半グレ銀行マンの復讐と野望

愛国文恵

文字の大きさ
38 / 44

戦闘開始 市に乗り込む

しおりを挟む

市庁舎。

エレベーターの扉が閉まる直前、立夫が口を開いた。

「ええか」

純子と明美が顔を向ける。

「説明はお前らがするんや」

低い声だった。

「図面も写真も、お前らが出せ。俺は最初から口出さん」

純子は黙ってうなずいた。明美も小さく息を整える。

立夫は続けた。

「最終のとどめは、俺が言う」

その言い方は静かだったが、決めつけるような強さがあった。

エレベーターが止まり、軽い音を立てて扉が開く。
三人は並んで歩き出した。

廊下の奥に、「開発指導課」と書かれた表示が見える。

純子が一歩前に出た。
明美がその横に並ぶ。
立夫は半歩だけ後ろを歩いた。

まるで最初から役割が決まっていたかのようだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

純子は窓口で言った。

「英賀保の駅前の土地なんですが、こちらで開発の許可を出していると聞いて来ました。進入道路との境界についてお伺いしたいんです」

窓口の男はパソコンを見てから、奥の棚へ向かった。

「えーと……場所は分かりました」

やがて、開発の全体図などが綴じられた分厚いファイルを持って戻ってくる。

カウンターの上にファイルを開いた。

純子が身を乗り出し、指で示した。

「ここです。この境界ラインについて、おかしいと思っています」

担当者は図面を見ながら言う。

「何が、どこがおかしいのですか?
官民の境界ラインも、皆さんの同意もあり、協定はできています」

純子は少し声を強めた。

「これ、本来は二・五メートルくらいでしょ。
なんで六メートルの道路になってるんですか? 道路って自然に広くなるんですか?」

担当者は小さく笑った。

「自然にはなりませんよ。これは道路にするために分筆して買収されています」

純子は首を振った。

「そうじゃないんです。
その境界がそれなのか、本人は知らないと言っています」

担当者は眉を寄せた。

「何をおっしゃっているのか、よく分かりませんが……この分筆ラインで同意したという捺印もあります。
こちらはそれで同意したということで処理しています」

純子は一歩も引かなかった。

「何度も言いますけど、それがおかしいと言ってるんですよ。
そんなものは知らない、と」

担当者は肩をすくめた。

「そう言われてもねえ。捺印がある以上……」

そのときだった。

それまで黙っていた立夫が、ゆっくり口を開いた。

「あんた、笑うとはどういうことや」

空気が止まる。

「こっちは真剣なんやで」

立夫はカウンターに手を置いた。

「立ち会った際に“ここや”と言われて押しただけやったら、
それを同意と言えるんか?」

担当者の表情が、わずかに変わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...