どうしたって、君と初恋。

散りぬるを

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あの日の続きを

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 螢一君に手を引かれて、オレンジ色の照明に染まる部屋へと踏み入れる。
 螢一君はわたしを閉じ込めるように両手を壁について、くすっと笑った。

「逃げ道がなくなったな」
「逃げようとは思ってないけど」
「けど、やっぱり後悔してる? ホテルに来たこと」
「そんなことないよ! そんなこと、ないんだけど」
「けど?」
「緊張する」
「俺もだよ」

 付き合うことになってから今日は三回目のデート。空白の十年を埋めるようにお互いのことを話して、知ろうとした。

「高三の文化祭のときの……あのこと、覚えてる?」

 こくりと頷く。

「俺の緊張は、あの日の緊張と似てる」
「そうだね。うん、似てるかも」

 自由時間に各クラスの出し物を見てまわったあと静かな場所に行こうとなった。催しものに使われない理科室、家庭科室が並ぶ廊下は誰もいなくてふたりして立ち止まった。
 いまみたいに螢一君に閉じ込められて、そっと唇を重ねた。それがわたしたちの初めてのキスだった。
 心臓がバクバクして、恥ずかしさに身体が熱くなって震えるのに、もっとしてほしいと思った。勇気を振り絞って螢一君のシャツを掴んだら、螢一君は何度も触れるだけのキスをしてくれた。
 そして、あの日のキスが最初で最後だった。

「あの日の続きをさせて」

 わたしは、ゆっくりと目を閉じた。触れた唇の柔らかさに胸の奥が切なくなる。
 唇が離れる気配に瞼を持ち上げれば、螢一君が困ったように微笑んでいた。

「止まんなくなりそうだから、ベッドに連れて行ってもいい?」
「えっ、わっ!」

 螢一君の身体が沈んだかと思ったら、腰と膝裏をしっかりと掴まれた。初めてのお姫様抱っこに怖いやら驚きやらで声が出ない。
 ゆっくりとベッドに下ろされ、向かい合うように螢一君が座った。

「お、重くなかった?」
「全然」
 
 螢一君は気取った風でもなくさらりと言う。
 本当かな、と気になって螢一君の目をじっと見ると、唇にチュッと触れるだけのキスをされた。
 至近距離で見つめ合い、どちらともなくちらっと笑って唇を重ねた。三回目、四回目、と重ねていくうちにキスが深まっていく。舌と舌を絡ませて、重ねて撫で合って、淫らなキスに酔いしれた。
 螢一君の吐息に混じって漏れる甘い声に、こっちまで切ない声を出してしまう。
 ふっと途切れたキス。片頬を大きな手のひらで包まれて、唇を親指でなぞられた。

「海央。始める前に確認させてほしいんだけど、その、セックスの経験は」

 これまで付き合った男性にも訊かれたことはある。そのときは恥ずかしい気持ちで頷いたけれど、螢一君に同じ質問をされると罪悪感が生まれた。
 たった一言伝えるだけなのに、ひどく喉が苦しくなった。 
 
「ある」

 頭をよしよしと優しく撫でられる。
 
「そんな顔する必要ないよ。なんというか、初めてだったら色々と耐えなきゃならないことがあるから」
「耐える……?」
「それに、経験済みなら多少暴走しても許してもらえるかな、とか考えたり」

 ぱっと浮かんだ妄想に困惑してしまう。
 
「暴走はダメだと思う」

 言いながらだんだんと、自分の想像したものと螢一君の言った意味が一致しているのか不安になった。
 螢一君はくっと笑った。
 
「やっぱりダメか。じゃあ、できるだけ紳士的にさせていただきます」
「うん。あ、待って。先にシャワーを」
「いいよ。でも」

 ベッドに手をついて、キスする寸前まで顔を寄せられる。

「俺に全部脱がさせて」
「え?!」
「じゃないと、風呂場には行かせない」
「う、ううん、んんー……わかった」
「なにその悩み方。もう無理、可愛い」

 勢いよく抱きつかれ、耳元にキスをされた。
 耳輪を舌先でなぞられるだけで、背中がゾクゾクと震えた。耳への愛撫があまりにも気持ちよくて逃げたくなる。だけど、背中にまわった螢一君の両手が逃さないとばかりに強く抱きしめてくるから、逃げられない。

「っ、んんっ……」
「耳、弱いんだ」

 低く囁かれた声が耳の奥まで響く。
 耳を舐めるのはそのままで、背中を撫でまわしていた手がゆっくりと胸の方へと移る。大きな手に胸を包まれて、込み上げてくる切なさに甘いため息をついてしまう。
 螢一君の肩に頬をすり寄せると、嬉しそうな、それでいて静かな笑い声が降ってきた。

「上の服とスカート、脱がすよ。はい、ばんざーい」

 螢一君は丁寧に服を畳んで脇に置いた。
 こういう場面でも相手の持ち物にまで気を配れる螢一君に、胸の奥が温かくなる。改めて、こういうところが好きだなって思った。何度でも、同じところを好きになる。

「下着、可愛いな」
「そうかな。こういうの……その……好き?」
「うん、好き。……興奮する」

 逞しい腕に支えられ、促されるままにベッドへと身体を預けた。
 プチッとホックの外れる音。
 首筋に熱い吐息が触れ、柔らかな唇に翻弄されている間にブラを取られる。
 
「ふっ、ここも可愛い」

 胸の先を指で弾かれて「んっ」と声が漏れ出てしまう。
 
「海央って敏感なんだな」 
「だって」
「ん?」
「か、かなり久しぶりだから……」

 螢一君は目を細めて、口元に微かな笑みを浮かべた。
 
「いっぱい気持ち良くする」

 そう言い終えると、わたしの胸に舌を這わせた。
 片方の胸の先を摘まれて、もう片方は口のなかで転がされる。
 休む間もなく与えられる快感に息が激しく乱れてしまう。
 確かにこういう行為は久しぶりだけど、胸への愛撫ってこんなに気持ちよかったかな。切なくて、苦しくて、触れられる場所すべてが気持ちいい。
 胸を揉んでいた片手が脇腹へと流れ、閉じていた太ももを割って入ってくる。下着越しに、ずっと疼いて仕方なかった場所を指で強く撫でられた。
 
「あっ」
「ちょっと濡れてる」

 身を起こして螢一君の手を掴む。
 
「あの、シャワー浴びさせてくれるんだよね」
「もちろん、約束はちゃんと守るよ。ほら、力抜いて」
「ん、うん……はっ、んんっ」

 ぐり、ぐりと溝に指先を埋めて上下に撫でられ、ひときわ敏感なところを執拗に擦られた。
 その間も螢一君は余裕のない表情でわたしをじっと見つめて、わたしが快感に大きく反応すると、その場所をずっと責めてきた。
 性急に下着をずらして指で直接、ジンジンと疼くところに触れられる。

「指、入れるよ」
「シャワー……」
「まだ全部脱がせてないだろ」

 まるでうわごとのように呟くわたしに螢一君はキスをした。
 これはもうお風呂場に行かせてもらえないな――わたしは諦めて螢一君の首に両腕をまわしてキスを受け入れた。
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