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波多見錘

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欲望の怨嗟

side01 ハズレくじ

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 「零陵一だな?」

 ある日の放課後、俺は後ろから声をかけられる。振り返ると、俺の背後をとるようにして5人ほど殺気立った男たちが集まっていた。
 別人に用があるのだと思いたいが、残念ながら俺の名前を呼ばれた時点でゲームオーバーだ。

 「こっちに来い」

 特に何も答えずにいると、なにかの了承ととらえたのかそう言ってきた。
 呆然と立ち尽くしていると、そのまま不良であろう5人組がどこかに歩いていく。

 姿が見えなくなったところで、俺は奴らの歩いて行った方向とは真逆の方向―――つまるところ、自宅へと向かっていった。

 相手にしなくていいのかって?するだけ馬鹿だ。

 そのまま俺は自宅へと帰っていった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「なあ……」
 「……今度はお前か」
 「おま―――零陵、一応先輩なんだぞ?礼儀を知らないのか?」
 「敬語は敬うべき相手に使うと聞いているが?お前はそれに値していないはずだ」
 「ぐっ……まあいい。とにかくこっちに来い」

 そう言って俺に話しかけてきた男―――生徒会副会長の月野だっただろうか?馬鹿の名前はどうでもいいか。
 そいつが俺の手を引いて、歩き始める。

 俺が連れてこられたのは、不良生徒しか近寄らない校舎裏だ。
 まあ、こんな監視の目が行き届かない場所なんて、好き好んでくるものじゃない。

 バンッ!

 ついて早々、俺は男に壁ドンをされていた。特になんとも思っていない男の顔が至近距離にある―――吐き気を催す気持ち悪さだ。

 これが生徒会長―――紀里谷先輩ならどうなのだろうか?俺は今と違って受け入れられるのだろうか?
 変なことを考えるが、目の前のことに集中しなければと思い直す。

 「お前さ、調子乗ってるよね?」
 「……は?」
 「生徒会長に気に入られて、ちょっと力が強いからってこの学校で一番にでもなったつもりか?」
 「一番ってガキかよ?そういう低知能だから俺に敬われないんじゃないの?」

 俺の煽りに対して相手はあからさまに苛立ちを見せる。

 「お前が俺を敬う敬わないはこの際どうでもいい。お前みたいな不良が生徒会長と仲良くしていると体裁が悪いんだよ!彼女は、1年のうちからいろんな人の助けになって、いろんなボランティアに参加して、全校生徒からこの人ならと言わしめるほどの信頼を得たんだ。それをお前が!」
 「―――言葉遣いが崩れてるぞ?それが本性か?」
 「とにかく!早く会長と縁を切らないと痛い目を見るぞ!」
 「ご忠告どうも。でも知りたいなあ、お前の言う痛い思いってのも。なあ?」
 「ちっ、薄気味悪い奴だな。とにかく分かったか?これ以降会長に近づくな。これ以上、彼女の評判を下げるようなことはするなよ」

 断りたい、相手の物言いにそんな感情が湧いてくるが、俺も冷静に考える。
 できることなら、俺は会長にかかわりたくはない。巻き込む形になってしまえば、必ず彼女が不幸になる。それは俺の望む形ではない。

 ただ、ここで俺が了承しようとも絡んできているのは生徒会長のほうで会って俺ではない。つまり、俺がどう思おうが知ったことじゃないとの話だ。

 しかし、俺のその沈黙を勝手に了承と捉えて副会長は俺を話して唾を吐き捨てながら去っていった。なんだろうか、ああいう輩は沈黙を了承と撮るのが流行っているのだろうか?
 つまらない生き方だ。

 ただ、本当に巻き込むくらいなら彼女には嫌われたいところだ。なんとなく覚えのあるあの人を。

 「少し感傷に浸りすぎか……やっぱりあの人に感化されてきたのかな」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「ふわぁ……ようやく終わったな。体育祭も近いから、委員会との兼ね合いで大変だな」
 「そうですね、少しでも人員が欲しいところです」
 「にしても、夜も更けてしまったな。一人で帰るのも危ないだろうから、今日はみんなで帰ろうか」

 そう言うと生徒会一行は立ち上がり、帰りの準備を始める。
 メンバーは4人、会長、副会長に、書記、会計のスタンダードなものだ。おしゃべりな書記に、無口な会計。

 前述の通り、文武両道な会長に、イケメン風の副会長。

 そんな4人が夜道を帰ることになる。
 ただ、一人で帰るのは危ないだろうという判断でしかないのだが。

 最寄り駅まではみんな同じなのでそこまでは全員で歩いていく。
 特に問題なく進んでいたのだが、会計が何かを見つけて、呟いた。

 「あ、あれ、零陵君じゃないですか?」
 「あ、本当だ。ていうか、足速っ!?」

 生徒会にとって時の人ともいえる彼の姿を見つけて、会長の興味が一気にそちらに向く。それを面白くなさそうに副会長が見るが、誰も気づかない。

 一瞬だけ彼女たちの視界に入った彼はどこかの曲がり角を曲がっていった。
 その次の瞬間だろうか、閑散とした住宅街にひとつの声が響いた。

 「うわああああああああ!」

 突如として響いたその声に生徒会一行は驚きを隠せなかった。だが、会長は臆すことなく零陵一の向かった方向に行こうとする。しかし、それを副会長が腕をつかんで止める。

 「どこ行くんですか会長!」
 「零陵が何かに巻き込まれたかもしれない。私は会長として―――」
 「会長、お言葉ですがあなたのような立場である以上は私情は捨てるべきです。ただ一人の生徒を優遇するなど―――」
 「私情―――そうだな。お前たちから見れば私は彼に対して特別な感情を抱いているように見えるだろう。それを否定するつもりもない。だが、それとこれとでは別だ。わが校の生徒が事件に巻き込まれたかもしれない。私には責任がある。それだけのことだ」

 そう言って会長は零陵の向かっていった場所へと走っていく。それに続いて、ほかの面々もついていくのだが、そこに広がる光景は想像を絶するものだった。

 「うぅ……」
 「スマホをどこにやった?」
 「しら、ない―――俺は、頭に渡されて……ゴフッ」
 「ちっ、ハズレか」

 ボロボロの男を見下げるように立つ零陵一。そんな構図が広がっていた。それに加え、一部塀が円形にへこんでおり、そこから亀裂も生まれていた。
 あからさまな破壊痕だった。

 しかも、そんな大きなものは相当の腕力でなければ―――そもそも人間技なのかと疑わせるほどのものだった。

 「お、おい―――何してるんだ……?」
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