約者がいるルークと一緒にパレードする馬車として、不適切なのは誰にでも分かることでした。
「ま、乗ろうぜ? エスコートいる?」
「どうせ私は異教のシスターですから。結構ですの!」
尋ねることから間違っているわ。
何も言わず手を差し伸べてくれたのなら、私でも素直に手を取ったのに。
兎にも角にも久しぶりのカブリオレ。屋根のない馬車に乗るのは前世での結婚祝賀パレード以来となります。
奇しくも、そのパレードも私の隣は彼でした。
「あーあ、白馬に乗った王子様が現れないかなぁ」
「悪かったな、隣が俺で!」
再び私たちは笑い合っていました。
不服に感じることなどない。
むしろ、私は幸せだよ。今世でも同じように、白馬が引くカブリオレの馬車に揺られてパレードできるのだから。
仮に世界線が行き詰まったとしても、私は頑張れると思います。
ルナレイクの大通りを馬車が駆け抜けていく。
流石に住人たちは驚き、そして喝采の声を上げました。
見慣れた私の姿に手を振ってくれたのです。
「皆様、これよりアナスタシア・スカーレット様の子爵位授爵の凱旋パレードを行います! ルーク第一王子殿下も参加されますので、どうか盛大な拍手でお迎えください!」
モルディン大臣が用意した御者は慣れた様子で住民たちを煽っています。
もちろん大歓声が木霊していました。私たちは鳴り止むことのない拍手の中を行く。
両サイドに分かれた群衆の中央をゆっくりと進んで行きます。
「驚いたわ。ルークって人気あるのね……」
「お前なぁ、俺は王太子候補なんだぞ? もう少し敬意を持てよ」
「よ! 王太子!」
何だか楽しくなってきました。
これはただのパフォーマンスであるはずなのに。
本気で祝福してくれる住人たち。加えて隣には意中の人。盛り上がらないはずがありませんでした。
急なパレードでしたが、住人たちは思い思いの方法で私たちを出迎えてくれます。
ゆっくりと進む馬車に紙吹雪やら、シャンパンをかけてきたりと。まるで収穫祭のような騒ぎようでした。
思わず私は立ち上がって、無作法にも椅子の上に立っています。
声を張って伝えよう。今までの感謝を私なりの行動によって。
「皆様、本当にありがとう!!」
「そうですか。いや、そこまで気が回りませんでした。確かに民たちには慣れ親しんだ格好がよろしいかと存じます」
猛反対に遭うのかと思えば、モルディン大臣はすんなりと受け入れてくれました。
程なくルークの準備も終わり、私たちは用意された馬車へと向かいます。
「アナ、一体何の冗談だ? 修道服だし、ラマティック正教会の紋まで入ってるじゃないか?」
「不服かしら? ああ、修道服じゃ胸がよく見えないものね?」
「そそ、そんなんじゃねぇよ!!」
からかい甲斐のあることで。着飾った私を期待していたのなら、ごめんなさい。
私は私らしい姿を見せたいだけなの。仲良くしてくれた全ての人たちに。
「しっかし、これって結婚祝賀パレードとかで使う馬車じゃないの?」
モルディン大臣が用意した馬車は純白であり、屋根のないオープンタイプ。
流石に荷馬車でパレードはないと考えていましたが、これ程までに豪華なものを用意するとは予想外でした。
「モルディンのやつ、何を考えてんだ?」
「何も考えてないんじゃない?」
私の返答にルークは大笑いしています。
どう考えても授爵記念のパレードに使う馬車じゃないものね。
婚約者がいるルークと一緒にパレードする馬車として、不適切なのは誰にでも分かることでした。
「ま、乗ろうぜ? エスコートいる?」
「どうせ私は異教のシスターですから。結構ですの!」
尋ねることから間違っているわ。
何も言わず手を差し伸べてくれたのなら、私でも素直に手を取ったのに。
兎にも角にも久しぶりのカブリオレ。屋根のない馬車に乗るのは前世での結婚祝賀パレード以来となります。
奇しくも、そのパレードも私の隣は彼でした。
「あーあ、白馬に乗った王子様が現れないかなぁ」
「悪かったな、隣が俺で!」
再び私たちは笑い合っていました。
不服に感じることなどない。
むしろ、私は幸せだよ。今世でも同じように、白馬が引くカブリオレの馬車に揺られてパレードできるのだから。
仮に世界線が行き詰まったとしても、私は頑張れると思います。
ルナレイクの大通りを馬車が駆け抜けていく。
流石に住人たちは驚き、そして喝采の声を上げました。
見慣れた私の姿に手を振ってくれたのです。
「皆様、これよりアナスタシア・スカーレット様の子爵位授爵の凱旋パレードを行います! ルーク第一王子殿下も参加されますので、どうか盛大な拍手でお迎えください!」
モルディン大臣が用意した御者は慣れた様子で住民たちを煽っています。
もちろん大歓声が木霊していました。私たちは鳴り止むことのない拍手の中を行く。
両サイドに分かれた群衆の中央をゆっくりと進んで行きます。
「驚いたわ。ルークって人気あるのね……」
「お前なぁ、俺は王太子候補なんだぞ? もう少し敬意を持てよ」
「よ! 王太子!」
何だか楽しくなってきました。
これはただのパフォーマンスであるはずなのに。
本気で祝福してくれる住人たち。加えて隣には意中の人。盛り上がらないはずがありませんでした。
急なパレードでしたが、住人たちは思い思いの方法で私たちを出迎えてくれます。
ゆっくりと進む馬車に紙吹雪やら、シャンパンをかけてきたりと。まるで収穫祭のような騒ぎようでした。
思わず私は立ち上がって、無作法にも椅子の上に立っています。
声を張って伝えよう。今までの感謝を私なりの行動によって。
「皆様、本当にありがとう!!」
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