116 / 255
第4部 漫画・出版史
黄金から低迷、復活へ~ジャンプ王者奪取前史その2 遊戯王編~
しおりを挟む
低迷期・暗黒期と呼ばれる97年~02年頃のジャンプには王道とはやや離れた風変わりな作品が目立ったことも特徴のひとつとして挙げられる。
ヤンキー漫画にバンドの要素を加えた「BOY」、ジャンプとしては珍しく中国古典に題材をとった「封神演義」(ちなみにスラムダンク最終回の次の号から始まってたりする)アレなネタが多すぎていろんな意味で有名な「幕張」などがその代表格。
そして復活期に至るまでのジャンプを語るうえで欠かせないこの作品もある意味この類に入ると言えよう。1996年から始まった「遊戯王」である。
「遊戯王=カードゲーム」と多くの人は認識するが、遊戯王は最初からカードゲームの話だったわけではない。
開始当初は主人公・武藤遊戯に芽生えたもうひとつの人格が悪人に様々なルールの「闇のゲーム」を執行し、敗れたりルールを破った者に対して「罰ゲーム」を与えていくという、原作者高橋和希先生の言葉を借りれば「主人公が絶対人を殴らない格闘もの」という一話完結式のストーリーで、カードゲームはあくまでもそのゲームの中のひとつに過ぎなかった。カードゲーム以外にもTRPGやたまごっち風の液晶ゲームなども登場した。
しかし一時は人気が低迷し、打ち切り検討レベルにまで落ち込む。そこで今までだしたゲームの中で人気のあったカードゲームのマジック&ウィザーズ(アニメだとデュエルモンスターズ)を再登場させると人気は回復。以降カードゲームをメインにした物語にシフトしていき、看板漫画のひとつとなっていった。
遊戯王がカードゲーム路線で人気を博せた理由として、当時はTCG市場が黎明期だったのも大きな理由だろう。
世界初のTCG「マジック・ザ・ギャザリング」がアメリカで発売されたのが1993年。国産初のTCGといわれるポケモンカードゲームの発売がその3年後の1996年。ちょうどこの年に遊戯王の連載がスタートした。
遊戯王がカードメインの物語にシフトしたのがその2年後の98年。TCG市場が拡大し始め、子供文化の中で徐々にその存在感を高めていく中で同年遊戯王最初のTCG「遊戯王カードダス」がテレビ朝日でのアニメ第1作放送にあわせてバンダイから発売。対戦要素はあるがカードダス自体元々ゲーム性よりコレクション重視であったこと(今でこそバトスピとかの本格TCGがメインになってるが)もあってルールは整ってなく遊びにくいとの意見もあった。こちらはアニメが半年と短命に終わったこともあって翌年に全3弾で幕を下ろすが、同年には今も続く「遊戯王オフィシャルカードゲームデュエルモンスターズ(遊戯王OCG)」がコナミから発売。初年度から高い人気を博し、同年8月に東京ドームで遊戯王のOCGとゲームボーイソフトの合同イベントが開催された際は主催者の予想を上回る4万人以上の来場者が集まったために会場限定販売予定だった限定パックの販売中止という事態も発生している。TCG黎明期、加えて二次元文化の地位が今より低かった時代にその社会的影響力を強く示した形となった。この時点ではアニメ中断中であったのにもかかわらず東京ドームに4万越えとはいかに遊戯王の影響力がすごかったかが見て取れる。
翌2000年にテレビ東京系で「遊戯王デュエルモンスターズ」が放送開始するとその人気は一気に加速。以降テレ東におけるアニメ放送はタイトルと主人公を数年おきに変更しながら四半世紀近くにわたって続くこととなる。
こうして遊戯王はジャンプの看板になると同時に、カードゲーム界のトップの座もほしいままにした。
カードの記録だけでも2011年6月時点で販売枚数251億7000万枚。世界一のプレイヤー数のいるカードゲームとしてギネスにも登録。2019年時点での原作やアニメなどの全分野ひっくるめての全世界総収入は2兆7000億円越え。今や「ジャンプで一番稼いだ漫画」と呼ばれるまでになった。
だが「ジャンプで一番稼いだ漫画って何だと思う?」って質問をすれば多くの人は「ドラゴンボール・ワンピース・ナルト・鬼滅」あたりを答えるだろう。意外に遊戯王と答える人は少ないかもしれない(と言っても僕個人の見解だが)。自分もある番組で「ジャンプで一番稼いだ漫画って何だと思いますか」なんて話題を見たときは「DBかワンピじゃね~か?普通に考えて」なんて思ってしまったほどだ。そしてその答えが遊戯王だと知った時は失礼ながら「え~!?」と思ってしまった。だがカードの売り上げが大きいという理由が説明されると「なるほどね~」と思った。
…そう、「遊戯王=カード」のイメージが根付いているのだ。だから一番稼いだ「漫画」と言われてもすぐ頭に浮かんでこなかったのだろう。
漫画やアニメを題材としたカードゲームは多くは原作となるコンテンツのファンに向けて作られるファンアイテムの側面があり、もちろん遊戯王OCGも元々はそういったコンセプトで作られたはずだ。だがプレイヤー人口が拡大するにつれ、次第に漫画やアニメは見てないけどOCGはプレイするようなユーザーも増えていった。マンガやアニメより先にカードで遊戯王に触れたファンは数えきれないほどだろう。
「DB・ワンピ・ナルト・鬼滅」…これらも同じくアニメなどのメディアミックスが成功した作品であるが、4作品とも原作の発行部数が億単位を記録している。一方遊戯王の原作発行部数は4000万部。もちろんこの数字も立派な数字なのだが、この4作品より圧倒的に部数が少ないのは失礼ながら事実。だが遊戯王はOCGという大発明を生み出したことで兆単位を稼ぐメガヒットコンテンツへと化けたのだ。
これは集英社にとっても大きな魚を釣り上げたと言えるのは間違いない。そして隆盛を誇る昨今のカードゲーム市場を考えても、遊戯王が無ければ間違いなくその歴史は大きく変わっていたはずだ。
ヤンキー漫画にバンドの要素を加えた「BOY」、ジャンプとしては珍しく中国古典に題材をとった「封神演義」(ちなみにスラムダンク最終回の次の号から始まってたりする)アレなネタが多すぎていろんな意味で有名な「幕張」などがその代表格。
そして復活期に至るまでのジャンプを語るうえで欠かせないこの作品もある意味この類に入ると言えよう。1996年から始まった「遊戯王」である。
「遊戯王=カードゲーム」と多くの人は認識するが、遊戯王は最初からカードゲームの話だったわけではない。
開始当初は主人公・武藤遊戯に芽生えたもうひとつの人格が悪人に様々なルールの「闇のゲーム」を執行し、敗れたりルールを破った者に対して「罰ゲーム」を与えていくという、原作者高橋和希先生の言葉を借りれば「主人公が絶対人を殴らない格闘もの」という一話完結式のストーリーで、カードゲームはあくまでもそのゲームの中のひとつに過ぎなかった。カードゲーム以外にもTRPGやたまごっち風の液晶ゲームなども登場した。
しかし一時は人気が低迷し、打ち切り検討レベルにまで落ち込む。そこで今までだしたゲームの中で人気のあったカードゲームのマジック&ウィザーズ(アニメだとデュエルモンスターズ)を再登場させると人気は回復。以降カードゲームをメインにした物語にシフトしていき、看板漫画のひとつとなっていった。
遊戯王がカードゲーム路線で人気を博せた理由として、当時はTCG市場が黎明期だったのも大きな理由だろう。
世界初のTCG「マジック・ザ・ギャザリング」がアメリカで発売されたのが1993年。国産初のTCGといわれるポケモンカードゲームの発売がその3年後の1996年。ちょうどこの年に遊戯王の連載がスタートした。
遊戯王がカードメインの物語にシフトしたのがその2年後の98年。TCG市場が拡大し始め、子供文化の中で徐々にその存在感を高めていく中で同年遊戯王最初のTCG「遊戯王カードダス」がテレビ朝日でのアニメ第1作放送にあわせてバンダイから発売。対戦要素はあるがカードダス自体元々ゲーム性よりコレクション重視であったこと(今でこそバトスピとかの本格TCGがメインになってるが)もあってルールは整ってなく遊びにくいとの意見もあった。こちらはアニメが半年と短命に終わったこともあって翌年に全3弾で幕を下ろすが、同年には今も続く「遊戯王オフィシャルカードゲームデュエルモンスターズ(遊戯王OCG)」がコナミから発売。初年度から高い人気を博し、同年8月に東京ドームで遊戯王のOCGとゲームボーイソフトの合同イベントが開催された際は主催者の予想を上回る4万人以上の来場者が集まったために会場限定販売予定だった限定パックの販売中止という事態も発生している。TCG黎明期、加えて二次元文化の地位が今より低かった時代にその社会的影響力を強く示した形となった。この時点ではアニメ中断中であったのにもかかわらず東京ドームに4万越えとはいかに遊戯王の影響力がすごかったかが見て取れる。
翌2000年にテレビ東京系で「遊戯王デュエルモンスターズ」が放送開始するとその人気は一気に加速。以降テレ東におけるアニメ放送はタイトルと主人公を数年おきに変更しながら四半世紀近くにわたって続くこととなる。
こうして遊戯王はジャンプの看板になると同時に、カードゲーム界のトップの座もほしいままにした。
カードの記録だけでも2011年6月時点で販売枚数251億7000万枚。世界一のプレイヤー数のいるカードゲームとしてギネスにも登録。2019年時点での原作やアニメなどの全分野ひっくるめての全世界総収入は2兆7000億円越え。今や「ジャンプで一番稼いだ漫画」と呼ばれるまでになった。
だが「ジャンプで一番稼いだ漫画って何だと思う?」って質問をすれば多くの人は「ドラゴンボール・ワンピース・ナルト・鬼滅」あたりを答えるだろう。意外に遊戯王と答える人は少ないかもしれない(と言っても僕個人の見解だが)。自分もある番組で「ジャンプで一番稼いだ漫画って何だと思いますか」なんて話題を見たときは「DBかワンピじゃね~か?普通に考えて」なんて思ってしまったほどだ。そしてその答えが遊戯王だと知った時は失礼ながら「え~!?」と思ってしまった。だがカードの売り上げが大きいという理由が説明されると「なるほどね~」と思った。
…そう、「遊戯王=カード」のイメージが根付いているのだ。だから一番稼いだ「漫画」と言われてもすぐ頭に浮かんでこなかったのだろう。
漫画やアニメを題材としたカードゲームは多くは原作となるコンテンツのファンに向けて作られるファンアイテムの側面があり、もちろん遊戯王OCGも元々はそういったコンセプトで作られたはずだ。だがプレイヤー人口が拡大するにつれ、次第に漫画やアニメは見てないけどOCGはプレイするようなユーザーも増えていった。マンガやアニメより先にカードで遊戯王に触れたファンは数えきれないほどだろう。
「DB・ワンピ・ナルト・鬼滅」…これらも同じくアニメなどのメディアミックスが成功した作品であるが、4作品とも原作の発行部数が億単位を記録している。一方遊戯王の原作発行部数は4000万部。もちろんこの数字も立派な数字なのだが、この4作品より圧倒的に部数が少ないのは失礼ながら事実。だが遊戯王はOCGという大発明を生み出したことで兆単位を稼ぐメガヒットコンテンツへと化けたのだ。
これは集英社にとっても大きな魚を釣り上げたと言えるのは間違いない。そして隆盛を誇る昨今のカードゲーム市場を考えても、遊戯王が無ければ間違いなくその歴史は大きく変わっていたはずだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる