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マーガレッタ王女
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「あの方が・・・トマール・デ・キリウス・ローマリウス様・・・ローマリウスの国王なのね!」
ヨークトリア国の王女、マーガレッタは自分の成人祝いを兼ねる誕生祝いのパーティに集まった人々の中から、ローマリウス国の国王の姿を素早く見つけ出し、歓喜の声を上げた。
ローマリウス王が美丈夫だと噂には聞いていた。でも、噂が独り歩きして実際より劣るってことはよくあることだ。きっと眉唾な噂だと、マーガレッタは思っていた。
(なんて、ステキ。まるで芸術品のようだわ。美しい顔にしなやかそうな肉体。不機嫌そうな表情もそそられるわ)
ちょうど今の恋人がウザくなっていたマーガレッタ王女が次のターゲットにキリウスを選んだのは当然のことだった。彼女は手に入りにくいものほど欲しがる性格だったのだ。
ローマリウスの王はレーナという麗しい女王を溺愛していて、命も賭すというのだ。彼をものにできたらどんなに自分の株があがるだろう。マーガレッタ王女は心の中で舌舐めずりしながらキリウスに熱い視線を送った。
(っていうか、あの方、1度も私の方を見てないんじゃないの?)
自分の視線がことごとく無視されているのを悟った王女は、側近に
「ローマリウスの国王陛下にダンスを誘いにくるようにお願いしてきなさい」と命じた。
側近はいつも王女が男を落とす手なので、心得ていた。迷いなくキリウスのところに向かうと、所在なげにしていた彼の前に立ち「マーガレッタ王女がダンスをご所望になっておられます」と丁寧な言葉をかけた。
パーティの主役がダンスを申し込みにきてくれ、と言っているのだ。しかも相手は美しく肉感的な女性だ。断る男などいない・・・はずだった。
「悪いが、俺は妻以外の女性とダンスは踊らないと決めている。王女には他の方を誘うように申し上げてくれ」
王女の方も見ず、素っ気なくキリウスは言った。
「ということなのですが」
と、スゴスゴと帰ってきた側近にマーガレッタ王女は「役立たずが」と忌々し気な目を向けた。
「私の誘いを断るなんて・・・ますます、欲しくなるわね」
悪女のセリフに側近は
「王女様、あまりローマリウス国と事を荒立てないほうがよいかと思いますが・・・ローマリウスは4国のうちでも最強を誇る国ですので、もし戦争にでもなったらわが国に勝ち目は・・・」
弱々しく言葉を濁す側近から視線を外して、パーティの招待客として訪れた王侯貴族とそつなく談笑を交わしている宰相を見て王女は言った。
「そんなことは宰相と側近が考えればいいことでしょう。私は私の好きにさせてもらうわ」
(ローマリウス王を私の魅力で落とせば何の問題もないわ。王が自分の意思で私を選ぶのだもの。滞在中には絶対ものにしてみせるわ。それに、何かことがあったとしても、宰相に責任を押し付ければいいことよ)
自信ありげに笑みを浮かべた王女の前に、王女の今の恋人がダンスを申し込みに立った。
差し出された手を取りながら、しげしげと恋人を見て
(この人も美丈夫だと思ったけど、やっぱりローマリウス王と比べたら見劣りするわね)
内心を隠しながら、王女は恋人に艶っぽい微笑みを向けた。
「マーガレッタ、今夜は一段ときれいだね。赤い髪がまるで宝石のように煌めいてる。白い肌もいつもより透き通ってみえるよ。本当にきれいだ。君が恋人で僕も鼻が高いよ」
恋人のセリフに、
(そりゃあ、私が一番美しく見えるルビーを散りばめた黒のドレスにしたのだもの。でも、まるで私が自分の物みたいに言うのね、冗談じゃないわよ)
「今夜はこの後逢えないか?久しぶりに二人で話をしたいんだ」
恋人の熱っぽい視線に
(したいのは話じゃないでしょ)
「ごめんなさい。私今夜は疲れてしまったから、もうやすみたいの」
恋人は残念そうな顔をしながらも強引に誘うことはなかった。「そうだね、今夜はゆっくり休むといいよ」そう言ったところで、タイミングよく曲が終わった。
恋人とのダンスを皮切りに王女にダンスの申し込みが殺到した。適当に相手をしたりしていたが王女は飽きてきていた。そろそろ、部屋に引っ込んでもいいか、と思ったところに、キリウスが王女の面前に立った。
(ま!やっぱり、私とダンスを踊りたくなったのね)
王女は艶然と余裕の微笑みを見せた。少し焦らしてやろうと、冷たく聞こえる声で言った。
「どうなさったの?ローマリウスの王様」
「私はこれで国に帰らせていただきたく思います。王女にはこれからのご健勝をお祈りしております。では」
もう用は済んだとばかりに踵を返すキリウスに王女はしばらくその赤い唇をポカンと開けていた。
(はっ!いけない!ここで帰しては、もう会えなくなる)
慌てて側近にキリウスを呼び止めるように命じた。
「私から内密の話があると言いなさい」
側近はもう広間の扉から出ようとしているキリウスを追って走った。
ヨークトリア国の王女、マーガレッタは自分の成人祝いを兼ねる誕生祝いのパーティに集まった人々の中から、ローマリウス国の国王の姿を素早く見つけ出し、歓喜の声を上げた。
ローマリウス王が美丈夫だと噂には聞いていた。でも、噂が独り歩きして実際より劣るってことはよくあることだ。きっと眉唾な噂だと、マーガレッタは思っていた。
(なんて、ステキ。まるで芸術品のようだわ。美しい顔にしなやかそうな肉体。不機嫌そうな表情もそそられるわ)
ちょうど今の恋人がウザくなっていたマーガレッタ王女が次のターゲットにキリウスを選んだのは当然のことだった。彼女は手に入りにくいものほど欲しがる性格だったのだ。
ローマリウスの王はレーナという麗しい女王を溺愛していて、命も賭すというのだ。彼をものにできたらどんなに自分の株があがるだろう。マーガレッタ王女は心の中で舌舐めずりしながらキリウスに熱い視線を送った。
(っていうか、あの方、1度も私の方を見てないんじゃないの?)
自分の視線がことごとく無視されているのを悟った王女は、側近に
「ローマリウスの国王陛下にダンスを誘いにくるようにお願いしてきなさい」と命じた。
側近はいつも王女が男を落とす手なので、心得ていた。迷いなくキリウスのところに向かうと、所在なげにしていた彼の前に立ち「マーガレッタ王女がダンスをご所望になっておられます」と丁寧な言葉をかけた。
パーティの主役がダンスを申し込みにきてくれ、と言っているのだ。しかも相手は美しく肉感的な女性だ。断る男などいない・・・はずだった。
「悪いが、俺は妻以外の女性とダンスは踊らないと決めている。王女には他の方を誘うように申し上げてくれ」
王女の方も見ず、素っ気なくキリウスは言った。
「ということなのですが」
と、スゴスゴと帰ってきた側近にマーガレッタ王女は「役立たずが」と忌々し気な目を向けた。
「私の誘いを断るなんて・・・ますます、欲しくなるわね」
悪女のセリフに側近は
「王女様、あまりローマリウス国と事を荒立てないほうがよいかと思いますが・・・ローマリウスは4国のうちでも最強を誇る国ですので、もし戦争にでもなったらわが国に勝ち目は・・・」
弱々しく言葉を濁す側近から視線を外して、パーティの招待客として訪れた王侯貴族とそつなく談笑を交わしている宰相を見て王女は言った。
「そんなことは宰相と側近が考えればいいことでしょう。私は私の好きにさせてもらうわ」
(ローマリウス王を私の魅力で落とせば何の問題もないわ。王が自分の意思で私を選ぶのだもの。滞在中には絶対ものにしてみせるわ。それに、何かことがあったとしても、宰相に責任を押し付ければいいことよ)
自信ありげに笑みを浮かべた王女の前に、王女の今の恋人がダンスを申し込みに立った。
差し出された手を取りながら、しげしげと恋人を見て
(この人も美丈夫だと思ったけど、やっぱりローマリウス王と比べたら見劣りするわね)
内心を隠しながら、王女は恋人に艶っぽい微笑みを向けた。
「マーガレッタ、今夜は一段ときれいだね。赤い髪がまるで宝石のように煌めいてる。白い肌もいつもより透き通ってみえるよ。本当にきれいだ。君が恋人で僕も鼻が高いよ」
恋人のセリフに、
(そりゃあ、私が一番美しく見えるルビーを散りばめた黒のドレスにしたのだもの。でも、まるで私が自分の物みたいに言うのね、冗談じゃないわよ)
「今夜はこの後逢えないか?久しぶりに二人で話をしたいんだ」
恋人の熱っぽい視線に
(したいのは話じゃないでしょ)
「ごめんなさい。私今夜は疲れてしまったから、もうやすみたいの」
恋人は残念そうな顔をしながらも強引に誘うことはなかった。「そうだね、今夜はゆっくり休むといいよ」そう言ったところで、タイミングよく曲が終わった。
恋人とのダンスを皮切りに王女にダンスの申し込みが殺到した。適当に相手をしたりしていたが王女は飽きてきていた。そろそろ、部屋に引っ込んでもいいか、と思ったところに、キリウスが王女の面前に立った。
(ま!やっぱり、私とダンスを踊りたくなったのね)
王女は艶然と余裕の微笑みを見せた。少し焦らしてやろうと、冷たく聞こえる声で言った。
「どうなさったの?ローマリウスの王様」
「私はこれで国に帰らせていただきたく思います。王女にはこれからのご健勝をお祈りしております。では」
もう用は済んだとばかりに踵を返すキリウスに王女はしばらくその赤い唇をポカンと開けていた。
(はっ!いけない!ここで帰しては、もう会えなくなる)
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