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Ⅰ-63 黒の旅団
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■第2迷宮内部 5階
翌朝も5時にセットした目覚ましで目が覚めたが、今日は移動するだけの予定なのでゆっくりとシャワーを浴びてから、新しい馬車をタブレットで探すことにした。
ピックアップトラックの代わりにサリナが運転できる物を探す。
最近の国産車には地上高が高い物が少なかった、輸入車には沢山見つかるがどれも大きい。
なかなか、都合の良い物が見つからないので、走行距離の短い中古の国産車にしておいた。
バギーよりは大きいが、ピックアップトラックよりははるかに小さい。
昔はアフリカのラリーで活躍した車のようだし、荒地でもいけそうだ。
ストレージから迷宮の中に出ると、二人も既に目を覚まして大きいキングサイズのベッドに座っていた。
洗面も終え、着替えも既に終っている。
と言うことは、俺の飯を待っていると言うことだろう。
トースト、サラダ、目玉焼き、ベーコン、カフェオレ(ペットボトル)をテーブルに並べて朝食を取ることにした。
「サトルよ。何故、パンは焼いてあるのだ?」
何故? 何故焼くのか? 考えたこと無いな・・・
「焼いたほうが美味しいからだね。バターを塗って食べるとカリカリしたパンは美味しいでしょ」
「そうだ、確かに美味いのだが・・・、誰が思いついたのだろうか?」
「この世界のパンとは種類が違うからじゃないのかな? こっちのパンって丸いヤツでしょ」
「たしかにそうだ。丸くて、もっと硬い物だ。だから、焼いてもこんな風にはならないのか」
ミーシャ様が気になっていたことが解決して良かったです。
今後の予定を確認しておくことにしよう。
「それで、次の迷宮は緑の堅鱗団の縄張りだから、慎重に行こうと思ってる。今日は一旦バーンの近くで安全なところに移動して、明日は迷宮の偵察だけやったら、一旦安全なところまで戻ってくる。そして、偵察して問題が無さそうだったら、明後日に第4迷宮に入ってみるつもり」
「わかった! サリナはサトルの言う通りで、大丈夫!」
「私にも異存は無い」
バーンからこの第2迷宮までは馬車なら南西に二日ほどで、第4迷宮はバーンから南へ三日ほどの距離だから、ここから直接第4迷宮に向かえば、馬車なら二日、バギーなら2・3時間で着くが、昨日の移動と戦闘は長時間でかなり疲れた。休養を入れてから次へ行ったほうが良いだろう。それに、俺は武器の使い方でミーシャと一緒に試してみたいこともあった。
食事を終えると既に9時前ぐらいになっていた、ストレージにテーブルやベッド、開口部を塞いでいた鉄板を収納すると、すぐにミーシャが開口部から外を見に行った。
「サトル、獣人たちに囲まれているぞ!」
ミーシャの険しい声を聞いて、後ろから下を見たが、俺には何も見つけられなかった。
双眼鏡を取り出してもう一度森の入り口を見ると、木の後ろに隠れて、かなりの人数がいるのが見える。-白の刃牙団だ。
見える範囲は20人ぐらいだが、もっといる可能性が高い。
この場所なら襲われる心配は無いだろうが、ずっとここに居るわけにもいかないし、戦うと虐殺してしまう気がする。
どうやって追い払うのが良いのか・・・、考えている俺にミーシャが声を掛けてきた。
「こちらに気づいたようだ、誰か一人森から出てきたぞ」
出てきたのは、大きな獣人だ。双眼鏡で覗くと白い毛を持つ狼の獣人だった。
こっちに手を振って、大きな声を上げだした。
「オーイ! そこに居るんだろ!? 話があるんだ! 何もしないから、降りてこないか?」
話? こっちには話すことは無い。 罠だろうか?
しかし、今の状態よりは警戒しながら降りて行って、戦うのか話し合うのかを判断したほうが良さそうだ。
俺は大声で返事をしてやった。
「話があるならお前一人で塔の中に入って来いよ! 魔獣はいないから、中は安全だ!一人で来なかったら、森の中のヤツを魔法で倒すからな!」
下の獣人には聞こえたようだが、後ろを振り返って仲間達と何か話し合っているようだ。
「わかった! だが、塔に入っても手出しはしないと約束してくれ!」
「もちろんだ! 約束は守る!!」
静かな森で大声のやり取りが終り、獣人の男は塔に向かって歩き出してきた。
堀にはこちら側にハシゴが掛けてあるから、飛び降りれば塔までは入ってこれるだろう。
俺達は急いで装備を整えた、ミーシャはコンパウンドボウと矢を、サリナは炎のロッドを、俺はサブマシンガンを手に持った。
4階で穴の開いた床にハシゴを渡すと、既に男が塔の中に入ってきたのが見えた。
念のため、ミーシャと俺が下の男に狙いをつけた状態ではしごを渡った。
同じ要領で3階を通過して、2階まで降りたところで下にいる獣人の男に話しかけた。
近くで見る獣人の男は狼の顔をした大男だ、身長は250cmぐらいあるかもしれない。
「それで、話って言うのは何だ?」
「アンタたちなんだろう? 赤の縄張りの迷宮であいつらとやり合った黒い魔法士ってのは?」
-黒い魔法士? 銃を持っているからか?
「だとしたらどうなんだ? お前達に関係があるのか?」
「いや、俺は白の旅団、団長のロッペンだ。ギルドで第一迷宮の話を聞いて、ここもアンタ達に狙われると思ったから、慌てて馬車を飛ばして来たんだが・・・」
「俺達と戦って追い払うつもりなのか?」
「ああ、そのつもりで腕に自信のある奴らを集めて連れてきた。だが、森の中を見て気が変わった。あのキラーグリズリーを殺ったのはあんたたちだよな?」
「ああ、そうだ」
5匹ほど置きっぱなしにしてあるのを見つけたのか。
「やっぱりそうか。だったら、相談なんだが、この迷宮に有ったお宝は持って行ってもらって構わねえ、その代わりにうちの旅団に入ってくれねぇか!?」
「俺達が旅団に!?」
「ああ、はっきり言って、あのグリズリーを見ているとアンタ達相手に絶対勝てる気がしねぇ。逆に仲間に成ってもらえれば安心じゃあねぇかってことよ」
なるほど、スカウトか。
確かに俺達が入れば旅団は圧倒的な戦力増にはなるだろうが、こっちにメリットが無いな。
「俺達が旅団に入っても得るものが無い。迷宮の財宝は見つけたものが手に入れるだけだから、お前達に許しをもらう必要も無いだろ」
「・・・此処は俺達の縄張りだが。それはまあいいや、お宝はあきらめるとしても、アンタ達が赤の奴らに狙われていることには変わりが無い、俺達と組めば奴らからアンタ達を守ってやるぜ」
確かにこいつらと組めば、こいつらに襲われる可能性は低くなるだろうが、赤や緑との抗争に巻き込まれることになるのだろう。
大して変わらない気がするな。
「残念だけど、お前達の旅団には入らない。その代わり、お前達を襲わないことを約束しよう。もちろん、お前達も俺達を襲わないことを約束しろ。出来ないなら、今から全員を俺の魔法で倒して行くだけだ」
「・・・」
不可侵条約ぐらいで手を売ってくれるとありがたいが、俺も全員を敵に回して戦いたいわけではないからな。
「いいだろう、アンタ達とは争わないことにする。その代わりだが、倒してあるキラーグリズリーは俺達に譲ってくれ」
「ミーシャ、あの熊も売れるのか?」
「ああ、角、毛皮、肝は高く売れるだろう」
「なんで、言ってくれなかったの?」
「すまん、お前といると・・・、金のことをつい忘れそうになるのだ」
なるほど、幾らでも金が入る気になって来ている訳か。
だが、元々当てにしてなかったからどうでも良い話だ。
「良いよ、グリズリーは好きに処分してくれれば」
「そうか、だったらこれで交渉成立だな! ところでアンタ達のことは何て呼べばいいんだ?」
名前か・・・、必要なのか?
しかし、近寄らせないためには名前があったほうが良いかもしれないな。
せっかく黒の魔法士だって言ってくれてたし・・・
「俺達は黒い旅団、『黒の三銃士』だ。俺達はお前達の縄張りには縛られない、襲ってこなければ他の旅団を攻撃しないが、襲われれば必ず報復する。覚えておいてくれ」
どうせ、此処にいる間だけの名称だし仮ってことで。
人数が増えた場合は改名することにしよう。
翌朝も5時にセットした目覚ましで目が覚めたが、今日は移動するだけの予定なのでゆっくりとシャワーを浴びてから、新しい馬車をタブレットで探すことにした。
ピックアップトラックの代わりにサリナが運転できる物を探す。
最近の国産車には地上高が高い物が少なかった、輸入車には沢山見つかるがどれも大きい。
なかなか、都合の良い物が見つからないので、走行距離の短い中古の国産車にしておいた。
バギーよりは大きいが、ピックアップトラックよりははるかに小さい。
昔はアフリカのラリーで活躍した車のようだし、荒地でもいけそうだ。
ストレージから迷宮の中に出ると、二人も既に目を覚まして大きいキングサイズのベッドに座っていた。
洗面も終え、着替えも既に終っている。
と言うことは、俺の飯を待っていると言うことだろう。
トースト、サラダ、目玉焼き、ベーコン、カフェオレ(ペットボトル)をテーブルに並べて朝食を取ることにした。
「サトルよ。何故、パンは焼いてあるのだ?」
何故? 何故焼くのか? 考えたこと無いな・・・
「焼いたほうが美味しいからだね。バターを塗って食べるとカリカリしたパンは美味しいでしょ」
「そうだ、確かに美味いのだが・・・、誰が思いついたのだろうか?」
「この世界のパンとは種類が違うからじゃないのかな? こっちのパンって丸いヤツでしょ」
「たしかにそうだ。丸くて、もっと硬い物だ。だから、焼いてもこんな風にはならないのか」
ミーシャ様が気になっていたことが解決して良かったです。
今後の予定を確認しておくことにしよう。
「それで、次の迷宮は緑の堅鱗団の縄張りだから、慎重に行こうと思ってる。今日は一旦バーンの近くで安全なところに移動して、明日は迷宮の偵察だけやったら、一旦安全なところまで戻ってくる。そして、偵察して問題が無さそうだったら、明後日に第4迷宮に入ってみるつもり」
「わかった! サリナはサトルの言う通りで、大丈夫!」
「私にも異存は無い」
バーンからこの第2迷宮までは馬車なら南西に二日ほどで、第4迷宮はバーンから南へ三日ほどの距離だから、ここから直接第4迷宮に向かえば、馬車なら二日、バギーなら2・3時間で着くが、昨日の移動と戦闘は長時間でかなり疲れた。休養を入れてから次へ行ったほうが良いだろう。それに、俺は武器の使い方でミーシャと一緒に試してみたいこともあった。
食事を終えると既に9時前ぐらいになっていた、ストレージにテーブルやベッド、開口部を塞いでいた鉄板を収納すると、すぐにミーシャが開口部から外を見に行った。
「サトル、獣人たちに囲まれているぞ!」
ミーシャの険しい声を聞いて、後ろから下を見たが、俺には何も見つけられなかった。
双眼鏡を取り出してもう一度森の入り口を見ると、木の後ろに隠れて、かなりの人数がいるのが見える。-白の刃牙団だ。
見える範囲は20人ぐらいだが、もっといる可能性が高い。
この場所なら襲われる心配は無いだろうが、ずっとここに居るわけにもいかないし、戦うと虐殺してしまう気がする。
どうやって追い払うのが良いのか・・・、考えている俺にミーシャが声を掛けてきた。
「こちらに気づいたようだ、誰か一人森から出てきたぞ」
出てきたのは、大きな獣人だ。双眼鏡で覗くと白い毛を持つ狼の獣人だった。
こっちに手を振って、大きな声を上げだした。
「オーイ! そこに居るんだろ!? 話があるんだ! 何もしないから、降りてこないか?」
話? こっちには話すことは無い。 罠だろうか?
しかし、今の状態よりは警戒しながら降りて行って、戦うのか話し合うのかを判断したほうが良さそうだ。
俺は大声で返事をしてやった。
「話があるならお前一人で塔の中に入って来いよ! 魔獣はいないから、中は安全だ!一人で来なかったら、森の中のヤツを魔法で倒すからな!」
下の獣人には聞こえたようだが、後ろを振り返って仲間達と何か話し合っているようだ。
「わかった! だが、塔に入っても手出しはしないと約束してくれ!」
「もちろんだ! 約束は守る!!」
静かな森で大声のやり取りが終り、獣人の男は塔に向かって歩き出してきた。
堀にはこちら側にハシゴが掛けてあるから、飛び降りれば塔までは入ってこれるだろう。
俺達は急いで装備を整えた、ミーシャはコンパウンドボウと矢を、サリナは炎のロッドを、俺はサブマシンガンを手に持った。
4階で穴の開いた床にハシゴを渡すと、既に男が塔の中に入ってきたのが見えた。
念のため、ミーシャと俺が下の男に狙いをつけた状態ではしごを渡った。
同じ要領で3階を通過して、2階まで降りたところで下にいる獣人の男に話しかけた。
近くで見る獣人の男は狼の顔をした大男だ、身長は250cmぐらいあるかもしれない。
「それで、話って言うのは何だ?」
「アンタたちなんだろう? 赤の縄張りの迷宮であいつらとやり合った黒い魔法士ってのは?」
-黒い魔法士? 銃を持っているからか?
「だとしたらどうなんだ? お前達に関係があるのか?」
「いや、俺は白の旅団、団長のロッペンだ。ギルドで第一迷宮の話を聞いて、ここもアンタ達に狙われると思ったから、慌てて馬車を飛ばして来たんだが・・・」
「俺達と戦って追い払うつもりなのか?」
「ああ、そのつもりで腕に自信のある奴らを集めて連れてきた。だが、森の中を見て気が変わった。あのキラーグリズリーを殺ったのはあんたたちだよな?」
「ああ、そうだ」
5匹ほど置きっぱなしにしてあるのを見つけたのか。
「やっぱりそうか。だったら、相談なんだが、この迷宮に有ったお宝は持って行ってもらって構わねえ、その代わりにうちの旅団に入ってくれねぇか!?」
「俺達が旅団に!?」
「ああ、はっきり言って、あのグリズリーを見ているとアンタ達相手に絶対勝てる気がしねぇ。逆に仲間に成ってもらえれば安心じゃあねぇかってことよ」
なるほど、スカウトか。
確かに俺達が入れば旅団は圧倒的な戦力増にはなるだろうが、こっちにメリットが無いな。
「俺達が旅団に入っても得るものが無い。迷宮の財宝は見つけたものが手に入れるだけだから、お前達に許しをもらう必要も無いだろ」
「・・・此処は俺達の縄張りだが。それはまあいいや、お宝はあきらめるとしても、アンタ達が赤の奴らに狙われていることには変わりが無い、俺達と組めば奴らからアンタ達を守ってやるぜ」
確かにこいつらと組めば、こいつらに襲われる可能性は低くなるだろうが、赤や緑との抗争に巻き込まれることになるのだろう。
大して変わらない気がするな。
「残念だけど、お前達の旅団には入らない。その代わり、お前達を襲わないことを約束しよう。もちろん、お前達も俺達を襲わないことを約束しろ。出来ないなら、今から全員を俺の魔法で倒して行くだけだ」
「・・・」
不可侵条約ぐらいで手を売ってくれるとありがたいが、俺も全員を敵に回して戦いたいわけではないからな。
「いいだろう、アンタ達とは争わないことにする。その代わりだが、倒してあるキラーグリズリーは俺達に譲ってくれ」
「ミーシャ、あの熊も売れるのか?」
「ああ、角、毛皮、肝は高く売れるだろう」
「なんで、言ってくれなかったの?」
「すまん、お前といると・・・、金のことをつい忘れそうになるのだ」
なるほど、幾らでも金が入る気になって来ている訳か。
だが、元々当てにしてなかったからどうでも良い話だ。
「良いよ、グリズリーは好きに処分してくれれば」
「そうか、だったらこれで交渉成立だな! ところでアンタ達のことは何て呼べばいいんだ?」
名前か・・・、必要なのか?
しかし、近寄らせないためには名前があったほうが良いかもしれないな。
せっかく黒の魔法士だって言ってくれてたし・・・
「俺達は黒い旅団、『黒の三銃士』だ。俺達はお前達の縄張りには縛られない、襲ってこなければ他の旅団を攻撃しないが、襲われれば必ず報復する。覚えておいてくれ」
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