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1章

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浦太郎は兄である桃太郎の活躍と比較されることが多かった。
それゆえに、村の中では勉学体力も高い方ではあるのに「桃太郎よりは弱い」と比較されることがしばしばあった。
もちろん体力や勉学だって怠っているわけではない。
それでも村は「桃太郎の方がよかった」「桃太郎の方が正義感がある」などという人がいた。

「ねぇ桃太郎兄さん……僕は産まれてこない方がよかったのかなぁ?」

自暴自棄になる浦太郎を尻目に、黙り込む桃太郎。
自分のせいでい苦しんでいる弟に何かしてやれないかと思っていた。

「浦太郎はまだ若い…だから今度旅をしよう」

「え?でも桃太郎兄さんはこの村から出ていかないんでしょ?」


「浦太郎が元気になってくれればそれでいいんだ」

桃太郎のたった一人の弟である浦太郎は目から涙がこぼれ、気がついたら桃太郎に抱きついていた。

「桃太郎兄さん……桃太郎兄さん…ありがとう!」

桃太郎は知らない。
この決断が浦太郎の運命を変えることになることを……
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