異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想

文字の大きさ
6 / 343

Ⅰ-6 ジュラルミンの盾

しおりを挟む
■エドウィンの町

俺は日の出と共に領主の館に行ったが、残念ながらたいした情報は得られなかった。
掃除は庭の手入れをすることだった。
庭師が切った木や花を俺が集めて捨てに行く、夕方までひたすらそれだけだ。

庭師から得られた情報は極めて少ない。

この国の名称は水の国。
女王様は優しい人(だから獣人も兵士になっているらしい)。
領主様も優しい人。
南への道は昼間でも危ない。

無いよりましだが少なすぎる。
もっとも、庭師は無口ではなく、木や花や、子供たちの情報を沢山くれはした。
興味が無かったから、俺が全く覚えて居ないだけだ。

ギルドに報酬を受け取りに行った俺の会員証を見たお姉さんは目と口を大きく開けた。

「一人で、一晩に狼を3匹も!?」

「たまたまですよ。目の前に出てきたから」

俺は適当な言い訳をしてお姉さんから報酬を受け取った。
歩きながら掲示板を眺めたが新しい仕事や求人は無いようだ。

-このままここにいても狼しか撃てそうに無い。
-せっかく全部持って来たのに。

今日もホールには食事をしている男達が何組かいるが、昨日と違って俺を見ている3人組がいた。
嫌な感じの目つきだった。

ギルドを出て町の外へ向かおうとしたが、さっきの3人組が後ろを付けてきているようだ。

-理由は判らないが面倒くさそうだ。

俺は通りの角を曲がった瞬間にストレージに飛び込んだ。
1cmぐらい隙間を開けて外をうかがう。

曲がってきた3人組はキョトンとしていた。

「オイ!? どこいった? どこにも隠れるのとこなんか無いだろうが?」

「知るかよ! 一人で3匹も狼を狩ったなんて絶対いんちきだ。誰か他の奴と組んでるはずだ、相棒を見つけるまで探せ!」

3人組はバラバラに通りを走っていった。

-なるほど、俺の背後を知りたいのか。誰も居ないのにな。

ストレージで中古のジュラルミンの盾を用意してから外に出た。
武器屋まで回りを気にしながら歩いていく。
無事に店の前にたどり着いたので、周囲の目を気にしながらストレージから盾を取り出して店に入る。

「もう、店を閉めるとこだぞ・・・、ああ昨日の兄ちゃんか、本当に来るとは思ってなかったぜ」

「はい、軽くて丈夫な盾を持ってきましたので、見てください」

「結構でかいんだな・・・、何だこりゃあ? 無茶苦茶軽いじゃねぇか」

「だけど強度もあるみたいだな、兄ちゃん、そこいらの剣でぶったたいて見てくれ」

店主はかなり興味を持ったようだ。
俺は小さめの剣を抜いて、店主が持っている盾を野球のスイングのように打った。

-バァーァン!!-

店の中に派手な音がこだまする。

「それでと・・・、こっちは全然凹んでねぇな。・・・剣は欠けちまったか。兄ちゃん疑って悪かったな、こいつは本当に凄い盾だぜ! どこで手に入れたんだ?」

「それは内緒です。商売上の秘密ですから、ですけどこれは一点ものです」

「一点ものか・・・。うん、わかった。約束どおり金貨5枚で買ってやるよ」

「ありがとうございます、銀貨にしてもらえると助かります」

俺は銀貨50枚を手に入れて武器屋を出た。
これだけ軍資金があればしばらく町から離れても大丈夫だろう。

通りを見回しても3人組は居なかった、そのまま町を出ようと大通りへ向かった俺の目の前に小さな影が走りこんで来た。

「待ってください!」

昨日ギルドで会ったサリナだ。

「どうしたの?」

「さっき見てました! 何も無いところから大きな盾が出てきました!」

-そうか、気がつかなかった。こいつが小さいからか?

「うん?何の話かな?」

無視して歩き出す俺の腕にサリナがしがみつく。

-胸が腕にあたっとるがな。

「さっき見たあの魔法を私に教えてください!」

「んん? ああ、あれは俺にしか出来ないからね」

俺は腕と胸が気になって、嘘をつく余裕がなくなっていた。

「だったら、その凄い力で私をこの町から連れ出してください!」

-話がわからんようになった。

「あれ? 南方に行きたいんじゃないの?」

「南方にいきたいですけど、今日中に町を出ないと、私、売られちゃうんです!」

-なんじゃそりゃ?
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON
ファンタジー
核戦争で死んだ俺は、神災級と呼ばれるチートな力を持ったまま異世界へ転生した。 目的はひとつ――行方不明になった“妹”を探すことだ。 だがそこは、大量の転生者が前世の知識と魔素を融合させた“魔素学”によって、 神・魔物・人間の均衡が崩れた危うい世界だった。 そんな中で、魔王と女神が勝手に俺の精神世界で居候し、 挙句の果てに俺は魔物たちに崇拝されるという意味不明な状況に巻き込まれていく。 そして、謎の魔獣の襲来、七つの大罪を名乗る異世界人勇者たちとの因縁、 さらには俺の前世すら巻き込む神々の陰謀まで飛び出して――。 妹を探すだけのはずが、どうやら“世界の命運”まで背負わされるらしい。 笑い、シリアス、涙、そして家族愛。 騒がしくも温かい仲間たちと紡ぐ新たな伝説が、今始まる――。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...