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再会
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遊園地でダブルデート。なんて、学生かよとツッコミたくなる一日が始まった。
秋晴れの澄んだ青空のした、わたしは傍らに立つ男性を見上げた。
畑瀬螢一君、二十七歳。大手製薬会社の営業マン。趣味は読書、学生時代はバドミントン部。
わたしが知っているのは、それだけ。
先々週に行われた高校の同窓会で再会した螢一君は、十年前の面影も残っているけれど、うんとカッコいい大人の男性に成長していた。
実は当時付き合っていた元カレで、卒業と同時に自然消滅的にお別れをしてそれきりだった。だから、再会したときも、いまも、どんな顔して話せばいいのかわからなかった。
「ハロウィンイベントやってるだけあって、人が多いな。へぇ、仮装してる人もいるんだ」
「そうだね」
垂れぎみの目尻は人が良さそうで、温和な雰囲気がある。昔の螢一君は優しかったけれど、いまはどうかわからない。大人になれば表の顔と裏の顔くらいできるものだし、偏見かもしれないけど営業マンならなおさら。
猫っ毛の髪にはパーマがかかっていて、風が吹きつけるたびにふわふわと揺れた。指ですいたら、きっと見た目通り柔らかな感触がするのだろうな。
「そんなに見られると、恥ずかしい」
はにかむ笑顔を向けられて、胸の奥がキュンと締めつけられた。
笑顔ひとつで、十年前の甘酸っぱい思い出が蘇る。
「もしかして、この髪型、似合ってない?」
「そんなことないよ! すごく似合ってると思う! かっこいい! その……ご、ごめんね。じっと見ちゃって」
螢一君は明るく声を立てて笑った。
目を瞬くわたしに、螢一君はいやと頭を横に振った。
「いまの海央、昔の喋り方と一緒だなと思って。なんか、一生懸命話してくれる感じが懐かしくてさ。変わってないところが見つかると、結構ほっとするもんだな」
「わたしも同じこと思ったよ。当たり前のことなんだけどね、同窓会のときの螢一君はあの頃の螢一君とは全然違っていて、正直、今日うまく話せるか不安だった」
「うん、俺も同じ。よくわかるよ」
十年も経てば見た目だけじゃなく、その人のまとう雰囲気だって変わる。だから、自分の知っている彼を必死に探してしまう。でも、そんなことしなくてもいいのかもしれない。
螢一君はいまも昔も、相手の気持ちを認められる優しい人だ。それだけでもう充分だ。
「ふふっ」
「どうした?」
「んーん。ちょっと、安心しただけ」
そう、安心した。
ちゃんと話せそうだ。
「……あのさ、海央」
「ん?」
「海央ー!」
「畑瀬ー!」
遠くから声をかけられ、螢一君は言いかけた言葉を飲み込んでしまった。
元々、今日は高校の頃からの友人、羽持夏世とここに来る予定だった。期間限定でハロウィンイベントがあり、独身同士、恋人もいないふたりで楽しもうと約束していた。
約束の日が来る前に同窓会があったのだけれど、そこで再会した大石吉春君と夏世が意気投合し、その場にいただけの螢一君も含めて、話の流れで一緒に行こうとなった。
螢一君がまさか本当に来るとは思わなかった。当然、恋人はいるだろうなと思ったし、もしいなくても、同窓会で女性陣に囲まれていたのだから、良い雰囲気になった相手がいてもおかしくない。
「あのふたり、学生時代のノリに戻ってるよな」
螢一君の言葉に同意して声のあるほうへ視線を向ければ、早く早くと手招く夏世と大石君がいた。
チケットを買って、ゲートをくぐるなり案内板へ駆け出したふたりに、わたしたちは呆気に取られたまま置いていかれたのだ。どのアトラクションから攻めるかを相談している夏世と大石君を後ろから見守っていたのだけれど、ようやくわたしたちの存在を思い出してくれたらしい。
螢一君と顔を見合わせて歩き出す。
秋晴れの澄んだ青空のした、わたしは傍らに立つ男性を見上げた。
畑瀬螢一君、二十七歳。大手製薬会社の営業マン。趣味は読書、学生時代はバドミントン部。
わたしが知っているのは、それだけ。
先々週に行われた高校の同窓会で再会した螢一君は、十年前の面影も残っているけれど、うんとカッコいい大人の男性に成長していた。
実は当時付き合っていた元カレで、卒業と同時に自然消滅的にお別れをしてそれきりだった。だから、再会したときも、いまも、どんな顔して話せばいいのかわからなかった。
「ハロウィンイベントやってるだけあって、人が多いな。へぇ、仮装してる人もいるんだ」
「そうだね」
垂れぎみの目尻は人が良さそうで、温和な雰囲気がある。昔の螢一君は優しかったけれど、いまはどうかわからない。大人になれば表の顔と裏の顔くらいできるものだし、偏見かもしれないけど営業マンならなおさら。
猫っ毛の髪にはパーマがかかっていて、風が吹きつけるたびにふわふわと揺れた。指ですいたら、きっと見た目通り柔らかな感触がするのだろうな。
「そんなに見られると、恥ずかしい」
はにかむ笑顔を向けられて、胸の奥がキュンと締めつけられた。
笑顔ひとつで、十年前の甘酸っぱい思い出が蘇る。
「もしかして、この髪型、似合ってない?」
「そんなことないよ! すごく似合ってると思う! かっこいい! その……ご、ごめんね。じっと見ちゃって」
螢一君は明るく声を立てて笑った。
目を瞬くわたしに、螢一君はいやと頭を横に振った。
「いまの海央、昔の喋り方と一緒だなと思って。なんか、一生懸命話してくれる感じが懐かしくてさ。変わってないところが見つかると、結構ほっとするもんだな」
「わたしも同じこと思ったよ。当たり前のことなんだけどね、同窓会のときの螢一君はあの頃の螢一君とは全然違っていて、正直、今日うまく話せるか不安だった」
「うん、俺も同じ。よくわかるよ」
十年も経てば見た目だけじゃなく、その人のまとう雰囲気だって変わる。だから、自分の知っている彼を必死に探してしまう。でも、そんなことしなくてもいいのかもしれない。
螢一君はいまも昔も、相手の気持ちを認められる優しい人だ。それだけでもう充分だ。
「ふふっ」
「どうした?」
「んーん。ちょっと、安心しただけ」
そう、安心した。
ちゃんと話せそうだ。
「……あのさ、海央」
「ん?」
「海央ー!」
「畑瀬ー!」
遠くから声をかけられ、螢一君は言いかけた言葉を飲み込んでしまった。
元々、今日は高校の頃からの友人、羽持夏世とここに来る予定だった。期間限定でハロウィンイベントがあり、独身同士、恋人もいないふたりで楽しもうと約束していた。
約束の日が来る前に同窓会があったのだけれど、そこで再会した大石吉春君と夏世が意気投合し、その場にいただけの螢一君も含めて、話の流れで一緒に行こうとなった。
螢一君がまさか本当に来るとは思わなかった。当然、恋人はいるだろうなと思ったし、もしいなくても、同窓会で女性陣に囲まれていたのだから、良い雰囲気になった相手がいてもおかしくない。
「あのふたり、学生時代のノリに戻ってるよな」
螢一君の言葉に同意して声のあるほうへ視線を向ければ、早く早くと手招く夏世と大石君がいた。
チケットを買って、ゲートをくぐるなり案内板へ駆け出したふたりに、わたしたちは呆気に取られたまま置いていかれたのだ。どのアトラクションから攻めるかを相談している夏世と大石君を後ろから見守っていたのだけれど、ようやくわたしたちの存在を思い出してくれたらしい。
螢一君と顔を見合わせて歩き出す。
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