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Ⅱ-33 野戦 5
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■森の国 西の砦 近郊の森
「「ゲルド司祭!」」
俺が頭の入った小さい檻をストレージから取り出すと、火の国の大臣と黒い死人のお頭-レントン-が揃って驚きの声を上げた。
-なるほど、この二人はネフロスの幹部と面識があると言う事か。
ゲルドは首だけになっても眼球は動いて俺の方をじっと見つめている。敢えて黙っているのか、喉が無いからしゃべることが出来ないのか判らないが無言のままだった。
「そうか、大臣もネフロスの幹部と面識があったんだな?」
「・・・」
大臣は無言だが、否定し無かった。
「ショーイ、この間の分身と違ってこいつが本体だったみたいだ。さっきの土人形の中に入っていたようだが、人形毎吹き飛ばしたから今は頭だけだが、まだ死んでは・・・いない?いや、死んでいるが死人としては活動できるようだ。お前はどうしたい?完全に燃やせば葬ることも出来るとは思うけど・・・」
「そうだな・・・、どうするかはサトルに任せるが、その前に俺の両親を殺した経緯だけは喋ってもらいたいな」
「うん、わかった。だけど、今の状態では話すことが出来そうにないな。リンネ、こんな風になったら話すのは難しいよね?」
「当たり前だろ! あたしはこんな風になったことは無いけど、喉も無いんだから話せる訳が無いさ!」
「そうか・・・、どうやったら元の体に戻るんだろう?」
「ふん、あたしの死人達は土に埋めておくと壊れた体が戻って行くから、そいつも同じじゃないのかい?」
「土に埋めてか・・・、よし!檻の中に土を少し入れて埋めてやることにしよう」
俺はストレージからシャベルを取り出して口のあたりまで埋まるぐらいの土を檻の中に入れてやった。生きていれば呼吸が出来なくて苦しいだろうが、こいつには関係ないはずだ。
「さて、ゲルドを知っていると言う事は、大臣がネフロスや黒い死人達と結託していたってことだよな? ショーイの両親を暗殺させたのはお前なのか?」
「いや、違う。それは私が大臣になる前の出来事だ。私が依頼したのではない」
「そうか? だったら、誰の命令なんだ?」
「おそらく、私の前の大臣だと思う・・・」
「ふーん、その大臣の独断ってことも無いよな? 火の国の王だった人! お前の指図なのか?」
「私は知らん! 私は勇者の一族をどんなことがあっても傍に置くようにと指示をしただけだ!」
なるほど、確かに具体的な所までは指示しなかったかもしれないな・・・
「ショーイ、こんなことを言っているけど、納得できるか?何なら、痛めつけて裏をとっても良いけど」
「いや、そんなことをしても意味は無いだろう。こいつらの言う通り、火の国の人間がゲルドに依頼をして、俺の両親が殺されることになったことは間違いないはずだ。後はゲルドに聞くしかないな」
「そうか、では次の質問に移ろうか。黒い死人達に汚れ仕事や傭兵の調達を依頼していたのは、大臣、お前なのか?」
「・・・」
「ふむ、返事が無いのは肯定だとは思うが、素直に話した方が良いぞ」
「・・・」
「仕方がないなぁ」
俺は気乗りしなかったが、大臣の檻に近づいて牛追い棒と言われる高圧電流が流れる棒を檻の中の大臣の足に押し付けた。
「グァ―!! や、止めてくれ! は、話すから!」
「どうせ話すなら、最初から話せよ! 俺だって痛めつけたいわけじゃないんだから!」
本心だった。できれば拷問などをしたいのでは無いのだ。
「ああ、黒い死人達への依頼は私が直接行っていた。これは前任の大臣…すでに死んでいるが、その方から引き継いだことだ。傭兵の件や、森の国の王都での放火は私が頼んだことだ」
「そうか、わかった。レントン、大臣の言っていることは間違いないのか?」
「ああ、間違いない。しかし、お前はどうやって王や大臣を此処に?」
「まあ、成り行きだな。そうすると、火の国には他にお前達黒い死人に仕事を依頼する奴はいないのか?」
「・・・」
「そうか、また無言の肯定だな。どうせ、大臣が話すんだから教えてくれてもいいんじゃないか?」
「大臣以外は近衛隊の隊長だな。あいつは、国の事と言うよりは自分の出世のために汚れ仕事を俺達に回してきていた」
「ああ、あの男ならそのぐらいのことはするでしょう。王宮でとどめを刺しても良かったかもしれませんね」
突然、サリナママが口をはさんで恐ろしいことをさらりと言ってのけた。
「まあ、それはこの後の人達に任せることにしましょうか」
「待て! お前は私の国をどうしようとしているのだ!?」
今まで黙っていた元火の国の王が大きな声を上げた。
「私の国? それはもう無いんだよ。今のところ水の国の王様に面倒を見てもらおうと思っているけどね」
「水の国? お前達は水の国の兵だと言うのか!?」
「違う違う!勘違いするな。俺がお前達を追放することに決めたんだ。だけど、その後を治める王がお前と同じロクデナシだと困るから。まともそうな王様に後始末を頼んだと言うわけだ」
「ろ、ロクデナシ! 無礼者! 貴様は誰に向かって・・・」
「檻の中に入っているロクデナシに言っているんだよ。おまえは何故、エルフや獣人を嫌うんだ? 人として扱う事がそんなに嫌なのか?」
「あの者たちは人では無い! 異形の者だぞ!反対に問うが、なぜあの者たちを人として扱わねばならんのだ!」
「なぜ? そうだな・・・」
-そういわれると人の定義って何だろう?
「俺は言葉で意思疎通が出来て、理性があるなら人として扱って良いと思うけどね。見た目の違いは個性みたいなもんだろう? お前の考えている“人間”だって背の高い低いや毛が多い少ないはあるじゃないか。それを少し広げて考えれば良いんじゃない?」
「バ、馬鹿なことを! 話せればそれで人だと!? 異形の者が人であるはずがないであろうが!」
-見た目だけで判断するってことか。議論するだけ無駄だな。
「そうか、まあ、お前の考えはわかったよ。だけど、お前のやり方を認める訳にはいかないな。黒い死人達の事もそうだが、自分の考えを押し付けるために多くの人間の命を奪おうとする男を王にはしておけない。というわけで、お前はクビになったんだよ」
「く、クビだと!? それは、どういう意味だ!私をどうするつもりなのだ!?」
「その話は後だな。俺はそれよりも黒い死人の首領や本拠地、それにネフロスの本部の事が知りたいんだ。お前は何か知っているのか?」
「知らぬ! 知っていてもお前になど教えるものか! この無礼者が!」
俺は牛追い棒で生意気な元王様にお仕置きをしようかと思ったが、体罰のようなことをしても意味が無いと思い直した。こいつには長い反省をしてもらうつもりだったから、それで我慢しよう。
「では、大臣に聞こう。お前は首領やアジトの事はどの程度知っているんだ?」
「詳しいことは何も知らない・・・、だが西の山麓にアジトがあると聞いたことがある」
「そうか。レントンは教えてくれる気になったか?」
「いや、お前達に話すことは無い」
「じゃあ、お前は用済みだな。また無音の暗闇で過ごしてくれ。もう呼び出すことは無いかもしれないが悪く思うなよ」
「ま、待て!あそこは一体何なのだ? あそこにずっと?」
「あそこは俺の暗闇魔法空間ってとこだ。お前達は飲まず食わずで死なないからな。意識はあるが永遠に動けない暗闇の空間で過ごす・・・、俺なら死んだほうがましだけどね」
「・・・」
「よし、じゃぁ・・・」
「わ、わかった! 話す、話すからあそこに戻すのは止めてくれ!」
「それは無理。あそこには戻すが、たまには外に出してやるよ。それに、美味しい物も食べさせてやろう。味は判るんだろう?」
「ああ、食い物の味は死人になってもちゃんと判る・・・。首領達のアジトは西の火山の近くにある洞窟だ。だが、その洞窟はこの国とは違うところに繋がっていると聞いている」
「この国とは違うところ!? なんだそれは?」
「「ゲルド司祭!」」
俺が頭の入った小さい檻をストレージから取り出すと、火の国の大臣と黒い死人のお頭-レントン-が揃って驚きの声を上げた。
-なるほど、この二人はネフロスの幹部と面識があると言う事か。
ゲルドは首だけになっても眼球は動いて俺の方をじっと見つめている。敢えて黙っているのか、喉が無いからしゃべることが出来ないのか判らないが無言のままだった。
「そうか、大臣もネフロスの幹部と面識があったんだな?」
「・・・」
大臣は無言だが、否定し無かった。
「ショーイ、この間の分身と違ってこいつが本体だったみたいだ。さっきの土人形の中に入っていたようだが、人形毎吹き飛ばしたから今は頭だけだが、まだ死んでは・・・いない?いや、死んでいるが死人としては活動できるようだ。お前はどうしたい?完全に燃やせば葬ることも出来るとは思うけど・・・」
「そうだな・・・、どうするかはサトルに任せるが、その前に俺の両親を殺した経緯だけは喋ってもらいたいな」
「うん、わかった。だけど、今の状態では話すことが出来そうにないな。リンネ、こんな風になったら話すのは難しいよね?」
「当たり前だろ! あたしはこんな風になったことは無いけど、喉も無いんだから話せる訳が無いさ!」
「そうか・・・、どうやったら元の体に戻るんだろう?」
「ふん、あたしの死人達は土に埋めておくと壊れた体が戻って行くから、そいつも同じじゃないのかい?」
「土に埋めてか・・・、よし!檻の中に土を少し入れて埋めてやることにしよう」
俺はストレージからシャベルを取り出して口のあたりまで埋まるぐらいの土を檻の中に入れてやった。生きていれば呼吸が出来なくて苦しいだろうが、こいつには関係ないはずだ。
「さて、ゲルドを知っていると言う事は、大臣がネフロスや黒い死人達と結託していたってことだよな? ショーイの両親を暗殺させたのはお前なのか?」
「いや、違う。それは私が大臣になる前の出来事だ。私が依頼したのではない」
「そうか? だったら、誰の命令なんだ?」
「おそらく、私の前の大臣だと思う・・・」
「ふーん、その大臣の独断ってことも無いよな? 火の国の王だった人! お前の指図なのか?」
「私は知らん! 私は勇者の一族をどんなことがあっても傍に置くようにと指示をしただけだ!」
なるほど、確かに具体的な所までは指示しなかったかもしれないな・・・
「ショーイ、こんなことを言っているけど、納得できるか?何なら、痛めつけて裏をとっても良いけど」
「いや、そんなことをしても意味は無いだろう。こいつらの言う通り、火の国の人間がゲルドに依頼をして、俺の両親が殺されることになったことは間違いないはずだ。後はゲルドに聞くしかないな」
「そうか、では次の質問に移ろうか。黒い死人達に汚れ仕事や傭兵の調達を依頼していたのは、大臣、お前なのか?」
「・・・」
「ふむ、返事が無いのは肯定だとは思うが、素直に話した方が良いぞ」
「・・・」
「仕方がないなぁ」
俺は気乗りしなかったが、大臣の檻に近づいて牛追い棒と言われる高圧電流が流れる棒を檻の中の大臣の足に押し付けた。
「グァ―!! や、止めてくれ! は、話すから!」
「どうせ話すなら、最初から話せよ! 俺だって痛めつけたいわけじゃないんだから!」
本心だった。できれば拷問などをしたいのでは無いのだ。
「ああ、黒い死人達への依頼は私が直接行っていた。これは前任の大臣…すでに死んでいるが、その方から引き継いだことだ。傭兵の件や、森の国の王都での放火は私が頼んだことだ」
「そうか、わかった。レントン、大臣の言っていることは間違いないのか?」
「ああ、間違いない。しかし、お前はどうやって王や大臣を此処に?」
「まあ、成り行きだな。そうすると、火の国には他にお前達黒い死人に仕事を依頼する奴はいないのか?」
「・・・」
「そうか、また無言の肯定だな。どうせ、大臣が話すんだから教えてくれてもいいんじゃないか?」
「大臣以外は近衛隊の隊長だな。あいつは、国の事と言うよりは自分の出世のために汚れ仕事を俺達に回してきていた」
「ああ、あの男ならそのぐらいのことはするでしょう。王宮でとどめを刺しても良かったかもしれませんね」
突然、サリナママが口をはさんで恐ろしいことをさらりと言ってのけた。
「まあ、それはこの後の人達に任せることにしましょうか」
「待て! お前は私の国をどうしようとしているのだ!?」
今まで黙っていた元火の国の王が大きな声を上げた。
「私の国? それはもう無いんだよ。今のところ水の国の王様に面倒を見てもらおうと思っているけどね」
「水の国? お前達は水の国の兵だと言うのか!?」
「違う違う!勘違いするな。俺がお前達を追放することに決めたんだ。だけど、その後を治める王がお前と同じロクデナシだと困るから。まともそうな王様に後始末を頼んだと言うわけだ」
「ろ、ロクデナシ! 無礼者! 貴様は誰に向かって・・・」
「檻の中に入っているロクデナシに言っているんだよ。おまえは何故、エルフや獣人を嫌うんだ? 人として扱う事がそんなに嫌なのか?」
「あの者たちは人では無い! 異形の者だぞ!反対に問うが、なぜあの者たちを人として扱わねばならんのだ!」
「なぜ? そうだな・・・」
-そういわれると人の定義って何だろう?
「俺は言葉で意思疎通が出来て、理性があるなら人として扱って良いと思うけどね。見た目の違いは個性みたいなもんだろう? お前の考えている“人間”だって背の高い低いや毛が多い少ないはあるじゃないか。それを少し広げて考えれば良いんじゃない?」
「バ、馬鹿なことを! 話せればそれで人だと!? 異形の者が人であるはずがないであろうが!」
-見た目だけで判断するってことか。議論するだけ無駄だな。
「そうか、まあ、お前の考えはわかったよ。だけど、お前のやり方を認める訳にはいかないな。黒い死人達の事もそうだが、自分の考えを押し付けるために多くの人間の命を奪おうとする男を王にはしておけない。というわけで、お前はクビになったんだよ」
「く、クビだと!? それは、どういう意味だ!私をどうするつもりなのだ!?」
「その話は後だな。俺はそれよりも黒い死人の首領や本拠地、それにネフロスの本部の事が知りたいんだ。お前は何か知っているのか?」
「知らぬ! 知っていてもお前になど教えるものか! この無礼者が!」
俺は牛追い棒で生意気な元王様にお仕置きをしようかと思ったが、体罰のようなことをしても意味が無いと思い直した。こいつには長い反省をしてもらうつもりだったから、それで我慢しよう。
「では、大臣に聞こう。お前は首領やアジトの事はどの程度知っているんだ?」
「詳しいことは何も知らない・・・、だが西の山麓にアジトがあると聞いたことがある」
「そうか。レントンは教えてくれる気になったか?」
「いや、お前達に話すことは無い」
「じゃあ、お前は用済みだな。また無音の暗闇で過ごしてくれ。もう呼び出すことは無いかもしれないが悪く思うなよ」
「ま、待て!あそこは一体何なのだ? あそこにずっと?」
「あそこは俺の暗闇魔法空間ってとこだ。お前達は飲まず食わずで死なないからな。意識はあるが永遠に動けない暗闇の空間で過ごす・・・、俺なら死んだほうがましだけどね」
「・・・」
「よし、じゃぁ・・・」
「わ、わかった! 話す、話すからあそこに戻すのは止めてくれ!」
「それは無理。あそこには戻すが、たまには外に出してやるよ。それに、美味しい物も食べさせてやろう。味は判るんだろう?」
「ああ、食い物の味は死人になってもちゃんと判る・・・。首領達のアジトは西の火山の近くにある洞窟だ。だが、その洞窟はこの国とは違うところに繋がっていると聞いている」
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