7 / 23
スキルポイント
しおりを挟む
いい匂いがする。何かを焼いている匂いだ。ああ、そうだ。ウルフの群れに襲われたんだっけ。そこで意識を失って――
「はっ、はっ、はあ」
目が覚めた。ここはどこだ?
「よお、目覚めたかアキラ」
体を起こすと、そこには闇夜に浮かぶマサムネさんがいた。夜なのになぜ、姿がはっきり見えるんだ? その謎は一瞬で解けた。近くに焚火があり、周りに魚が串刺しにされている。
「ほら、落ち着いたらこれでも食いな。食料はこれっきりだが、HPを回復するのには十分な量だ」
彼はすでに魚をほおばっていた。
そうだ、僕たちはサンダーをまともにくらった。全身の傷がそれを物語っている。次にいつ襲われるか分からない。早くHPを回復しなくては。
「それにしても散々だったな。まさか、『スリープ』の残数がゼロだったとは。言わなかったお前にも非があるが、腕試しに使わせた俺にも非がある。まあ、今回はいい勉強になったな。スキルの残数はちゃんと管理するってな。ウルフの群れだったからよかったが、もっと上の敵だったら、今頃お陀仏だったな」
「いえ、あれは僕のミスです。調子に乗って『スリープ』を使い過ぎました。強力すぎる魔法の力に溺れていたんです……」
それは事実だ。僕は天狗になっていた。「スリープ」があるから無敵だと。雑魚相手に乱発しすぎた。これからは雑魚相手には他の魔法で対抗しなくては。
「まあ、自分を責めすぎるな。なあに、俺は剣士だ。剣があれば技を使わなくても雑魚相手ならなんとかなる。この鍛えた体も無駄じゃなかったわけだ」
剣士と魔法使い。それぞれに得手不得手がある。せっかくパーティーを組んだんだから、互いに補い合えばいいのだ。
「ああ、そうだ。不親切なこのゲームのことだ、もしかしたらスキルポイントの話は聞いてないか?」
「スキルポイント?」
「そうさ。スキルポイントはゲーム開始時に何点か付与されている。俺はテストプレイヤーだったから、通常のプレイヤーが最初にどれだけ持っているか分からねぇ。ちょいとブレスレットを見せな」
そう言うとマサムネさんが左腕を覗き込む。
「なるほど、今はスキルポイントが八点だな。確かアキラの手持ち魔法は『サンダー』、『ファイヤー』、『アイス』に『スリープ』だったな。お、『テレポート』もあるな。スキルポイントってのはな、すでに取得している技を強化できるんだ」
「ってことは『スリープ』も強化できるんですね!」
「それは違うな」
マサムネさんが首を振る。
「『スリープ』だけは例外だ。強すぎるが故に強化は許されていない。テスターが『スリープ』を連発しすぎたんだ。それ以来調整が入って、『スリープ』にも下方修正がはいった。格上の相手に使うには弱らせる必要がある」
「じゃあ、他の技にスキルポイントを振るんですか?」
「そういうこと。例えば『アイス』にポイントを振れば上位魔法の『ブリザード』が使えるようになる。まあ、一点集中で技を極めるもよし、バランスよくふるもよし。プレイヤー個人の好みがでるな」
僕は手元のブレスレットを見る。「テレポート」、これは攻撃技ではないが便利そうだ。
「ちょっと待った! 『テレポート』はダメだ」
僕の腕を強く掴む。
「え、何でですか?」
「それはな、『テレポート』で移動できる距離には限界があるんだ」
「それでも便利じゃないですか?」
「移動できる距離は扱う人のレベルに依存するからだ。レベルが低いうちにポイントを振っても十メートル先に移動するのが限界だ。魔法使いのテスターがバランスよくスキルポイントを振って失敗したんだ。このゲームの作成者はユーザーに有利なバグは下方修正するが、ユーザーに不利な仕様は改善しない」
とんでもない作成者だ。このゲーム、バランスが偏り過ぎている。こんな作品をプレイするところだったのか。いや、現在進行形でプレイしていた。
「まあ、最初のうちはバランスよく振るのがおススメだな。敵にはそれぞれ弱点がある。弱点をつけば有利にバトルを展開できる」
なるほど、技も敵との相性で使い勝手が変わるのか。
僕は均等にスキルポイントを振り分けた。
「さて、問題は商人といつ会えるかだな。俺たちには手持ちの食材もないし、ポーションもない。しかし、こればかりは運だからなぁ」
マサムネさんが芝生に寝転ぶ。
「一つ質問いいですか?」
「おう。俺の知っていることなら、なんでも答えてやるぞ」
「僕たちって歩いて移動するためにも、食料がないと動けないんですか? 前にソロだったころ、歩き続けたのに食べもしないでいつまでも歩けたので」
迫りくる淵から逃げていたことを思い出す。
「ああ、それか。食材はあくまでHPを回復する手段だ。普通に動く分には腹は減らない。さすがに作成者もそこまで酷な仕様にはしなかったみたいだ。まあ、そこまでされちゃあゲームとして成り立たないしな」
一安心した。明日以降も商人を探して歩けば、きっとどこかで会える。僕も芝生に寝転がると、夜空に浮かぶ星々を見つめた。明日はいい日になりますように。
「スリープ」の使用可能回数、残り三回。
「はっ、はっ、はあ」
目が覚めた。ここはどこだ?
「よお、目覚めたかアキラ」
体を起こすと、そこには闇夜に浮かぶマサムネさんがいた。夜なのになぜ、姿がはっきり見えるんだ? その謎は一瞬で解けた。近くに焚火があり、周りに魚が串刺しにされている。
「ほら、落ち着いたらこれでも食いな。食料はこれっきりだが、HPを回復するのには十分な量だ」
彼はすでに魚をほおばっていた。
そうだ、僕たちはサンダーをまともにくらった。全身の傷がそれを物語っている。次にいつ襲われるか分からない。早くHPを回復しなくては。
「それにしても散々だったな。まさか、『スリープ』の残数がゼロだったとは。言わなかったお前にも非があるが、腕試しに使わせた俺にも非がある。まあ、今回はいい勉強になったな。スキルの残数はちゃんと管理するってな。ウルフの群れだったからよかったが、もっと上の敵だったら、今頃お陀仏だったな」
「いえ、あれは僕のミスです。調子に乗って『スリープ』を使い過ぎました。強力すぎる魔法の力に溺れていたんです……」
それは事実だ。僕は天狗になっていた。「スリープ」があるから無敵だと。雑魚相手に乱発しすぎた。これからは雑魚相手には他の魔法で対抗しなくては。
「まあ、自分を責めすぎるな。なあに、俺は剣士だ。剣があれば技を使わなくても雑魚相手ならなんとかなる。この鍛えた体も無駄じゃなかったわけだ」
剣士と魔法使い。それぞれに得手不得手がある。せっかくパーティーを組んだんだから、互いに補い合えばいいのだ。
「ああ、そうだ。不親切なこのゲームのことだ、もしかしたらスキルポイントの話は聞いてないか?」
「スキルポイント?」
「そうさ。スキルポイントはゲーム開始時に何点か付与されている。俺はテストプレイヤーだったから、通常のプレイヤーが最初にどれだけ持っているか分からねぇ。ちょいとブレスレットを見せな」
そう言うとマサムネさんが左腕を覗き込む。
「なるほど、今はスキルポイントが八点だな。確かアキラの手持ち魔法は『サンダー』、『ファイヤー』、『アイス』に『スリープ』だったな。お、『テレポート』もあるな。スキルポイントってのはな、すでに取得している技を強化できるんだ」
「ってことは『スリープ』も強化できるんですね!」
「それは違うな」
マサムネさんが首を振る。
「『スリープ』だけは例外だ。強すぎるが故に強化は許されていない。テスターが『スリープ』を連発しすぎたんだ。それ以来調整が入って、『スリープ』にも下方修正がはいった。格上の相手に使うには弱らせる必要がある」
「じゃあ、他の技にスキルポイントを振るんですか?」
「そういうこと。例えば『アイス』にポイントを振れば上位魔法の『ブリザード』が使えるようになる。まあ、一点集中で技を極めるもよし、バランスよくふるもよし。プレイヤー個人の好みがでるな」
僕は手元のブレスレットを見る。「テレポート」、これは攻撃技ではないが便利そうだ。
「ちょっと待った! 『テレポート』はダメだ」
僕の腕を強く掴む。
「え、何でですか?」
「それはな、『テレポート』で移動できる距離には限界があるんだ」
「それでも便利じゃないですか?」
「移動できる距離は扱う人のレベルに依存するからだ。レベルが低いうちにポイントを振っても十メートル先に移動するのが限界だ。魔法使いのテスターがバランスよくスキルポイントを振って失敗したんだ。このゲームの作成者はユーザーに有利なバグは下方修正するが、ユーザーに不利な仕様は改善しない」
とんでもない作成者だ。このゲーム、バランスが偏り過ぎている。こんな作品をプレイするところだったのか。いや、現在進行形でプレイしていた。
「まあ、最初のうちはバランスよく振るのがおススメだな。敵にはそれぞれ弱点がある。弱点をつけば有利にバトルを展開できる」
なるほど、技も敵との相性で使い勝手が変わるのか。
僕は均等にスキルポイントを振り分けた。
「さて、問題は商人といつ会えるかだな。俺たちには手持ちの食材もないし、ポーションもない。しかし、こればかりは運だからなぁ」
マサムネさんが芝生に寝転ぶ。
「一つ質問いいですか?」
「おう。俺の知っていることなら、なんでも答えてやるぞ」
「僕たちって歩いて移動するためにも、食料がないと動けないんですか? 前にソロだったころ、歩き続けたのに食べもしないでいつまでも歩けたので」
迫りくる淵から逃げていたことを思い出す。
「ああ、それか。食材はあくまでHPを回復する手段だ。普通に動く分には腹は減らない。さすがに作成者もそこまで酷な仕様にはしなかったみたいだ。まあ、そこまでされちゃあゲームとして成り立たないしな」
一安心した。明日以降も商人を探して歩けば、きっとどこかで会える。僕も芝生に寝転がると、夜空に浮かぶ星々を見つめた。明日はいい日になりますように。
「スリープ」の使用可能回数、残り三回。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。
しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった!
辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。
飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。
「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!?
元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる