20 / 35
アレルギー② 悪魔ですか?
しおりを挟むカランコロンという爽やかな鈴の音と共に入店すると、ゆったりとしたBGMが店内に流れていた。店内を見渡してみると、床は木目調のフロアタイルでいくつもの木製の机や椅子が並べられている。店内の奥側にはソファやその下にはふかふかしたマットが敷かれてあり、至る所には赤玉が敷き詰められたポッドには葉先の尖った観葉植物がたくさん置いてあった。
内装はとてもリラックスできる空間が完成されており、緑色が多いぶん癒される気がする。『猫々喫茶』と言うだけあって壁にはたくさんの可愛い猫の写真やイラストがあり、それを見るだけで心が軽くなるほどだ。
「………ん?」
一部の机を凝視すると、猫がいた。しかしそれは石像のように一切動いていなく、入店した際に鈴の音が鳴ったとしてもまったく微動だにしない様子で鎮座していた。こちらと結構距離が離れているのでぬいぐるみか何かだろうか。スキル『危機感』も発動してない。
そう思ったが、女性の店員さんの声により途中で思考が遮られる。
「いらっしゃいませ、『猫々喫茶』へようこそ! 当店はにゃんこちゃんと一緒に触れ合い、お客様に癒しと安らぎを提供する場となっております。こちらでは料理も提供しておりますので、是非お楽しみ下さい。こちらがメニューとなります」
「え………っ!」
説明を聞きながら固まった暮人に気が付かず、「それではごゆるりとお過ごし下さい!」と元気に去って行く女性店員。
ふと視線を下げると足元には、いつの間にか一匹の猫が近寄っていた。ギギギ、と聖梨華へと顔を向けると―――、
「あるぇ~? 如月さ~ん、何かあったんですかぁ~?」
「こ、の………っ!」
聖梨華は頬杖を突きながらこちらをニヤニヤして見ていた。小悪魔的な笑みを浮かべるその様子は彼女の高校のファンからしてみれば非常にギャップがあってぶっ倒れる人が続出するんだろうが、自分はある意味正気を保つので精一杯である。
その原因は『猫アレルギー』だ。
最初に発症したのは、小学校の四年生の頃『どうぶつがかり』として犬、猫、ウサギなどとといった動物たちと関わったとき。それ以前は何ともなかったのだが、数匹の猫の世話をしていると急に体がかゆくなりふと腕を確認したら身体中に斑点が出来たのだ。そして息をするにも苦しくなり、次第に過呼吸になってからは覚えていない。
気が付いたら病院だった。同じ係で近くにいた美雪が驚いて先生に知らせてくれたらしい。そこで判明したのが自分が突然猫アレルギーを発症したことだった。そこでしばらく入院した。
それからというものの、触るだけではなく猫がいる空間そのもの自体がダメになってしまった。それどころか近くに猫がいると肌がかゆくなってしまう程だ。
目の前の聖梨華はおそらくそのことを知ってて意図的にここに来たのだろう。しかも、彼女が行きたいといっていた先程のパンケーキ専門店もここに連れて来る為のブラフだったのかもしれない。
いや、それ以前にどうやって自分が猫アレルギーだと知っていたのか―――、
『おや、猫などペットを飼ったことがあるんですか?』
『いやないよ。ただそういう考えを持っているだけ。あと猫アレルギーだから飼えない』
(はい、自分から話してました。自業自得ですねはい)
思わず敬語になって心の中で呟くが、なぜ彼女が知っていたのかという疑問は解決できた。確かにあのやりとりの後に聖梨華が過剰に反応していたのでどうしたのだろうかと思っていたが、この為のものだったのだろう。
過去の自分を殴りに行きたい気持ちに駆り立てられるが、今はそれよりのこの現状をどうにかする事だ。
「まぁ先に何を頼むのか決めちゃいましょー! 如月さんは何が良いですかぁ?」
「っ………! じゃあ、アイスコーヒーで」
「じゃあじゃあ私はー、この抹茶ホイップにゃんにゃんパフェとアイスティーにします!」
聖梨華が元気に先程の女性店員を呼ぶとメモをしながら注文を聞いていった。「少々お待ち下さい」と商業スマイルで去って行くのを見届けると、彼女に話しかける。
「聖梨華さん、率直に言って帰りたい。悪魔ですかアンタは」
「ME☆GA☆MIです! まぁそんな反応するのは分かりきっていた事ですけどね。大方、『僕アレルギー持ちなのになんでこんなとこに連れてこられなくちゃいけないんだよぉ………うぇーん聖梨華さんの大きなおっぱいで甘えさせてぇー』って考えてるんでしょう?」
「最後の文章は全身全霊で否定させて貰うけど大体そんな感じ」
「酷いです!?」
「そんなに魅力が無いですかねぇ………?」と両手でたわわな胸をむにむにとさせているが、それは公共の場では絶対にしない方が良いと思う。
あと聖梨華は決して魅力が無い訳ではなく、中身はこんなだが外見は清楚系美少女なのでその色香に惑わされないように鋼の精神を保っているだけだ。
絶対に揶揄われる材料なので彼女の前では口にしないが。
暮人は表情を強張らせると、腕を組みながら顔を背ける。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜
沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」
中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。
それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。
だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。
• 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。
• 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。
• 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。
• オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。
恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。
教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。
「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」
鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。
恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる