13 / 23
邂逅
しおりを挟む
アリスたちと別れてしばらく、僕たちはモンスター狩りに勤しんでいた。レベルが上がれば、スキルも強くなる。当然、戦い方にバリュエーションがでる。好循環だ。
草原を歩いていた時だった。前方から旅人と思しき人がやって来る。見た感じ、NPCだろう。だが、旅人にしては普通と違った。別に風貌が変わっているわけではない。なのに、なにか違和感というか不安感を覚える。この人がアリスが忠告していた旅人に違いない。
「そこのお三方、オーラからするにお強いのだろう。ここはひとつ、わしと手合わせ願えんかの」
いくら練習とはいえ、NPCから戦いを挑んでくることがあるのだろうか。マサムネさんを見ると同じく困惑の表情を浮かべている。
「申し出はありがたいが、こちらは三人だ。いくらあんたが強くても、人数差で負けるのが見える。やめておきな」
「そうじゃろう。わしはぱっと見、冴えない老人じゃ。そう言われても仕方があるまい」
次の瞬間、老人の目が赤色に光る。
「しかし、これならどうかな?」
老人が姿形を変えると、そこに立っていたのは――魔王だった。
「二人とも逃げるぞ! 『プロテクト』!」
マサムネさんが素早く反応すると防御姿勢をとる。
「え、どういうこと? 魔王?」
ミホの反応も僕と同じで混乱している。魔王はラスボスのはずだ。
「おい、二人とも急いで離脱だ。相手が悪すぎる!」
「ほほう、そなたは判断力があるのう。さて、わしから逃げ切れるかな?」
「『スリープ』!」
反射的に叫ぶ。
「アキラ、『スリープ』は格上相手には効かない。相手は魔王だ。いいから離脱だ。俺がしんがりを務める!」
「分かりました! ミホ、少し揺れるぞ」
僕は自らミホを背負うと走りだす。
「ちっ、なんて運が悪いんだ。『シールドラッシュ』!」
「ほう、仲間のために犠牲になる気か? その心意気、評価しよう」
魔王はシールドの殴打をいともたやすく避けると手を挙げる。次の瞬間、マサムネさんを流星が襲う。あれは「メテオ」に違いない。でも、魔法を唱えていない。どういうことだ? マサムネさんは盾でなんとか凌いでいるが、これ以上は無理だ。魔法なら遠くからでも援護できる。
「『ブリザード』!」
これが今の僕にできる精一杯だ。が、魔王が手を横に振ると、あっさりと吹雪は止んでしまった。
「なるほど、前衛と後衛、きっちり役割分担をしているな。今までの雑魚とは違う」
「『スラッシュ』!」
マサムネさんの剣戟を魔王は受け止めるとこう言った。
「お前たちを倒すことは可能だ。だが、将来が楽しみな者を今始末するのは惜しい」
魔王は元の老人の姿に戻っていた。
「次に会うのが楽しみだ」
そう言うと魔王は去っていった。
「ねえ、あれどういうこと?」
ミホが「ヒール」で癒しながらマサムネさんに問う。
「魔王はラスボスのはずよ。なんでこんな序盤でエンカウントするわけ?」
「ミホ、答えは簡単だ。この世界は大地が刻一刻と変化している。当然、魔王の城があっても、いずれ支えている大地が消える。現にこの世界には町がないだろ。それと同じだ。魔王もまた城を持たない。いつか大地の淵がやってくるからな」
「それにしても、見逃してもらえてよかったよ」
「アキラの言うとおりだ。理由はどうであれラッキーだった。この情報は他のプレイヤーにも共有すべきだな。姿を伝えることで、逃げるという選択肢がとれる」
僕は思った。いつかあの魔王を倒すことができるのだろうか、と。
「スリープ」の使用可能回数、残り一回。
草原を歩いていた時だった。前方から旅人と思しき人がやって来る。見た感じ、NPCだろう。だが、旅人にしては普通と違った。別に風貌が変わっているわけではない。なのに、なにか違和感というか不安感を覚える。この人がアリスが忠告していた旅人に違いない。
「そこのお三方、オーラからするにお強いのだろう。ここはひとつ、わしと手合わせ願えんかの」
いくら練習とはいえ、NPCから戦いを挑んでくることがあるのだろうか。マサムネさんを見ると同じく困惑の表情を浮かべている。
「申し出はありがたいが、こちらは三人だ。いくらあんたが強くても、人数差で負けるのが見える。やめておきな」
「そうじゃろう。わしはぱっと見、冴えない老人じゃ。そう言われても仕方があるまい」
次の瞬間、老人の目が赤色に光る。
「しかし、これならどうかな?」
老人が姿形を変えると、そこに立っていたのは――魔王だった。
「二人とも逃げるぞ! 『プロテクト』!」
マサムネさんが素早く反応すると防御姿勢をとる。
「え、どういうこと? 魔王?」
ミホの反応も僕と同じで混乱している。魔王はラスボスのはずだ。
「おい、二人とも急いで離脱だ。相手が悪すぎる!」
「ほほう、そなたは判断力があるのう。さて、わしから逃げ切れるかな?」
「『スリープ』!」
反射的に叫ぶ。
「アキラ、『スリープ』は格上相手には効かない。相手は魔王だ。いいから離脱だ。俺がしんがりを務める!」
「分かりました! ミホ、少し揺れるぞ」
僕は自らミホを背負うと走りだす。
「ちっ、なんて運が悪いんだ。『シールドラッシュ』!」
「ほう、仲間のために犠牲になる気か? その心意気、評価しよう」
魔王はシールドの殴打をいともたやすく避けると手を挙げる。次の瞬間、マサムネさんを流星が襲う。あれは「メテオ」に違いない。でも、魔法を唱えていない。どういうことだ? マサムネさんは盾でなんとか凌いでいるが、これ以上は無理だ。魔法なら遠くからでも援護できる。
「『ブリザード』!」
これが今の僕にできる精一杯だ。が、魔王が手を横に振ると、あっさりと吹雪は止んでしまった。
「なるほど、前衛と後衛、きっちり役割分担をしているな。今までの雑魚とは違う」
「『スラッシュ』!」
マサムネさんの剣戟を魔王は受け止めるとこう言った。
「お前たちを倒すことは可能だ。だが、将来が楽しみな者を今始末するのは惜しい」
魔王は元の老人の姿に戻っていた。
「次に会うのが楽しみだ」
そう言うと魔王は去っていった。
「ねえ、あれどういうこと?」
ミホが「ヒール」で癒しながらマサムネさんに問う。
「魔王はラスボスのはずよ。なんでこんな序盤でエンカウントするわけ?」
「ミホ、答えは簡単だ。この世界は大地が刻一刻と変化している。当然、魔王の城があっても、いずれ支えている大地が消える。現にこの世界には町がないだろ。それと同じだ。魔王もまた城を持たない。いつか大地の淵がやってくるからな」
「それにしても、見逃してもらえてよかったよ」
「アキラの言うとおりだ。理由はどうであれラッキーだった。この情報は他のプレイヤーにも共有すべきだな。姿を伝えることで、逃げるという選択肢がとれる」
僕は思った。いつかあの魔王を倒すことができるのだろうか、と。
「スリープ」の使用可能回数、残り一回。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。
彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。
剣も魔法も得意ではない主人公は、
最強のメイドたちに守られながら生きている。
だが彼自身は、
「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。
自分にできることは何か。
この世界で、どう生きていくべきか。
最強の力を持つ者たちと、
何者でもない一人の青年。
その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。
本作は、
圧倒的な安心感のある日常パートと、
必要なときには本格的に描かれる戦い、
そして「守られる側の成長」を軸にした
完結済み長編ファンタジーです。
シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。
最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
外れスキル【畑耕し】で辺境追放された俺、チート能力だったと判明し、スローライフを送っていたら、いつの間にか最強国家の食糧事情を掌握していた件
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
勇者パーティーで「役立たず」と蔑まれ、役立たずスキル【畑耕し】と共に辺境の地へ追放された農夫のアルス。
しかし、そのスキルは一度種をまけば無限に作物が収穫でき、しかも極上の品質になるという規格外のチート能力だった!
辺境でひっそりと自給自足のスローライフを始めたアルスだったが、彼の作る作物はあまりにも美味しく、栄養価も高いため、あっという間に噂が広まってしまう。
飢饉に苦しむ隣国、貴重な薬草を求める冒険者、そしてアルスを追放した勇者パーティーまでもが、彼の元を訪れるように。
「もう誰にも迷惑はかけない」と静かに暮らしたいアルスだったが、彼の作る作物は国家間のバランスをも揺るがし始め、いつしか世界情勢の中心に…!?
元・役立たず農夫の、無自覚な成り上がり譚、開幕!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる