幼馴染み(♀)がプレイするMMORPGはどうしてか異世界に影響を与えている

坂森大我

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第三章 希望を抱いて

テイムの真相

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「では一万ナールを入金するぞ……」
 ダッドは確かに言った。一万ナールだと。追加報酬は上手く行けば五万を超えると聞いていたのに。それがたった一万ナールだなんて諒太には信じられなかった。

「一万しかもらえないのですか!?」
「悪いな、リョウ。一応はまだ土竜が残っていると伝えたんだが、被害がなくなったと大臣は考えてやがる。だから、これ以上は引き出せなかった……」
 ないよりはマシかもしれない。けれど、一万ナールではあと28500ナールを工面する必要がある。ソラが出稼ぎをしてくれているけれど、彼女がそれだけ稼ぎ出すはずもなかった。

「リョウ君、どうするの!?」
「落ち着け、アーシェ……」
「どうして落ち着いていられるの!?」
 アーシェの方が狼狽えている。彼女には諒太の奴隷落ちが決定しているように思えたことだろう。

「まだ可能性はある。あと28500ナールだ。だから俺はフェアリーティアを見つけに行く。若しくはアダマンタイトの採掘。俺が利子を払い終えるにはもうそれしか手がない」
「フェアリーティアとか幻の宝石でしょ!? リョウ君には当てがあるの!?」
 本当に取り乱したようなアーシェは他人事だと考えていない感じだ。しかし、逆に諒太はというとアーシェが慌てるたびに落ち着きを取り戻している。

「やれるだけやるよ。必ず利子は払い終える……」
 格好を付けたつもりが、その内容は非常に格好悪い。かといって笑って誤魔化すことなく、諒太はギルドをあとにしていく。

「とりあえずはリナンシーだな……」
 残念妖精リナンシーは恐らく妖精の国でへばっているはず。彼女であれば何かしらの金策があるかもしれない。また泉に生まれるというフェアリーティアも一縷の望みを託すには十分である。何しろそれさえ手に入れば元本から大幅に減ずることが可能なのだ。

 人の気配がないところで、諒太はリバレーションを唱える。
 目的地はガナンデル皇国。西の森にある『めっちゃ大木』が諒太の目的地だ。

 直接、転移できるか分からなかった諒太は、とりあえず入り口である大木前に転移し、妖精の国へと入っていく。

「あ、若様!」
 暗がりに光る妖精が言った。どうやらリナンシーに教育されているらしく、妖精は諒太を若様と呼ぶ。

「俺はリョウだ。二度と若様だなんて呼び方をするな?」
「ええ? でも若様……」
 諒太よりもリナンシーの命令に従う。まあ確かに王配と女王を比べれば権力差は明らかである。さりとて諒太は王配などではないのだけれど。

 ズカズカと歩き、諒太は妖精の国へと。少しばかり懐かしく感じる花畑へと辿り着いていた。

「うーん……うーん……」

 泉の前にはリナンシーの姿がある。だが、彼女は花畑に横たわっており、諒太に気付きもしないでうなされていた。

「おいリナンシー、起きろ」
「若様! リナンシー様は酷くお疲れなの!」
 妖精に止められるも諒太はリナンシーを蹴り起こす。元はといえばセリスに一泡吹かせようと魔力を注ぎすぎたのが問題である。

「むぅ……? 婿殿か……」
 蹴られてようやくとリナンシーは意識を戻した。等身大の彼女は割と色気があったけれど、諒太は視線を外しながら彼女に話しかける。

「リナンシー、俺はフェアリーティアが欲しい……」
 一つでもあれば事足りるのだ。諒太は起死回生となるレアアイテムを欲している。

「あれは一度しか与えられんと言うたじゃろうが……。泉にないのなら無理じゃの……」
 本当に元気がない。普段であれば喜々として絡んでくるだろうが、彼女は横になったままだ。

「お前はいつになったら回復する?」
「妾を心配してくれるのか……。とても嬉しいのじゃが、まだ無理だの……。今は妾と婿殿の供給接続を停止しておる状態なんじゃ……。婿殿の加護は残っておるが、それ故に妾の回復が遅れておる……」
「どういうことだ? 接続が途切れてんだろ?」
「相互の供給は途切れておるが、加護を維持するために妾は力をつこうておるのじゃ……」
 諒太はポーションによってMPを回復できたし、確かにリナンシーからの供給もなかった。けれど、まだ加護は有効であるらしく、リナンシーは加護の維持に努めているようだ。

「リナンシー、加護を取り消せ。俺はお前が苦しむ姿を見ていられない。そうすればずっと早く回復できるだろう?」
 諒太は提案する。ここは残念妖精と縁を切るチャンスだと。心配をしたフリをして、可及的速やかに契約の取消しを求めるときであるはず。

「嫌じゃ……」

 ところが、悩む間もなく拒否されてしまう。元気がない今であれば応じてもらえると考えていたというのに。

「無理するなって。また契約すればいいじゃないか?」
「嘘じゃ……。婿殿は二度と契約しないはず。妾には分かる。何しろ婿殿は妾が見張っていないからといって、下品で低俗な魔物とイチャついておるではないか?」
 どうやらリナンシーにはお見通しであるようだ。魂レベルで繋がっていると話していた通り、諒太の行動は筒抜けであったらしい。

「ソラのおかげで生き残ったんだぞ? 彼女を悪く言うな。魔物と言ってもエンジェルは善属性だし」
「あの者は婿殿を謀ろうとしておったのじゃぞ? 妾が隣にいたとしたら、絶対に止めておったじゃろう……」
 よく分からない話になる。ソラが諒太を謀ろうとしていただなんて考えられない。彼女はこんな今も諒太のために金策を手伝ってくれているのだ。

「どうしてソラが俺を騙そうとする? 確信があってのことか?」
「もちろんじゃ……。あの魔物は婿殿の仲間になったフリをして、逃げ出すつもりじゃった。婿殿は知らんようじゃが……」
 言ってリナンシーが語る。諒太が誤解していたこと。無知すぎた故の出来事について。

「悪属性はテイムできん――――」

 呼吸すら忘れて諒太は絶句している。
 セイレーンが悪属性かどうかは知らなかったけれど、諒太には思い当たる節があった。なぜならテイムした直後ではなく、ソラはエンジェルに進化したあとテイムされていたのだから。

「本当か……?」
「婿殿にはヒヤヒヤさせられたぞ……。易々と魔物の話を真に受けるんじゃない。婿殿が錬金術を持つ者であったことは、あの魔物にとって想定外じゃった。謀るはずが錬成によって属性変換され、あろうことか婿殿のイメージ通りに肉体まで再構築されてしもうたのじゃからな。挙げ句の果て、あやつは本当にテイムされてしもうた……」
 リナンシーが嘘をいうはずもない。真相は彼女が語る通りだと思えた。悪を善に属性変換したなんて意味不明な話であるけれど、明確にソラはエンジェルとなり、テイムされていたのだ。

「リナンシー、お前も属性変換してやろうか?」
「酷いのじゃ! 妾は元より善じゃぞ!? 疲れておるのじゃから優しくせい!」
 寝込んだままであったけれど、口調には元気が戻っている。だからこそ諒太は冗談を口にし、更なる元気を分け与えている。

「それでソラは警戒しなくていいってことか?」
「今となってはな。完全にテイムされておる。錬成元のせいでおかしなことになっておるが、表面上は間違いなくエンジェルじゃて……」
 妖精女王のお墨付きならば問題はない。変態天使であるけれど、ソラは十分尽くしてくれている。ならば諒太は彼女を信頼するだけであった。

「俺はもう行く。金策しなければならん。奴隷だなんてシャレにならんからな?」
「婿殿、妾以外の奴隷なんぞ許さぬ。頼むぞ……」
 言ってリナンシーは目を閉じた。やはり本調子ではないのだろう。旅立つ諒太に軽く手を振っただけで別れの挨拶としている。

 気を取り直して諒太はリバレーションを唱え出す。目的地はジャスミス大鉱山。一攫千金というアダマンタイトを採掘する目的である。

 絶対に奴隷だけは回避しようと、諒太は心に決めていた……。
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