45 / 98
第二幕 天使がぐいぐい来る日常
第44話 陰キャの姉とお出掛け
しおりを挟む「はぁーーー、つっかれたー……」
終業式が終わり夏休みに突入。僕はやることが無くてベッドでごろごろしていた。机の上にある卓上カレンダーを見てみると、もう既に十日経過している。
………………。
夏休みが始まってもう十日だよ十日! きっと今頃、他の奴らは高校の間でしか体験出来ない貴重な経験を積んでいるんだろうなぁ……!
部活とか、塾とか、友達同士の旅行とか、はたまた恋人同士のひと夏のアバンチュールだったりさぁ……!
クッソ羨ましいんですけどぉ(咆哮)!
え、僕? だから風花さん以外未だ友達出来てないんだって! だから部屋でごろごろしてるし、ラノベ的なイベントはまったく来ないのさちくしょうっ!
「風花さん、今頃は旅行に行っている頃かなぁ……?」
僕は天上を見上げながらぽつりと呟く。
因みにクレープの一件で逃走した次の日は、夏休み前の終業式だった。だから当然のことながら風花さんとも登校するときに顔を合わせたよ。
彼女は何故かいつも以上に明るい声で話し掛けてきて、にへらっとした可愛い笑みを浮かべていたけど、気まずさを感じていた僕は謝罪する。
結局、昨日の内心をしどろもどろになりながら説明した。
触る練習で風花さんの鼻先に着いたホイップを指先で拭おうと考えたこと、それからそのホイップの処理をどうしようかと考えたら緊張・動揺して、あんなことをしてしまったを素直に白状した。
ちらちら風花さんの窺うような表情を見てそうしてしまったのは敢えて言わない。まるで意識しているみたいで恥ずかしかったからね!
風花さんはその時の状況を思い出したのか少しだけ顔を赤くしていたけど、『えへへぇ、び、びっくりしたけどぉ、ぜ、全っ然気にしてないからねぇ……!?』とゆるふわ笑顔でありがたいお言葉を頂いた。
……うん、この反応は絶対気にしていることは明らかだけど、ここはスルーして受け入れることにしたんだよね!
その後普通に会話して判明したことだけど、風花さんはこの夏休み中はどうやら予定が詰まっているらしい。
家族と一緒に旅行したり、母方の実家に帰省したり、いつも昼食を一緒に食べている友だちの……隣のクラスの三ツ橋さんだっけ? と一緒に買い物に行ったりと充実した夏休みを過ごすそうだ。
……うわぁーいっ、僕とは天と地の差があるぅーっ(遠い目)。
僕は前世で積んだであろう善行に疑問と思いを馳せていると、風花さんは微笑みながら僕の予定を純粋な笑みを浮かべて聞いてきたんだ。
内心で血反吐を吐きながらも、積んでいるラノベを消費するって空元気気味に伝えたら『そっかぁ……!』って、なんだかほっとしたように返事されたんだけど、あれってどういうことなのかな?
僕が平常運転だったから? ……うーん、わっかんないや。
そして夏休みに突入して十日が経過、現在に至るってワケ(どやぁ)。
……なにぼーっと生きてんだよ僕ぅ!!
自分でも痛々しいと思いながらもセルフツッコミを心の中でかましていると、僕の部屋の扉ががちゃりと音が鳴った。
勢い良く開かれた扉の先には、なんと腕を組んだ我が家のファンキーゴリラ様。
もとい、僕の姉である阿久津麗華が堂々と立っていた。
うっわ、表情が自信たっぷりだよ……。こういう時ってなにかしら頼まれるんだよなぁ……。自分でも表情が歪んでいるのが分かるよ。
……行かない。絶対に行かない。美少女となら分かるけど、こんなクソ暑い日に一人で外に出かけたくなんてない!
そして彼女は長い黒髪を手で優雅に払いながら入って来て早々僕にこう告げる。
「来人、今からショッピングモールに行くぞ!」
「えぇ、やだ……」
「中にある本屋でラノベ買ってやる」
「やっぱり行きます!」
僕は"本屋"とか"ラノベ"という姉の甘い誘惑に見事に陥落。さっそく身支度を整えて駅二つほど離れたショッピングモールへと向かったのだった。
そして電車に揺られながら到着☆
世間は夏休み。尚且つ巨大ショッピングモールということでたくさんの人で賑わっていた。中は季節らしく涼しげな内装で彩られており、天井には夏らしさを想起させる巨大な水色のイルカがぷかぷかと浮いている。
入店した時から女性の綺麗なアナウンスや陽気なBGMといった店内放送が鳴り響いていた。
うっは人混み苦手……っ! よ、よし……ここは海の藻屑になったあの御方の言葉を借りるとしよう……っ!
「はっはっは、見ろ! 人がゴ―――」
「バ○ス」
「まだ途中なのにぃ!?」
まだ言い終わってないのに色々段階をふっ飛ばして伝説の呪文で封殺してきやがった! くっそぉ!!
複雑な心境だったけど、姉の隣を歩く僕はふと浮かんだ疑問を姉に訊ねる。
「っていうかさ、そもそもなんで僕がねーちゃんの買い物に付き合わないといけないんだよ」
「……っ、旅行とか合宿とか塾で友だちとの予定が合わなかったんだよ。そんな細かいこと気にしてないで、こんな美人で綺麗な姉と買い物出来る幸せを噛みしめてろ」
「はいはい、分かりましたよおねーさま」
若干早足になる姉。僕は軽く息を吐きながら肩を竦めると、その背を追いかけた。
その後は洋服店で服を試着・物色したり、可愛いアクセサリーなどの小物を見て購入したりした。選ぶ際に姉から「これは似合うか?」などとアドバイスを求められたりしたので適当に返事を返したよ。
あっ、もちろんテキトーじゃなくて適当ね(コレ重要)!
姉はこういうファッションに関する返事がテキトーだと後が怖いからねぇ……。
そして僕は案の定荷物持ちだった。両手がぱんぱんに塞がるほどではないけど、少しだけ重く感じる。くっ……これが運動せずラノベばかり読んでいる弊害だとでもいうのかっ? ……今度軽く筋トレしよっかなぁ。
そんなことを考えていると、姉からの提案で昼食をとることになった。ショッピングモール内の手頃な値段で提供するレストランに入店すると、店員さんに案内されたテーブルに対面で座る。
僕はハンバーグやドリア、姉はペペロンチーノを店員さんに頼むと『かしこまりました!』と去って行った。
しばらく歩き詰めだったので、落ち着いたかのように椅子に背を預ける。そして目の前でスマホを見ながら耳に掛かった髪を搔き上げている姉の姿を改めて確認した。
はぁ、こうしてただ座っていれば凛とした清楚系美人なんだけどなぁ……。外で口を開けばお姉さんボイス大和撫子、家ではただのファンキーゴリラ。
……うん。こんな器用な使い分け、僕には真似出来ないねっ。
「なんか失礼なこと考えていたか?」
「さすが『女神』は品があるなぁって」
「ちっ……嫌いなんだよその呼び名。―――来人、お前だけは二度と言うな」
「………? どうしてさ、高校でもそう呼ばれるくらい様々なこと頑張ってきたじゃん」
僕の考えを読まれたのかじろりと圧を掛けてくる姉だけど、僕が『女神』という言葉を出すと心底嫌そうに眉を顰める。
そう、こう見えて目の前の姉は結構な努力家なのである。生徒会メンバーの副会長という立場まで上り詰めたのも、テストで満点を逃さないように夜中まで必死に勉強したり、スポーツだって無様な姿を曝け出さない為にスマホの動画や参考書を研究したりして良い結果を残した、云わば努力の結果なのだ。
何事にも懸命に取り組む姉自身が生まれ持った、一番の才能ともいえる。
……絶対に言わないけど、そんな姉の姿が頼もしく見えるし、僕が唯一尊敬しているところだよ。
絶対に言わないけど(念押し)!!
そう思いながらふと姉の顔を見てみると、僕が分かる程度にほんの僅か目を見開く。直後、顔を逸らした。
……? どうしたん?
「……っ、ふ、ふん! それは来人が私の弟だから分かるんだよ。……なにが『女神』だ。大抵のやつらはそう言えばなんでも片付けられると思ってる。……私が築き上げた努力なんて見ようともしないで」
「……ねーちゃんも色々苦労してんだね」
表情に出さないも、姉が言う言葉に思わずはっとする。理由は姉と風花さんが重なったから。
………もしかして、風花さんもそうなのかな。彼女はその容姿や雰囲気、話し方から『天使』って呼ばれている。そのことは本人は知らないんだろうけど、もし『天使』のレッテルを張られているという事実を本人が知ってしまったら、おそらく傷ついてしまうのではないか。
だって、その裏で行なわれているであろう彼女の努力が、積み上げた評価や本質だって正しく見られない場合だってあるのだから。
でも、僕は……!
「―――知ってるよ」
「え?」
「……ねーちゃんが頑張っているのは僕が良く知っているし、僕が心を塞ぎ込んで元気が無いときに色々と考えてくれていたことも知ってる。……だから、一度しか言わないよ」
僕は一度その先の言葉を区切る。なんだか少しだけ照れくさかったので、姉の顔を見ずに口を開いた。
「………ありがと。きっと、いつかねーちゃんのことを良く見てくれる人が出てくるよ」
「―――。……あぁ、そうだといいな。……お前はそのままでいろよ」
「? どういうこと?」
「うるさい」
そのまま姉はそっぽを向くとスマホをいじり出した。……ん? 気のせいか顔赤くね? なんで?
姉の様子に軽く疑問に思った僕だったけど、注文した品がきたので食べる。
やがて昼食を食べ終えた僕らは本屋に行ってラノベを買って貰い、そのまま帰宅した。
まぁなんだかんだいってほぼ奢って貰ったし、今日は充実した日になったね! やりぃ!
ま、まぁ今回は買い物に誘ってくれた姉に心の中で感謝を伝えてやってもいいね! 心の中だけ!!
0
あなたにおすすめの小説
元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている
甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。
実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。
偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。
けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。
不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。
真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、
少し切なくて甘い青春ラブコメ。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる