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Ⅱ-18 マリアンヌ
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■炎の国 王宮
王宮の入り口には槍を持った兵が4人立っていたが、マリアンヌと親しげに話している俺達と巨大な恐竜の関係が判らずに戸惑っているようだった。ステゴもどきはリンネの指示で王宮の中庭で完全に動きを止めている。博物館に展示されたレプリカのようなものだ。
「マリアンヌ様、その者たちは!?」
王宮に向かって進む俺達へ兵士は槍を向けて身構えた。
「この方がたは王に会いに来られたのです。お取次ぎをお願いします」
「しかし、あのような怪物を連れて来る者を王に取り次ぐわけにはまいりません!」
「そうですか、仕方がありませんね」
-ブォーン!
サリナママは右手を上げるといきなり風魔法を使って、立っていた4人の兵を扉に叩きつけた。
-マジかい! いきなり、やっちゃうのね!?
俺も今回は遠慮せずに撃つつもりだったが、ママの覚悟も決まっていたようだ。倒れた兵は生きているが後頭部を激しくぶつけて、誰も起き上がって来ない。
「行きましょう」
ママは何事も無かったように、大きな両開きの扉を開けて王宮の中に入って行った。入り口から奥に向かって赤いじゅうたんが広い廊下に敷かれていて、正面の部屋の前には槍を持った兵達が扉の前に大勢立っていた。
「今の音は何だ! 外の怪物はどうなっている?」
剣を腰に差して赤いマントを羽織った男が槍兵の後ろから現れて、サリナママに偉そうに聞いて来た。
「外の怪物は大人しくなりました。王は中にいますか?」
「・・・、なぜそんなことを聞くのだ?」
「会ってお話したいことがあります」
「今はそれどころではない! お前は外の怪物を倒してくるように指示をしたであろうが!」
男は王宮を守る責任者のような立場なのだろう、サリナママを自分の部下のように扱っていた。
「ええ、ですから、既に怪物は大人しくなりましたよ。嘘だと思うなら外に出てごらんになれば良いでしょう。こんなところで隠れていては、腰の立派な剣が役に立たないですよ」
「き、貴様! 誰に向かって物を言っているのだ!」
「あら? 誰って、あなた以外に居ないでしょう。王宮警護隊長だけど、自分さえ守ることの出来ないと有名な人ですからねぇ」
ママはこの男が嫌いなようで辛辣な言葉を重ねていった。
「それよりも、王は其処に居るのですか?」
「貴様に答える筋合いは無い! 今すぐ王宮から出て行け! さもなくば・・・」
―ブォーーーン!!
警護隊長とその周りに居た10人ぐらいの兵はママの風魔法で吹き飛ばされて扉に叩きつけられ、叩きつけられた扉も内側に向かって破壊されていた。
-ママ、すげぇ!
まったく躊躇せずに王宮の兵を倒していくサリナママに尊敬と恐れを抱きながら、俺は後ろをついて行った。
-既に俺って要らないんジャネ?
だが、大きな音は後方からも聞えてきた、俺達が入って来た玄関から兵士達が走り込んでくる。吹き飛ばした正面の扉の横の部屋からも兵士が飛び出してきた。俺達は前後を大勢の兵士に囲まれてしまった・・・が、まったく問題なかった。
後ろから入ってきた兵士達は俺がアサルトライフルの連射で倒し、前方に出てきた兵はママがさっきと同じように吹き飛ばして警護隊長達の上に重なることになった。
俺に撃たれるよりはましかもしれないが、運の悪い兵士は頭をぶつけて死んでいるかもしれない。ママの風魔法はそれぐらいの破壊力を持っていた。
正面の扉があった場所から部屋に入ると、中にはまだ兵士が剣を持って待ち構えていた。だがその兵達が立っていられたのもわずかな時間だった。奥にある大きな机の向こうまで吹き飛ばされて壁と窓ガラスに叩きつけられた。3人ほど窓の外まで吹き飛んでいったが、ママはすました顔をしている。
大きな机の向こうには、綺麗な刺繍を施された赤い服を着た男と青いシルクのローブの男が屈んで隠れていた。
「カーネギー王、オコーネル大臣、出てきてください」
「・・・、マリアンヌよ。これは一体どういう事なのだ!? 外の怪物はどうなったのだ?」
赤い服を来た王はおずおずと机の後ろから立ち上がり、ママの前に姿を見せた。
「怪物は大人しくしていますよ。私はあなたにお別れを言いに来ました」
「お別れ? それはどういう意味なのだ? この王宮から出ると言うことは・・・」
「私がここに居る必要はもう無いのです。新しい勇者が見つかったようですからね」
「新しい勇者? お前がここに居たのは夫が居たからではないのか?」
「まあ・・・、それも多少はありましたけど・・・」
-多少!? 旦那のために自分を犠牲にしたんじゃないの!?
「いずれにせよ、これでお別れです。今度会ったら命は無いと思ってください。それに、私の子供たちに近づいたら、生きたまま焼き殺してあげますからね。じゃあ、行きましょうか?」
ママさんは俺を見てニッコリと微笑んでから出口へ向かおうとした。
-こわッ! ママさん、チョー怖いんですけど!?
「あのぅ、俺にはまだやることがあるんですよ」
「あら、ごめんなさい。自分の話ばかりでしたね。あなたは何をするつもりでここに来たのですか?」
「はい、火の国の王には辞めてもらいます」
「まぁっ! 何とそれは・・・」
■森の国 西の砦に向かう街道
ミーシャ達はサリナが全ての兵糧を吹き飛ばしてから、北に向かっている行軍を追いかけ始めた。今度は森の奥に隠れることもなくサリナの運転で街道を走って行く。逃げて来る敵兵とすれ違うが、見た事の無い馬車が勢いよく近づいて行くと、蜘蛛の子を散らすように街道から離れて逃げて行き、戦う相手は一人もいなかった。
1時間ぐらい走ると行軍の殿になっている部隊に追いついた。後ろから来る見慣れぬ物に気が付いた部隊は前進をやめて騎馬に乗った小隊長が最後尾に回ってきた。
「サリナ、一度止めてくれ」
「うん、わかった!」
サリナがバギーを止めると、ミーシャはすぐにアサルトライフルで小隊長の肩を撃ち抜き、そのまま後ろに構えている歩兵の足を一人ずつ撃って行った。空薬莢が綺麗に飛んで行く向こうでは兵士達が足を抑えながら次々と倒れている。ここから先は隊長だけでなく、一人ずつ倒していくつもりだった。
-悪く思うなよ、私の国へ攻めるお前たちが悪いのだ。
ミーシャはバギーを少し進めてもらって、200メートルぐらいの位置から立っている兵を次々に撃って行く。サリナはミーシャが撃っている間にマガジンに装填して、それが終わるとバギーを少し前進させる。相手はミーシャ達に攻撃されていると判り小隊長の号令で突撃しようとするが、ミーシャに見つかった瞬間に撃たれて、どの部隊もミーシャ達に近づくさえ出来ない。何度も何度もショット&ゴーを繰り返すと、迎え撃とうとする兵は居なくなり、倒れた兵の向こうに居る部隊は前方に向かって走り出した。
「よし、このぐらいで良いだろう。少し時間を置いて車があるところまでもどろうか」
「うん、そうだね。この倒れている人達はどうするの? 風で飛ばしておく?」
「いや、もう立つことが出来ないからこのままでいいよ」
足を撃たれて倒された兵は使った銃弾の数からすると、1000人弱かもしれない。撃たれた兵は街道から逃げ出そうと必死で草むらの中を這いずっている。サリナが風魔法で飛ばすまでもないだろう、飛ばすと・・・、死んでしまう可能性が高い。
サトルはこの銃の弾薬を3000発用意してくれたが、バギーには全部は積み込まずに、半分以上は森の奥に隠した商用バンの中に入れたままだった。更に北へ追い込むためは、敵が居なくなってから車から物資を補充する必要があった。
それにしても、銃と言うのはやっぱり凄い武器だ。ミーシャが背負う矢筒には30本程度しか矢は入らない。銃弾なら1000発ぐらいは二人で運べるし、置き場所も後部座席に収まる程度だった。
「ばぎーも軽くなったから動かしやすくなったよ」
「そうだな、リュックで丘の上に運んだ時もかなり重かったからな」
「ねえ、ミーシャ。車に着いたら、少し休憩しちゃダメかな? お腹が空いちゃった」
「いや、休憩しよう。相手がもっと北に上がってから、とどめを刺しに行きたいと思っている。歩兵は遅いから・・・、1時間ぐらいは休憩できるはずだ」
「そっか! じゃあ、お昼は何にしようかな♪」
サリナは目の前で1000人近い兵が倒れて血に染まった街道をランチの事だけを考えてバギーで走り抜けた。ミーシャもランチの事を考えていたが、弾が足りなくならないかを同時に心配していた。
銃弾はもう少し持って来ておくべきだったか・・・、5000発? いや、1万あれば・・・全員を・・・。
王宮の入り口には槍を持った兵が4人立っていたが、マリアンヌと親しげに話している俺達と巨大な恐竜の関係が判らずに戸惑っているようだった。ステゴもどきはリンネの指示で王宮の中庭で完全に動きを止めている。博物館に展示されたレプリカのようなものだ。
「マリアンヌ様、その者たちは!?」
王宮に向かって進む俺達へ兵士は槍を向けて身構えた。
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「しかし、あのような怪物を連れて来る者を王に取り次ぐわけにはまいりません!」
「そうですか、仕方がありませんね」
-ブォーン!
サリナママは右手を上げるといきなり風魔法を使って、立っていた4人の兵を扉に叩きつけた。
-マジかい! いきなり、やっちゃうのね!?
俺も今回は遠慮せずに撃つつもりだったが、ママの覚悟も決まっていたようだ。倒れた兵は生きているが後頭部を激しくぶつけて、誰も起き上がって来ない。
「行きましょう」
ママは何事も無かったように、大きな両開きの扉を開けて王宮の中に入って行った。入り口から奥に向かって赤いじゅうたんが広い廊下に敷かれていて、正面の部屋の前には槍を持った兵達が扉の前に大勢立っていた。
「今の音は何だ! 外の怪物はどうなっている?」
剣を腰に差して赤いマントを羽織った男が槍兵の後ろから現れて、サリナママに偉そうに聞いて来た。
「外の怪物は大人しくなりました。王は中にいますか?」
「・・・、なぜそんなことを聞くのだ?」
「会ってお話したいことがあります」
「今はそれどころではない! お前は外の怪物を倒してくるように指示をしたであろうが!」
男は王宮を守る責任者のような立場なのだろう、サリナママを自分の部下のように扱っていた。
「ええ、ですから、既に怪物は大人しくなりましたよ。嘘だと思うなら外に出てごらんになれば良いでしょう。こんなところで隠れていては、腰の立派な剣が役に立たないですよ」
「き、貴様! 誰に向かって物を言っているのだ!」
「あら? 誰って、あなた以外に居ないでしょう。王宮警護隊長だけど、自分さえ守ることの出来ないと有名な人ですからねぇ」
ママはこの男が嫌いなようで辛辣な言葉を重ねていった。
「それよりも、王は其処に居るのですか?」
「貴様に答える筋合いは無い! 今すぐ王宮から出て行け! さもなくば・・・」
―ブォーーーン!!
警護隊長とその周りに居た10人ぐらいの兵はママの風魔法で吹き飛ばされて扉に叩きつけられ、叩きつけられた扉も内側に向かって破壊されていた。
-ママ、すげぇ!
まったく躊躇せずに王宮の兵を倒していくサリナママに尊敬と恐れを抱きながら、俺は後ろをついて行った。
-既に俺って要らないんジャネ?
だが、大きな音は後方からも聞えてきた、俺達が入って来た玄関から兵士達が走り込んでくる。吹き飛ばした正面の扉の横の部屋からも兵士が飛び出してきた。俺達は前後を大勢の兵士に囲まれてしまった・・・が、まったく問題なかった。
後ろから入ってきた兵士達は俺がアサルトライフルの連射で倒し、前方に出てきた兵はママがさっきと同じように吹き飛ばして警護隊長達の上に重なることになった。
俺に撃たれるよりはましかもしれないが、運の悪い兵士は頭をぶつけて死んでいるかもしれない。ママの風魔法はそれぐらいの破壊力を持っていた。
正面の扉があった場所から部屋に入ると、中にはまだ兵士が剣を持って待ち構えていた。だがその兵達が立っていられたのもわずかな時間だった。奥にある大きな机の向こうまで吹き飛ばされて壁と窓ガラスに叩きつけられた。3人ほど窓の外まで吹き飛んでいったが、ママはすました顔をしている。
大きな机の向こうには、綺麗な刺繍を施された赤い服を着た男と青いシルクのローブの男が屈んで隠れていた。
「カーネギー王、オコーネル大臣、出てきてください」
「・・・、マリアンヌよ。これは一体どういう事なのだ!? 外の怪物はどうなったのだ?」
赤い服を来た王はおずおずと机の後ろから立ち上がり、ママの前に姿を見せた。
「怪物は大人しくしていますよ。私はあなたにお別れを言いに来ました」
「お別れ? それはどういう意味なのだ? この王宮から出ると言うことは・・・」
「私がここに居る必要はもう無いのです。新しい勇者が見つかったようですからね」
「新しい勇者? お前がここに居たのは夫が居たからではないのか?」
「まあ・・・、それも多少はありましたけど・・・」
-多少!? 旦那のために自分を犠牲にしたんじゃないの!?
「いずれにせよ、これでお別れです。今度会ったら命は無いと思ってください。それに、私の子供たちに近づいたら、生きたまま焼き殺してあげますからね。じゃあ、行きましょうか?」
ママさんは俺を見てニッコリと微笑んでから出口へ向かおうとした。
-こわッ! ママさん、チョー怖いんですけど!?
「あのぅ、俺にはまだやることがあるんですよ」
「あら、ごめんなさい。自分の話ばかりでしたね。あなたは何をするつもりでここに来たのですか?」
「はい、火の国の王には辞めてもらいます」
「まぁっ! 何とそれは・・・」
■森の国 西の砦に向かう街道
ミーシャ達はサリナが全ての兵糧を吹き飛ばしてから、北に向かっている行軍を追いかけ始めた。今度は森の奥に隠れることもなくサリナの運転で街道を走って行く。逃げて来る敵兵とすれ違うが、見た事の無い馬車が勢いよく近づいて行くと、蜘蛛の子を散らすように街道から離れて逃げて行き、戦う相手は一人もいなかった。
1時間ぐらい走ると行軍の殿になっている部隊に追いついた。後ろから来る見慣れぬ物に気が付いた部隊は前進をやめて騎馬に乗った小隊長が最後尾に回ってきた。
「サリナ、一度止めてくれ」
「うん、わかった!」
サリナがバギーを止めると、ミーシャはすぐにアサルトライフルで小隊長の肩を撃ち抜き、そのまま後ろに構えている歩兵の足を一人ずつ撃って行った。空薬莢が綺麗に飛んで行く向こうでは兵士達が足を抑えながら次々と倒れている。ここから先は隊長だけでなく、一人ずつ倒していくつもりだった。
-悪く思うなよ、私の国へ攻めるお前たちが悪いのだ。
ミーシャはバギーを少し進めてもらって、200メートルぐらいの位置から立っている兵を次々に撃って行く。サリナはミーシャが撃っている間にマガジンに装填して、それが終わるとバギーを少し前進させる。相手はミーシャ達に攻撃されていると判り小隊長の号令で突撃しようとするが、ミーシャに見つかった瞬間に撃たれて、どの部隊もミーシャ達に近づくさえ出来ない。何度も何度もショット&ゴーを繰り返すと、迎え撃とうとする兵は居なくなり、倒れた兵の向こうに居る部隊は前方に向かって走り出した。
「よし、このぐらいで良いだろう。少し時間を置いて車があるところまでもどろうか」
「うん、そうだね。この倒れている人達はどうするの? 風で飛ばしておく?」
「いや、もう立つことが出来ないからこのままでいいよ」
足を撃たれて倒された兵は使った銃弾の数からすると、1000人弱かもしれない。撃たれた兵は街道から逃げ出そうと必死で草むらの中を這いずっている。サリナが風魔法で飛ばすまでもないだろう、飛ばすと・・・、死んでしまう可能性が高い。
サトルはこの銃の弾薬を3000発用意してくれたが、バギーには全部は積み込まずに、半分以上は森の奥に隠した商用バンの中に入れたままだった。更に北へ追い込むためは、敵が居なくなってから車から物資を補充する必要があった。
それにしても、銃と言うのはやっぱり凄い武器だ。ミーシャが背負う矢筒には30本程度しか矢は入らない。銃弾なら1000発ぐらいは二人で運べるし、置き場所も後部座席に収まる程度だった。
「ばぎーも軽くなったから動かしやすくなったよ」
「そうだな、リュックで丘の上に運んだ時もかなり重かったからな」
「ねえ、ミーシャ。車に着いたら、少し休憩しちゃダメかな? お腹が空いちゃった」
「いや、休憩しよう。相手がもっと北に上がってから、とどめを刺しに行きたいと思っている。歩兵は遅いから・・・、1時間ぐらいは休憩できるはずだ」
「そっか! じゃあ、お昼は何にしようかな♪」
サリナは目の前で1000人近い兵が倒れて血に染まった街道をランチの事だけを考えてバギーで走り抜けた。ミーシャもランチの事を考えていたが、弾が足りなくならないかを同時に心配していた。
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