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狂気と策略
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「私に内密の話とはなんでしょう」
明らかに、帰るのを邪魔されて不機嫌なキリウスの顔をうっとりとマーガレッタ王女は見つめた。
(鋭い青い瞳に射貫かれてしまいそう。私のことをこんな風に見る男なんて今までいなかったわ)
「ここでは、申せませんわ」
王女はパーティ会場の広間を見渡しながら意味ありげに答えた。
「私のお部屋で・・・お話しません?」
自分の部屋に引き込めば、勝利だと王女は確信している。今まで拒んだ男はいなかった。二人きりになって、自分がしなだれかかれば、男は皆、その気になる・・・
「ここで話せない内容なら、お聞きはすまい。では、失礼する」
(えっ!?)
「ちょ、ちょっと待って・・・あの」
いちいち、予測不能なキリウスの態度に王女は困惑して、とっさに声に出した。
「レーナ様の」
その言葉に、キリウスが足を止め、振り返った。
「レーナが・・・?」
(やった、止まったわ)王女は安堵して、怪しげに自分を見つめるローマリウスの王に言った。
「レーナ様のことなの。内密の話って・・・国王陛下にはお話したほうがいいかと思いまして」
もちろん大嘘だけれど、部屋に引き込んでしまえば何とかなると、王女は思っていた。
キリウスは広間で談笑している外務担当大臣のベネジクトを一瞥して、わずかの間だ、大臣に話すようなことでもあるまい、と判断した。
「では、少しの間なら」
そう答えたキリウスに王女は勝利の笑みを浮かべた。
公式の場では無関心を装っていても、部屋に二人きりになると本性を現す男をマーガレッタ王女は数多く見てきていた。男を部屋に誘うというのは、そういうことを期待しているのだろうと、いきなり押し倒そうとする男もいた。
ローマリウス王だって誰も見ていないところなら、きっと態度を変えるに決まっている。と、マーガレッタ王女は思っていた。
「で?レーナがなんだと?」
部屋に入ったとたん、立ったままでキリウスは切り出した。長居をするつもりなどないという姿勢がありありと見え、王女は戸惑った。
「まず、お飲み物でもいかが?ローマリウス様はパーティでもほとんど飲んではいらっしゃらなかったでしょう?」
シナを作ってそう言うマーガレッタ王女に冷たい青い目を向けると
「飲み物は結構。それよりも、レーナの話が聞きたい」
(てごわい)
お酒で酔わせて・・・ということはできそうもない。なら、これはどうだ、と王女はよろけてキリウスの胸にもたれかかろうとした。
きれいに避けられて、王女は床に膝をついた。
(な・・・なに、今、避けた?私を避けた?)
キリウスは上から冷ややかな視線を王女に浴びせると
「話がないなら帰らせていただく。時間の無駄だ」
王女は頭が真っ白になった。自分にまったく関心がないばかりでなく、自分といる時間を無駄だと言われてしまった。それで「はいどうぞ」と帰せるほど、彼女は人がよいわけでも諦めがよいわけでもなかった。
王女は最終手段に出た。キリウスの前でドレスを脱ぎ落すと、下着姿になった。薄い生地から、白い素肌とふくよかな胸、情感的な下腹部が透けて見える。
(さあ、どう?18歳の小娘なんかよりずっと美味しそうでしょう?)
「ローマリウス様・・・私、貴方を一目見た時から好きになってしまったの。どうか、どうか、私に一夜のお情けを。今宵一夜だけ、私を貴方のものにしてくださいまし」
王女に煽情的で魅惑的な黒い眼差しを向けられたキリウスは、億劫そうに溜息をつくと
「そういう戯れをしたいなら他の男にしてくれ。レーナの話じゃないなら、俺は帰る」
キリウスの言葉は王女の自尊心を抉った。彼女は悲しいまでに取り乱して金切り声をあげた。
「なんで?私を抱きたいって思わないの?私はそんなに魅力がないの?」
キリウスは悲しい目をして、マーガレッタ王女を見た。
「魅力があるとかないの問題じゃない。俺はレーナを愛している。もし、ここで俺があなたを抱くことがあったら、レーナは俺を愛してくれなくなる。許しはするだろうが、もう2度と愛してるとは言ってくれないだろう。レーナの愛を失うことは俺にとっては命がなくなるようなものだ」
失ったら、2度と手に入らないものがある、と言ってキリウスは王女に背を向けた。
マーガレッタ王女は幽鬼のようにゆらりと揺れた。
(そうね・・・ここで失ったら、手に入れられないわよね)
彼女の黒い瞳には狂気と憎悪が宿っていた。
「ローマリウス様、わかりました。どうぞお帰りあそばして。でも、最後に手にキスをしていただけません?」
キリウスは躊躇った。
レーナ以外の女の手にキスなどと、しかし、それでこの王女が納得して帰してくれるなら止むを得ない。そう考えた彼は王女の前に膝を折り、その手をとった。
キリウスが手に唇を近づけ、異変を感じたときには遅かった。
「なにを・・・」
鼻を抑えて後ずさったキリウスは扉に向かって歩きだしたが、2歩も進まないうちに崩れ落ちた。
王女の白い手には、嗅ぐだけで深い眠りに落ちてしまう超強力な眠り薬が握られていた。
「魔法使いに大枚はたいて作らせた特別な眠り薬よ。私にこれを使わせたのは貴方が初めて」
マーガレッタ王女は赤い唇の端を上げて、満足そうに足元に横たわる獲物を見つめた。
明らかに、帰るのを邪魔されて不機嫌なキリウスの顔をうっとりとマーガレッタ王女は見つめた。
(鋭い青い瞳に射貫かれてしまいそう。私のことをこんな風に見る男なんて今までいなかったわ)
「ここでは、申せませんわ」
王女はパーティ会場の広間を見渡しながら意味ありげに答えた。
「私のお部屋で・・・お話しません?」
自分の部屋に引き込めば、勝利だと王女は確信している。今まで拒んだ男はいなかった。二人きりになって、自分がしなだれかかれば、男は皆、その気になる・・・
「ここで話せない内容なら、お聞きはすまい。では、失礼する」
(えっ!?)
「ちょ、ちょっと待って・・・あの」
いちいち、予測不能なキリウスの態度に王女は困惑して、とっさに声に出した。
「レーナ様の」
その言葉に、キリウスが足を止め、振り返った。
「レーナが・・・?」
(やった、止まったわ)王女は安堵して、怪しげに自分を見つめるローマリウスの王に言った。
「レーナ様のことなの。内密の話って・・・国王陛下にはお話したほうがいいかと思いまして」
もちろん大嘘だけれど、部屋に引き込んでしまえば何とかなると、王女は思っていた。
キリウスは広間で談笑している外務担当大臣のベネジクトを一瞥して、わずかの間だ、大臣に話すようなことでもあるまい、と判断した。
「では、少しの間なら」
そう答えたキリウスに王女は勝利の笑みを浮かべた。
公式の場では無関心を装っていても、部屋に二人きりになると本性を現す男をマーガレッタ王女は数多く見てきていた。男を部屋に誘うというのは、そういうことを期待しているのだろうと、いきなり押し倒そうとする男もいた。
ローマリウス王だって誰も見ていないところなら、きっと態度を変えるに決まっている。と、マーガレッタ王女は思っていた。
「で?レーナがなんだと?」
部屋に入ったとたん、立ったままでキリウスは切り出した。長居をするつもりなどないという姿勢がありありと見え、王女は戸惑った。
「まず、お飲み物でもいかが?ローマリウス様はパーティでもほとんど飲んではいらっしゃらなかったでしょう?」
シナを作ってそう言うマーガレッタ王女に冷たい青い目を向けると
「飲み物は結構。それよりも、レーナの話が聞きたい」
(てごわい)
お酒で酔わせて・・・ということはできそうもない。なら、これはどうだ、と王女はよろけてキリウスの胸にもたれかかろうとした。
きれいに避けられて、王女は床に膝をついた。
(な・・・なに、今、避けた?私を避けた?)
キリウスは上から冷ややかな視線を王女に浴びせると
「話がないなら帰らせていただく。時間の無駄だ」
王女は頭が真っ白になった。自分にまったく関心がないばかりでなく、自分といる時間を無駄だと言われてしまった。それで「はいどうぞ」と帰せるほど、彼女は人がよいわけでも諦めがよいわけでもなかった。
王女は最終手段に出た。キリウスの前でドレスを脱ぎ落すと、下着姿になった。薄い生地から、白い素肌とふくよかな胸、情感的な下腹部が透けて見える。
(さあ、どう?18歳の小娘なんかよりずっと美味しそうでしょう?)
「ローマリウス様・・・私、貴方を一目見た時から好きになってしまったの。どうか、どうか、私に一夜のお情けを。今宵一夜だけ、私を貴方のものにしてくださいまし」
王女に煽情的で魅惑的な黒い眼差しを向けられたキリウスは、億劫そうに溜息をつくと
「そういう戯れをしたいなら他の男にしてくれ。レーナの話じゃないなら、俺は帰る」
キリウスの言葉は王女の自尊心を抉った。彼女は悲しいまでに取り乱して金切り声をあげた。
「なんで?私を抱きたいって思わないの?私はそんなに魅力がないの?」
キリウスは悲しい目をして、マーガレッタ王女を見た。
「魅力があるとかないの問題じゃない。俺はレーナを愛している。もし、ここで俺があなたを抱くことがあったら、レーナは俺を愛してくれなくなる。許しはするだろうが、もう2度と愛してるとは言ってくれないだろう。レーナの愛を失うことは俺にとっては命がなくなるようなものだ」
失ったら、2度と手に入らないものがある、と言ってキリウスは王女に背を向けた。
マーガレッタ王女は幽鬼のようにゆらりと揺れた。
(そうね・・・ここで失ったら、手に入れられないわよね)
彼女の黒い瞳には狂気と憎悪が宿っていた。
「ローマリウス様、わかりました。どうぞお帰りあそばして。でも、最後に手にキスをしていただけません?」
キリウスは躊躇った。
レーナ以外の女の手にキスなどと、しかし、それでこの王女が納得して帰してくれるなら止むを得ない。そう考えた彼は王女の前に膝を折り、その手をとった。
キリウスが手に唇を近づけ、異変を感じたときには遅かった。
「なにを・・・」
鼻を抑えて後ずさったキリウスは扉に向かって歩きだしたが、2歩も進まないうちに崩れ落ちた。
王女の白い手には、嗅ぐだけで深い眠りに落ちてしまう超強力な眠り薬が握られていた。
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