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『セントパール魔術学園~学園ダンジョン編~』
第34話『爆☆拳☆少☆女、来訪』②
しおりを挟む「本当に、エーヤっち………?」
呆然とした様子で呟く彼女だがそれはエーヤも同じ。なにせ彼女との再会は―――三年振りなのだから。
「―――エーヤっち………っ!」
「リフィアっ!」
眦に涙を浮かべながらエーヤの元へ駆け出す少女。エーヤはよろよろと前に歩きそれを受け止める為に両腕を広げる。何故ここにいるのかという疑問がある事には変わらないがそれよりも嬉しさが勝る。
久しぶりに出会ったが一目で分かる。彼から見て以前と比べると彼女は身長は変わらないが女性的な成長が目立つようになった。それもそうだろう。三年という決して長くも無い月日、人の成長の変化を切に感じるのに十分な時間。嘗ての居場所から離れたエーヤにとって懐かしさを感じるが何より新鮮さを感じるのも確か。
この少女の名はリフィア・コーデック。嘗てエーヤが所属していた最強と名高い冒険者パーティ『永遠の色調』のメンバーの一人で、高い技術力を持つ魔具職人だ。そんな彼女だが―――、
「いきなりドーン!☆」
「へぎゃ!」
勢いが増したと思ったらそのまま顔面パンチをかます。両腕を広げていたエーヤは完全に無防備だったのでその衝撃を殺せずに後ろに転がる。
「へぎゃだってへぎゃ! おもしろぃけどわらぇなーぃ」
「おまっ………! ちょっ、痛ぁ!?」
何故いきなり殴りつけられたのか分からずに戸惑う表情を向けるが、かぶりを振る少女は笑みを浮かべているも拘らずその目は笑っていない。
「リーちゃん久しぶりなんだよーー! ハイターッチ! 身長少し伸びたんだ! あれ、またそのジャラジャラ増えた?」
「タッチタッチぃ~そぅなの試作品~! それはともかくリルっち久しぶりぃ! そーゆーリルっちは変わってなぃね! か~わ~いぃ♡」
リルが話しかけた途端、今までの雰囲気を一変させながら話し続けるその様子はエーヤとリルへの対応で明らか。引きつった顔をしながらエーヤは立ち上がるが納得がいかない。
「リフィア、折角の再会なのに顔面パンチとか過激すぎない!? あと反応が全然違う!」
「その理由はエーヤっちがいっちばんよぉーく知ってるんじゃなぃ?」
「うっ………」
リフィアが言う通り思い当たる事が一つある。いや、一つしかない。
「悪かったと思ってるよ………手紙だけ置いて勝手に出て行ったのは」
「ぃやそっちじゃなぃし。ぶっちゃけそこじゅーよーじゃなぃし」
「違うの!?」
てっきりエーヤはヴェルダレア帝国から、強いては決して短くない日々を共に過ごしてきたパーティのみんなに何の言葉も無く立ち去ったのが理由で先程のような冷たい態度をとられるのだと思っていたのだがどうやら違うようだ。
そんな中、リフィアと共にやって来たエリーは二人から少し離れた所に立っていた。その隣にはいつの間にかメアが控えている。
「え、えーと………二人とも、知り合いだったの?」
「………なーる、エリっちが言ってぃた男の人ってエーヤっちの事だったのねん。なっとくなっとく」
「つーかなんでお前とエリーが一緒にいるんだ? そもそも何の用事でエリディアル王国に?」
エーヤの疑問にかぶりを振るリフィアは視線を上に向けると思案する。うーん、と考える素振りを見せるが間もなく返事が返ってくる。エーヤに対しまだ若干声が冷めているのは気のせいではないだろう。
「エリっちは命の恩人でなりゆきでぇ、王国にはモロモロの依頼とかをこなしに来たぁ」
「大げさよ、命の恩人というか、ただ食事を驕ってあげただけなんだけどね………」
「ぁの時はマジでハラヘリで昇天しちゃぃそうだったからちょー感謝してるよんエリっち! お礼に私特製の魔具でも造ってプレゼントしようと思ったんだけど―――まさかこんなところで逢ぇるとは思ってなかったからぁ」
視線がエーヤに固定される。黄緑色の瞳が強い思いを訴えるように鋭さを帯びると、リフィアは赤い魔力をその身に纏う。
「―――ごめんエーヤっち、さっきのウソ。やっぱウチ結構プンオコ状態かも。だからさ、ちょっち付き合ってよ…………っ!」
「………っ、いきなりかっ!」
リフィアは瞬時にエーヤとの距離を詰めると頬に狙いを定めて右ストレートを打ち込む。体重が込められていない、速さのみを重視したその拳は目で追う事が難しい。そのまま頬に吸い込まれると思いきやその軌道を読んでいたエーヤは正面から拳を片手で掴み取る。完全に殺しきれずに残った勢いを利用して手前側に引っ張りバランスを崩しながら足払いするが、そのまま転がり体勢を整える。
「逃げ出して日和ってると思ってたけど、案外動けるねぇ。だけど、こっからが本番だゾっ………!」
「っく、やっぱり速さに関しては随一だな!」
先程以上のスピードで懐に潜り込んだリフィアは怒涛のラッシュを繰り広げる。避ける事に関しては自信があるエーヤだったが、今まで本気になったリフィアの速度についていけた事は無い。現に今は攪乱しながら移動する彼女の攻撃を腕でガードしながらその猛攻を持ち堪えている状態。決してその攻撃は重くはないのだがその手数の多さに思わず舌を巻く。ともかくあまりこの状態を長引かせる訳にもいかず、このままダメージが蓄積していけば体力的に持たないことを危惧するエーヤ。
(以前の攻撃は単調だったのにフェイントも織り込みながら急所を狙ってくる………っ!)
三年前と比べると技術は格段に向上している。しかしこの状態のリフィアはまだ優しい方といっても良い。魔力の循環を行ない身体強化が為されている拳なのだが、何故なら彼女は魔具職人。彼女専用にチューニングされた特別製の魔具をまだ使用していないからだ。
「うらららららぁ!!! 」
「舐、めんな………っ!! 『崩界震波』!!」
無詠唱の無属性魔術により魔術陣が地面に展開。空気を揺らす想像により、エーヤの周りには衝撃波の魔術が構築される。
「うにゃっ………っち! 相変わらず無詠唱は反則気味だょねぇ、吹き飛ばされちった☆」
「く………単純な身体能力はリフィアの方が上だからな。悪いが使わせて貰った」
衝撃によりリフィアは吹き飛ばされるも持ち前の身軽さを利用して無事に着地。一方のエーヤといえば魔術を発動した直後、僅かに頭に鋭い痛みが走り一瞬だけ顔を顰める。魔力が回復したといってもまだ病み上がりの状態。精々身体強化するのが限界だろうと考える。
目の前の少女を見ると小さくかぶりを振りながらこちらを見据えていた。―――戦意は未だ衰えず。
「ならならウチも使わせて貰おっかな~。―――コレ♡」
「おまっ、それはやりすぎじゃないか!?」
薄く笑みを浮かべるリフィアはコートの両ポケットにそれぞれ手を突っ込むと鈍色に輝くガントレットを両手に嵌めた状態で抜く。エーヤの無属性魔術とリフィアの魔具職人としての知識や技術などを駆使し制作されたそのコートのポケットには、自在に取り出し・収納出来る異次元空間機能が付いていた。
なお、収納機能の他にも様々な特性があるこのコートを所持しているのは『永遠の色調』のメンバーのみ。希少な素材や収納空間の固定化など、様々な技術が組み込まれているため量産化するのは非常に困難だ。もしこのコートの価値が世界中に知れ渡ってしまったら各国々の戦争の引き金になるのは必須。
閑話休題。
「エーヤっちならだぃじょぶっしょ。前にプっちー達と一緒に乱戦もとい訓練したらウチの拳を受けてもみんなピンピンしてたし」
「あいつらと一緒にすんな!!」
思わず必死な形相で思わず叫ぶ。"プっちー"とはプルメリアの事を指すのだが、そもそも彼女らとエーヤでは身体能力や魔力操作技術などの地力に差があるのだ。
こちらの世界に来て右も左も分からないエーヤを鍛え上げた師匠的存在がプルメリアたち『永遠の色調』のメンバーである。今でこそ彼女らの肩に並び立つ程の実力者へと成長したが、エーヤとしてはその実感が無かった。
「その手甲って確か抗魔鋼鉄製だろ!? 一定魔力を強度に変換する特性があるんだからそんなんで殴られたら打撲なんかじゃ済まねぇぞ!?」
「だぃせぃかーぃ! よく覚ぇてたねん! ちなみにエーヤっちの『具現の警棒』にも使われてるゾ☆」
リフィアはガントレットを両手に装着した状態で拳をガチンと鳴らす。小悪魔めいた表情をエーヤに向けるがそれはどこか小馬鹿にしているように見える。
エーヤとリフィアの武器の素材に用いられている抗魔鋼鉄は一般冒険者や騎士等の武器に使われている鉄や銅の素材と比べると段違いに質に差が出る。鋼鉄の強度・軽さ・柔軟性、魔力伝導率といった要素が抗魔鋼鉄の方が優れているのだ。つまり、魔力をうまく流せば流した分だけより強固な硬さになる。それは武器に加工されたとしても同じ事が言える。
彼女は拳を構えるとエーヤへ言い放つ。
「ま―――いぃから黙って殴られロ☆」
「死ぬって!!?」
再び互いに攻防が繰り広げられる。これが二人が再会したその後の顛末で、冒頭へと繋がる。
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