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Ⅱ-167 神殿突入2
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■ネフロス国 密林
装甲戦闘車は30kmぐらいの速度で後退していく。ゴーレム達は大股で迫ってくるが少しずつ引き離している。そろそろ良いだろう・・・。
「サリナ! 左のゴーレムに主砲を撃ち込め!」
「うん!」
サリナは砲塔を少しだけ回転させて、すぐに35㎜機関砲を連射した。
―ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!・・・
カートリッジに装填された17発の徹甲弾がゴーレムの左腕と一体化された盾を直撃して高い金属音が密林の中に響き渡った。機関砲の徹甲弾は盾の表面を大きく抉ったが、ゴーレム本体には全くダメージを与えられていない。
「ダメだな、続いて対戦車誘導弾を発射!さっきと同じところを狙え!」
「はーい♪」
可愛い返事とともにサリナは砲塔側面に装備されている発射装置から対戦車誘導弾を発射する。発射後も照準器で成形炸薬弾を正確に目標に向けて誘導し狙い通りにゴーレムの盾へ直撃させた。成形炸薬弾が炸裂し、衝撃波がゴーレムの持つボルケーノ鉱石の盾に深く突き刺さる。
―バァッキィーン!
主砲で傷ついていた盾は左腕の肘と一緒に砕け散ったが、ゴーレムは軽くなったせいか少し加速してサトル達との距離が近づいた気がする。
「サリナ!もう一発お見舞いしてやれ!」
「うん、行けぇーい!」
2発目の対戦車誘導弾は盾を持たないゴーレムの股間付近に直撃し、上半身と下半身を二つに分けた。勢いづいた上半身だけが前方に飛び出すように地面を転がる。
「良し!次は・・・」
―ドォーンッ!
「キャアーッ!」
「ウワァッ!」
後ろを確認せずに後進していた装甲戦闘車は密林エリアを抜けて大きな針葉樹に激突して動きを止め乗っていたサトル達は大きく揺さぶられた。密林の低木よりもはるかに太く大きな木は30トンの車両でも踏みつぶすことが出来なかった。
「反転するから、砲塔を旋回させて主砲を打ち続けてくれ!」
「わかった!」
ギアを前進に入れて左回りで反転して太い幹の木を避けながらゴーレムから逃げ始める。さすがに進行方向を見ずに走らせたのは無謀だったが、車両は走行に支障をきたすようなダメージは無かった。サトルには追ってくるゴーレムが見えなくなってしまったが、ミーシャが状況を教えてくれた。
「だいぶ近づいて来たぞ。150メートルぐらいだ」
「撃ちまーす!」
「良いぞ! どんどんやれ!」
―ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!・・・
サリナが35㎜機関砲を連射した音が鳴り響く。
「大きいのも撃ちまーす!」
―ガッシューン!
発射装置から放たれた誘導弾がゴーレムに向かって伸びて行く音が聞こえる。
―グワァッキィーン!
「命中した。盾と上半身が半分砕けたぞ。だが、距離は100メートルも無いな。だいぶ近づいている」
装甲戦闘車は30kmで走行しているが、木を避けている分だけ追いかけてくるゴーレムの接近を許してしまっているようだ。
―ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!・・・
サリナは俺の指示なしでも主砲と対戦車砲を撃ち続けてくれている。
「盾のゴーレムは砕けたぞ。だが、剣のゴーレムが速くなった。80、いや60メートルぐらいまで近寄って来たぞ!こいつはさっきよりも速いぞ!」
残り一体になったがさらに接近を許しつつある。サリナは主砲の弾倉を装填しているはずだ。森林の木は密度が濃くなって、木を避けて走ると追いつかれる
かも・・・。
「ミーシャ、撃って・・・」
―ガァッアーン!
「・・・良いよ」
振り返ると砲塔の上から身を乗り出して空になった対戦車ロケット砲を担いだミーシャが見えた。俺が言い出す前に構えていたロケット砲をすかさず発射して最後のゴーレムを破壊した。
「良し。上半身が粉々になったぞ。後は飛んでいる亀だが、撃って良いかな!」
「良い・・・」
―パシュゥッ!パシュゥッ!パシュゥッ!・・・・
「・・・よって、もう撃ってるじゃん」
どうやら、装甲戦闘車ではサリナが射手で自分が撃てないことに欲求不満がたまっていたようだ。ロケット砲からアサルトライフルに持ち替えて亀を打ち落とし始めた。装甲戦闘車を地上に落ちた兵士へ向けると、サリナも負けずに7.62mm機銃でを薙ぎ払っていく。二人で亀部隊の兵士がズタズタになるまで撃ち続けて立ち上がれないようにしてくれた。
「ゴーレムは復活していないか?」
「うん・・・、大丈夫みたいだな。すぐに元通りになる感じじゃないぞ」
「そうか、でも念のためにトドメを刺してから合図を送るか」
装甲戦闘車を砕けたゴーレムが倒れている場所へと向けた。猿人が近寄らないように警告の赤い煙が出る発煙筒を焚いてから、ゴーレムの残骸の上に箱入りダイナマイトとC4爆薬を10㎏置いてタイマーを5分後にセットする。その場をすぐに離れて2体目のゴーレムにたどり着いたところで低い連続する爆音が響き渡った。人の形を保っていたゴーレムの残骸は細かい土くれとなって周囲へ四散しているはずだ。
2体目3体目のゴーレムも粉末にして神殿前に戻り発煙弾を使って黄色い煙の合図を送った。赤い発煙筒は危険なので近寄るなという目印で、黄色い発煙筒は神殿に突入する合図だった。神殿の中には捕らわれている女性がいる可能性が高い。救出できればストック達に引き渡して農場へ避難させる予定にしている。
離れた場所で隠れていたシンディ達も黄色い煙を見て、俺達のところへと戻ってきた。
「じゃあ、俺達は神殿に突入する。シンディ達は外から入って来ないように見張って、メイ達を守ってやってくれ」
―キャィツー!
嬉しそうにチタン棒を頭上に掲げてくれた。任せろと言う意味だろう。
「メイとみんなは車両の中で隠れておけば襲われないから、しばらく我慢してくれるか?」
「うん・・・」
メイは不安そうな表情を浮かべたが、ドリーミアの鉱夫たちに付き添われて戦闘車の後部兵員室へと入って行った。
神殿の地上入り口周辺は迫撃砲の威力で地面が穴だらけになっている。3日で300発以上は撃ち込んだから当然だろう。俺、サリナ、ミーシャの順で神殿手前にある穴まで走って中を伺う。全員倒したはずはないから、まだ兵士や魔法士が残っているのは確実。ドローン爆弾を使うのが安全だが、強力な爆薬だと捕虜が傷つく可能性がある。
ここは手堅く偵察から・・・。小型のドローンを飛ばして神殿入り口から中を見たが、見える範囲には誰もいない。中に入るとプロペラの音が響く可能性があるから、偽装音を使おう。
「サリナ、ミーシャ、10秒ごとに交代で手榴弾をそこいらに投げてくれ」
「そこいら?どこを壊すの?」
「いや、音だけが必要なんだよ。入り口の横ぐらいを狙って投げれば良いよ」
「はーい♪」
ストレージから手榴弾を6個×8ケース取り出して二人に渡すと、サリナは手榴弾のピンを抜いて無造作に放り投げた。危険な武器を無頓着に扱わせていいのかと不安になったが、1発目の手榴弾音に合わせて神殿の中にドローンを滑り込ませる。神殿入り口からの通路は暗かったが、突き当りを右に曲がった先が明るくなっていた。外から響く爆発音で気が付かれないことを祈りながら天井近くを飛ばしていく。
カメラから見えてきたのは、大勢の兵士と魔法士だった。部屋の床にはネフロスのシンボル―六芒星が描かれ、魔法士はその周りで水晶球を見ている。
―あれで俺達を見ている? じゃあ、ドローンも?
しばらく待ってみたが、ドローンを落とそうと動き出す奴はいない。どうも、ドローン自体は見つかっていないようだった。部屋の天井が高くなっていたので高い位置までドローンを上げて部屋全体を見渡すと、奥に通路があるのが判った。兵士は20人ぐらいいて、槍を持っているのだが、外に出て俺達を攻撃しに来る気配はない。
―何か変だ・・・、やる気が感じられない・・・。
だが、よくよく考えれば当然かも知れなかった。金属で補強したゴーレムを粉々にする相手なのだ。死人とは言え、戦いたくはないのだろう。やる気のない兵士の上を飛び越えて奥にある通路を飛ばしていくと、突き当りには木の扉があった。入れないので、ドローンを入り口付近まで戻してライトをつけて左の暗い通路へと向けた。
左側の通路はすぐに右に折れていて、その先にランプが吊るされた薄暗い大きな部屋があった。広い部屋には土に埋まって顔だけ出している兵士が大勢いるが部屋の四隅には地面に魔法士が座っていた。
―墓? いや、顔を出していると言うのは変だ・・・。
土に埋まった兵士は寝ているように見える、元々死んでいるのだから・・・治療中か!? そういえば、リンネが死人は土に埋めておけば千切れた足も繋がると言っていた気がする。俺達に痛めつけられた兵士を埋めて治療?いや、修復しているのだろう。
広い部屋の先にも通路があったのでドローンを飛ばしていくと、檻の格子のようになった扉がある。開いていた扉から奥に入って行くと、円形になった部屋の壁は掘られて寝床のようになっている。ここは猿人たちが閉じ込められていた場所なのだろう。猿人たちは首の紋章で逆らえないようになっていたが、普段は部屋で閉じ込められていたと言っていた。(もちろん、メイの通訳によるとだが)
一通り確認できたのでドローンを外に戻すと、二人の手榴弾が48発投げ終わったところだった。
「左右に部屋がある。左には4人の魔法士、右には兵士と魔法士が30~40人ぐらいいる。左は大したことないけど、念のために両方同時に攻撃したい。ミーシャは左を頼めるか?部屋の4隅にいるから、足を撃って動けないようにしてくれ。死人だと判ればバラバラになるまで撃ってもいい」
「了解だ、マガジンは1.2・・・8個しかないけど足りるかな?」
「大丈夫だろう・・・、でももう少しいる?」
「そうだな・・・念のためにあと5つあると安心だな。無理なら良いが・・・」
「いや、じゃあ、どうぞ」
「うん、ありがとう!」
30発入りのマガジンが8本で既に240発あったが、ミーシャ先生は心配性なようだ。追加で5本のマガジンを渡してやると笑顔で受け取りボディーアーマーのポケットに大事そうに収納した。
「サリナは俺の後ろからついて来てくれ、広い部屋に入る前にスタングレネード(閃光音響弾)を使うからな、目を瞑っておけよ。その後はサブマシンガンを撃ちまくれ。低いところを狙ってくれ」
「うん、わかった。任せて!・・・私もマガジンが欲しい!」
「そうか・・・」
サリナも5本はマガジンを持っていたが、ケンカしないように追加で5本渡した。
―こいつらはガンマニアか!?
二人の女戦士が満足するだけの銃弾を持たせてから、俺はグレネードランチャーを使って神殿の中に6発の榴弾を撃ち込んだ。
―ドォーン!ドォーン!ドォーン!・・・・
6発目の爆音を聞いて穴から飛び出して神殿の中へ突入した。いよいよだ・・。
装甲戦闘車は30kmぐらいの速度で後退していく。ゴーレム達は大股で迫ってくるが少しずつ引き離している。そろそろ良いだろう・・・。
「サリナ! 左のゴーレムに主砲を撃ち込め!」
「うん!」
サリナは砲塔を少しだけ回転させて、すぐに35㎜機関砲を連射した。
―ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!・・・
カートリッジに装填された17発の徹甲弾がゴーレムの左腕と一体化された盾を直撃して高い金属音が密林の中に響き渡った。機関砲の徹甲弾は盾の表面を大きく抉ったが、ゴーレム本体には全くダメージを与えられていない。
「ダメだな、続いて対戦車誘導弾を発射!さっきと同じところを狙え!」
「はーい♪」
可愛い返事とともにサリナは砲塔側面に装備されている発射装置から対戦車誘導弾を発射する。発射後も照準器で成形炸薬弾を正確に目標に向けて誘導し狙い通りにゴーレムの盾へ直撃させた。成形炸薬弾が炸裂し、衝撃波がゴーレムの持つボルケーノ鉱石の盾に深く突き刺さる。
―バァッキィーン!
主砲で傷ついていた盾は左腕の肘と一緒に砕け散ったが、ゴーレムは軽くなったせいか少し加速してサトル達との距離が近づいた気がする。
「サリナ!もう一発お見舞いしてやれ!」
「うん、行けぇーい!」
2発目の対戦車誘導弾は盾を持たないゴーレムの股間付近に直撃し、上半身と下半身を二つに分けた。勢いづいた上半身だけが前方に飛び出すように地面を転がる。
「良し!次は・・・」
―ドォーンッ!
「キャアーッ!」
「ウワァッ!」
後ろを確認せずに後進していた装甲戦闘車は密林エリアを抜けて大きな針葉樹に激突して動きを止め乗っていたサトル達は大きく揺さぶられた。密林の低木よりもはるかに太く大きな木は30トンの車両でも踏みつぶすことが出来なかった。
「反転するから、砲塔を旋回させて主砲を打ち続けてくれ!」
「わかった!」
ギアを前進に入れて左回りで反転して太い幹の木を避けながらゴーレムから逃げ始める。さすがに進行方向を見ずに走らせたのは無謀だったが、車両は走行に支障をきたすようなダメージは無かった。サトルには追ってくるゴーレムが見えなくなってしまったが、ミーシャが状況を教えてくれた。
「だいぶ近づいて来たぞ。150メートルぐらいだ」
「撃ちまーす!」
「良いぞ! どんどんやれ!」
―ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!・・・
サリナが35㎜機関砲を連射した音が鳴り響く。
「大きいのも撃ちまーす!」
―ガッシューン!
発射装置から放たれた誘導弾がゴーレムに向かって伸びて行く音が聞こえる。
―グワァッキィーン!
「命中した。盾と上半身が半分砕けたぞ。だが、距離は100メートルも無いな。だいぶ近づいている」
装甲戦闘車は30kmで走行しているが、木を避けている分だけ追いかけてくるゴーレムの接近を許してしまっているようだ。
―ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!・・・
サリナは俺の指示なしでも主砲と対戦車砲を撃ち続けてくれている。
「盾のゴーレムは砕けたぞ。だが、剣のゴーレムが速くなった。80、いや60メートルぐらいまで近寄って来たぞ!こいつはさっきよりも速いぞ!」
残り一体になったがさらに接近を許しつつある。サリナは主砲の弾倉を装填しているはずだ。森林の木は密度が濃くなって、木を避けて走ると追いつかれる
かも・・・。
「ミーシャ、撃って・・・」
―ガァッアーン!
「・・・良いよ」
振り返ると砲塔の上から身を乗り出して空になった対戦車ロケット砲を担いだミーシャが見えた。俺が言い出す前に構えていたロケット砲をすかさず発射して最後のゴーレムを破壊した。
「良し。上半身が粉々になったぞ。後は飛んでいる亀だが、撃って良いかな!」
「良い・・・」
―パシュゥッ!パシュゥッ!パシュゥッ!・・・・
「・・・よって、もう撃ってるじゃん」
どうやら、装甲戦闘車ではサリナが射手で自分が撃てないことに欲求不満がたまっていたようだ。ロケット砲からアサルトライフルに持ち替えて亀を打ち落とし始めた。装甲戦闘車を地上に落ちた兵士へ向けると、サリナも負けずに7.62mm機銃でを薙ぎ払っていく。二人で亀部隊の兵士がズタズタになるまで撃ち続けて立ち上がれないようにしてくれた。
「ゴーレムは復活していないか?」
「うん・・・、大丈夫みたいだな。すぐに元通りになる感じじゃないぞ」
「そうか、でも念のためにトドメを刺してから合図を送るか」
装甲戦闘車を砕けたゴーレムが倒れている場所へと向けた。猿人が近寄らないように警告の赤い煙が出る発煙筒を焚いてから、ゴーレムの残骸の上に箱入りダイナマイトとC4爆薬を10㎏置いてタイマーを5分後にセットする。その場をすぐに離れて2体目のゴーレムにたどり着いたところで低い連続する爆音が響き渡った。人の形を保っていたゴーレムの残骸は細かい土くれとなって周囲へ四散しているはずだ。
2体目3体目のゴーレムも粉末にして神殿前に戻り発煙弾を使って黄色い煙の合図を送った。赤い発煙筒は危険なので近寄るなという目印で、黄色い発煙筒は神殿に突入する合図だった。神殿の中には捕らわれている女性がいる可能性が高い。救出できればストック達に引き渡して農場へ避難させる予定にしている。
離れた場所で隠れていたシンディ達も黄色い煙を見て、俺達のところへと戻ってきた。
「じゃあ、俺達は神殿に突入する。シンディ達は外から入って来ないように見張って、メイ達を守ってやってくれ」
―キャィツー!
嬉しそうにチタン棒を頭上に掲げてくれた。任せろと言う意味だろう。
「メイとみんなは車両の中で隠れておけば襲われないから、しばらく我慢してくれるか?」
「うん・・・」
メイは不安そうな表情を浮かべたが、ドリーミアの鉱夫たちに付き添われて戦闘車の後部兵員室へと入って行った。
神殿の地上入り口周辺は迫撃砲の威力で地面が穴だらけになっている。3日で300発以上は撃ち込んだから当然だろう。俺、サリナ、ミーシャの順で神殿手前にある穴まで走って中を伺う。全員倒したはずはないから、まだ兵士や魔法士が残っているのは確実。ドローン爆弾を使うのが安全だが、強力な爆薬だと捕虜が傷つく可能性がある。
ここは手堅く偵察から・・・。小型のドローンを飛ばして神殿入り口から中を見たが、見える範囲には誰もいない。中に入るとプロペラの音が響く可能性があるから、偽装音を使おう。
「サリナ、ミーシャ、10秒ごとに交代で手榴弾をそこいらに投げてくれ」
「そこいら?どこを壊すの?」
「いや、音だけが必要なんだよ。入り口の横ぐらいを狙って投げれば良いよ」
「はーい♪」
ストレージから手榴弾を6個×8ケース取り出して二人に渡すと、サリナは手榴弾のピンを抜いて無造作に放り投げた。危険な武器を無頓着に扱わせていいのかと不安になったが、1発目の手榴弾音に合わせて神殿の中にドローンを滑り込ませる。神殿入り口からの通路は暗かったが、突き当りを右に曲がった先が明るくなっていた。外から響く爆発音で気が付かれないことを祈りながら天井近くを飛ばしていく。
カメラから見えてきたのは、大勢の兵士と魔法士だった。部屋の床にはネフロスのシンボル―六芒星が描かれ、魔法士はその周りで水晶球を見ている。
―あれで俺達を見ている? じゃあ、ドローンも?
しばらく待ってみたが、ドローンを落とそうと動き出す奴はいない。どうも、ドローン自体は見つかっていないようだった。部屋の天井が高くなっていたので高い位置までドローンを上げて部屋全体を見渡すと、奥に通路があるのが判った。兵士は20人ぐらいいて、槍を持っているのだが、外に出て俺達を攻撃しに来る気配はない。
―何か変だ・・・、やる気が感じられない・・・。
だが、よくよく考えれば当然かも知れなかった。金属で補強したゴーレムを粉々にする相手なのだ。死人とは言え、戦いたくはないのだろう。やる気のない兵士の上を飛び越えて奥にある通路を飛ばしていくと、突き当りには木の扉があった。入れないので、ドローンを入り口付近まで戻してライトをつけて左の暗い通路へと向けた。
左側の通路はすぐに右に折れていて、その先にランプが吊るされた薄暗い大きな部屋があった。広い部屋には土に埋まって顔だけ出している兵士が大勢いるが部屋の四隅には地面に魔法士が座っていた。
―墓? いや、顔を出していると言うのは変だ・・・。
土に埋まった兵士は寝ているように見える、元々死んでいるのだから・・・治療中か!? そういえば、リンネが死人は土に埋めておけば千切れた足も繋がると言っていた気がする。俺達に痛めつけられた兵士を埋めて治療?いや、修復しているのだろう。
広い部屋の先にも通路があったのでドローンを飛ばしていくと、檻の格子のようになった扉がある。開いていた扉から奥に入って行くと、円形になった部屋の壁は掘られて寝床のようになっている。ここは猿人たちが閉じ込められていた場所なのだろう。猿人たちは首の紋章で逆らえないようになっていたが、普段は部屋で閉じ込められていたと言っていた。(もちろん、メイの通訳によるとだが)
一通り確認できたのでドローンを外に戻すと、二人の手榴弾が48発投げ終わったところだった。
「左右に部屋がある。左には4人の魔法士、右には兵士と魔法士が30~40人ぐらいいる。左は大したことないけど、念のために両方同時に攻撃したい。ミーシャは左を頼めるか?部屋の4隅にいるから、足を撃って動けないようにしてくれ。死人だと判ればバラバラになるまで撃ってもいい」
「了解だ、マガジンは1.2・・・8個しかないけど足りるかな?」
「大丈夫だろう・・・、でももう少しいる?」
「そうだな・・・念のためにあと5つあると安心だな。無理なら良いが・・・」
「いや、じゃあ、どうぞ」
「うん、ありがとう!」
30発入りのマガジンが8本で既に240発あったが、ミーシャ先生は心配性なようだ。追加で5本のマガジンを渡してやると笑顔で受け取りボディーアーマーのポケットに大事そうに収納した。
「サリナは俺の後ろからついて来てくれ、広い部屋に入る前にスタングレネード(閃光音響弾)を使うからな、目を瞑っておけよ。その後はサブマシンガンを撃ちまくれ。低いところを狙ってくれ」
「うん、わかった。任せて!・・・私もマガジンが欲しい!」
「そうか・・・」
サリナも5本はマガジンを持っていたが、ケンカしないように追加で5本渡した。
―こいつらはガンマニアか!?
二人の女戦士が満足するだけの銃弾を持たせてから、俺はグレネードランチャーを使って神殿の中に6発の榴弾を撃ち込んだ。
―ドォーン!ドォーン!ドォーン!・・・・
6発目の爆音を聞いて穴から飛び出して神殿の中へ突入した。いよいよだ・・。
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