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8話 狙われてる?
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会議の間をサラさんといっしょに退室して、ろうそくの明かりが照らす薄暗い廊下を歩きながら私は体の節々が痛むのを感じた。
自分では意識していなかったけど、けっこう緊張していたんだ。
そりゃそうか。会社の朝礼でも小声でモソモソとしか話したことのない私が、国の大臣たちの前で啖呵を切ったのだから。
私は前を歩くサラさんに声をかけた。
「サラは私が国王代理になることを、どう思います?」
「よろしいかと存じます」
先に立って歩くサラさんは振り返ることもなく背中で応えた。賛成も反対もしていない中立の立場だと匂わせている。
「私は今まで通りレーナ様にお仕えするだけでございます」
うん、そうだね。サラさんはそれでいいと思う。
「ですが、大臣たちを従わせ、国を統治するのは大変ですよ」サラさんの声に抑揚はないけど、寡黙な侍女は私を案じているように思えた。
そう、確かに、私よりずっと大人でこの国のことを知ってる大臣たちを従わせるには、まだまだ国に関する知識が足りない。
だから。
「サラ、私はもっとこの国のことが知りたいのです。書類に書かれた情報ではなくて、生の姿のこの国を知りたいのです」
サラさんは、足を止め振り返ると、王女は何を言いたいんだ?みたいな目で私の顔を見た。
「私、お忍びで町に行ってはいけませんか?王女の身分を隠して、国を見てみたいのです」
これから国を統治しようっていうのに、私は自分の国の国民の姿さえ知らない。自分のこの目で民の暮らしをみてみたい。
そう、サラさんに訴えてみた。
「でしたら、王女として国の視察をされたらいかがですか」
サラさんは至極まっとうな返答をした。
「それも、いい考えだと思います。でも、衛兵に囲まれて、用意された場所で用意されたものしか見ないのでは、本当の国のありさまなど分かりません」
正直、微笑みを浮かべて、馬車の窓から国民に手をふるだけじゃ、国が今どうなってるかなんてわかるわけないと思う・・・もちろん、手をふるのも大切な王女の仕事だとは思うけど。
私の言葉に答えようと口を開きかけたサラさんだったが、ハッとしたように視線を私の後ろに向け、言った。
「ローマリウス様」
えっ?ローマリウス!?
あわてて後ろを振り返ると、そこに叔父のナビスが立っていた。
あっ、そうか。ローマリウスって叔父様の名でもあるんだった。まぎらわしい。
それにしても、いつの間に。
いくら廊下が薄暗いとしても、そばに来ていることさえ感じさせない、このうっすーい存在感はまるで・・・
まるで・・・そう、この異世界に来る前のOLの私だ。
「叔父様?」
「あ・・・あの・・・邪魔をしてごめん」叔父は小動物が鳴くような早口の小声で「一言、レーナちゃんに言いたくて」
周りの空気にさえ怯えてるいるような叔父は、ゴクリと息を飲むと
「さっきはびっくりした。レーナちゃんがあんなことを考えていたなんて思わなかった。でも、立派だったよ。兄上も義姉上もレーナちゃんの決断に喜んでいると思う」
えっ。
思ってもみない言葉だった。てっきり、不満を言いにきたのだとばかり。
「叔父様は賛成なの?私が国王代理になること」
「むろんだよ。私は頼りない叔父だけど、レーナちゃんの味方だからね。がんばるんだよ」
そこまで一気に言ってしまうと、逃げ出すように引き返していった。
その、小さな後ろ姿を呆気にとられて見送った後、私はじわじわと胸が温かくなった。
私の味方をしてくれるって・・・
100万の援軍とはいかないけど、一人でも味方になってくれる人がいたら心強い。
メガネをかけたネズミみたいだって思って申し訳なかったな。心の中で拝むように手を合わせる。
そして、再びサラさんのほうに向き直ると
「ねぇ、サラ、いいでしょう?叔父様のためにも、私、頑張りますから」
侍女はしばらく険しい顔で思案していたが、護衛をつけることを条件に町へ行くことを許してくれた。
翌日、蒸し鶏メインの朝食をたっぷり取った後、私は町へ行くための服に着替えた。というか、着替えさせられた。
身分がばれないように地味な黒い服で髪と顔の半分はベールで隠す。アラビアの女性風の衣装、と言ったら分かりやすいだろうか。
私をドレスで盛れなかった少女召使いたちはつまらなさそうだったけど。
でも、この世界に来て城以外の場所を見るのは初めてだし。
まるで遠足に行く前の小学生のように私の心は弾んでいた。
準備万端。さて、出かけようか、と気合が入ったところで、廊下から騒がしい音が聞こえた。
迎えの護衛だろうか、と思ったけど、それにしても騒々しい。
召使いに廊下の様子を見に行かせる前に、大きな音を立て乱暴に部屋の扉が開けられた。
「いけません。お戻りを。姫様のご許可をいただいていません」と、泣きそうな悲鳴を上げる若い女性の召使いを引きずるようにして、ドカドカと入ってきたのは、熊男のキリウスだった。
きょうは対峙(退治?)してくれる侍女のサラさんが所用でいない。
召使いたちが私をかばうようにキリウスの前に立ったけど。少女たちの体の震えが後ろ姿でもわかった。
可愛い女の子たちを肉食獣の餌食にするわけにはいかない。私がなんとかしなくちゃ。
「キリウス様。なにか御用でして?」
無礼な侵入者に精一杯の冷たい言葉を投げたけど、キリウスは気にも留めずに、召使いを押しのけて私の前に立った。
召使い達は私とキリウスを交互に見て、申し訳なさそうな視線を泳がせる。わかってる、召使いごときで肉食獣を止めることはできないって。
傍若無人な客は私のアラビアンナイトのような姿を無遠慮な目で見ると
「酔狂な衣装ですな。これからどこかにお出かけで?」
「あなたには関係ないでしょう」嫌悪を隠さずに私は言い捨てた。
「関係なくはない。私はあなたの婿候補だ」
まだ言うか、それ。
自分でも頭に血が上ったのが分かるくらい、ムカッときた。はすっぱな口調にならないように気を付けながら
「昨日言ったでしょう。私は誰とも結婚しません。国王代理になると決めました」
「姫に国王代理は無理だ。あなたのようなか弱い女の子が国を統治できるわけがない」
やっぱり、軽んじられてる。
確かにレーナ姫ならか弱くて可憐なお姫様なんだよね。きっと、国王になるよりお嫁さんを選んでいたに違いない。
たとえ、夫になる相手がどんな男でも唯々諾々と従ったのかもしれない。
でも、私はレーナじゃない。
「考え直して、どうか、姫、私と結婚を・・・いや、せめて婚約だけでも」
キリウスのどこか余裕のない焦りの滲む言葉に
「いーーーやっ!」私は即答した。
「私は好きでもない男性と結婚はできません」
ガックリという効果音が聞こえるくらいキリウスは落胆したようだった。何か言いたげな顔をしたが結局は何も言わずにマントを翻して出ていった。
これであきらめてくれたらいいんだけど・・・。私は暗澹とした気持ちになった。
それにしても、そんなに国王の座につきたいの?
好きでもない女を妻にしてまで?
平凡OLの私には国を統治したいっていう気持ちが、まったく理解ができない。
城下にある町は白い漆喰やレンガ造りの建物と石畳の道でできていて、思っていた以上に清潔感があった。中近東と古いヨーロッパの街を足して2で割った感じかな。
町から見る城の外観はドイツの有名な城に似ている。もちろん、外国旅行なんかしたことがない私は実物を見たことないんだけど。
ま、異世界も外国っていえば外国か。
市場は夕方の大型スーパーマーケット並の人出だった。
この2年間で税が5倍になって、重税にあえぎ、閑散と荒れた町になっているのではないかと心配したのは、漫画や小説の読みすぎだろうか。
パンクでモヒカンな人はどこにもいない。なんとなく、伝説の世紀末漫画を想像してた私は心底安堵した。
所狭しと露店が並んでいる路地を歩く。買う人、売る人の声でそれなりに賑やかだ。
肉や果物などの農作物、金物製品、得体のしれない骨董品、妖しい薬草類、どれも珍しくて見ているだけで心が浮き立つ。
サラさんが私の護衛につけた衛兵2人が、白い前開きシャツにズボンという一般的な町人の格好をして、周囲に目を光らせているのが見えた。
サラさんは2人では少ないと言い張ったが、ぞろぞろと護衛を引き連れてる女じゃかえって人目を引くって、がんばって説得した。
城の中だって始終、召使いや衛兵に見張られてるのだ。せめて町に来たときくらいは自由を味わっても罰は当たらないんじゃないか?
確かに城では物に関しては不自由はない。キレイなドレスを着て、美味しいものを食べて、フカフカのお布団に寝ている。贅沢な暮らしをしてるとは思うけど。
もとは現代人で庶民の私には窮屈なのだ、息が苦しくなることもあるのだ。
町の空気は自分に馴染んでいるみたいで心地いい。周りの人間の雑多な言葉を聞くのも気持ちいい。
ただ・・・
私はあたりを見回して首をかしげた。
なんで子供の姿が見えないんだろう?普通なら大人に連れられて買い物にきたり、路地を駆けたりするものじゃないんだろうか?
たしか、平民には学校ってなかったはず。子供たちはどこにいるんだろう。後でサラさんに聞けばわかるだろうか。
ふと、農作物の露店で見たことのない赤い果実が目に入った。
リンゴ?トマト?その中間のような形。味はどんなんだろう。
その果実を取ろうと手をのばしたとき。
腕が掴まれた。
えっ!?
驚いて横を見ると、私より頭一つ背の低い少年がいた。
華奢な体つきなのに、私の腕を掴む手は異常なほど強い。
「あの・・・なに?」
「おねーさん、狙われてる」少年が早口の小声で言った。
自分では意識していなかったけど、けっこう緊張していたんだ。
そりゃそうか。会社の朝礼でも小声でモソモソとしか話したことのない私が、国の大臣たちの前で啖呵を切ったのだから。
私は前を歩くサラさんに声をかけた。
「サラは私が国王代理になることを、どう思います?」
「よろしいかと存じます」
先に立って歩くサラさんは振り返ることもなく背中で応えた。賛成も反対もしていない中立の立場だと匂わせている。
「私は今まで通りレーナ様にお仕えするだけでございます」
うん、そうだね。サラさんはそれでいいと思う。
「ですが、大臣たちを従わせ、国を統治するのは大変ですよ」サラさんの声に抑揚はないけど、寡黙な侍女は私を案じているように思えた。
そう、確かに、私よりずっと大人でこの国のことを知ってる大臣たちを従わせるには、まだまだ国に関する知識が足りない。
だから。
「サラ、私はもっとこの国のことが知りたいのです。書類に書かれた情報ではなくて、生の姿のこの国を知りたいのです」
サラさんは、足を止め振り返ると、王女は何を言いたいんだ?みたいな目で私の顔を見た。
「私、お忍びで町に行ってはいけませんか?王女の身分を隠して、国を見てみたいのです」
これから国を統治しようっていうのに、私は自分の国の国民の姿さえ知らない。自分のこの目で民の暮らしをみてみたい。
そう、サラさんに訴えてみた。
「でしたら、王女として国の視察をされたらいかがですか」
サラさんは至極まっとうな返答をした。
「それも、いい考えだと思います。でも、衛兵に囲まれて、用意された場所で用意されたものしか見ないのでは、本当の国のありさまなど分かりません」
正直、微笑みを浮かべて、馬車の窓から国民に手をふるだけじゃ、国が今どうなってるかなんてわかるわけないと思う・・・もちろん、手をふるのも大切な王女の仕事だとは思うけど。
私の言葉に答えようと口を開きかけたサラさんだったが、ハッとしたように視線を私の後ろに向け、言った。
「ローマリウス様」
えっ?ローマリウス!?
あわてて後ろを振り返ると、そこに叔父のナビスが立っていた。
あっ、そうか。ローマリウスって叔父様の名でもあるんだった。まぎらわしい。
それにしても、いつの間に。
いくら廊下が薄暗いとしても、そばに来ていることさえ感じさせない、このうっすーい存在感はまるで・・・
まるで・・・そう、この異世界に来る前のOLの私だ。
「叔父様?」
「あ・・・あの・・・邪魔をしてごめん」叔父は小動物が鳴くような早口の小声で「一言、レーナちゃんに言いたくて」
周りの空気にさえ怯えてるいるような叔父は、ゴクリと息を飲むと
「さっきはびっくりした。レーナちゃんがあんなことを考えていたなんて思わなかった。でも、立派だったよ。兄上も義姉上もレーナちゃんの決断に喜んでいると思う」
えっ。
思ってもみない言葉だった。てっきり、不満を言いにきたのだとばかり。
「叔父様は賛成なの?私が国王代理になること」
「むろんだよ。私は頼りない叔父だけど、レーナちゃんの味方だからね。がんばるんだよ」
そこまで一気に言ってしまうと、逃げ出すように引き返していった。
その、小さな後ろ姿を呆気にとられて見送った後、私はじわじわと胸が温かくなった。
私の味方をしてくれるって・・・
100万の援軍とはいかないけど、一人でも味方になってくれる人がいたら心強い。
メガネをかけたネズミみたいだって思って申し訳なかったな。心の中で拝むように手を合わせる。
そして、再びサラさんのほうに向き直ると
「ねぇ、サラ、いいでしょう?叔父様のためにも、私、頑張りますから」
侍女はしばらく険しい顔で思案していたが、護衛をつけることを条件に町へ行くことを許してくれた。
翌日、蒸し鶏メインの朝食をたっぷり取った後、私は町へ行くための服に着替えた。というか、着替えさせられた。
身分がばれないように地味な黒い服で髪と顔の半分はベールで隠す。アラビアの女性風の衣装、と言ったら分かりやすいだろうか。
私をドレスで盛れなかった少女召使いたちはつまらなさそうだったけど。
でも、この世界に来て城以外の場所を見るのは初めてだし。
まるで遠足に行く前の小学生のように私の心は弾んでいた。
準備万端。さて、出かけようか、と気合が入ったところで、廊下から騒がしい音が聞こえた。
迎えの護衛だろうか、と思ったけど、それにしても騒々しい。
召使いに廊下の様子を見に行かせる前に、大きな音を立て乱暴に部屋の扉が開けられた。
「いけません。お戻りを。姫様のご許可をいただいていません」と、泣きそうな悲鳴を上げる若い女性の召使いを引きずるようにして、ドカドカと入ってきたのは、熊男のキリウスだった。
きょうは対峙(退治?)してくれる侍女のサラさんが所用でいない。
召使いたちが私をかばうようにキリウスの前に立ったけど。少女たちの体の震えが後ろ姿でもわかった。
可愛い女の子たちを肉食獣の餌食にするわけにはいかない。私がなんとかしなくちゃ。
「キリウス様。なにか御用でして?」
無礼な侵入者に精一杯の冷たい言葉を投げたけど、キリウスは気にも留めずに、召使いを押しのけて私の前に立った。
召使い達は私とキリウスを交互に見て、申し訳なさそうな視線を泳がせる。わかってる、召使いごときで肉食獣を止めることはできないって。
傍若無人な客は私のアラビアンナイトのような姿を無遠慮な目で見ると
「酔狂な衣装ですな。これからどこかにお出かけで?」
「あなたには関係ないでしょう」嫌悪を隠さずに私は言い捨てた。
「関係なくはない。私はあなたの婿候補だ」
まだ言うか、それ。
自分でも頭に血が上ったのが分かるくらい、ムカッときた。はすっぱな口調にならないように気を付けながら
「昨日言ったでしょう。私は誰とも結婚しません。国王代理になると決めました」
「姫に国王代理は無理だ。あなたのようなか弱い女の子が国を統治できるわけがない」
やっぱり、軽んじられてる。
確かにレーナ姫ならか弱くて可憐なお姫様なんだよね。きっと、国王になるよりお嫁さんを選んでいたに違いない。
たとえ、夫になる相手がどんな男でも唯々諾々と従ったのかもしれない。
でも、私はレーナじゃない。
「考え直して、どうか、姫、私と結婚を・・・いや、せめて婚約だけでも」
キリウスのどこか余裕のない焦りの滲む言葉に
「いーーーやっ!」私は即答した。
「私は好きでもない男性と結婚はできません」
ガックリという効果音が聞こえるくらいキリウスは落胆したようだった。何か言いたげな顔をしたが結局は何も言わずにマントを翻して出ていった。
これであきらめてくれたらいいんだけど・・・。私は暗澹とした気持ちになった。
それにしても、そんなに国王の座につきたいの?
好きでもない女を妻にしてまで?
平凡OLの私には国を統治したいっていう気持ちが、まったく理解ができない。
城下にある町は白い漆喰やレンガ造りの建物と石畳の道でできていて、思っていた以上に清潔感があった。中近東と古いヨーロッパの街を足して2で割った感じかな。
町から見る城の外観はドイツの有名な城に似ている。もちろん、外国旅行なんかしたことがない私は実物を見たことないんだけど。
ま、異世界も外国っていえば外国か。
市場は夕方の大型スーパーマーケット並の人出だった。
この2年間で税が5倍になって、重税にあえぎ、閑散と荒れた町になっているのではないかと心配したのは、漫画や小説の読みすぎだろうか。
パンクでモヒカンな人はどこにもいない。なんとなく、伝説の世紀末漫画を想像してた私は心底安堵した。
所狭しと露店が並んでいる路地を歩く。買う人、売る人の声でそれなりに賑やかだ。
肉や果物などの農作物、金物製品、得体のしれない骨董品、妖しい薬草類、どれも珍しくて見ているだけで心が浮き立つ。
サラさんが私の護衛につけた衛兵2人が、白い前開きシャツにズボンという一般的な町人の格好をして、周囲に目を光らせているのが見えた。
サラさんは2人では少ないと言い張ったが、ぞろぞろと護衛を引き連れてる女じゃかえって人目を引くって、がんばって説得した。
城の中だって始終、召使いや衛兵に見張られてるのだ。せめて町に来たときくらいは自由を味わっても罰は当たらないんじゃないか?
確かに城では物に関しては不自由はない。キレイなドレスを着て、美味しいものを食べて、フカフカのお布団に寝ている。贅沢な暮らしをしてるとは思うけど。
もとは現代人で庶民の私には窮屈なのだ、息が苦しくなることもあるのだ。
町の空気は自分に馴染んでいるみたいで心地いい。周りの人間の雑多な言葉を聞くのも気持ちいい。
ただ・・・
私はあたりを見回して首をかしげた。
なんで子供の姿が見えないんだろう?普通なら大人に連れられて買い物にきたり、路地を駆けたりするものじゃないんだろうか?
たしか、平民には学校ってなかったはず。子供たちはどこにいるんだろう。後でサラさんに聞けばわかるだろうか。
ふと、農作物の露店で見たことのない赤い果実が目に入った。
リンゴ?トマト?その中間のような形。味はどんなんだろう。
その果実を取ろうと手をのばしたとき。
腕が掴まれた。
えっ!?
驚いて横を見ると、私より頭一つ背の低い少年がいた。
華奢な体つきなのに、私の腕を掴む手は異常なほど強い。
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