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隠したい真実
本音を言えたら僕の願いは叶うだろうか
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待っても、待っても。
季節は巡るばかりだった。
……帰りたい―――。
そう、打ち明ける相手すらいない。
気晴らしに外に出たところで茗雲寺の境内に腰掛けたり、像を拭いたり、床に雑巾をかけたりする(掃除屋じゃないっての!)――――…。
「何をしてんだろ」
「陽さん、お茶にしませんか」
尼に呼ばれて台所に入ると湯のみが3つ置いてある。取り敢えず、其々に茶を注いで持ってきた。
「今日も有難う」
「お済みならご一緒に」
奥の人が行かない建物の方から見覚えのある男の後ろ姿と声が尼の後ろをついて行った。
その背中は僕に気づくと振り返り、会釈をして微笑んだ。
「思い出しました、京ノ介の上司の有馬さん」
「彼は昇進したんだよ、今は殻抓さんの元にいる。だから彼はただの昔好に戻ってしまった。寂しいような嬉しいような複雑だ。話は変わるが君は此処に何をしに?」
「お手伝いに来て頂いているの。隆ノ介さんのご厚意で。私だけでは手が回りませので……、それより有馬さま―――…心は落ち着かれましたか。お仕事でもお疲れになられるでしょう」
尼は開いた口を遮るように僕の背中をポンポンっと叩いてお茶とお菓子を持って来てと囁いた。頷いて台所から菓子器を持って戻って来るとつい、僕は足をとめて戸惑ってしまった。
「京ノ介は親になることが怖いのでしょうか」
不意に見せる母親の顔。
“自分の情は俗世においてきたのだ”と強がっていても母親の表情を時折に見せる彼女を見るのが僕は好きだった。
「経済力は安定していると思うし、心配ないはず」
有馬は胡座をかいて首を傾げる。
いつまでも入り口に立っているのもおかしなものと思った僕は深く勘ぐらない口調でつぶやきながら部屋に入った。
「セ―――性行為の仕方を知らないんじゃない?」
「……この、ませガキが口を慎め」
真っ赤になった有馬が煎餅の入った菓子器を僕に押しやった。
「まったく、この子は恥じらいなく破廉恥な事を恥ずかしげも無く」
尼が軽く、僕をどついた。
「確かに健全男児が一晩、隣におんながいてそれなりに絡まれても指一本触れずに“そんな指示は受けていない”って言える漢は疑うべきだったな」
「え?逆にスゲー」
「私はおなごに休みをやりたくて若い者を連れて行くと誰もが手を出して帰って来るが、京ノ介だけは本当に手を出さないから部屋に呼ぶと自分を呼んで欲しいっておなごが沢山いたんだ。」
「何で?そういう事を許される店でしょう?」
「“自分は本当に好いたおなごにしかやらない”とか決めていたのかもしれないな、まぁ~分からないけど」
昨晩のことが脳裏を過ぎり一瞬、僕は首から上が熱くなったので慌てて吹っ切るように首を振った。
「ささ、足元が暗くならないうちにお帰りください」
何やかんやと急き立てられて帰ることになった帰り道で足を止めた僕に彼は振り返った。
「あの奥の建物は何ですか? 京ノ介もヨネさんもあの建物は草毟りまでで良い、中には決して入ってはいけないって」
未来には公園の敷地に隣接してしまう寺の辺りは撤去したものも多いと聞いたが。僕は門を出た所でもう一度遠くを見る。
「ところで君の時代には宗教はどうなってるんだ?」
――――宗教?
いやいや、気にする所は……
――――今、なんて言ってた?
「僕、その話したことありましたっけ」
防御全開の敵視した表情で僕は彼に視線を投げた。
「ヨネちゃんが一人で抱えるのが辛いと私に話してきたんだ。京ノ介に聞いたわけではない」
「……そうですか。“信仰の自由”……基本的定められたのはずっと、ずっと先になります。大きな過ちから少しずつ護りたい約束事は躓いた後から法的な形へと出来ていく。
僕はこだわりはないけど神頼み――というものです。解決出来たらきっと帰えられると思っています、でも僕は“狭山”じゃない。“京都”です。京都陽」
―――――
―――――――――――
「…私、三十路になってしまいますよ」
「……」
縁側に腰掛ける綾の膝に倒れていた京ノ介は腕を組んだまま背中を見せる。
咳払いが機嫌をみせる。
深い溜息。
感情を見せない彼が唯一みせる表情だ。
「……ねぇ―――」
「何」
ぎゅっと瞼を閉じて珍しく放つ言葉という強い口調。
「そろそろ、2人とも帰ってくるかも」
「……」
はぁ~……っと吐き出して起き上がると、髪を弄り部屋にある時計を見ている。
「京ノ介さん、あのっ……」
「出掛けてくる」
「今からですか?何処に」
「最近の貴女には監視をされているみたいで気が休まらない」
「……え……?」
玄関に向かう京ノ介を追いかける様に綾は付いてきた。
「いつ頃にお戻り―――」
「明日」
「泊まるの?何処に」
「何処だって自分は大人です」
ガラッ……
扉を開けたところで陽と鉢合わせになった。
「出掛けてくる」
「何処に行くの?」
んんんっ……
喉の奥から咳払いが聞こえる。
「どうしたんだよ」
隆ノ介に背中を擦られて彼は額を掴んで彼の方に持たれた。
「綾ちゃん、陽のだけ用意してやって」
彼は僕の背中を押しやった。
「行くぞ、蕎麦なら奢ろう」
隆ノ介はそのまま肩を抱えて出ていった。
「未来は変わって良い」
「……」
「父上とか京から言われることは一生ないと思っていたから未だに慣れなくてな。言わなれないけど」
「母上は骨を拾う気にもなれません。如何なる理由があろうと嫌なんです。子供ながらに淋しかった。赤子を視れば自分がみている世界は何だかわからなくなり、肩車をされる子を見れば羨ましかった。抱き寄せられたり、抱かさる子、親の開いた腕の中に駆け込む子を見ると……」
京ノ介が顔を上げると頬杖をついて聞く隆之介と目が合った。
「駆け込む子を見ると?」
「あの腕の中の暖かさを私は知らない」
「陽は憶えてるかもな」
「……」
「未来は変わってしまうかどうかまでは分からないが、変わってしまうかどうかわからないなら好きに生きて良い。陽もきっと、そう言いたいんじゃないか?
だから“未来は変わっても良いい”と言ったんだと思うぞ。京ノ介が生きた事で奴が存在してる」
―――――
――――――――――――
“私、三十路になってしまいますよ”―――――
両手で顔を覆う綾の隣に陽は腰掛けた。
ギシリ……
「夫婦なのに1年くらい触れないでいられるの尊敬するわ」
「……」
「誘わないの?」
「そんな端ないこと出来ないわ。おなごからその――さ、誘う何て……」
「僕は未来から呼ばれた。自分でも今が夢なのか、現実なのか分からなくてツラい。将来のための準備は必要だと思う。備えとして。でも、未来の為に今を生きる人が犠牲になるのは嫌なんだ。僕はどんな未来でも良い。自分が消えても良い」
そっと、手が温かくなった。
顔を上げると彼女が微笑んでいた。
「京ノ介さんのずっと、ずっと遠い未来に生きる人なのね」
「信じてくれるの…?」
「隆ノ介さんと似てるってずっと思って見ていたら、あなたも京ノ介さんの陰とそっくりな時がある。自分を大事にしないでいつも、誰かのために動いてしまうの。私にも出来ることがあったら力になりたい。陽さん、諦めないでね」
「……うん」
廊下の柱に寄りかかり、月を見ているうちにいつの間にやら眠ってしまったようだ。
ガラッ……
「……おいっ……」
隆ノ介の声が僅かに聞こえたような気がした。首に激痛が走った衝撃で目が覚めたので一瞬、何が起こったのか分からなかった。
ヒヤッとした片腕の次にきたのは硬い床へ背中と後頭部が打ち付けられた感覚だった。
「かはっ……こほ、こほっ……あぁっ……」
なんとも腑抜けた自分の声に呆れたが、覚めきっていない頭で片目すら開かない。
「やめろ!絶対に誤解だから」
ゴツゴツした節々の感覚と微かに見えた隆ノ介の着物の裾が視界を遮った。
「京ノ介さん、やめて。話しているうちに寝てしまっただけなの!」
背中を支えられて起こされたものの僕は恐怖で目を開けられなかった。
「すまない、部屋に送ろう」
腕を肩にかけられて人形のように運ばれた。
京ノ介が部屋の襖を開けると、綾は此方に向き直してから駆け寄ってきた。
「あの、おかえりなさい。…今更ですが」
「すまない、今日も疲れているんだ。寝てもいいかな」
(まるで顔を見るたびに私がいつも求めてるみたいな言い草……。そんなに私、端ない盛りのついた猫みたいな事はしていないのに)
腹が立つのに恥ずかしい。
綾は視線を外して頭を下げた。
「おやすみなさい」
背を向け彼の背中に声をかけて離れようとすると布団を捲り、こちらを見た。
「ここでは嫌ですか」
不意打ちに裏返りそうな声を抑えて小首を傾げた。
「え?其処だと狭いと思いますが……」
「……ふっ……そうですね、おやすみなさい」
パタンっ……
襖が閉まると一気に溜めた息を吐き出した。
ぷはぁ~
……どうしたら、君に触れられんだ。
――――
―――――――――――
積極的だと驚かされたり、鈍いのかと疑う事もあって。
いつも、あなたは―――……
「今日も遅いの?」
見送りに追いかけてきた陽が尋ねる。
「今日は話と言うほど大袈裟なことじゃないんだけど、その、話をしておきたくてさ」
「んー、分かった。どこにも寄らずに帰ってこよう」
頭をがっしり掴んでグシャグシャと髪を散らす。
「一応、僕は大人なんですが!」
照れ隠しに払ってみせたけど。
薄っすら頭の隅に残るじいちゃんの癖だった。口下手で言葉に出さない人だったから通訳するばぁちゃんも「面倒だから自分でいいなさいな」と笑っていた。
“良く来たね”もグシャグシャ。
“頑張ったな”もグシャグシャ。
“良い子だ”もグシャグシャ。
怒る顔は見たことがなくて。
でも、総て真顔でグシャグシャグシャ。
「おじいちゃん、今さ……
僕は良い子じゃないの?美容師の夢は裏切ってしまうのかな。でも、僕はお父さんみたいな医者になれるほど頭は良くないし……医者とか興味が沸かない」
「生きるために活かされた命を生きないのが一番の裏切りだ」
大学進学。就職。専門学校。
悩んだ時に家を飛び出したものの行く当てが見つからずに祖父母の家に行ったあの日。
あとにも先にも彼から聞いた言葉はこの一言だけだ。
じいちゃんが話した。
じいちゃんの名言(笑)―――…。
「ここで生きたい」
隆ノ介はお茶を噴水の如く噴き出した。
「いつか、帰れるかもしれないって話はどうしたんだよ」
「分からない」
噎せた隆ノ介の背中をさする綾も月日が経つうちに耳には入っていたのだろう。問だ出すこともなく、自然に会話に入って来るのだ。
「命はそんなものだと相槌を打ちそうですね。私は弟が居るみたいで楽しいですよ」
「京ノ介はお前を完全に“ガキ”扱いだな。おっと……」
隆ノ介は綾をちらりと見て口を噤んだ。
「また、明日――お願いしますね」
「有難うございました」
護衛の衣服を脱いだ京ノ介は秘書に挨拶を済ませて守衛室を抜けた所で小森と出くわした。
「久しぶりだな、カフェーにでも行かないか。」
「いや、今日は待たれてるから。また、誘ってくれ」
「週末だもんな。隆ノ介さん、締め切りで忙しいなら行きましょうか?」
ニヤニヤして肘で突いてきた。
「また、掛けてるのか?」
「締め切りと解きまして仕事と解く。その心は」
「ハイハイハイハイ、其処まで……と、待った!やっぱり行かないか。蕎麦屋でも良いから」
「あら?京ノ介クンまで隠語を使うようになったなんて。だご、成長したじゃなーい?」
「蕎麦…傍…って…違うから!」
肩に飛び付いて肩を抱いて小森は少しよろけて。
たまにじゃれ合うこの時間が京ノ介も小森も好きだった。
どんなに辛くても忠誠は互いに全うしなければならない。
だから、互いに職務の機密は曝さない。それでも、絆は友として消したくない。
「床の進め方を」
「接吻して剥ぐ」
「……」
「……知らんがな!俺だって買ったことしかないわ」
アホらし、と呟く“弥っちゃん”に目を細める小森。
「何か話しなさいよ」
ビクッ……っとして振り返ると“雪花”が座っていた。
「ゆきっ――花さん、お久しぶりです」
小森は思わず立ち上がった。
今は自由の身――雪菜こと花である。
「京ノ介さま、教えてあげましょう。
奥様だっていつまでも天然なだけの小娘じゃないんですよ?」
京ノ介は小声で昨日の流れを掻い摘んで話した。彼女はクスクスとわらった。
「完全に照れ隠しですよ、それ」
「え?では……その、その先が動けないで安心してしまったのだが」
「“狭い方が私には好都合です”。あとは流れに乗って。」
「吐息を」
隣の小森の耳元に囁いたので小森はみるみるうちに顔が赤らんだ
「小森さんたらまだ女馴していらっしゃらないの?……そうだわ、狭山さん」
彼女はさらり、と身を乗り出して京ノ介に顔を向けた。
「はい」
「私、もう花っていうのよ?今は女将してるの。畑違いの世界も一から丁稚の手伝いから帳面まで覚えたわ」
「凄い、尊敬します」
「小さい時から自分の人生はないって諦めていたの。だから、今とても幸せ」
「良い方に出会えたんですね」
「人って贅沢知ったら転がり落ちていく」
ぞわりっ―――……
嗤う瞳の奥に見える野心の光。
小森ですら真顔で彼女をみた。
「旦那様には感謝してる。身体一つで生き死にも選べない鳥籠の中から救ってくれた事で外の世界で生きる未来をくれた。自分を労ること、損得なしに甘えるって大切な事も。でも、気づいちゃった」
机に視線をおとしていた京ノ介の前から白湯の入った湯呑がザラッ!と音を立てて消えた。無意識に顔を上げた視界の真ん中に湯呑を片手に見つめる彼女がいる。
彼女と目があった寸時に絡まれた視線が離せなくなった。
艶のある瞳にずっといたくなるのだ。
「私、お友達がいなかった」
クスクス……
呪縛から解かれた様に彼女はころころとわらった。
「狭山さん、小森さん2人とも私のお友達になって下さる?狭山さんとは奥様とも繋がれば女子のお友達も出来るかもしれないし」
「そんなことなら喜んで」
「小森さんも駄目ですか」
「え、あ……よろしく」
「また、お会いできるようになるなんて嬉しい。夕飯、教わる時間だわ。また」
彼女は会釈をして店を出ていった。
「友達で終われよ?所帯持ちでさえ、手玉にとっていたんだか……」
「今は違うんだから」
「京ノ介は一人で会うな。知らなかっただろうけど、有馬さんがどれだけ娘達に京ノ介を強請られていたか。タカと違って美形で優しくて気遣いが出来てそのうえに一晩、過ごしても指先すら触れてこない安全圏。色恋よりも忠誠とか漢だしな」
「所帯持ちは向こうも同じだ」
―――――――
―――――――――――――
随分と遅いな……。
気にしている素振りは見せないようにしていたが、先日もらった柱時計に似た小さな時計の針が容赦なく左右に揺れている。
「珍しいか」
「明治から時間の読み方が今寄りになった話は知ってるけど、目がチカチカしてくる」
隆ノ介は隣に座り“だな”って笑った。
定時上がりの部署に配属になったはずだが何かあったのだろうか。
「携帯が出来て便利になったんだな」
「携帯?」
最近では堂々と彼らの前では令和の話を口にしている。
「携帯電話って言って“今どこにいる”とか“何をしてる”――とかさ、すんごい小さい通信機が出来て伝承鳩より速くて、きっと瞬間!忍者の手裏剣並みに離れているのに海外からの通信もあっという間に繋がって話せる物が出来るんだ」
「ほぅ、凄いな」
「“遅くなるよ”とか釦操作で繋がって」
「楽しいな。御伽噺みたいな現実に生きる陽はこの暮らしは苦しかろう」
くしゃくしゃ……
……あったかいゴツゴツした歳を重ねた皮膚とでっかい手。
遺伝かな……。
いつか、僕も大切な家族の髪を撫で散らかすのだろうか。
ガラッ…
「京―――……」
玄関に向かう僕は一瞬にして追い抜かれた。
「すみません、奥様……蕎麦屋で私の愚痴を聞いてもらううちに呑ませてしまいまして」
小森が玄関に座り、肩にかけた彼の腕を外して降ろした。
「明日は非番と聞いて私も羽目を外してしまいまして。」
「送って頂き有難うございました」
綾は深々と頭をさげてお礼を伝えて陽に目配せをした。
「あの、奥様」
振り返る僕に気づいて押し黙ったので背を向けて彼を部屋に運ぶことにした。
「えと、何か」
「花さんをご存じでしょうか」
「花さん?」
「ヨッパライの戯言です。花街にいた今は身請けされて立派な女将ですが、かつて京ノ介を好いていたオンナです。その女子と蕎麦屋で出会して“友達になってほしい。”と言われました。有馬さんに聞いた話だと禿の頃は惹かれ合った仲だと」
「やめろよ、酔ってないだろ。あんた」
ギンッ、と睨んで戻ってきた僕に彼は咳払いを一つして此方に微笑んだ。
「参ったな」
「送ってくださり有難うございました、小森サン」
「ヨッパライの戯言ですが…ずーっと気になっていました。京都陽サンは狭山京ノ介とどんな関係ですか。私は冗談無しで赤子の時代から知っています。遠い親戚……否、腹違いの兄弟……否、恩人いや違うな――だったらお前《おまん》は何者じゃあ?」
ビクッ……
ジャリ……ジャリ………
にじり寄る彼に縛られる様に僕の身体は動かなくなって行った。
ハァ……ハァ……
心臓が握り潰されると本気で思った――――
――――息が出来ない……
「ヨッパライの戯言ですが」
朦朧とする意識の中に彼の声が響いた――――
「未来に生きる私の息子だ。私を信じて手をださないでくれないか」
「は?」
殺気の様な魔術が消えた……
――ガタンッ!――
抑えられていた力がなくなったせいか、息は普通に出来るように戻ったものの僕は床に叩きつけられたように倒れた。
いつも、犬ころみたいに人懐っこい小森。きっと、さっきの妖術みたのは仕事で見せる彼の顔なのかもしれない。
だとしたら、僕はあのときあの人を本気で怒らせてしまったのだ……。
季節は巡るばかりだった。
……帰りたい―――。
そう、打ち明ける相手すらいない。
気晴らしに外に出たところで茗雲寺の境内に腰掛けたり、像を拭いたり、床に雑巾をかけたりする(掃除屋じゃないっての!)――――…。
「何をしてんだろ」
「陽さん、お茶にしませんか」
尼に呼ばれて台所に入ると湯のみが3つ置いてある。取り敢えず、其々に茶を注いで持ってきた。
「今日も有難う」
「お済みならご一緒に」
奥の人が行かない建物の方から見覚えのある男の後ろ姿と声が尼の後ろをついて行った。
その背中は僕に気づくと振り返り、会釈をして微笑んだ。
「思い出しました、京ノ介の上司の有馬さん」
「彼は昇進したんだよ、今は殻抓さんの元にいる。だから彼はただの昔好に戻ってしまった。寂しいような嬉しいような複雑だ。話は変わるが君は此処に何をしに?」
「お手伝いに来て頂いているの。隆ノ介さんのご厚意で。私だけでは手が回りませので……、それより有馬さま―――…心は落ち着かれましたか。お仕事でもお疲れになられるでしょう」
尼は開いた口を遮るように僕の背中をポンポンっと叩いてお茶とお菓子を持って来てと囁いた。頷いて台所から菓子器を持って戻って来るとつい、僕は足をとめて戸惑ってしまった。
「京ノ介は親になることが怖いのでしょうか」
不意に見せる母親の顔。
“自分の情は俗世においてきたのだ”と強がっていても母親の表情を時折に見せる彼女を見るのが僕は好きだった。
「経済力は安定していると思うし、心配ないはず」
有馬は胡座をかいて首を傾げる。
いつまでも入り口に立っているのもおかしなものと思った僕は深く勘ぐらない口調でつぶやきながら部屋に入った。
「セ―――性行為の仕方を知らないんじゃない?」
「……この、ませガキが口を慎め」
真っ赤になった有馬が煎餅の入った菓子器を僕に押しやった。
「まったく、この子は恥じらいなく破廉恥な事を恥ずかしげも無く」
尼が軽く、僕をどついた。
「確かに健全男児が一晩、隣におんながいてそれなりに絡まれても指一本触れずに“そんな指示は受けていない”って言える漢は疑うべきだったな」
「え?逆にスゲー」
「私はおなごに休みをやりたくて若い者を連れて行くと誰もが手を出して帰って来るが、京ノ介だけは本当に手を出さないから部屋に呼ぶと自分を呼んで欲しいっておなごが沢山いたんだ。」
「何で?そういう事を許される店でしょう?」
「“自分は本当に好いたおなごにしかやらない”とか決めていたのかもしれないな、まぁ~分からないけど」
昨晩のことが脳裏を過ぎり一瞬、僕は首から上が熱くなったので慌てて吹っ切るように首を振った。
「ささ、足元が暗くならないうちにお帰りください」
何やかんやと急き立てられて帰ることになった帰り道で足を止めた僕に彼は振り返った。
「あの奥の建物は何ですか? 京ノ介もヨネさんもあの建物は草毟りまでで良い、中には決して入ってはいけないって」
未来には公園の敷地に隣接してしまう寺の辺りは撤去したものも多いと聞いたが。僕は門を出た所でもう一度遠くを見る。
「ところで君の時代には宗教はどうなってるんだ?」
――――宗教?
いやいや、気にする所は……
――――今、なんて言ってた?
「僕、その話したことありましたっけ」
防御全開の敵視した表情で僕は彼に視線を投げた。
「ヨネちゃんが一人で抱えるのが辛いと私に話してきたんだ。京ノ介に聞いたわけではない」
「……そうですか。“信仰の自由”……基本的定められたのはずっと、ずっと先になります。大きな過ちから少しずつ護りたい約束事は躓いた後から法的な形へと出来ていく。
僕はこだわりはないけど神頼み――というものです。解決出来たらきっと帰えられると思っています、でも僕は“狭山”じゃない。“京都”です。京都陽」
―――――
―――――――――――
「…私、三十路になってしまいますよ」
「……」
縁側に腰掛ける綾の膝に倒れていた京ノ介は腕を組んだまま背中を見せる。
咳払いが機嫌をみせる。
深い溜息。
感情を見せない彼が唯一みせる表情だ。
「……ねぇ―――」
「何」
ぎゅっと瞼を閉じて珍しく放つ言葉という強い口調。
「そろそろ、2人とも帰ってくるかも」
「……」
はぁ~……っと吐き出して起き上がると、髪を弄り部屋にある時計を見ている。
「京ノ介さん、あのっ……」
「出掛けてくる」
「今からですか?何処に」
「最近の貴女には監視をされているみたいで気が休まらない」
「……え……?」
玄関に向かう京ノ介を追いかける様に綾は付いてきた。
「いつ頃にお戻り―――」
「明日」
「泊まるの?何処に」
「何処だって自分は大人です」
ガラッ……
扉を開けたところで陽と鉢合わせになった。
「出掛けてくる」
「何処に行くの?」
んんんっ……
喉の奥から咳払いが聞こえる。
「どうしたんだよ」
隆ノ介に背中を擦られて彼は額を掴んで彼の方に持たれた。
「綾ちゃん、陽のだけ用意してやって」
彼は僕の背中を押しやった。
「行くぞ、蕎麦なら奢ろう」
隆ノ介はそのまま肩を抱えて出ていった。
「未来は変わって良い」
「……」
「父上とか京から言われることは一生ないと思っていたから未だに慣れなくてな。言わなれないけど」
「母上は骨を拾う気にもなれません。如何なる理由があろうと嫌なんです。子供ながらに淋しかった。赤子を視れば自分がみている世界は何だかわからなくなり、肩車をされる子を見れば羨ましかった。抱き寄せられたり、抱かさる子、親の開いた腕の中に駆け込む子を見ると……」
京ノ介が顔を上げると頬杖をついて聞く隆之介と目が合った。
「駆け込む子を見ると?」
「あの腕の中の暖かさを私は知らない」
「陽は憶えてるかもな」
「……」
「未来は変わってしまうかどうかまでは分からないが、変わってしまうかどうかわからないなら好きに生きて良い。陽もきっと、そう言いたいんじゃないか?
だから“未来は変わっても良いい”と言ったんだと思うぞ。京ノ介が生きた事で奴が存在してる」
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“私、三十路になってしまいますよ”―――――
両手で顔を覆う綾の隣に陽は腰掛けた。
ギシリ……
「夫婦なのに1年くらい触れないでいられるの尊敬するわ」
「……」
「誘わないの?」
「そんな端ないこと出来ないわ。おなごからその――さ、誘う何て……」
「僕は未来から呼ばれた。自分でも今が夢なのか、現実なのか分からなくてツラい。将来のための準備は必要だと思う。備えとして。でも、未来の為に今を生きる人が犠牲になるのは嫌なんだ。僕はどんな未来でも良い。自分が消えても良い」
そっと、手が温かくなった。
顔を上げると彼女が微笑んでいた。
「京ノ介さんのずっと、ずっと遠い未来に生きる人なのね」
「信じてくれるの…?」
「隆ノ介さんと似てるってずっと思って見ていたら、あなたも京ノ介さんの陰とそっくりな時がある。自分を大事にしないでいつも、誰かのために動いてしまうの。私にも出来ることがあったら力になりたい。陽さん、諦めないでね」
「……うん」
廊下の柱に寄りかかり、月を見ているうちにいつの間にやら眠ってしまったようだ。
ガラッ……
「……おいっ……」
隆ノ介の声が僅かに聞こえたような気がした。首に激痛が走った衝撃で目が覚めたので一瞬、何が起こったのか分からなかった。
ヒヤッとした片腕の次にきたのは硬い床へ背中と後頭部が打ち付けられた感覚だった。
「かはっ……こほ、こほっ……あぁっ……」
なんとも腑抜けた自分の声に呆れたが、覚めきっていない頭で片目すら開かない。
「やめろ!絶対に誤解だから」
ゴツゴツした節々の感覚と微かに見えた隆ノ介の着物の裾が視界を遮った。
「京ノ介さん、やめて。話しているうちに寝てしまっただけなの!」
背中を支えられて起こされたものの僕は恐怖で目を開けられなかった。
「すまない、部屋に送ろう」
腕を肩にかけられて人形のように運ばれた。
京ノ介が部屋の襖を開けると、綾は此方に向き直してから駆け寄ってきた。
「あの、おかえりなさい。…今更ですが」
「すまない、今日も疲れているんだ。寝てもいいかな」
(まるで顔を見るたびに私がいつも求めてるみたいな言い草……。そんなに私、端ない盛りのついた猫みたいな事はしていないのに)
腹が立つのに恥ずかしい。
綾は視線を外して頭を下げた。
「おやすみなさい」
背を向け彼の背中に声をかけて離れようとすると布団を捲り、こちらを見た。
「ここでは嫌ですか」
不意打ちに裏返りそうな声を抑えて小首を傾げた。
「え?其処だと狭いと思いますが……」
「……ふっ……そうですね、おやすみなさい」
パタンっ……
襖が閉まると一気に溜めた息を吐き出した。
ぷはぁ~
……どうしたら、君に触れられんだ。
――――
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積極的だと驚かされたり、鈍いのかと疑う事もあって。
いつも、あなたは―――……
「今日も遅いの?」
見送りに追いかけてきた陽が尋ねる。
「今日は話と言うほど大袈裟なことじゃないんだけど、その、話をしておきたくてさ」
「んー、分かった。どこにも寄らずに帰ってこよう」
頭をがっしり掴んでグシャグシャと髪を散らす。
「一応、僕は大人なんですが!」
照れ隠しに払ってみせたけど。
薄っすら頭の隅に残るじいちゃんの癖だった。口下手で言葉に出さない人だったから通訳するばぁちゃんも「面倒だから自分でいいなさいな」と笑っていた。
“良く来たね”もグシャグシャ。
“頑張ったな”もグシャグシャ。
“良い子だ”もグシャグシャ。
怒る顔は見たことがなくて。
でも、総て真顔でグシャグシャグシャ。
「おじいちゃん、今さ……
僕は良い子じゃないの?美容師の夢は裏切ってしまうのかな。でも、僕はお父さんみたいな医者になれるほど頭は良くないし……医者とか興味が沸かない」
「生きるために活かされた命を生きないのが一番の裏切りだ」
大学進学。就職。専門学校。
悩んだ時に家を飛び出したものの行く当てが見つからずに祖父母の家に行ったあの日。
あとにも先にも彼から聞いた言葉はこの一言だけだ。
じいちゃんが話した。
じいちゃんの名言(笑)―――…。
「ここで生きたい」
隆ノ介はお茶を噴水の如く噴き出した。
「いつか、帰れるかもしれないって話はどうしたんだよ」
「分からない」
噎せた隆ノ介の背中をさする綾も月日が経つうちに耳には入っていたのだろう。問だ出すこともなく、自然に会話に入って来るのだ。
「命はそんなものだと相槌を打ちそうですね。私は弟が居るみたいで楽しいですよ」
「京ノ介はお前を完全に“ガキ”扱いだな。おっと……」
隆ノ介は綾をちらりと見て口を噤んだ。
「また、明日――お願いしますね」
「有難うございました」
護衛の衣服を脱いだ京ノ介は秘書に挨拶を済ませて守衛室を抜けた所で小森と出くわした。
「久しぶりだな、カフェーにでも行かないか。」
「いや、今日は待たれてるから。また、誘ってくれ」
「週末だもんな。隆ノ介さん、締め切りで忙しいなら行きましょうか?」
ニヤニヤして肘で突いてきた。
「また、掛けてるのか?」
「締め切りと解きまして仕事と解く。その心は」
「ハイハイハイハイ、其処まで……と、待った!やっぱり行かないか。蕎麦屋でも良いから」
「あら?京ノ介クンまで隠語を使うようになったなんて。だご、成長したじゃなーい?」
「蕎麦…傍…って…違うから!」
肩に飛び付いて肩を抱いて小森は少しよろけて。
たまにじゃれ合うこの時間が京ノ介も小森も好きだった。
どんなに辛くても忠誠は互いに全うしなければならない。
だから、互いに職務の機密は曝さない。それでも、絆は友として消したくない。
「床の進め方を」
「接吻して剥ぐ」
「……」
「……知らんがな!俺だって買ったことしかないわ」
アホらし、と呟く“弥っちゃん”に目を細める小森。
「何か話しなさいよ」
ビクッ……っとして振り返ると“雪花”が座っていた。
「ゆきっ――花さん、お久しぶりです」
小森は思わず立ち上がった。
今は自由の身――雪菜こと花である。
「京ノ介さま、教えてあげましょう。
奥様だっていつまでも天然なだけの小娘じゃないんですよ?」
京ノ介は小声で昨日の流れを掻い摘んで話した。彼女はクスクスとわらった。
「完全に照れ隠しですよ、それ」
「え?では……その、その先が動けないで安心してしまったのだが」
「“狭い方が私には好都合です”。あとは流れに乗って。」
「吐息を」
隣の小森の耳元に囁いたので小森はみるみるうちに顔が赤らんだ
「小森さんたらまだ女馴していらっしゃらないの?……そうだわ、狭山さん」
彼女はさらり、と身を乗り出して京ノ介に顔を向けた。
「はい」
「私、もう花っていうのよ?今は女将してるの。畑違いの世界も一から丁稚の手伝いから帳面まで覚えたわ」
「凄い、尊敬します」
「小さい時から自分の人生はないって諦めていたの。だから、今とても幸せ」
「良い方に出会えたんですね」
「人って贅沢知ったら転がり落ちていく」
ぞわりっ―――……
嗤う瞳の奥に見える野心の光。
小森ですら真顔で彼女をみた。
「旦那様には感謝してる。身体一つで生き死にも選べない鳥籠の中から救ってくれた事で外の世界で生きる未来をくれた。自分を労ること、損得なしに甘えるって大切な事も。でも、気づいちゃった」
机に視線をおとしていた京ノ介の前から白湯の入った湯呑がザラッ!と音を立てて消えた。無意識に顔を上げた視界の真ん中に湯呑を片手に見つめる彼女がいる。
彼女と目があった寸時に絡まれた視線が離せなくなった。
艶のある瞳にずっといたくなるのだ。
「私、お友達がいなかった」
クスクス……
呪縛から解かれた様に彼女はころころとわらった。
「狭山さん、小森さん2人とも私のお友達になって下さる?狭山さんとは奥様とも繋がれば女子のお友達も出来るかもしれないし」
「そんなことなら喜んで」
「小森さんも駄目ですか」
「え、あ……よろしく」
「また、お会いできるようになるなんて嬉しい。夕飯、教わる時間だわ。また」
彼女は会釈をして店を出ていった。
「友達で終われよ?所帯持ちでさえ、手玉にとっていたんだか……」
「今は違うんだから」
「京ノ介は一人で会うな。知らなかっただろうけど、有馬さんがどれだけ娘達に京ノ介を強請られていたか。タカと違って美形で優しくて気遣いが出来てそのうえに一晩、過ごしても指先すら触れてこない安全圏。色恋よりも忠誠とか漢だしな」
「所帯持ちは向こうも同じだ」
―――――――
―――――――――――――
随分と遅いな……。
気にしている素振りは見せないようにしていたが、先日もらった柱時計に似た小さな時計の針が容赦なく左右に揺れている。
「珍しいか」
「明治から時間の読み方が今寄りになった話は知ってるけど、目がチカチカしてくる」
隆ノ介は隣に座り“だな”って笑った。
定時上がりの部署に配属になったはずだが何かあったのだろうか。
「携帯が出来て便利になったんだな」
「携帯?」
最近では堂々と彼らの前では令和の話を口にしている。
「携帯電話って言って“今どこにいる”とか“何をしてる”――とかさ、すんごい小さい通信機が出来て伝承鳩より速くて、きっと瞬間!忍者の手裏剣並みに離れているのに海外からの通信もあっという間に繋がって話せる物が出来るんだ」
「ほぅ、凄いな」
「“遅くなるよ”とか釦操作で繋がって」
「楽しいな。御伽噺みたいな現実に生きる陽はこの暮らしは苦しかろう」
くしゃくしゃ……
……あったかいゴツゴツした歳を重ねた皮膚とでっかい手。
遺伝かな……。
いつか、僕も大切な家族の髪を撫で散らかすのだろうか。
ガラッ…
「京―――……」
玄関に向かう僕は一瞬にして追い抜かれた。
「すみません、奥様……蕎麦屋で私の愚痴を聞いてもらううちに呑ませてしまいまして」
小森が玄関に座り、肩にかけた彼の腕を外して降ろした。
「明日は非番と聞いて私も羽目を外してしまいまして。」
「送って頂き有難うございました」
綾は深々と頭をさげてお礼を伝えて陽に目配せをした。
「あの、奥様」
振り返る僕に気づいて押し黙ったので背を向けて彼を部屋に運ぶことにした。
「えと、何か」
「花さんをご存じでしょうか」
「花さん?」
「ヨッパライの戯言です。花街にいた今は身請けされて立派な女将ですが、かつて京ノ介を好いていたオンナです。その女子と蕎麦屋で出会して“友達になってほしい。”と言われました。有馬さんに聞いた話だと禿の頃は惹かれ合った仲だと」
「やめろよ、酔ってないだろ。あんた」
ギンッ、と睨んで戻ってきた僕に彼は咳払いを一つして此方に微笑んだ。
「参ったな」
「送ってくださり有難うございました、小森サン」
「ヨッパライの戯言ですが…ずーっと気になっていました。京都陽サンは狭山京ノ介とどんな関係ですか。私は冗談無しで赤子の時代から知っています。遠い親戚……否、腹違いの兄弟……否、恩人いや違うな――だったらお前《おまん》は何者じゃあ?」
ビクッ……
ジャリ……ジャリ………
にじり寄る彼に縛られる様に僕の身体は動かなくなって行った。
ハァ……ハァ……
心臓が握り潰されると本気で思った――――
――――息が出来ない……
「ヨッパライの戯言ですが」
朦朧とする意識の中に彼の声が響いた――――
「未来に生きる私の息子だ。私を信じて手をださないでくれないか」
「は?」
殺気の様な魔術が消えた……
――ガタンッ!――
抑えられていた力がなくなったせいか、息は普通に出来るように戻ったものの僕は床に叩きつけられたように倒れた。
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だとしたら、僕はあのときあの人を本気で怒らせてしまったのだ……。
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