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第5話 つぼみちゃんも石嶺家も危機一髪です。

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ダイゴとつぼみがゲーセンで兄弟仲良く楽しんでいた中、ついに周りの人たちから必死に隠していたつぼみの正体が悟られ始める…
ダイゴはこのピンチをどう切り抜けるか?

「…やっぱりあの子つぼみちゃんだよね?」「サングラスかけてるけど声といい、年恰好といい、もうつぼみちゃんにしか見えないよ…」
ダイゴ「ああ…さっきより一層騒がしくなってきた…こりゃゲームどころじゃないぜ…早くこの場を離なければ…
なあみーちゃん、ゲームはいったんやめにしてお菓子買いに行こうか!」
「え~!いまいいところなのに~!メダルがっぽりのチャンスが来てるんだよ?目の前のチャンスは常につかみに行けって演技のレッスンの先生からいっつも言われてるのに…」
「こ、こら!レッスンとか今は言っちゃダメ!ややこしいことになるから…」
「今、演技の先生って言ったよな?」「子役とか劇団とかに入ってる子じゃなきゃそんなこと言わないわよね…」
「じゃあやっぱりあの子は…」
「ほらね…ややこしいことに…でもみーちゃん、他に順番が空くのを待ってる人もいるからずっとやってるわけにもいかないでしょ?メダルはメダルバンクに預ければ今度来たときまた遊べるから…」
「え~!ま、まだ遊んでたいのにぃ…」
『泣きのつぼみ』の異名を持つつぼみはお得意の泣きの演技…というかこの場合はガチ泣き、そう、本物の涙でダイゴを説得させようとする…
「でもみーちゃん、ゲームが長引くとお昼ご飯も食べられなくなるかもしれないから…」
「お兄ちゃんのバカ~ッ!!お兄ちゃんなんか大嫌い~!」
つぼみは泣きながらひとりゲーセンから出て行ってしまった…
「あっ!コラ!待って…」
ダイゴはつぼみを必死に追いかけた、しかしつぼみはすぐさまダイゴの視界から消えてしまった…

「みーちゃん!どこに行った!みーちゃん…オレの妹…家族…」
必死につぼみを探すダイゴ、そんな中買い物を終えた夫婦チームに出くわす…
ケイコ「あらダイゴくん!そろそろお昼に…あら?みーちゃんは?」
「ケイコさん!それが…かくかくしかじか…」
ケイコ「えっ!?それは大変!私たちも今すぐ探しましょう!」
コテツ「いや、ダイゴはここで待ってろ…ダイゴ!オマエしっかり兄ちゃんの責務果たすって言ったよな!?それなのにこんな事態を招くなんてお前はアニキ失格だ!お前にみーちゃんを探す資格はない!」
ダイゴ「お、親父!?…そうさ、オレはみーちゃんのアニキ失格さ…しつけも面倒見も説得もしっかりできずに妹を怒らせて逃がしてしまうなんて…所詮オレはアニキの器じゃなかったんだよ…ほっとくなりなんなり好きにするがいいさ!」
ケイコ「コテツさん!今のはさすがに言いすぎよ…ダイゴくんだってあの時はみーちゃんを守るためにゲーセンから引こうとしたのよね。ダイゴくんだってお兄ちゃんとしてみーちゃんを守るための行動だったのよ。それが裏目に出てしまったことには責任を感じているはずだわ。私たちは家族よ!どんな時もかけてはならないわ!みーちゃんを無事見つけたからって、ダイゴくんというピースがかけてはならないわ!ダイゴくんも家族よ!」
コテツ「すまない…ケイコさん、ダイゴ…みんなでみーちゃんを探しに行こう!我々は家族だ!」
ダイゴ「親父…!オレもカッとなってすまなかった…このモールは広いから手分けして探そう!みーちゃんはもしかしたら西館のほうや別のフロアに行ってるかもしれない!オレは西館を探すから親父たちはこの東館をさがしてくれ!」
コテツ「了解!」
ケイコ「頼りにしてるわよお兄ちゃん!」

そのころゲーセンを抜け出しひとりモール内を走っていたつぼみは…
「もう…お兄ちゃんなんか知らない…!…っていったものの…ここは…どこ?もしかして西館のほうに来ちゃった?どうしよう…やっぱりみんなのところに戻らないと…でもみんながどこにいるかわからないよ~!」
縁起でもこんなに流さないだろうというぐらいの量の大粒の涙を流すつぼみ…そのとき彼女の前にひとりの男子学生が…
「お嬢ちゃん、もしかして迷子かい?」
「うん…」
「それじゃあお兄ちゃんが一緒に探してあげよう!」
「あ…ありがとうございます!」
「じゃあ、ご家族の特徴は…」

時を同じくして、ダイゴも西館を疾走していた。推しにして愛する妹のために…
「4階まで来たが見つからねえ…みーちゃん…どこ行っちまったんだ…悪いヤツに誘拐されてなきゃいいんだが…いや、みーちゃんに限ってそんなことはないと信じたい…」
ダイゴは命をかけるように西館を駆け回ってたのだ。下の階から上の階まで…愛する妹に再び会うために…
「すみません!サングラスかけた幼稚園ぐらいの女の子見かけませんでしたか!?」
「ああ、サングラスをかけた女の子ならつい数分前に西館2階のアイス屋さんに中学生ぐらいの男の子と一緒にアイス選んでたよ。誰かを探してたみたいだけどお兄ちゃん心当たりあるのかい?」
「その子はオレの大事な人です!おばあちゃん情報ありがとうございました!」
ダイゴは情報を頼りに急ぎ足でエスカレーターをくだり、2階へ向かう。だが彼の中には不安材料が残っていた…
「みーちゃん、まさかその男にアイスおごってもらって”ダイゴお兄ちゃんなんかよりこっちのお兄ちゃんのほうがいい~!”なんて言ってしまわないだろうか…」

そして2階のアイス屋さんではまさにつぼみと男子学生がアイスを食べていた。
「ご家族見つからねえな…まあこれたべて元気だしな!オレのおごりだ!食べたらまた探しに行こう!」
「あ、ありがとうございます…」
つぼみは涙を流しながらアイスを口にする。
「美味しい…お兄ちゃんにも食べさせてあげたい…早く会いたいよ…ダイゴお兄ちゃん…大事な家族…」
ダイゴ「あっ!みーちゃん!ずっと探してたぞ!」
「お兄ちゃん!会いたかった!ごめんなさいかってに逃げ出して…!」
「いいんだ…お前にまた会えただけでよかった…!親切な人にもエスコートしてアイスまでおごってもらって…ってエスコートしてくださっていたお前はソウジ!」
つぼみをエスコートしていたこの男子学生はダイゴのクラスメイトである町田ソウジであった。
「あっ!よく見たらダイゴじゃねーか!お前が最後に学校に来た時以来だから1カ月とちょっとぶりだな!そろそろ学校に行く気になったか?」
「ええい!みーちゃんをエスコートしてアイスまでおごってくれたことは感謝するが学校の話はここではよせ!感動の再開シーンの時に思い出したくねーんだ!」
「はいはいよしてあげますよ!よしてあげますけど…このみーちゃんって子の関係性についてはよすわけにはいかないな…お前確か一人っ子なうえに父子家庭だったよな?だけどこいつはお前をお兄ちゃんって、大事な家族って呼んでたぞ?お前の家族になんかあったのか?」
「さ、再婚したんだよ親父が…そんでもってみーちゃんはその再婚相手の娘ってワケだ。いいか!このことはオレが今度学校に行く時まで黙っとけよ!本当はオレの口からクラスのみんなに話すつもりだったんだからな!」
「わかりましたよ!だがそのかわり口止め料だ…お前こないだニャインで言ってたポ〇カのアー〇レアオレにくれよ!あれダブったってたからいいだろ?」
「はいはいわかりましたよ!みーちゃんにアイスもおごってもらったしな!」
「お兄ちゃん、このお兄ちゃんと知り合いなの?」
「…まあ腐れ縁ってやつだ…悪いヤツではないがな。」
「悪いやつじゃないのはみーちゃんだってわかるよ!この人アイスおごってくれたし、お兄ちゃんを探してくれたもん!ありがとね、ソウジお兄ちゃん!」
「それじゃあ、戻ろうか!父ちゃんたちは東館3階にいるって連絡があった!2人で戻ろう家族のところへ!じゃ!ありがとなソウジ!」
「まった!オレも行くぜ!ご両親にしっかりあいさつしないと…」


その後、両親とも無事再開したつぼみとダイゴ。ソウジも一緒に
つぼみ「ごめんなさ~い!パパ、ママ!迷惑かけて…」
ケイコ「いいのよ、それよりも無事に戻ってきてくれてよかった…ソウジくんもありがとうございます!アイスまでおごってもらっちゃって…」
コテツ「こりゃソウジのほうがお兄ちゃんにふさわしいかもな!」
「コラ親父!感動の再開でそんなこと言うな!」
「冗談だよ冗談!お前もジョークのわかる人間にならんとアカンぞ!…それよりも動き回ってたらすっかり昼飯のこと忘れてたな…今からフードコートに行こう!ソウジくんも一緒にどうだ!みーちゃんを助けてくれたお礼におごってやるぞ!」
「ありがとうございます!ではお言葉に甘えて!何にしよーかなー!ラーメンかなーステーキかなー!」
ダイゴ「ソウジ、言っとくけど少しは遠慮して安いメニューにしとけよ!お前は遠慮って言葉を知らないんだから…」
コテツ「ハハハ!気にすんな!こいつは限られた小遣いからみーちゃんにアイスおごってくれたんた!今度はこっちがおごる番さ!」
騒動もひと段落し、石嶺家とソウジはにぎやかにフードコートへと向かっていった。

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