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第一幕 隣の天使が話しかけてきた
第18話 天使の目隠し
しおりを挟むどうも、"G"と名の付く名前を呼んではいけないヤツのリアルなおもちゃを買う為に久々に雑貨屋に寄って帰宅した阿久津来人だよ。
自宅に帰ってきたらファンキーゴリラの姿が見当たりません。いつも帰宅するのは何故か僕よりも早く、気に入らない事があれば口よりも先に手が出る粗暴さと僕を扱き使う自己中心的な思考をしていますが、ああ見えて生徒会のNo.2である"副生徒会長"という地位を確立しています。
きっと御姉様に投票した学年が上のあんちきしょうどもは将来悪徳商法か詐欺師に騙されることでしょう。
恐らく現在も生徒会という檻の中で自分の群れ(役員)に権威を振るっていますね。自分を魅力的に映す為に発揮するその二面性と外面の厚さには大変感服します。
さて、そんな図に乗っている御姉様には部屋中に黒光りするおもちゃを仕掛けておきましょう(どさどさっ)。
いやぁ最近のおもちゃって進化してますね。三十センチ程のクソでかいヤツとか普通サイズの十~三十匹くらいのヤツがまとめて売ってるんですもの。
どんな反応が返ってくるのかとても楽しみです、へへっ。
「うぅ、すっげぇ痛い……」
次の日快晴。僕はところどころに青痣を作って顔面を赤く腫らしながら通学路を歩いていた。心なしか照りつける太陽が僕を嘲笑っているような気がする。なんでこうなったかって? お察しの通りだよ。
ごめんね御姉様。もう二度と今後一切虫系の悪戯はしないよ。あの部屋の凄惨な光景に絶対に悲鳴を上げるだろうなぁって考えてた程度だったけど、まさかガチ泣きしながら『来人ぉ! バ○サン買ってきてぇ!!』って抱き着いてくるとは思わなかった。こんな姉の一面は久しぶりに見たよ。
胸は結構ある方なので感触的には天国だったけど、これから起こるであろうことを考えるとゴートゥヘル一直線は明白。うん、でも今回ばかりは完全にこうなる原因を作った僕が悪いね。
そして『ひっぐえっぐ』と僕にしがみついて泣いている御姉様に状況を説明。結果タコ殴りにあいましたとさ。どちゃくそ痛い……。
はい、調子に乗った僕の自業自得ですね。まぁ罪悪感を感じないわけではないので、しばらく悪戯は控えるよ。
結局、あの後すぐさまコンビニに行ってスイーツを購入して献上しながら謝り倒した。終始不貞腐れた様子の姉だったけど、泣き腫らした目で『ん、許してやる……』って言った弱弱しい姉の姿に不覚にもドキッとしました。はい。
普段から僕の前でもこういう可愛げのある様子だといいのにね。
しばらく『いたずら小僧』から『甘味を貢ぐ奴隷』にジョブチェンジするよ。今度一緒に買い物に行く約束も取り付けられたので喜んで頭を垂れて同行する事にします。
僕は顔面に痛みが残ったまま空を仰ぎながらぼやく。
「せめて顔じゃなくて身体が良かったなぁ……。気分的に昨日はラノベやウェブ小説を読むどころじゃなかったし」
姉による馬乗りになりながらの顔面への往復ビンタ、グーパンチ、首絞め三連続コンボを思い出す。……ん? なんかこの発言ってMっぽくない? いや世間的なことも考えると身体への暴力も断固反対だけれども、か、顔にやられるよりかはマシなだけなんだからねっ!
でもさ。僕としてはいくら気が動転してたとしても、もう少し考えて殴って欲しかったっていうのが正直なところ。一応、副生徒会長っていう立場のある姉が弟に暴力を振るったなんて全校生徒に広まれば―――、
あ、もしかして弟と知られてない可能性が僕の中で浮上してきたぞぅ。
まぁそもそもそこまで己惚れてないし、顔面を腫らしても心配してくれる友達なんてクラスにも高校にもいないんだけどね!
………ぐすん(涙がちょちょぎれ丸)。
「はぁ……僕が悪いとはいえ、やっぱり傷心な僕を慰めてくれるのはラノベやウェブ小説、そして―――」
「だーれだぁ……!」
「風花さん」
「即答されたぁ……っ!?」
いきなり視界が暗くなったと同時に柔らかな小さい手の感触が僕の凛々しい目を覆う。うん風花さん、まず『天使』であるキミは"私は誰でしょうか"的なゲームはしない方が良いね。僕じゃなくても学校の生徒ならば一瞬で看破されるだろうから。寧ろされた方が尊さに耐えきれず静かに昇天するだろうからね!
因みに彼女の背後からの悪戯に僕が冷静に即答出来たのは、昨日の頭なでなでで耐性がついていたのと、丁度風花さんのことを考えようとしていたからだよ。
隣に並んだ彼女はにへらっとした表情の中に目を見開きながら驚愕する感情を前面に出している。はい案の定今日も可愛いね。甘くていい匂いが漂ってきて落ち着くなぁ……。もう天使天使だわ。
「おはよう風花さん、あとありがとう」
「おはよぉ来人くん。何がありがとうなのぉ?………ってぇ、その顔どうしたのぉ!? 少し腫れてるし青痣が出来てるぅ、だだだ大丈夫なのぉ………っ!?」
「大丈夫、ただ階段で滑って滅茶苦茶派手に転んだだけだよ。怪我も大したことないから安心して」
ぶわっっっっっっっっっ(歓喜)!!!!
僕は思わず嬉しさのあまり口元を咄嗟に覆う。今は頑張って笑みを浮かべながら手で隠しているけど、変な表情になってたら大変だからね。
いつもと比べて若干取り乱しながらも心配してくれるなんて、風花さんはやっぱり優しいや。
心なしか顔面に残った痛みが引いてきたような気がするよ……! "天使の癒し手"ぱねぇっす!
「そ、っかぁ……なら良いんだけどぉ。………どこの階段なんだろぉ」
「………?」
風花さんはほっと息をつきながらも、下を向きながら一瞬だけ目の光が消えたような気がした。疑問に思ったときには元に戻っていたので、気のせいかと考えを改める。
ごめん風花さん、心苦しいけどそれ嘘。本当にごめん!
隣を歩きながら彼女はしばらく考え込んでいるようだったけれど、何かを納得したように頷くとおっとりとしながらも真剣さを覗かせる口調で言葉を発した。
「学園に着いたらまずは保健室に行こぉ? 氷で冷やしてから湿布貼ろうねぇ」
「い、いやぁ、気持ちは嬉しいけどそれはなんか大げさだし、いずれ自然に治るだろうからいいよ」
「絶対にダメぇ。青痣が出来てるってことは皮膚の下で内出血が起きてる証拠だからねぇ? それ以上抵抗するなら腕を絡めてでも強引に連れてくからぁ」
「わかりました」
そう言った風花さんの表情はいつものゆるふわな雰囲気が漂っていたけれど、それ以上に従わざるを得ない空気がびしばし迸ってました。
………あ、これ聞き分けの無い子供に言いきかせる感じのヤツだ。ちょっと怒ってるね。ごめんね。
可愛い娘ほど怒ると圧を感じるのは僕だけかな?
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