陰キャな僕とゆるふわ系天使とのいちゃあま共同作業! ~あれ、実は腹黒?な美少女がぐいぐい僕に構ってくる~

ぽてさら

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第三幕 天使との距離

回想⑭ ~別れ~

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 そんなことがあった数日後、僕はバスに乗って図書館に向かった。

 結衣さんとのあの一件があってからも僕は変わらず休日の土曜日に図書館に行くことだけは続けていてね。宝条さんはスマホを持ってなかったから、毎回会ったその日に次にいつ会えるのかを伝えて……そうして彼女との時間を大事にしていた。

 たぶん、それは宝条さんも同じだったと思う。

 ……今まで続けてた宝条さんとの交流は、中学での辛いことを忘れさせてくれた。暗い気持ちにならずに済んで、まるで心に羽が生えたようだったよ。
 でも、この日は何故か笑顔が綺麗な彼女と一緒に他愛無い話をしたり、読書をしたり、感想を言い合うたびにあいつら・・・・の言葉が何度も頭を過ぎるんだ。


 "―――うっわ、あいつこんなの読んでんの? きっも"

 "―――気持ち悪い、と思う……!"
 
 
 これまで溜まりに溜まったストレスで、途端に吐き気がした。湧いては消えるネガティブな感情が僕の中で本格的に首をもたげた瞬間だったよ。


 キャラに無理に捉われず、底辺は底辺らしく身の程に合った生活を送れば良かったのかなとか。

 あのとき手を伸ばしていれば、僕が身代わりになれたのかなとか。

 光輝の言う通り、僕なんてグループにいなければ良かったのかなとか。

 ―――そもそも、僕がラノベに出逢って夢中にならなければ良かったのかって。


 だって、もう僕一人でラノベを読んでいたときは何も思い出さなかったし何も感じなかったんだ。面白い場面も、感動する場面も、心が熱くなる場面でもずっとフラットな状態。僕の沈んだ心が揺さぶられることなんて決してなかった。

 でも宝条さんと一緒にいると、一緒にいるぶんだけ辛く感じる自分がいたんだ……っ。今思えば、僕は自分のその気持ちから逃げ出したかったんだと思う。……弱かったんだ。

 宝条さんとはラノベがきっかけで交流する仲になって、嬉しくて、楽しくて……。でも、何度も当時の言葉がフラッシュバックして……いずれ宝条さんもラノベに興味を無くして、僕とのこの時間もつまらないと感じるときが来るようになったらと思うと、途端に怖くなったんだ。

 結衣さんたちのように出会いが別れになるくらいだったら、そんな未来が訪れるくらいなら……。もう彼女とは会わない方が良い、って。

 憶病だった僕は、宝条さんとの綺麗な思い出は、綺麗なままにしておきたいって思ったんだ。

 そう思ったとき、宝条さんから話しかけられたんだ。彼女はとても感情の機微に さとくてさ……結衣さんとの件があってから僕の様子が会うたびおかしかったことに宝条さんは気付いていたみたい。

 僕を気遣うような声音で彼女はこう言うんだけど、僕は耐えきれずにあることを訊いたんだ。


『……ねぇ阿久津君、さっきから……ううん、数週間前からすっごく顔色が悪いけど何かあったの? ……もし、私で良ければ―――』
『あ、あのさ……、宝条さん』
『うん、どうしたの?』
『ラ、ラノベを読んでる僕って、き、き、気持ち悪いかな……?』
『え……? きゅ、急にどうしたの阿久津君?』


 宝条さん、戸惑ってたなぁ……。せっかく心配してくれていたのに、僕が突然脈絡のないことを言ったらそりゃそうなるよね。

 目を逸らして俯いた僕に違和感を感じたのか、彼女は手を伸ばして触れようとしてさ。でも、臆病で疑心暗鬼の塊だった僕は、それを拒絶しちゃったんだ。


『ねぇ、こっち見―――』
『さ、触らないでっ!』
『え……?』
『ぁ……っ、ご、め……っ。…………。ごめん。ごめん、宝条さん。僕、もうキミには会わないよ……!』
『ど、どうして……? 私、なにか阿久津君の気に障るようなことしたのかな……!?』
『ち、違う……っ、宝条さんは悪くない。全部、僕が弱いのが原因なんだ……っ! だから……さよならっ!』


 僕は荷物を纏めて、立ち上がって図書館から出て行こうとしたら、ある言葉を言われてね。


『―――私は、好きだけどなぁ』
『え……?』
『阿久津君がラノベに夢中になっている姿も、キラキラしたように見る瞳も、それを嬉しそうに私に話す表情も。……うん。全部、好き。私もいろいろあったけど、そんな阿久津君の姿に何度も励まされたんだよ?』
『ほう、じょうさん……!』
『きっとライトノベルには心を動かす力がある。だからね、私もなにか力になりたいの……! 私が救われたように、阿久津君を、助けたい……っ! だから……!!』
『―――! ――――――っ』


 こんな僕を心から心配するような表情で、彼女は微笑んでいた。触らないでって言われて、いきなり拒絶されて訳も理由も分からないだろうに、気丈に、でも優しい目で僕を見て手を差し伸ばしていたんだ。

 僕は宝条さんの言葉に僕を手を伸ばそうとしたんだけどね、出来なかった。

 ……"その言葉がもし結衣さんのようなウソだったら?"って、考えちゃったんだ。そう思うと、何もかもが嫌になった。

 中学校も、自分の現状も―――大切な人さえ信じきれない自分の心も。全部。全部。

 そして、僕は逃げた。

 ………………。


 でもね、僕がライトノベルを嫌いにならないでまたそれからまた好きになれたのは、残りの中学生活の中で宝条さんの言葉を何度も何度も思い返したからなんだ。
 まぁ、今思い返したら宝条さんが言った"心を動かす力がある"ラノベにただ縋っていたのかもしれないけど……。

 でも、あの言葉が無かったら僕はもう二度とラノベを読んでなかったと思う。

 だから、彼女にはすっごく感謝してるんだ。もし、もう一度会うことが出来たら……会うのは怖いけど、お礼がしたいともね。


 でも、中学生活にそんなことがあって僕は決めたんだ。


 高校生活では一人で過ごそうって。

 キャラなんて作らないで、人に話し掛けないようにしようって。

 心の中でふざけて、もう二度と傷つかないようにしようって。





 そう、思ったんだ。



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