効能には個人差があります

暁基朋也

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透明の薬はいい夢を見せる

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長い間、不眠症に悩まされていた。
布団に入っても眠れず、天井を見つめたまま朝を迎える日が続いていた。

そんな時に手に入れたのが、この薬だった。

【飲めば、必ず望んだ夢が見られる】

半信半疑だったが、他に頼るものもない。
俺はその薬を飲んで眠った。

その夜、久しぶりに深く眠れた。
目覚めも悪くない。
何より、夢が良かった。

嫌な記憶は一つもなく、
思い通りの展開で、
目が覚める直前まで心地よかった。

それから不眠症は、嘘みたいに治った。
毎晩、薬を飲めば眠れる。
しかも、望んだ夢まで見られる。

使わない理由はなかった。



最初に変わったのは、考え方だった。

仕事で嫌なことがあった日、
俺は無意識にこう思っていた。

「夢の中なら、もっと上手くやれてたな」

次の日も、また同じ薬を飲む。

その夢の中で、
俺は会議室に立っていた。

資料は完璧で、
誰かがうなずき、
誰かが笑った。

「君に任せて正解だった」

そう言われた瞬間、
胸の奥が、じんわりと温かくなった。

目が覚めたとき、
その感覚だけが残っていた。

夢の中では、何もかもが都合よく進む。

失敗しない。
否定されない。
努力しなくても、報われる。



次第に、眠る時間が増えていった。

夜だけじゃない。
休日も、昼も、少し空いた時間があれば横になる。

現実で少しでも気に入らないことが起きるたび、
「起きている意味がない」と感じるようになった。

不眠症は治っていた。
代わりに、眠りすぎるようになっただけだ。

だが、それでいいと思った。



食事は簡単なもので済ませるようになり、
身だしなみも気にしなくなった。

連絡が来ても、
「あとで返そう」と思ったまま眠る。

夢の中では、
誰も俺を急かさない。



ある朝、
目覚ましが鳴っていることに気づいた。

止めようとして、手を伸ばす。

そのまま、目を閉じた。



【飲めば、必ず望んだ夢が見られる】

この薬は、
眠りを与えてくれた。

起きる理由までは、
用意してくれなかった。
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