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一学期 ~帝野先生とゆかいな生徒たち?~
白村まあや~白い顔の向こう側~
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6年2組には他のクラスの生徒から「ファッションモンスター」と呼ばれる己の道を行くファッションを貫く2人の女子がいる。今日もその2人が登校してきた。
「おっ、来たぞ来たぞ、ファッションモンスターが…」「アイツらもよくあの格好で歩けるよな…」「やめなって、聞こえるよあの2人に…」
「お~っ、今日もウチらへのヤジから始まりましたか~もう慣れっこですけどね~まあやっち~?」
「罵詈雑言なんてわたしたちにはただのBGM…誰に何と言われようとわたしたちはわたしたちのファッションを貫く…それだけよモモエ…」
…周りからのヤジを気にせず堂々と校舎内に向かっていくこのふたりの名はヤマンバギャルの黒川モモエと白塗りに黒い唇のゴシックファッションの白村(はくむら)まあや。ふたりともこの独特のファッションで毎日登校している。依然もとある回で言及しているが、ファッションに関しては保護者様が校長に土下座で許可をいただいているのでご安心を。
6-2のみんなは彼女らのファッションを理解してくれているが、先ほどのまわりからの反応からも見て取れる通り、他の学年にはこのファッションに対して偏見の目を持つものも少なからずいる。近所の人からも驚かれたり指さされたりすることも多い。だが彼女らはそんなことを気にしないメンタルの持ち主である。
「モモエ、わたしたちが大切にすべきは…」
「わかってますって!『10人のアンチより1人のファン』でしょ?」
「そう…もし10人の人間からわたしたちのファッションにケチをつけられても、支持してくれる人がひとりでもいるならわたしたちは自分のファッションを貫き続ける…ほら、校舎の中にわたしたちのファンがお待ちよ…」
…彼女らに付きまとうのは罵詈雑言だけではない。校舎に入っていく彼女らを迎え入れたのは…
「キャ~!モモエ様のご降臨よ~!」「モモエ様~!こないだのヨーロッパ動画見ました~!」「まあや様~!今日も美しい白さでございます~!」「まあや様~!わたしも白く染めて~!」
ひとりどころか何人も何十人も駆け付けた彼女たちのファンによる黄色い声援。下駄箱前はまるでスポーツの日本代表選手が国際大会から帰国したときか、はたまたハリウッドスターが来日したときのような雰囲気となっていた。
だがここは学校。こうやってみんなが使う玄関という場で大騒ぎしていれば止めに入る人間はいるもので…
「コラ~お前ら!下駄箱前で騒ぐな!」
「す、すいません!!」
…生活指導の前田先生がすぐ飛んできて玄関にあふれかえったファンたちはあっという間に退陣。
その後前田先生はふたりにも問いただす。
「黒川!白村!…お前らのそのファッションは一応校長先生から許可をもらっているのは承知だが…オレはどうも腑に落ちない…もっとありのままの自分自身をさらけ出すべきだと思う!お前らふたりのそのファッションには理由があるのだろうが、偽りの化粧で塗り固められた自分ではなく本当の自分自身を出してみたらどうだ!?」
…どうやら前田先生はふたりのファッションを快く思っていないようだ。しかしテツならビビってしまう前田先生相手でもモモエとまあやは決してひるまない。
「偽り?ありのままの自分?わたしにとってはこの白い肌こそありのままの自分よ…たとえ全人類を敵に回しても譲る気はないわ…」
「マンバこそウチ!マンバこそ黒川モモエ!マンバじゃないウチなんて回らない回転ずしみたいなもんよ!…って最近はタッチパネル注文だけで回らないのもおおいけど…」
…白村まあやと黒川モモエ、たとえ己のファッションを否定されようが決してひるまず突き進む少女である。
「…結局お前らはそれでいくんだな…」
…前田先生はまだ腑に落ちない様子であった。
その日の中休みもふたりは教室で一緒の時間を過ごしていた。ジャンルは違えどお互いのファッションに理解と敬意をもつこのふたりは普段からよく遊んだりするなど仲の良さは本物。
「モモエ、あなたがこないだ送ってくれた『アフターヌーンティーのお供に聴きたい昭和歌謡ベスト10』のプレイリスト、いい選曲だったわよ…初めて聴く曲が多かったけど、オリビアを聴きながらがいちばんお茶の時間にぴったりだったわね…」
「おっ、気に入ってくれた?ありがとさ~ん!ウチも紅茶飲むときにはよく聴くのよ!…ところで今度GALDOUの企画でZOZOマリンでパフォーマンスすることになって、マリーンズの選手のこと勉強してるんだけど、なんだっけあの外国人…『ナカ』だっけ?あの人の応援歌ラスボス戦っぽくてカッコよくない?」
「ナカ…もしかしてソトのこと?」
「そう!ソト!!」
…ふたりはお互いを理解していく中で、お互いの趣味にも興味が出はじめてきたようだ。モモエは昭和歌謡好き、まあやは野球好きでロッテファンという見た目からは想像できない意外な趣味を持つ。
…そんな感じでふたりの会話が盛り上がっていたころ、教室に帝野先生が入ってきた。
「おっ、モモエにまあや、今日もふたりでお話かい?ホントに仲いいんだな!」
「ミカセン!そりゃあウチラの友情は永遠っしょ!…あ!もうこんな時間じゃん!…まあやっち、ウチこれからGALDOUのWeb企画の撮影があるからここでドロンさせていただきますわ~!」
…モモエは自信がモデルを務める雑誌の撮影のために早退。
「…そういえばそうだったわね…撮影楽しんで頑張ってね…」
モモエが教室を後にした直後、先生はまあやにあることを聞き始めた。
「まあや、お前はいつもモモエと一緒にいるよな。やっぱりジャンルは違えどファッションで己の道を究めるところに共感したのか?」
「ええ。あの子もわたしも自分のファッションに誇りを持っている…そこにシンパシーを感じたのよ…わたしもあの子も自分のファッションを周りから白い目で見られたりしてきた過去があった…でもどんな目で見られようとも自分は自分のスタイルを貫く…ファッションスタイルは違えど、自分の世界を貫くという精神が合致したことにおたがい共鳴したのよ…」
「…やっぱり理解者がいるって心強いよな…ところでお前が白塗りを始めたきっかけって何なんだ?」
「きっかけね…それはわたしが幼稚園年長の頃にさかのぼるわ…」
まあやは自分が白塗りを始めたきっかけを話し始める。
…その頃のわたしはクラスでも目立たなくて恥ずかしがり屋でおとなしい性格だったわ…そんなわたしにも好きな男の子がいたの。名前はハルヤくん…スポーツが得意で同年代とは思えないぐらい博識で大人びた子で男子とも女子とも仲のいい子だったわ…ずっと片思いで遠くから見ているだけで告白する勇気が出なかったけど、ある日わたしは勇気を出してハルヤくんに直接ラブレターをわたして告白することにしたわ…
「ハルヤくん…これ…お家帰ってから読んで!」
…そしたら翌日、ハルヤくんにこう言われて…
「まあや…気持ちは嬉しいが正直言ってオレは今のお前に魅力が感じられない…今のお前には個性がない…だから今はお前の気持ちにこたえてやることはできない…ごめん…オレは個性的で挑戦的なヤツが好きなんだ…」
ハルヤくんからの返事は6歳のわたしにはかなりきつく刺さるものだった…その日の帰宅後、わたしは何度も何度も泣きながら叫んだわ…
「…個性って何よ!魅力って何よ!どうすれば出せるの!?どうすれば魅力的な人間になれるの!?」
何度も何度も泣き崩れるわたし…悔しさと理解に苦しむさなか涙でかすんだ視界のなかに入ってきたのは家に飾ってあったおばあちゃんの代から大切にしてあるフランス人形…雪のように真っ白な肌に鋭くも美しい目つき…わたしはその美しさからヒントを得たわ…
「…あなたのように白くて力強くて美しい姿になれば、ハルヤくんも認めてくれるかな…」
…思い立ったらすぐ実行。わたしは日舞をやっていたおばあちゃんからおしろいなどの化粧品を借りて、人形のような白い肌の少女に生まれ変わったわ…
「…美しい…わたしじゃないみたい…これならハルヤくんも…」
「…そんな経緯があったのか。それでお前はその格好で幼稚園に行ったのか?」
「ええ、もちろん最初にこの顔になった時は両親も驚いてもちろん反対されたけど、おばあちゃんは理解してくれて、周りの反対を押し切って翌日さっそく白塗りで通園したわ…もちろんクラスメイトからは白い目で見られていたけど…」
「えっ!?どうしたのまあやちゃん…」「まるで妖怪じゃねーかw」「離れろ!妖怪に食われるぞ!」「うちの幼稚園にあんなバケモノみたいな女いたっけ?www」「なに?まあやお笑いやるの?そのためのメイク?」
…やっぱり変だったのかな?わたしが迷っていた中、唯一この姿を認めてくれたのが…
「まあや、それだよ!ちょっとやりすぎ感もあるけど、オレは自分の個性を出すためなら何でもやるようなその挑戦的な精神が大好きだぜ!白い顔のお前はいつもより輝いている!」
「…ハルヤくん…!」
…ハルヤくんだけがクラスで唯一認めてくれた。喜んだわたしは勇気を出してあの事を聞いてみた…
「…ありがとうハルヤくん…!それじゃあわたしプロポーズへのお返事はOKってこと?」
…しかしハルヤくんからは衝撃の一言が返ってきた…
「…そう言いたいところだがごめん…実はオレ、父さんの仕事の都合で卒園式が終わったらアメリカに引っ越すことになったんだ…」
「…えっ…そんな…」
わたしはその瞬間、メイクが落ちるほど何度も何度も泣き崩れたわ…やっと認めてもらえたと思ったのに卒園したら遠くへ行ってしまうなんて…
それでもわたしはお別れまでの間、少しでもハルヤくんに喜んでもらえるようにと毎日白塗りでの通園を続けたわ…
次第に他の子たちもわたしの姿を受け入れてくれるようになった…
でもハルヤくんがいなくなったら白塗りもやめようかなって考えてたの。もともとハルヤくんに振り向いてほしくて始めたから…
それから数か月後の卒園式。卒園式が終わったあとにクラスのみんなでアメリカに行くハルヤくんを送る会をやったの。その時最後にハルヤくんがわたしにこんな言葉をかけてくれて…
「まあや…オレからお願いがある…卒園したらお前は白塗りをやめようとしているという話を聞いた…どうかその白い顔をやめないでほしい!お前はこの先も白塗りを続けていけば周りから白い目で見られ続けるかもしれない。だがお前はオレのためにいくらバカにされてもそのスタイルを貫いた強さがある!そのメイクはお前が生み出した自分の世界観、白村まあやという世界観だ!自分の世界を大事にする人間はきっとどこかでそれが役に立つ日が来るって父さんがいってた!どうか白塗りをやめないでくれ!いつか日本に帰ってきたら白い顔のお前に会いたい…!」
「ハルヤくん…うん!いつかあなたと再開するときは、もっときれいで白い顔になってあなたの前に現れるわ!」
…こうしてハルヤくんとの約束を守るために今でもこうしてわたしは白塗りを続けているってワケ…
「…お前の顔にはそんな過去があったのか…ところでそのハルヤくんは今もアメリカにいるのか?今も連絡を取ったりしてるのか?」
「ええ、今もロサンゼルスで暮らしているわ。地元の少年野球チームに入っているの。お互い今もメールとかで連絡を取り合ったりしてるわ。こないだメールで来たんだけどね、夏休みに野球の交流試合で久しぶりに日本に来ることになったの。5年越しで約束を果たせるわ…」
「お!それは楽しみだな!…そういえばモモエにもあのメイクの理由を聞こうと思ったけど今日は帰っちゃったしな…」
「あの子にもわたしと同じぐらいファッションの裏にバックグラウンドがあるわ…でもそれはあの子の口から直接聞いたほうがいいと思うわ…」
「…わかった…そうしておくよ。」
白村まあや、自分の世界を貫くため今日も白い顔で街を歩き、授業に出る。
「おっ、来たぞ来たぞ、ファッションモンスターが…」「アイツらもよくあの格好で歩けるよな…」「やめなって、聞こえるよあの2人に…」
「お~っ、今日もウチらへのヤジから始まりましたか~もう慣れっこですけどね~まあやっち~?」
「罵詈雑言なんてわたしたちにはただのBGM…誰に何と言われようとわたしたちはわたしたちのファッションを貫く…それだけよモモエ…」
…周りからのヤジを気にせず堂々と校舎内に向かっていくこのふたりの名はヤマンバギャルの黒川モモエと白塗りに黒い唇のゴシックファッションの白村(はくむら)まあや。ふたりともこの独特のファッションで毎日登校している。依然もとある回で言及しているが、ファッションに関しては保護者様が校長に土下座で許可をいただいているのでご安心を。
6-2のみんなは彼女らのファッションを理解してくれているが、先ほどのまわりからの反応からも見て取れる通り、他の学年にはこのファッションに対して偏見の目を持つものも少なからずいる。近所の人からも驚かれたり指さされたりすることも多い。だが彼女らはそんなことを気にしないメンタルの持ち主である。
「モモエ、わたしたちが大切にすべきは…」
「わかってますって!『10人のアンチより1人のファン』でしょ?」
「そう…もし10人の人間からわたしたちのファッションにケチをつけられても、支持してくれる人がひとりでもいるならわたしたちは自分のファッションを貫き続ける…ほら、校舎の中にわたしたちのファンがお待ちよ…」
…彼女らに付きまとうのは罵詈雑言だけではない。校舎に入っていく彼女らを迎え入れたのは…
「キャ~!モモエ様のご降臨よ~!」「モモエ様~!こないだのヨーロッパ動画見ました~!」「まあや様~!今日も美しい白さでございます~!」「まあや様~!わたしも白く染めて~!」
ひとりどころか何人も何十人も駆け付けた彼女たちのファンによる黄色い声援。下駄箱前はまるでスポーツの日本代表選手が国際大会から帰国したときか、はたまたハリウッドスターが来日したときのような雰囲気となっていた。
だがここは学校。こうやってみんなが使う玄関という場で大騒ぎしていれば止めに入る人間はいるもので…
「コラ~お前ら!下駄箱前で騒ぐな!」
「す、すいません!!」
…生活指導の前田先生がすぐ飛んできて玄関にあふれかえったファンたちはあっという間に退陣。
その後前田先生はふたりにも問いただす。
「黒川!白村!…お前らのそのファッションは一応校長先生から許可をもらっているのは承知だが…オレはどうも腑に落ちない…もっとありのままの自分自身をさらけ出すべきだと思う!お前らふたりのそのファッションには理由があるのだろうが、偽りの化粧で塗り固められた自分ではなく本当の自分自身を出してみたらどうだ!?」
…どうやら前田先生はふたりのファッションを快く思っていないようだ。しかしテツならビビってしまう前田先生相手でもモモエとまあやは決してひるまない。
「偽り?ありのままの自分?わたしにとってはこの白い肌こそありのままの自分よ…たとえ全人類を敵に回しても譲る気はないわ…」
「マンバこそウチ!マンバこそ黒川モモエ!マンバじゃないウチなんて回らない回転ずしみたいなもんよ!…って最近はタッチパネル注文だけで回らないのもおおいけど…」
…白村まあやと黒川モモエ、たとえ己のファッションを否定されようが決してひるまず突き進む少女である。
「…結局お前らはそれでいくんだな…」
…前田先生はまだ腑に落ちない様子であった。
その日の中休みもふたりは教室で一緒の時間を過ごしていた。ジャンルは違えどお互いのファッションに理解と敬意をもつこのふたりは普段からよく遊んだりするなど仲の良さは本物。
「モモエ、あなたがこないだ送ってくれた『アフターヌーンティーのお供に聴きたい昭和歌謡ベスト10』のプレイリスト、いい選曲だったわよ…初めて聴く曲が多かったけど、オリビアを聴きながらがいちばんお茶の時間にぴったりだったわね…」
「おっ、気に入ってくれた?ありがとさ~ん!ウチも紅茶飲むときにはよく聴くのよ!…ところで今度GALDOUの企画でZOZOマリンでパフォーマンスすることになって、マリーンズの選手のこと勉強してるんだけど、なんだっけあの外国人…『ナカ』だっけ?あの人の応援歌ラスボス戦っぽくてカッコよくない?」
「ナカ…もしかしてソトのこと?」
「そう!ソト!!」
…ふたりはお互いを理解していく中で、お互いの趣味にも興味が出はじめてきたようだ。モモエは昭和歌謡好き、まあやは野球好きでロッテファンという見た目からは想像できない意外な趣味を持つ。
…そんな感じでふたりの会話が盛り上がっていたころ、教室に帝野先生が入ってきた。
「おっ、モモエにまあや、今日もふたりでお話かい?ホントに仲いいんだな!」
「ミカセン!そりゃあウチラの友情は永遠っしょ!…あ!もうこんな時間じゃん!…まあやっち、ウチこれからGALDOUのWeb企画の撮影があるからここでドロンさせていただきますわ~!」
…モモエは自信がモデルを務める雑誌の撮影のために早退。
「…そういえばそうだったわね…撮影楽しんで頑張ってね…」
モモエが教室を後にした直後、先生はまあやにあることを聞き始めた。
「まあや、お前はいつもモモエと一緒にいるよな。やっぱりジャンルは違えどファッションで己の道を究めるところに共感したのか?」
「ええ。あの子もわたしも自分のファッションに誇りを持っている…そこにシンパシーを感じたのよ…わたしもあの子も自分のファッションを周りから白い目で見られたりしてきた過去があった…でもどんな目で見られようとも自分は自分のスタイルを貫く…ファッションスタイルは違えど、自分の世界を貫くという精神が合致したことにおたがい共鳴したのよ…」
「…やっぱり理解者がいるって心強いよな…ところでお前が白塗りを始めたきっかけって何なんだ?」
「きっかけね…それはわたしが幼稚園年長の頃にさかのぼるわ…」
まあやは自分が白塗りを始めたきっかけを話し始める。
…その頃のわたしはクラスでも目立たなくて恥ずかしがり屋でおとなしい性格だったわ…そんなわたしにも好きな男の子がいたの。名前はハルヤくん…スポーツが得意で同年代とは思えないぐらい博識で大人びた子で男子とも女子とも仲のいい子だったわ…ずっと片思いで遠くから見ているだけで告白する勇気が出なかったけど、ある日わたしは勇気を出してハルヤくんに直接ラブレターをわたして告白することにしたわ…
「ハルヤくん…これ…お家帰ってから読んで!」
…そしたら翌日、ハルヤくんにこう言われて…
「まあや…気持ちは嬉しいが正直言ってオレは今のお前に魅力が感じられない…今のお前には個性がない…だから今はお前の気持ちにこたえてやることはできない…ごめん…オレは個性的で挑戦的なヤツが好きなんだ…」
ハルヤくんからの返事は6歳のわたしにはかなりきつく刺さるものだった…その日の帰宅後、わたしは何度も何度も泣きながら叫んだわ…
「…個性って何よ!魅力って何よ!どうすれば出せるの!?どうすれば魅力的な人間になれるの!?」
何度も何度も泣き崩れるわたし…悔しさと理解に苦しむさなか涙でかすんだ視界のなかに入ってきたのは家に飾ってあったおばあちゃんの代から大切にしてあるフランス人形…雪のように真っ白な肌に鋭くも美しい目つき…わたしはその美しさからヒントを得たわ…
「…あなたのように白くて力強くて美しい姿になれば、ハルヤくんも認めてくれるかな…」
…思い立ったらすぐ実行。わたしは日舞をやっていたおばあちゃんからおしろいなどの化粧品を借りて、人形のような白い肌の少女に生まれ変わったわ…
「…美しい…わたしじゃないみたい…これならハルヤくんも…」
「…そんな経緯があったのか。それでお前はその格好で幼稚園に行ったのか?」
「ええ、もちろん最初にこの顔になった時は両親も驚いてもちろん反対されたけど、おばあちゃんは理解してくれて、周りの反対を押し切って翌日さっそく白塗りで通園したわ…もちろんクラスメイトからは白い目で見られていたけど…」
「えっ!?どうしたのまあやちゃん…」「まるで妖怪じゃねーかw」「離れろ!妖怪に食われるぞ!」「うちの幼稚園にあんなバケモノみたいな女いたっけ?www」「なに?まあやお笑いやるの?そのためのメイク?」
…やっぱり変だったのかな?わたしが迷っていた中、唯一この姿を認めてくれたのが…
「まあや、それだよ!ちょっとやりすぎ感もあるけど、オレは自分の個性を出すためなら何でもやるようなその挑戦的な精神が大好きだぜ!白い顔のお前はいつもより輝いている!」
「…ハルヤくん…!」
…ハルヤくんだけがクラスで唯一認めてくれた。喜んだわたしは勇気を出してあの事を聞いてみた…
「…ありがとうハルヤくん…!それじゃあわたしプロポーズへのお返事はOKってこと?」
…しかしハルヤくんからは衝撃の一言が返ってきた…
「…そう言いたいところだがごめん…実はオレ、父さんの仕事の都合で卒園式が終わったらアメリカに引っ越すことになったんだ…」
「…えっ…そんな…」
わたしはその瞬間、メイクが落ちるほど何度も何度も泣き崩れたわ…やっと認めてもらえたと思ったのに卒園したら遠くへ行ってしまうなんて…
それでもわたしはお別れまでの間、少しでもハルヤくんに喜んでもらえるようにと毎日白塗りでの通園を続けたわ…
次第に他の子たちもわたしの姿を受け入れてくれるようになった…
でもハルヤくんがいなくなったら白塗りもやめようかなって考えてたの。もともとハルヤくんに振り向いてほしくて始めたから…
それから数か月後の卒園式。卒園式が終わったあとにクラスのみんなでアメリカに行くハルヤくんを送る会をやったの。その時最後にハルヤくんがわたしにこんな言葉をかけてくれて…
「まあや…オレからお願いがある…卒園したらお前は白塗りをやめようとしているという話を聞いた…どうかその白い顔をやめないでほしい!お前はこの先も白塗りを続けていけば周りから白い目で見られ続けるかもしれない。だがお前はオレのためにいくらバカにされてもそのスタイルを貫いた強さがある!そのメイクはお前が生み出した自分の世界観、白村まあやという世界観だ!自分の世界を大事にする人間はきっとどこかでそれが役に立つ日が来るって父さんがいってた!どうか白塗りをやめないでくれ!いつか日本に帰ってきたら白い顔のお前に会いたい…!」
「ハルヤくん…うん!いつかあなたと再開するときは、もっときれいで白い顔になってあなたの前に現れるわ!」
…こうしてハルヤくんとの約束を守るために今でもこうしてわたしは白塗りを続けているってワケ…
「…お前の顔にはそんな過去があったのか…ところでそのハルヤくんは今もアメリカにいるのか?今も連絡を取ったりしてるのか?」
「ええ、今もロサンゼルスで暮らしているわ。地元の少年野球チームに入っているの。お互い今もメールとかで連絡を取り合ったりしてるわ。こないだメールで来たんだけどね、夏休みに野球の交流試合で久しぶりに日本に来ることになったの。5年越しで約束を果たせるわ…」
「お!それは楽しみだな!…そういえばモモエにもあのメイクの理由を聞こうと思ったけど今日は帰っちゃったしな…」
「あの子にもわたしと同じぐらいファッションの裏にバックグラウンドがあるわ…でもそれはあの子の口から直接聞いたほうがいいと思うわ…」
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