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戦闘開始 市に乗り込む
しおりを挟む市庁舎。
エレベーターの扉が閉まる直前、立夫が口を開いた。
「ええか」
純子と明美が顔を向ける。
「説明はお前らがするんや」
低い声だった。
「図面も写真も、お前らが出せ。俺は最初から口出さん」
純子は黙ってうなずいた。明美も小さく息を整える。
立夫は続けた。
「最終のとどめは、俺が言う」
その言い方は静かだったが、決めつけるような強さがあった。
エレベーターが止まり、軽い音を立てて扉が開く。
三人は並んで歩き出した。
廊下の奥に、「開発指導課」と書かれた表示が見える。
純子が一歩前に出た。
明美がその横に並ぶ。
立夫は半歩だけ後ろを歩いた。
まるで最初から役割が決まっていたかのようだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
純子は窓口で言った。
「英賀保の駅前の土地なんですが、こちらで開発の許可を出していると聞いて来ました。進入道路との境界についてお伺いしたいんです」
窓口の男はパソコンを見てから、奥の棚へ向かった。
「えーと……場所は分かりました」
やがて、開発の全体図などが綴じられた分厚いファイルを持って戻ってくる。
カウンターの上にファイルを開いた。
純子が身を乗り出し、指で示した。
「ここです。この境界ラインについて、おかしいと思っています」
担当者は図面を見ながら言う。
「何が、どこがおかしいのですか?
官民の境界ラインも、皆さんの同意もあり、協定はできています」
純子は少し声を強めた。
「これ、本来は二・五メートルくらいでしょ。
なんで六メートルの道路になってるんですか? 道路って自然に広くなるんですか?」
担当者は小さく笑った。
「自然にはなりませんよ。これは道路にするために分筆して買収されています」
純子は首を振った。
「そうじゃないんです。
その境界がそれなのか、本人は知らないと言っています」
担当者は眉を寄せた。
「何をおっしゃっているのか、よく分かりませんが……この分筆ラインで同意したという捺印もあります。
こちらはそれで同意したということで処理しています」
純子は一歩も引かなかった。
「何度も言いますけど、それがおかしいと言ってるんですよ。
そんなものは知らない、と」
担当者は肩をすくめた。
「そう言われてもねえ。捺印がある以上……」
そのときだった。
それまで黙っていた立夫が、ゆっくり口を開いた。
「あんた、笑うとはどういうことや」
空気が止まる。
「こっちは真剣なんやで」
立夫はカウンターに手を置いた。
「立ち会った際に“ここや”と言われて押しただけやったら、
それを同意と言えるんか?」
担当者の表情が、わずかに変わった。
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