異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想

文字の大きさ
144 / 343

Ⅰ-144 首領

しおりを挟む
■ゲイルの町はずれ 黒い死人達のアジト

「それは・・・、無いんだ」
「無い? ふざけてんのか?」
「違う! 嘘じゃねぇんだ! おかしら達とは使いを通してしか話ができねぇ」
「じゃあ、お前が連絡を取りたいときはどうするんだ?」
「3つの国の本部に書状を送るんだ。すると、そのうち返事が来る」

 そんないい加減な・・・こいつの言っていることは本当なのか?

「お前はそのお頭と会ったことがあるんだよな?」
「ああ、年に一度はここにも来ている」

 さすがに、ここに来ることはもう無いだろうが・・・

「金はどうしているんだ?」
「金?」
「上納金みたいにお頭に納めているんだろ?」
「ああ、月に一度送っている」
「どこに?」
「・・・水の国のアジトだ」

 ようやくまともな情報が出てきた。

「水の国のアジトは何処にあるんだ?」
「それは・・・、わかった! 言う!」

 俺がタオルを手にしたのをみて大男はビビりまくっている。

「セントレアの南にあるチタの町にある倉庫だ」
「チタのどの辺だ? 何か目印はあるのか?」
「町から離れた川下に緑色の小屋が立ってる。その横にある石造りの大きな倉庫だ」

「他の国は何処に本部があるんだ?」
「それは知らねえ。嘘じゃねぇ! 俺が知っているのは隣の国だけだ!」

-嘘かもしれないが、追及は他の人に任せよう。

「それで、お頭ってのはどんなヤツなんだ? お前みたいな大男なのか?」
「いや、3人ともお前よりも小さい」

-あれ? 変なこと言ったぞ!?

「ちょっと待て、3人っていうのはどういう事だ?」
「お頭は3人いるんだよ。男が二人と女が一人だ」

 -合議制? トロイカ体制なのか?

「名前は何て言うんだ?」
「名前は名乗らない。俺もお頭としか呼んだことが無い」

 -3人いて名前が無いと不自由なはずだが・・・、それよりも。

「そんな小さな奴らで、なんでお前らみたいな悪人の首領ができるんだ?」
「お頭達は闇の魔法が使えるんだ。殺そうと思えば触っただけで相手を殺すことが出来る」
「闇の魔法? だけど、槍とか弓矢とかでお前らなら触られる前に殺せるだろうが?」

 -触っただけで死ぬのは怖いが、触られる前に倒せばいいだけだろう。

「それは無理だ・・・、お頭達は死人だからな。切ろうが焼こうが死ぬことは無い。お前たちと一緒に居るリンネと同じなんだよ」
「・・・」

 -黒い死人達・・・、名は体を表すと言う事か。

「サトル、王宮の兵士たちが来たぞ」

 無線からミーシャの声が聞えてきた。王宮の近衛隊長には日が沈んでしばらくしたら、兵士を率いてこの場所に来るように指示をしてあった。生きている奴は牢に入れてもらうことになるが、入りきれないかもしれない。

「わかった。倒れてい居る奴らを縛って馬車に積み込むように隊長に言っておいて」
「承知した」

 この男の尋問が終わるまで近衛隊長には待ってもらおう。

「それで、話を戻すと。その3人のお頭の見た目に特徴は無いのか?」
「3人とも見た目は若いお前と変わらないらいだ。それと夜になると目が赤く光る」

 -夜になると目が赤く・・・

「えーっと、そのお頭ってひょっとして人間の生き血を飲んだりしない?」
「お前、なんでそれを!? まさか! お前も同類なのか?」
「いや、俺は違う」

 -マジッすか、不死の人間と思ったらバンパイアなのね。

 尋問を終えた大男はサリナに血が止まる程度に治療させてから手錠をかけて、近衛隊長に引き渡した。

「こいつは殺さずに牢へ入れておいてよ。こいつらの首領を捕まえた時に、顔を確認してもらうからね」
「わかった。しかし、凄い数だな。死体を積む荷馬車が後3台は必要だ・・・」
「ああ、死体は俺が回収するからいいよ。生きている奴だけ連れてってくれ」
「だが、これだけの数だぞ?」
「魔法で消すから大丈夫」
「?」

 俺は倒れている人間を片っ端からストレージの“悪人の末路”と名付けた部屋に入れて行った。動かないがストレージに入らなかったのが何人かいたが、まだ生きているということだ。そいつらは兵士を呼んで馬車に連れて行かせた。かなりの数を殺したことになった・・・、だが、こうなることは覚悟をしていた。相手があきらめない以上は徹底的にやるしかない。俺がこの世界で生きるためなのだ。

 二階にもショーイに斬られた死体が20以上はあった。ショーイはハンスや本人が言う通りの腕前なのだろう。綺麗に切り落とされた腕や首が床にたくさん転がっているのを見て、だんだん気分が悪くなってきた。

 アジトの外に出て近場で死んでいる奴らだけをストレージに入れて、ここから撤収するためにみんなを集めた。ラプトルと氷獣狼もリンネの元に戻っていたので、ストレージに収納する。

「みんなお疲れ様。じゃあ、拠点に戻ろうか」

 俺以外の5人は笑顔を浮かべている。誰も怪我をせずに目的が達成できたからうれしいのかもしれない。

 拠点の食堂でアイスクリームを食べながら、聞き出した情報を元に明日の予定をみんなに伝えた。

「明日は水の国に異動して、チタっていう町にあるアジトを偵察する」
「チタは川沿いの町ですね。交易の要になる場所です」

 物流の中心地なら悪人達にも都合が良いのかもしれない。

「それと、首領は3人いるらしいけど全員がリンネと同じ死なない人だ」
「あたしと同じ!? 他にもいたんだね? そいつは、驚いたね・・・」
「完全に同じかは、判らないけど・・・、リンネって人間の生き血を飲んだりするの?」
「ば、バカなことをお言いで無いよ! なんでそんなものを・・・、でも、それはネフロスの信者だろうね。確かに熱心な信者は人の生き血を神に捧げて、それを飲んでいる奴らが居たよ。だけど、あたしはそんなものは金を貰ったって飲むもんか!」

 -宗教上の儀式みたいなものでバンパイアじゃないのか? でも目が赤く・・・

「リンネはそうなんだ。でも、その3人は生き血を飲むらしい。それと、目が赤く光るって言うんだけど、この国には吸血鬼とかバンパイアはいるのかな?」
「血を飲む化け物の伝説はエルフの里にもある。実際に見たことは無いが、人や獣の生き血を飲む怪物が夜になったら襲ってくるというものだ。血を吸われたものたちは干からびて息絶えると言われている。だが、目が赤いと言うのは聞いたことが無いな」

 -ほぼ吸血鬼って感じだけど、赤い目ではないのか・・・

「わかった。一階の警備はラプトルに任せてとりあえず今日は寝ようか」

 ここを今日襲ってくるヤツはさすがにいないだろうが、念のために、俺は一階に降りてからストレージに入り、ラプトルと一緒に外を眺めながらベッドに入った。

 -吸血鬼? どうやって殺せば良いんだ? 

 殺し方を考えると沢山の死体を思い出して眠れなくなった。ベッドをでてシャワーを浴びながらこれからの事をもう一度考える。

明日は水の国のアジトだが戦いは始まったばかりだ。銃があれば手下どもは問題ないが、不死の首領・・・。結局、眠りに着くまでに良い考えは浮かばなかった。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

ReBirth 上位世界から下位世界へ

小林誉
ファンタジー
ある日帰宅途中にマンホールに落ちた男。気がつくと見知らぬ部屋に居て、世界間のシステムを名乗る声に死を告げられる。そして『あなたが落ちたのは下位世界に繋がる穴です』と説明された。この世に現れる天才奇才の一部は、今のあなたと同様に上位世界から落ちてきた者達だと。下位世界に転生できる機会を得た男に、どのような世界や環境を希望するのか質問される。男が出した答えとは―― ※この小説の主人公は聖人君子ではありません。正義の味方のつもりもありません。勝つためならどんな手でも使い、売られた喧嘩は買う人物です。他人より仲間を最優先し、面倒な事が嫌いです。これはそんな、少しずるい男の物語。 1~4巻発売中です。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON
ファンタジー
核戦争で死んだ俺は、神災級と呼ばれるチートな力を持ったまま異世界へ転生した。 目的はひとつ――行方不明になった“妹”を探すことだ。 だがそこは、大量の転生者が前世の知識と魔素を融合させた“魔素学”によって、 神・魔物・人間の均衡が崩れた危うい世界だった。 そんな中で、魔王と女神が勝手に俺の精神世界で居候し、 挙句の果てに俺は魔物たちに崇拝されるという意味不明な状況に巻き込まれていく。 そして、謎の魔獣の襲来、七つの大罪を名乗る異世界人勇者たちとの因縁、 さらには俺の前世すら巻き込む神々の陰謀まで飛び出して――。 妹を探すだけのはずが、どうやら“世界の命運”まで背負わされるらしい。 笑い、シリアス、涙、そして家族愛。 騒がしくも温かい仲間たちと紡ぐ新たな伝説が、今始まる――。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...