効能には個人差があります

暁基朋也

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白い薬の選択

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薬の効能は、単純だった。

【一度だけ、正しい選択が分かる】

成功するかどうかは分からない。
ただ「正しい」と分かる。
そう説明された。

正直、胡散臭かった。
だが人生には、どうしても答えが欲しくなる瞬間がある。
俺の場合、それは仕事だった。

会社から持ちかけられた新規事業。
成功すれば、昇進は確実。
さらに一段、上が見えると言われていた。

失敗すれば――
考えたくもない。

周囲は慎重だった。
「今のポジションを守れ」
「無理をする必要はない」

迷った末、俺は白い薬を飲んだ。

しばらくして、
胸の奥に、疑いようのない確信が落ちてくる。

――やれ。

理由は分からない。
ただ、それが正しいということだけはわかる。

俺はその新規事業を引き受けた。

結果から言えば、新規事業は成功した。
数字は伸び、評価は上がり、
俺の名前は役員クラスの口から出るようになった……

その代わり、
家には帰らなくなった。

朝まで働き、
休日も会議に呼び出され、
返せなかった連絡は、
いつの間にか来なくなっていた。

恋人は、ある日こう言った。

「仕事が落ち着いたら、って何回目?」

返事ができないまま、
その関係は終わった。

それでも俺は、正しい選択をしたのだと思っている。

数年後、
俺は、会社の中で一人になった。

部下は去り、
同僚は距離を取り、
気づけば、
声をかけられる理由は仕事しかなくなっていた。

ある夜、
オフィスで一人、モニターを眺めながら思った。

もし、あのとき、
安定を選んでいたらどうなっていたであろうか。

だが、すぐに分かった。

それはもう、選べない。

【一度だけ、正しい選択が分かる】

効能通り白い薬は正しい選択を教えてくれた。

しかしその先で、
何を得、何を失うかまでは教えてくれなかった。
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