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第一幕 隣の天使が話しかけてきた
第13話 天使は髪に興味を持つ
しおりを挟むなんやかんやで高校に到着し、思い切って僕は風花さんと一緒に教室に入った。クラスメートは一斉に僕らが入ってきた扉の方を見るがそれは一瞬。風花さんの姿を見るや否や表情を緩めながら僕らの方から視線を外した。
……ん、案外なにも無かったな。てっきり『天使』の隣に立っていた僕に汚物的な視線を向けてくると思ったんだけど。
これも風花さんが纏う『ゆるふわイオン』のおかげかな? ………ッ、まさか、最近一緒にいる事で僕の陰キャオーラが浄化されたとでも……!? ふふふ、これで我は『無』に近しい虚無の存在に……!
………………。
あ、これ僕だって気付かれていないって感じだ(冷静)。
だって僕が自分の席に着席したら一部のクラスメートから二度見されたのがその証拠だよ。口を半開きにしながらめっちゃぽかんとした表情してるじゃん。
い、いいもんっ、髪を切って視界が広がったといってもキミたちなんて見てあげないんだからねっ(強がり)!
と、僕に突き刺さる一部の興味や関心といった視線にサッと目を逸らしながら内心呟く。
朝のHRまでまだ時間がある。カバンから筆記用具を取り出しながら、僕はいつも通りハードカバーで表紙が隠れているライトノベルも取り出して読もうとすると、隣の席に座った風花さんから話しかけられた。
こちらを見つめるぱっちり垂れ目な風花さん。はい可愛い。
「そういえば来人くんはいつから髪を切って無かったのぉ? 確か入学した時の髪型と切る前の髪型は同じだった筈だよねぇ?」
「あー、実は美容室に行くのが面倒で自分で切って整えていたんだよね……。だから久しぶりに行ったらすごく緊張したよ。もう別世界っていう感じで膝がガクガクだった」
「あははぁ、来人くんらしいねぇ。なぁんか想像出来ちゃうなぁ」
おどけたように僕が美容室へ行った状況を伝えると、彼女はにへらっと微笑みながら言葉を紡いだ。
その後『ごめーん風花ちゃん! ちょっと課題教えて!』と、風花さんはクラスの女子から分からない授業の課題を訊かれたようだった。一瞬も表情が曇ることなく『いいよぉ。どこどこぉ?』と快く快諾。
ふぅ、みんなから『天使』って言われている理由がまた一つ分かっちまったぜ……。
さっきの通学中もそうだったけど、今までの会話を思い返すと風花さんって聞き上手だよね。相手が考えていたり思っている意見を引き出すテクニックが巧みだ。
まずは彼女の纏うゆるふわな雰囲気。彼女は自覚していないだろうが、僕が観察してみた限りクラスメートが風花さんと会話するときは緊張するよりも先にリラックスしている。これは風花さんが生まれ以って身に付いているテクニックといっても過言ではない。
そしてコミュニケーション能力。こんな僕みたいな陰キャに話しかけていることからその能力値が高いのは明白なのだが、彼女の場合その中でも"観察力"が秀でていると思う。
僕に関しては何故か多少強引だけど、相手が話し終えるまで天使の微笑みでずっと聞きながら待っているんだもん。そりゃ天使で可愛い風花さんに話したいことを緊張せずにスラスラ言えるわ。
その上、相手が話した言葉を興味を持ったようにオウム返しで訊き返して、尚且つ相手が言われて嬉しい言葉を自然に話せるのだから、これを"自覚なきテクニック"と云わずして何と言おう。
やはり高スペックなゆるふわ系美少女である。
風花さんSUGEE!!
と、しばらくうんうん唸っていると担任が教室へやってきて朝のHR、それが終わればいつも通りの学校風景である授業が始まった。
そして現在は二時限目の数学が終わり十五分間の休憩時間。僕は一限目が終わった後に自販機で購入した麦茶で喉を潤していた。
む、麦茶を馬鹿にしないでねっ! カフェインが含まれてないから副作用である不眠とか眩暈になる心配がないし、血流改善の効果があるんだからねっ! アンタの心配してるんじゃないんだからぁ、バカぁ……!
と人目を気にしてただ紅茶やコーヒーなどを格好付けて飲んでいる人へ向けて、僕は何故かツンデレ風に心の中で叫んでいると、隣から視線を向けられている事に気付いた。
「じーーーっ」
「? どうしたの、風花さん? そんな難しそうな顔して……?」
その熱い視線の正体は風花さんだった。雰囲気は変わらないのだが、表情はやや真剣みを帯びており眉を顰めている。
はい可愛い(二回目)。
でも風花さん、そんなに僕を見つめられると照れるんだぜ(ポッ)。つぶらな天使アイズで僕が融けちゃったらどう責任とってくれるんだいマイエンジェル? ……すいませんふざけました。
内心調子に乗ってしまった事に土下座をしていると、ぷるんとした唇が動いた。
「ねぇ来人くん……お願いがあるんだけどぉ、いいかなぁ?」
「ん、お願い? いいよ、僕に出来ることなら何でも言って」
「………髪ぃ、触ってもいいかなぁ?」
「え………?」
もしかしてふざけた所為で沸いた僕の頭が錯覚した幻聴かな?
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