半グレ銀行マンの復讐と野望

愛国文恵

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復職通知

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やっと来たか――。

配達証明の速達封筒を、立夫は無言で受け取った。差出人は神戸本社。封を切る指先に、わずかな震えはあったが、顔には出さない。
紙を一読し、鼻で笑った。

「……復職を命ずる、だと?」

思わず声が漏れた。
「“命ずる”? どうかよろしくお願いいたします、やろが」

悪態をつきながらも、その顔は勝利に満ちていた。千賀子はそれを見て、胸をなで下ろす。だが次の行を読んだ瞬間、立夫の表情が曇った。

――営業部付。

「……気に食わんな」
低く呟く。
千賀子は、はっとして立夫の顔色を窺った。不満は明らかだった。

「千賀子、済まんがもう一度や」
立夫は顔を上げ、きっぱりと言った。
「部長と、交渉してくれ」

「……交渉?」
「そうや」
「俺たちは入籍した。姓も海棠や」
立夫は薄く笑う。
「お前ら、海棠家に歯向かって、ためになると思うか?――ってな」

冗談めかして言ったが、その目は冗談ではなかった。
「支店長にしてくれ、と言うんや」
「それ以外は、話にならん」

千賀子は息を呑んだ。
「……そんな」
「無理だと思うか?」

「……」
千賀子は、黙って首を振った。
「わかりました。行ってきます」

立夫は笑った。だが、その笑顔の裏で、千賀子の胸は締めつけられていた。
――この人は、本気だ。
――条件が整わなければ、切る。

せっかく結婚したのに。
それでも、立夫はそういう男だ。
千賀子は心底、恐れていた。復職が叶っても、支店長でなければ意味がないと、この男は本気で思っている。

「どうせな」
立夫は気軽に言った。
「部長から海棠に連絡はいくやろ」
「話は上で決まる。下は従うだけや」

千賀子は、ぎゅっと拳を握った。
「……でも」
「大丈夫や」
立夫は背中を押すように言った。
「とにかく、思い切り言ってこい」

千賀子は深く頷いた。
もう迷いはない。
この一歩で、夫の未来も、自分の覚悟も決まる。

「行ってきます」

玄関を出る背中を見送りながら、立夫はひとり、封書をテーブルに置いた。
――営業部付。
――仮の席や。

本命は、その先にある。
姫路支店長。
それ以外の椅子に、座る気はなかった。
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