117 / 255
第4部 漫画・出版史
海賊の復古~00年代ジャンプ王座奪取史~
しおりを挟む
2002年、5年にわたって漫画雑誌部数1位の座に座っていた週刊少年マガジンの部数が低迷したことにより、週刊少年ジャンプは5年ぶりに部数トップとなった。
黄金期最末期の1996年7月末発売号時点でのジャンプの部数は公称500万部。それに対して王座奪取した2002年の年間平均部数は320万部。ひとつの号で500万部を稼いでいた雑誌が年平均で180万部下がってしまったわけだが、この頃からすでに始まっていた出版不況の影響も強いので一概には言えない。
それに以前も書いたように決してマガジンの勢いが衰えたことだけがジャンプの王座奪取の要因ではない。
これまで書いてきたように低迷期から様々なヒット作を連発し、読者の注目を集めてきたのも大きな理由といえる。
もしワンピースやナルトがなければジャンプはもっと落ちぶれていただろうし、先に書いたぬ~べ~やるろ剣が無ければワンピースが始まる前後の時点でマガジンどころかサンデーにも抜かされていたかもしれない。
低迷期のジャンプは風変わりな作品が多く生まれたと前回書いたが、王道のバトル・アクション系でもワンピースやナルトをはじめ、「シャーマンキング」「ハンターハンター」「BLEACH」などの名だたるヒット作が低迷期~復活期にかけて生まれた。
そんな中で今回は王座奪還を果たした02年時点での連載作品の中から3作品を分析していこう。
まずは「テニスの王子様」。連載開始はナルトと同じ1999年で、2002年当時は前年にアニメ化をしたばかりでまさに人気急上昇中のところだった。
テニスといえば古くは「エースをねらえ!」ジャンプでも昭和期に「テニスボーイ」が連載されるなど古くからそれなりにこすられてきたジャンル。だが意外にエースをねらえ以降はあまりメガヒットに恵まれていない競技でもあった。余りにもあちらのイメージと功績が大きすぎるというのもあるが。
エースをねらえの影響で上品な女の子のスポーツのイメージがついていた中でテニスのイメージを男性的なものに変えようというコンセプトで始まったのがテニプリ。その後世に与えた影響は大きく、連載が始まった99年当時の国内のテニスの競技人口は780万人であったのに対し、その2年後、アニメが始まった2001年には920万人と実に140万人増。多くのテニス少年少女を生み出しただけでなく作品は女性ファンも多数獲得。
ジャンプにおける女性ファンが多い作品といえば古くはキャプテン翼の頃から女性向けの同人誌が作られたり、人気キャラに女性ファンからの支持が集まった聖闘士星矢や幽遊白書など黄金期の頃からあったわけだが、それを最も決定的にしたのは本作と言って過言ではないだろう。
そしてテニプリのメディアミックスを語るうえで外せないのが「テニミュ」。アニメ開始2年後の2003年に初演を迎え、今もシリーズが続く2.5次元ミュージカルの代名詞であるが、当時は漫画原作ミュージカルこそすでにあったものの、本作のように男性キャラのみの作品でヒットした例はほとんどなかった。テニミュ以前でヒットした漫画原作ミュージカルといえば1993年から上演が始まったセーラームーンがあるが、あちらは少女漫画原作で女性キャラメインの物語だ。
ジャンプとしてもセーラームーンの2年前に聖闘士星矢をデビュー間もない頃のSMAP主演でミュージカル化した前例があり18日間31ステージで37万人を動員する大盛況と成功を収めているが、当時はまだ2・5次元ミュージカルなんて言葉は存在せず、まだまだ漫画原作ミュージカルの地位は低かった時代だ。
だが次第に口コミで客足が増えていき、初回公演の千秋楽では立ち見が出るほどの大盛況。以降もシリーズを重ねていき、2021年にはシリーズ累計観客動員数が300万人を突破。現在に至る2.5次元ミュージカルの大規模な市場を作り上げた立役者なのは言うまでもない。
続いて「ヒカルの碁」。黄金期から執筆し、長らく鳴かず飛ばずだった小畑健先生の初のヒット作。
当時としては碁石を置くぐらいの地味な動きしかないということで(それだったら将棋だって駒動かすだけじゃんってなるけどさ)囲碁漫画はあまり例がなく、開始当初は「世界初の囲碁漫画」を謳うほどであった。
作中での囲碁の説明に関しては初心者も理解できるレベルの基本ルールにとどまり、対局の進行描写や技術解説などはほぼ省略されていたものの、それが囲碁初心者にも楽しめるよう門戸を広げることに成功している。
一方制作にあたっては女流囲碁棋士の吉原(当時は梅沢)由香里氏が監修にあたっており、盤面描写は本格的なもの。本作のヒットでこちらも日本中に多くの囲碁少年少女を生み出したが、「囲碁を知らなくても楽しめる、でも囲碁を知ってから読んだらもっと面白い」二度おいしい漫画となっているわけだ。
「ヒカルの碁を読む→囲碁にハマる→ヒカルの碁がもっと面白く感じられてさらにハマる」…ジャンプ的にも、囲碁業界的にもこれほどうれしいことはないだろう。
こちらもテニプリ同様ある種の挑戦作だったわけだが、こちらも囲碁ブームの火付け役となり、看板となっていった。
連載から20年以上たった現在、このマンガで囲碁の面白さを知ったリアタイ世代が親となり、今度は自分の子供に囲碁を習わせるケースも出てきているという。
最後は「ボボボーボ・ボーボボ」…良くも悪くも?この時代のジャンプを語るうえで話題に上がる作品だが、ジャンプの歴史を語るうえで重要な1ページのひとつであることは間違いない。
本作はギャグマンガであるがバトル漫画。バトル漫画であるがギャグマンガ。ボーボボ一行が全世界を支配するマルハーゲ帝国(アニメではマルガリータ帝国)とその皇帝が自らの権力を示すために立ち上げた全人類を丸坊主にする毛狩り隊に立ち向かうというギャグとストーリーを見事に融合した世界観。
バトル漫画として見れば、そのバトルはバトル漫画の常識を超えたぶっ飛んだ技やパロネタの応酬とギャグ丸出し。
ギャグマンガとして見れば基本的に各話の終わりにオチは基本的になしというストーリー漫画形式。
そんでもって登場人物たちもぶっ飛びまくり。つけものだって、ハンペンだって、魚雷だってこの世界ではキャラクターになる。ふつうそれをキャラにするなんて発想ある!?ってモチーフもふんだんに登場する。ここまでくればボーボボという作品の存在自体がギャグといえよう。
こういうぶっ飛んだ存在がアクセントとなったからよりほかの作品の存在感も相乗効果で際立ち、ジャンプの首位奪取に貢献したのかもしれない。たぶん。
黄金期最末期の1996年7月末発売号時点でのジャンプの部数は公称500万部。それに対して王座奪取した2002年の年間平均部数は320万部。ひとつの号で500万部を稼いでいた雑誌が年平均で180万部下がってしまったわけだが、この頃からすでに始まっていた出版不況の影響も強いので一概には言えない。
それに以前も書いたように決してマガジンの勢いが衰えたことだけがジャンプの王座奪取の要因ではない。
これまで書いてきたように低迷期から様々なヒット作を連発し、読者の注目を集めてきたのも大きな理由といえる。
もしワンピースやナルトがなければジャンプはもっと落ちぶれていただろうし、先に書いたぬ~べ~やるろ剣が無ければワンピースが始まる前後の時点でマガジンどころかサンデーにも抜かされていたかもしれない。
低迷期のジャンプは風変わりな作品が多く生まれたと前回書いたが、王道のバトル・アクション系でもワンピースやナルトをはじめ、「シャーマンキング」「ハンターハンター」「BLEACH」などの名だたるヒット作が低迷期~復活期にかけて生まれた。
そんな中で今回は王座奪還を果たした02年時点での連載作品の中から3作品を分析していこう。
まずは「テニスの王子様」。連載開始はナルトと同じ1999年で、2002年当時は前年にアニメ化をしたばかりでまさに人気急上昇中のところだった。
テニスといえば古くは「エースをねらえ!」ジャンプでも昭和期に「テニスボーイ」が連載されるなど古くからそれなりにこすられてきたジャンル。だが意外にエースをねらえ以降はあまりメガヒットに恵まれていない競技でもあった。余りにもあちらのイメージと功績が大きすぎるというのもあるが。
エースをねらえの影響で上品な女の子のスポーツのイメージがついていた中でテニスのイメージを男性的なものに変えようというコンセプトで始まったのがテニプリ。その後世に与えた影響は大きく、連載が始まった99年当時の国内のテニスの競技人口は780万人であったのに対し、その2年後、アニメが始まった2001年には920万人と実に140万人増。多くのテニス少年少女を生み出しただけでなく作品は女性ファンも多数獲得。
ジャンプにおける女性ファンが多い作品といえば古くはキャプテン翼の頃から女性向けの同人誌が作られたり、人気キャラに女性ファンからの支持が集まった聖闘士星矢や幽遊白書など黄金期の頃からあったわけだが、それを最も決定的にしたのは本作と言って過言ではないだろう。
そしてテニプリのメディアミックスを語るうえで外せないのが「テニミュ」。アニメ開始2年後の2003年に初演を迎え、今もシリーズが続く2.5次元ミュージカルの代名詞であるが、当時は漫画原作ミュージカルこそすでにあったものの、本作のように男性キャラのみの作品でヒットした例はほとんどなかった。テニミュ以前でヒットした漫画原作ミュージカルといえば1993年から上演が始まったセーラームーンがあるが、あちらは少女漫画原作で女性キャラメインの物語だ。
ジャンプとしてもセーラームーンの2年前に聖闘士星矢をデビュー間もない頃のSMAP主演でミュージカル化した前例があり18日間31ステージで37万人を動員する大盛況と成功を収めているが、当時はまだ2・5次元ミュージカルなんて言葉は存在せず、まだまだ漫画原作ミュージカルの地位は低かった時代だ。
だが次第に口コミで客足が増えていき、初回公演の千秋楽では立ち見が出るほどの大盛況。以降もシリーズを重ねていき、2021年にはシリーズ累計観客動員数が300万人を突破。現在に至る2.5次元ミュージカルの大規模な市場を作り上げた立役者なのは言うまでもない。
続いて「ヒカルの碁」。黄金期から執筆し、長らく鳴かず飛ばずだった小畑健先生の初のヒット作。
当時としては碁石を置くぐらいの地味な動きしかないということで(それだったら将棋だって駒動かすだけじゃんってなるけどさ)囲碁漫画はあまり例がなく、開始当初は「世界初の囲碁漫画」を謳うほどであった。
作中での囲碁の説明に関しては初心者も理解できるレベルの基本ルールにとどまり、対局の進行描写や技術解説などはほぼ省略されていたものの、それが囲碁初心者にも楽しめるよう門戸を広げることに成功している。
一方制作にあたっては女流囲碁棋士の吉原(当時は梅沢)由香里氏が監修にあたっており、盤面描写は本格的なもの。本作のヒットでこちらも日本中に多くの囲碁少年少女を生み出したが、「囲碁を知らなくても楽しめる、でも囲碁を知ってから読んだらもっと面白い」二度おいしい漫画となっているわけだ。
「ヒカルの碁を読む→囲碁にハマる→ヒカルの碁がもっと面白く感じられてさらにハマる」…ジャンプ的にも、囲碁業界的にもこれほどうれしいことはないだろう。
こちらもテニプリ同様ある種の挑戦作だったわけだが、こちらも囲碁ブームの火付け役となり、看板となっていった。
連載から20年以上たった現在、このマンガで囲碁の面白さを知ったリアタイ世代が親となり、今度は自分の子供に囲碁を習わせるケースも出てきているという。
最後は「ボボボーボ・ボーボボ」…良くも悪くも?この時代のジャンプを語るうえで話題に上がる作品だが、ジャンプの歴史を語るうえで重要な1ページのひとつであることは間違いない。
本作はギャグマンガであるがバトル漫画。バトル漫画であるがギャグマンガ。ボーボボ一行が全世界を支配するマルハーゲ帝国(アニメではマルガリータ帝国)とその皇帝が自らの権力を示すために立ち上げた全人類を丸坊主にする毛狩り隊に立ち向かうというギャグとストーリーを見事に融合した世界観。
バトル漫画として見れば、そのバトルはバトル漫画の常識を超えたぶっ飛んだ技やパロネタの応酬とギャグ丸出し。
ギャグマンガとして見れば基本的に各話の終わりにオチは基本的になしというストーリー漫画形式。
そんでもって登場人物たちもぶっ飛びまくり。つけものだって、ハンペンだって、魚雷だってこの世界ではキャラクターになる。ふつうそれをキャラにするなんて発想ある!?ってモチーフもふんだんに登場する。ここまでくればボーボボという作品の存在自体がギャグといえよう。
こういうぶっ飛んだ存在がアクセントとなったからよりほかの作品の存在感も相乗効果で際立ち、ジャンプの首位奪取に貢献したのかもしれない。たぶん。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる