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第十五章 世界と君のために

竜を討つ者

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『嫌よ。それだけはワタクシの理念に反します』

 この駄女神……。

 天界に戻ったら、ロナ・メテオ・バーストを撃ち込んでやるわ。

 話し合いは終わったのだけど、どうしてか私は一つ疑問を覚えています。

『あ、待って! 私は二度目の転生をしたけど、アンジェラは二度目の転生をしなかったの?』

 使徒であるのなら、魂は天界に戻されたはず。

 従って、何度かトライできたのではと考えます。

『言ったじゃない? アンジェラは呪いを受けたのだと。エリカと同じよ。闇に囚われた魂を使徒にはできないの。ちなみにエリカと接触して欲しくなかったのは、同じ女性である貴方に呪印が感染しないようにとのことよ』

 生を終えたアンジェラは死後天界に喚ばれなかったのでしょう。

 きっと魅惑のエンドコンテンツもなかったことにされてしまったのね。

『呪印って感染するの!?』

『念のためです。呪印は雄と雌で異なるでしょ? エリカは女性の呪印を受けています。万が一にも貴方に感染してしまえば元も子もない。恐らく人から人へ感染はしないと思われますがね』

 疑問は全て解消していました。

 私がエリカにちょっかいを出して感染してしまえば、私の子供もまた魔王と化してしまう。

 上手く世界線が進んでいても、時間を巻き戻さねばならなくなるのです。

『じゃあ、黒竜と戦って倒せなかったら、私も呪われるってことね?』

『そうなります。黒竜と長く同じ場所にいるだけで、魂が汚染されるのです。何度巻き戻しても倒せなかったアンジェラは封印しか選べませんでした。当然のこと本人も承諾しています』

『いや、どうしてアンジェラの子供を殺させなかったの? クラリスを殺していたのなら、世界は救われたんじゃ?』

『一応は説明しましたけどね。しかし、呪いの種を処分しようと世界にとって延命でしかないのも事実。黒竜自体を倒さないことには根本の解決とはいえません。種については対処可能なのですから』

 どうやらアマンダはアンジェラに選ばせたのでしょう。

 一応は愛の女神だもんね。子に対する親の愛を踏みにじるような真似までできなかったみたい。

『兎にも角にも、千紗を召喚できるまで二千年近くかかっているのです。召喚に要する神力は膨大。もし仮に千紗が失敗したのであれば、プロメティア世界は次の二千年も停滞することになるでしょう』

 嫌な話をするんじゃないって。

 私だって分かってる。エリカの問題に関わろうと決めてから、一定以上の覚悟を決めてるんだから。

『期待して待ってなさい。私は必ず黒竜を倒すわ。友達と私自身のためにも……』

 長話はできない。

 聞きたいことは聞けたし、私は旅立つだけ。北の大地は災厄に襲われているんだもの。

 静かに目を開いた私は立ち上がっていました。

 司祭らしき方に礼をしてから、ツカツカと大聖堂を後にしていく。

「アナ!」

 大聖堂を出ると、どうしてかルークがそこにいました。

 更にはモルディン大臣やレグス団長の姿も。

「どうかしたの……?」

「いや、アナが黒竜退治に行くと思ってな? 俺も君の雄姿を見届けたい」

「殿下がどうしても行くと言って聞かないもので……」

「後世に伝えるべき戦いかと思いましてね。私がその記録係を務めさせて頂こうかと」

 三人三様の理由を口にする。

 既に覚悟を決めた私にとって、同行は別に問題ありませんでした。

 どうせデッドオアアライブ。二つに一つしかありません。

 ギャラリーがいたとして同じ事なのです。

「分かりました……」

 了承をし、私は口にするだけだわ。

 愛する人が望む全てになってやろうと。

「私はドラゴンスレイヤーですからね……」
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