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神に祈った
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「ご懐妊、おめでとうございます」
さすがに鋼鉄の顔と心臓を持つ法務担当大臣のサラさんは私の妊娠を聞いても表情を微動だにさせなかった。
むしろ、日頃の私とキリウスの状態を見ているので懐妊は当然だという口調だった。
「ごめんなさい。わざわざ来ていただいて」
職務中にサラさんを部屋に呼び立ててしまったことを私は謝ってから、切り出した。
「あの・・・気になることがあって・・・サラはキリウスがヨークトリア国に行ったことをなんだかよく思ってないのじゃないかって」
サラさんはチラリと側に控えているレオナードを見て、そうです、と肯定した。レオナードが私に話してしまうことは想定済みという感じだ。
「なぜ?」
私はサラさんにレオナードがいれてくれたお茶を勧めながら、話を促した。サラさんは少し思案気に眉を寄せていたけれど
「実は、このようなことを女王陛下のお耳にいれてもよいものかと・・・」
「話してください。どんなことでも」
サラさんは口を湿らすように一口お茶を飲んでから話し出した。
「ヨークトリア国のマーガレッタ王女は、今度20歳で成人となります」
そう、だから、成人と誕生祝いを兼ねてのパーティにキリウスが出席するのだ。
「ヨークトリア国のマーガレッタ王女は早くにご両親を亡くされ、建前上国務はマーガレッタ王女が担っているのですが、実際は宰相とその側近が支配している国です。それが悪いとは申しません。国はそれで問題はないのですから」
しかし、とサラさんは険しい顔になって
「宰相があまりに王女を甘やかしたせいで王女は・・・その・・・わがまますぎる傾向があり、思いやりに欠けるというか、レーナ様とまったく反対のお方です」
ん?サラさん、私のこと、もしかして褒めてる?
でも、わがまま王女ってことくらいで、なにが問題なんだろう。
『異世界物語』にはよくある題材ではないか。私が不思議に思っていると、
サラさんは言葉を切って、私を見つめた。話すことを躊躇っているような目をして。
「問題は・・・マーガレッタ王女は『男癖』が悪いのです」
・・・
「え・・・っと?」
サラさんのダイレクトな表現に私は思考能力がついていかず、一瞬固まってしまった。
「サラ様、『男癖』などという言葉はレーナ様にはご理解いただけないかと存じますが」
僭越ながらと、レオナードが口を挟んだ。
いや、中身OLの私は、めちゃくちゃ理解してるけど。
「申し訳ございません。要するに、好みの男性には見境なく行動して自分のものになさり、飽きると捨てる・・・という方なのです」
はあ・・・まあ、現代にもいたよね、そういう女性って。
「でも、キリウスには私という妻がいるし・・・だから」
大丈夫なのでは?と言いかけた私の先を制して
「だから、危ないのです。マーガレッタ王女は他人のものだと、余計に・・・。それに、女王陛下も国王陛下もご自分を過小評価しすぎでございます。お2人を離別させ、手に入れたいと狙っている方は多いのですよ」
レオナードがなぜか、私から不自然に視線を外し、
「申し訳ありません。私は昼食の用意がありますので、失礼いたします。御用があればお呼びください」と退室した。
レオナードがいなくなると、サラさんは
「レーナ様の麗しさと英知は各国の王侯貴族の欲するものです。そのレーナ様からキリウス様を奪うことはマーガレッタ王女にとっては至福となるやもしれません。マーガレッタ王女はとても美しく魅力的な女性です。レーナ様が天使のような方だとすると、マーガレッタ王女は悪魔のごとき魅力を持った方でございます。男性は愚かですから・・・悪女に惹かれるのでしょう。むしろ・・・悪女だからこそ、男性は自分に真実の愛が注がれるのを望むのかもしれません」
う~~ん、なんとなく、分かる気がする。
男なら魅力的な美女に「あなただけを愛してる。私の真実の愛はあなただけのもの」な~んて、言われたらイチコロじゃないかな。
そこまで考えて、私は愕然とした。
キリウスは!?
彼は・・・どうなんだろう。
今までは私だけを愛してくれたけど、もし、もし、違う魅力のある女性に出逢ってしまったら?
私以外にも魅力的な女性はいるのだと、気づいてしまったら?
あの溺愛が他の女性に向いてしまったら?
私は青ざめた。
「レーナ様、キリウス様は大丈夫でございます」
サラさんが私の顔色を読んで、そう言ってくれた。私の揺らいだ心に彼女の言葉は心強かった。
「キリウス様は得難い宝を自ら手放すほど愚かなお方ではありません」
きょうのサラさんはなんだかとっても優しい。私をかなりヨイショしてくれる。もしかして、懐妊した私を気遣ってくれてるのかもしれない。
「キリウスは・・・他の男性とはちょっと違うから」
希望を込めて私は言った。そう、信じなきゃ。
それに、まだマーガレッタ王女がキリウスにロックオンするとは限らないし・・・たとえ、居並ぶ男性の中で群を抜いたイケメンだったとしても。
どうか、そうなりませんように・・・と私はこの世界の神に祈った。
さすがに鋼鉄の顔と心臓を持つ法務担当大臣のサラさんは私の妊娠を聞いても表情を微動だにさせなかった。
むしろ、日頃の私とキリウスの状態を見ているので懐妊は当然だという口調だった。
「ごめんなさい。わざわざ来ていただいて」
職務中にサラさんを部屋に呼び立ててしまったことを私は謝ってから、切り出した。
「あの・・・気になることがあって・・・サラはキリウスがヨークトリア国に行ったことをなんだかよく思ってないのじゃないかって」
サラさんはチラリと側に控えているレオナードを見て、そうです、と肯定した。レオナードが私に話してしまうことは想定済みという感じだ。
「なぜ?」
私はサラさんにレオナードがいれてくれたお茶を勧めながら、話を促した。サラさんは少し思案気に眉を寄せていたけれど
「実は、このようなことを女王陛下のお耳にいれてもよいものかと・・・」
「話してください。どんなことでも」
サラさんは口を湿らすように一口お茶を飲んでから話し出した。
「ヨークトリア国のマーガレッタ王女は、今度20歳で成人となります」
そう、だから、成人と誕生祝いを兼ねてのパーティにキリウスが出席するのだ。
「ヨークトリア国のマーガレッタ王女は早くにご両親を亡くされ、建前上国務はマーガレッタ王女が担っているのですが、実際は宰相とその側近が支配している国です。それが悪いとは申しません。国はそれで問題はないのですから」
しかし、とサラさんは険しい顔になって
「宰相があまりに王女を甘やかしたせいで王女は・・・その・・・わがまますぎる傾向があり、思いやりに欠けるというか、レーナ様とまったく反対のお方です」
ん?サラさん、私のこと、もしかして褒めてる?
でも、わがまま王女ってことくらいで、なにが問題なんだろう。
『異世界物語』にはよくある題材ではないか。私が不思議に思っていると、
サラさんは言葉を切って、私を見つめた。話すことを躊躇っているような目をして。
「問題は・・・マーガレッタ王女は『男癖』が悪いのです」
・・・
「え・・・っと?」
サラさんのダイレクトな表現に私は思考能力がついていかず、一瞬固まってしまった。
「サラ様、『男癖』などという言葉はレーナ様にはご理解いただけないかと存じますが」
僭越ながらと、レオナードが口を挟んだ。
いや、中身OLの私は、めちゃくちゃ理解してるけど。
「申し訳ございません。要するに、好みの男性には見境なく行動して自分のものになさり、飽きると捨てる・・・という方なのです」
はあ・・・まあ、現代にもいたよね、そういう女性って。
「でも、キリウスには私という妻がいるし・・・だから」
大丈夫なのでは?と言いかけた私の先を制して
「だから、危ないのです。マーガレッタ王女は他人のものだと、余計に・・・。それに、女王陛下も国王陛下もご自分を過小評価しすぎでございます。お2人を離別させ、手に入れたいと狙っている方は多いのですよ」
レオナードがなぜか、私から不自然に視線を外し、
「申し訳ありません。私は昼食の用意がありますので、失礼いたします。御用があればお呼びください」と退室した。
レオナードがいなくなると、サラさんは
「レーナ様の麗しさと英知は各国の王侯貴族の欲するものです。そのレーナ様からキリウス様を奪うことはマーガレッタ王女にとっては至福となるやもしれません。マーガレッタ王女はとても美しく魅力的な女性です。レーナ様が天使のような方だとすると、マーガレッタ王女は悪魔のごとき魅力を持った方でございます。男性は愚かですから・・・悪女に惹かれるのでしょう。むしろ・・・悪女だからこそ、男性は自分に真実の愛が注がれるのを望むのかもしれません」
う~~ん、なんとなく、分かる気がする。
男なら魅力的な美女に「あなただけを愛してる。私の真実の愛はあなただけのもの」な~んて、言われたらイチコロじゃないかな。
そこまで考えて、私は愕然とした。
キリウスは!?
彼は・・・どうなんだろう。
今までは私だけを愛してくれたけど、もし、もし、違う魅力のある女性に出逢ってしまったら?
私以外にも魅力的な女性はいるのだと、気づいてしまったら?
あの溺愛が他の女性に向いてしまったら?
私は青ざめた。
「レーナ様、キリウス様は大丈夫でございます」
サラさんが私の顔色を読んで、そう言ってくれた。私の揺らいだ心に彼女の言葉は心強かった。
「キリウス様は得難い宝を自ら手放すほど愚かなお方ではありません」
きょうのサラさんはなんだかとっても優しい。私をかなりヨイショしてくれる。もしかして、懐妊した私を気遣ってくれてるのかもしれない。
「キリウスは・・・他の男性とはちょっと違うから」
希望を込めて私は言った。そう、信じなきゃ。
それに、まだマーガレッタ王女がキリウスにロックオンするとは限らないし・・・たとえ、居並ぶ男性の中で群を抜いたイケメンだったとしても。
どうか、そうなりませんように・・・と私はこの世界の神に祈った。
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