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第三幕 天使との距離
回想② ~カースト上位グループ~
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そのあと簡単な自己紹介をしながら一緒に教室に行くと、窓際で談笑していたある男女三人組がいたんだ。彼らは僕の隣にいる結衣さんに対して、満面喜色の笑みを浮かべて嬉しそうに話し掛けてきた。
その後すぐに分かったんだけど、彼らは小学校低学年から続く結衣さんと親しい三人の幼馴染だった。
……ううん、幼馴染じゃないな。彼女曰く『親友』って言ってた。
……うん、そう。それがさっき話した、学年内でも注目を集めていた上位グループの人間だよ。まさか親友四人が一緒のクラスになるなんて凄い偶然だよね。
あぁ、風花さんもやっぱりそう思う? 僕も内心びっくりしたもん。仲の良さと運は比例するのかーって。
彼らは由衣さんと一緒にいた初対面の僕にも明るく話し掛けてきてくれて……それを機に、僕と彼女たち親友四人は良く一緒に行動をするようになったんだよ。
それから、彼らがスクールカーストの上位グループになるのは時間の問題だった。何故なら―――、
『おおっ、やっぱり来人って頭イイんだな! テストも近いし、今度オレら五人で一緒に勉強会しようぜ! もちろん来人は教える側な! オレは生徒ー!』
その内の一人、あのカースト上位グループの中心に立って結構な発言力を持っていたのは立花 光輝。
アイツはあのグループの中でも誰よりも気さくで、明るくて、学年関係なく誰とでも友達になったり親しくなれるようなヤツで……学校の生徒の中でも特に影響力があったよ。
『へぇ、それイイじゃん。ウチらも中学生になったし、まさにコーリツ重視ってカンジ?』
その次に影響力があったのは蝶ヶ﨑 紅羽っていう大人びた女子。
見た目はギャルなんだけど、そのカリスマ性からか主にパリピ系の女の子から人気が凄くあってさ。その端正な顔立ちと彼女のコミュニケーション力は、人を惹き付けるという点ではどこか光輝と似ていた。
『もう、二人ともそんなこと言って結局遊ぶんでしょ? らいくんもいるんだから真面目にしようよ!』
結衣さんは光輝たちのまとめ役みたいな感じかな。元気で、優しくて、周りのことが良く見えていた子だったから……女子からはよく頼られていたり、悩み事とかよく相談されていたかな。
グループでの会話中、僕が他の三人と疎外感を感じない様に話題を矯正してくれたり凄く優しくてさ。
八重歯がチャームポイントで、笑うと魅力的なえくぼが出来る良い子だった……って、風花さん? どうして笑顔なのにジトッとした目で見てるの? え、気にしないで話を続けて? う、うん、分かったよ風花さん。
ご、ごほん。
『…………抜き打ちの、小テストでも、満点をとった、来人から、教えて貰えるのは、ありがたい』
話し方は途切れ途切れで、顔は厳つくて体格は大柄……という一見怖そうだけど実は心優しくて真面目な性格なのは鬼頭 勲。
柔道部で県代表になって全国大会にも出場してたな……。彼の誠実で武骨な雰囲気と甘い物好きっていうギャップで女子からも男子からも好意を持たれていたよ。
『あはは、僕で良ければいくらでも教えるよ。教え方はハードの方が良い? それともノーマル?』
『『『『イージーは?』』』』
最後は僕だね。うーん……、今まで四人の特徴とか性格を話してきたけど、風花さんも分かる通り、僕には前から勉強ができるくらいの取り柄しかなかったんだ。特徴も魅力も何もない、無個性って言っても良いね。
あ! そういえばねーちゃんも前言ってたんだけど、僕は小学校の頃から、周りの行動や言葉に協調……ううん、同調しっぱなしでさ。本音や意見すらも素直に言えない、中身がまるで一つも無い空っぽの人間だったんだって。
……云わば『自主性』がない、つまんない男ってことだね!
酷いよねそうだよね! ……ふふっ、ありがと。風花さんがそう言ってくれるのは嬉しいけど、まぁ僕を見てくれてきたねーちゃんからの貴重な客観的な意見だからね。
……きっと、ねーちゃんがそう言うならそうなんだよ。僕は元からそういう人間だったんだ。
話を戻すね。
そんなやりとりをした後日、よく四人が集まって遊んでいたっていう『ソーシャルぴあ』……あ、色んな人が憩いの場として利用する大きな地域交流センターなんだけど、そこで勉強会をしたりしたんだ。
中身が無いとはいってもあの頃は普通に会話出来ていた僕は、あの四人組の中に……上位グループにどうにか馴染めないかずっと考えていた。
それぞれ自分だけの個性がある人間だけの中で、無個性な僕がどうやって自然にあのグループに溶け込むか。
だから僕はね、『勉強が出来てたまにふざける、明るく優しいイエスマン』というキャラを作ることにしたんだ。
……ううん、作るなんて大げさだったかも。今になって思えばたぶんそれは、僕自身があの中で孤独を感じないよう無意識に施した、心を守る為の防衛措置。
『あははっ、冗談だよ! 来人先生が優しくみんなに教えて進ぜよう!』
何も趣味も興味も無い、空っぽの僕がそう振る舞うのは簡単だった。
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