べゼルシス・オンライン

雨霧つゆは

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32.道筋

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 私達がどうやって短期間でレベルを解放したのかについて経緯を説明した。

 まず始めにレベルについては誰しも行きつく疑問だと思う。RPG要素の強いVRMMOにレベルが存在しないのか不思議に思うはずだ。しかし、疑問に思ったとしても本当に存在するのか疑わしいところだ。レベルの情報が一切ない序盤ではまず存在を確かめるのは困難だろう。
 そこで私が活用したのがギルドだ。プレーヤーではないNPCが運営してるギルドになら情報があるかもと思って赴くと“確認されていない”と帰ってきたわけだ。はっきり言ってものすごく引っ掻かかる言い方だ。だが、この時私はレベルの存在を確信した。

 次にNPCのおすすめ通りスキルを習得しに行った。習得一回につき、十万程費用が掛かるのだがこの時の私達は運が良かった。

「というのも先着一名だけスキル費用を無料にしてくれるんですよ。それで私達はスキルを一つずつ習得したわけです」
「なるほどなぁ、そういうカラクリか」
「なるほど、それは私も知りませんでした。貴重な情報ありがとうございます」

 スキルを解放した私達はギルドにもう一度聞きに行った。するとクエストはプレーヤー画面のクエストから受けて下さいと案内があり、実際にクエスト欄を開くと解放クエストが表示されていた訳だ。あとはモンスターを指定数討伐して解放終了というのがこれまでの経緯だ。

「ふぅー……流石メルだなぁ、私達の中で一番見る目がある」
「当然」
「自信満々に言い切るところが腹立たしい、が認めざるを終えないな」
「そうですね」
「もしかしてですけど、今の言い方からして私達以外にも支援者っているんですか?」
「ふー、そこもお見通しか……そうだ、あんたら三人以外に私とサクヤが見極めた奴らと契約した。が、その中でも一番優秀だよあんたら」
「そうですね。それ以外にも古龍陣営の領主のやり方に不満を持つ方々が私達と共に妖精陣営へと来た人達が数名います。その人たちとも契約しています」

 思った通り私達以外にもサクヤさんに協力している人たちがいるようだ。寧ろいない方がおかしいレベルだろう。ある程度、支援者を集めないと今回は難しいはずだ。

「ある程度、自己紹介も終わったところで本題に入りましょう。領主選定の道筋、戦略を」

 ピリリと空気が緊張した気がした。

「始めに大まかな作戦を説明します。私達は一度だけ領主選定経験があります。その経験を元にチーム分けをします。まずモンスターを討伐してポイントを獲得するチーム。他の候補者からの妨害を防ぐチーム。他の候補者を妨害、そしてポイントを略奪するチーム、以上に分けます。チーム分けのメリットは、役割を与えることで非効率を避ける狙いです。それと連携や情報の錯綜を未然に防ぐ効果もあります」
「今のとこ、モンスターを討伐する係以外は何とかこっちで確保してる状況だ。んでそのモンスター討伐をあんた達にお願いしたい」
「私達がモンスター討伐をする役割ということですね。分かりました」
「それにとユーリさん、エリカさん、チカさんにはモンスター討伐と並行してレベルの上昇を行ってもらいます」
「レベルの上昇ですか?」
「はい。現状レベルは6まで確認してます。レベルを一つ上げることで他の追随を許さない程の差が生まれます。ちなみに私達はレベル3です」
「ああ、補足として古龍にいた時はレベル6だからな一応言っておくが」

 サクヤさん達は私達より二つも上だ。うすうす気づいていたがレベルはまだまだ上がる余地があるようだ。

「このレベルというシステムなのですが、自身よりレベルが高いプレーヤーには殆どと言っても過言ではないくらい勝てません。例えレベル3の私にユーリさん達レベル1プレーヤーが纏めて襲い掛かってきたとしてもまず私が勝ちます。それくらいこのレベルシステムは圧倒的で最も重要です」
「サクヤの言う通りこのレベルシステム圧倒的だ。レベルが高い奴にはまず勝てない。だが裏を返せばレベルが低い奴らには無敵というわけだ」
「そこで三人にはレベルをいち早く上げてもらいたいのです。もちろんレベルを上昇させる条件もお教えいたします」
「そこまでレベルって重要なんですね」

 レベルが高いプレーヤーにはまず勝てない。それほどまでに一レベルの差が大ききとは思いもよらなかった。となるとこれからはレベル上げを中心に立ち回っていかなければならないということか。

 私達三人の領主選定での役割は大きく二つ。モンスターを討伐すること、そしてレベルを上昇させてあわよくば他の候補者・支援者を倒すことだ。レベルが上がればそれだけで有利となる。
 レベル上昇させる条件についてはサクヤさんが教えてくれるらしいからとても有り難い。

「立候補期間が過ぎたら早速、レベル上げをお願いします」
「わかりました。それでレベル上げの条件ってなんでしょう?」
「レベル上げの条件は各番人を倒すことです。北の白の番人、東の山の番人、南の地の番人、西の森の番人をそれぞれ討伐すればレベルがあがります。討伐に際して武器防具を購入、オーダーメイドの資金援助はこちら持ちですので遠慮なく活用下さい」
「あぁ、えぇっと、その……」
「質問は受け付けますよユーリさん」
「いえ、実は……森の番人はつい数時間前に倒しちゃいまして」
「……」
「マジかよ」
「驚き」

 本日二度目の驚きを見せたサクヤさんたち。これにはメルさんも驚きを隠せないようだった。

「つくづくメルには勝てねーなぁ」
「そうですね、降参です」
「当然」
「お前も驚いていただろーが。なに行けしゃあしゃあと、“当然”とか抜かしてんだよ」
「私は最初から予想してた。少しだけ予想から外れてただけ。殆どは予想の範疇」

 タツキさんとメルさんの間で険悪な雰囲気が漂い始めた。

「二人とも、そこまでです」
「……ふぅー」
「……」
「すみませんでした……それはそうと、まさか森の番人を討伐していらっしゃるとは驚きです。初期武器じゃまず無理でしょうから、武器を新調したとしても数十万メタはするくらいの性能の武器が必要なはずですが……序盤でこれほどとは恐れ致しました」

 ホムラ石を売って稼いでいることについては黙っていることにした。サクヤさん達にして見ればあぶく銭かもしれないが私達の貴重な収入源なのだ。そうやすやすと教える訳にはいかない。

「いえいえ」
「それはさて置き、ユーリさん達には残り三体の番人を討伐してもらいます。それと選定期間中は例え妖精陣営のプレーヤーだとしても注意してくださいね。PvP判定がありますので」
「わかりました」

 そう、サクヤさんの言う通り、期間中は同じ陣営でもPvP判定がある。領主選定イベントに参加しているプレーヤーという限定つきではあるが味方の陣営だからといって油断すると不意に攻撃を受けることになるだろう。
 万が一、倒されでもしたらサクヤさんの総ポイントの五%から十パーセントが奪われ、足を引っ張ることになる。そうならない為にも注意が必要だ。しかし、だからといって卑屈になる必要はない。なぜなら私達はレベルを解放しているからだ。

 話によるとサクヤさん達でも二カ月は掛かったらしい。それを十日ほどで解放した私達は相当運が良かったのだろう。それを踏まえると大概のプレーヤーに襲われても返り打ちに出来る可能性が非常に高い。始めたばかりのプレーヤーに対してはほぼ無双出来る。
 だが、一番気を付けなければいけないのがサクヤさん達同様に他の陣営から来たプレーヤーだ。先行組はレベル上げの条件や効率のいいメタ集めの情報なんかも持っている。間違いなく私達よりレベルが高い。そんなプレーヤーに狙われないよう行動しなくちゃならない。

 ともあれ私達の当分の目標は残りの番人を討伐することだ。
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