27 / 96
5歳児の評判
しおりを挟む
■リーブル宮殿 皇帝執務室
国内の心配事はよそ者であるラインハルトの目も上手く活用せねばな。
ハンスからの情報だけでは、時期を逸する可能性もある。
「陛下。ノットランド皇国 オリバー公使のご到着です。」
「陛下、ご機嫌麗しく。本日はお招きいただき大変光栄に存じます。」
「貴殿こそ、いつぞやに続き、急な招待に応じていただき、感謝の念に耐えん。」
「もったいなきお言葉、いつでもお呼びください。わが君(きみ)からも、貴国ならびに陛下のご要望には身命を賭してお応えせよと命(めい)を受けております。」
-わが君か、確か王はまだ若かったな。
「さようであるか。時にノットランド王はご壮健か?余は即位式のときにお会いできるのを楽しみにしておる。」
「お心遣い感謝申し上げます、おかげさまで、わが君は壮健でございます。」
「しかるに、ノットランド王と言うのはどのような御仁(ごじん)であられるのか?」
「わが君でございますか・・・、聡明でそして楽しい王でございます。」
-楽しい? 自国の王を?
「楽しいとな? それはまた愉快な王であるな。」
「はい、わが君は即位されたときから、民や臣下のものに『わが国を楽しい国にせよ、そして皆が楽しく暮らせるようにするのだ。』そういい続けておられます。」
-皆が楽しく暮らすか・・・
-俺の国はどうするのだ?
「そうであるか、更にお会いできるのが楽しみとなった。よろしくお伝え願いたい。」
「もったいなきお言葉、ありがたくわが君へお伝え申し上げます。」
「時に、貴殿は公使に着任して3年と伺っておるが、他国の公使たちとも交流はおありであろう?」
「仰せの通りでございます、アメリア連邦の各国公使と貴国の外務卿を交えた会合が、月に1度開かれ、様々な情報交換をしております。」
-フム、聞いている通りだな。
「ならば、貴殿の率直なお人柄を見込んで、是非教えていただきたいことがあるのじゃ。」
「何なりとお申し付けください。」
「うむ、答えづらい問いだとは、承知の上で尋ねるが、余の評判や噂はどうであろうか?」
「陛下の評判でございますか・・・。」
「そうじゃ、できれば耳あたりのよいものでなく、悪い評判を聞かせて欲しいのじゃ。無論、どのようなことを聞いても、貴殿を咎めはせぬし、誰が言っておったかも興味は無い。」
「陛下の命とはいえ、中々に難しいご質問でございますね・・・」
「やはり、答えにくいか。であれば、良い評判があれば先にそれを聞かせてくれても良いぞ。無いなら無いで、構わぬが。」
-少し凹むが、仕方なかろう。
「良い評判でございますね。陛下とお会いしたことがある方々から、陛下の知識や思慮の深さに感銘を受けたと聞いておりました。私も実際にお目にかかれ、陛下のお姿とお言葉を耳にしてからは、畏敬の念に堪えません。」
-まあ、当然であろう。こんな5歳はほかに居ないからな。
「そうか、それは過分な評判じゃな。じゃが、やはり良い評判ばかりと言うのは絶対無いであろう。余を助けると思って、できれば酷い評判を教えてもらえんだろうか?」
-そろそろ、言ってほしいのだが。
「さようでございますね、噂といえば、やはり先の大臣方の件でしょうか・・・」
「うむ、どのように噂しておるのじゃ?」
「陛下は、気に入らぬことがあると、虎に喰わせると・・・」
-そうなのか、余は構わんが白虎が少し可哀そうだのう。
・・・お前も気にせぬか。 なら良い。
「なるほどのう、そのように噂するものがおるのじゃな。オリバー殿よ、言いにくいことを教えてくれて感謝する。」
「やはり、白虎は怖いのであろうか?」
「・・・怖いといえば間違いなく怖いのですが、私には神々しく見えております。」
「そうか! 白虎は神々しいか! そうであろうとも、もし望むなら触ってもよいのだぞ? 決して、噛んだりはせんのだ!」
「陛下、お慎みください。公使がお困りになります。」
-なんじゃ、ハンスはつまらん。
-わが親友を自慢するチャンスじゃのに。
「触っても、本当によろしいのでしょうか?」
「触ってみたいのか!?」
-ハンスめ、触りたいのではないか。
「陛下のお許しをいただけるのであれば。是非」
「もちろん許す! 白虎よ側へ行ってやれ。」
わが親友は少し面倒くさそうだが、ゆっくりと公使の元へ行って横になってくれる。
公使はびくつきながらも背を撫でておる。
うむ、怖がる必要はないのだ。
すごく良いやつなのだから。
「これは、すばらしい毛並みでございますね。絹よりもなめらかでございます。」
「そうであろう、白虎の毛並みに勝るものは無いと余も思っておる。」
「陛下、ありがとうございました。小国の公使ごときにこのような栄誉を与えていただき、心より感謝申し上げます。」
「気にするでない、余も貴殿の教えに深く感謝する。だが、もし今後同じような噂を聞けば、『白虎は人に牙を向けたことが無い。』 そのように、伝えてくれればありがたい。こやつの名誉に関わるでな。」
「ありがたく、承りました。」
うむ、白虎は前足しか使わん。
牙を使うのは、黒狼じゃからな。
しっかり訂正しておかねば。
国内の心配事はよそ者であるラインハルトの目も上手く活用せねばな。
ハンスからの情報だけでは、時期を逸する可能性もある。
「陛下。ノットランド皇国 オリバー公使のご到着です。」
「陛下、ご機嫌麗しく。本日はお招きいただき大変光栄に存じます。」
「貴殿こそ、いつぞやに続き、急な招待に応じていただき、感謝の念に耐えん。」
「もったいなきお言葉、いつでもお呼びください。わが君(きみ)からも、貴国ならびに陛下のご要望には身命を賭してお応えせよと命(めい)を受けております。」
-わが君か、確か王はまだ若かったな。
「さようであるか。時にノットランド王はご壮健か?余は即位式のときにお会いできるのを楽しみにしておる。」
「お心遣い感謝申し上げます、おかげさまで、わが君は壮健でございます。」
「しかるに、ノットランド王と言うのはどのような御仁(ごじん)であられるのか?」
「わが君でございますか・・・、聡明でそして楽しい王でございます。」
-楽しい? 自国の王を?
「楽しいとな? それはまた愉快な王であるな。」
「はい、わが君は即位されたときから、民や臣下のものに『わが国を楽しい国にせよ、そして皆が楽しく暮らせるようにするのだ。』そういい続けておられます。」
-皆が楽しく暮らすか・・・
-俺の国はどうするのだ?
「そうであるか、更にお会いできるのが楽しみとなった。よろしくお伝え願いたい。」
「もったいなきお言葉、ありがたくわが君へお伝え申し上げます。」
「時に、貴殿は公使に着任して3年と伺っておるが、他国の公使たちとも交流はおありであろう?」
「仰せの通りでございます、アメリア連邦の各国公使と貴国の外務卿を交えた会合が、月に1度開かれ、様々な情報交換をしております。」
-フム、聞いている通りだな。
「ならば、貴殿の率直なお人柄を見込んで、是非教えていただきたいことがあるのじゃ。」
「何なりとお申し付けください。」
「うむ、答えづらい問いだとは、承知の上で尋ねるが、余の評判や噂はどうであろうか?」
「陛下の評判でございますか・・・。」
「そうじゃ、できれば耳あたりのよいものでなく、悪い評判を聞かせて欲しいのじゃ。無論、どのようなことを聞いても、貴殿を咎めはせぬし、誰が言っておったかも興味は無い。」
「陛下の命とはいえ、中々に難しいご質問でございますね・・・」
「やはり、答えにくいか。であれば、良い評判があれば先にそれを聞かせてくれても良いぞ。無いなら無いで、構わぬが。」
-少し凹むが、仕方なかろう。
「良い評判でございますね。陛下とお会いしたことがある方々から、陛下の知識や思慮の深さに感銘を受けたと聞いておりました。私も実際にお目にかかれ、陛下のお姿とお言葉を耳にしてからは、畏敬の念に堪えません。」
-まあ、当然であろう。こんな5歳はほかに居ないからな。
「そうか、それは過分な評判じゃな。じゃが、やはり良い評判ばかりと言うのは絶対無いであろう。余を助けると思って、できれば酷い評判を教えてもらえんだろうか?」
-そろそろ、言ってほしいのだが。
「さようでございますね、噂といえば、やはり先の大臣方の件でしょうか・・・」
「うむ、どのように噂しておるのじゃ?」
「陛下は、気に入らぬことがあると、虎に喰わせると・・・」
-そうなのか、余は構わんが白虎が少し可哀そうだのう。
・・・お前も気にせぬか。 なら良い。
「なるほどのう、そのように噂するものがおるのじゃな。オリバー殿よ、言いにくいことを教えてくれて感謝する。」
「やはり、白虎は怖いのであろうか?」
「・・・怖いといえば間違いなく怖いのですが、私には神々しく見えております。」
「そうか! 白虎は神々しいか! そうであろうとも、もし望むなら触ってもよいのだぞ? 決して、噛んだりはせんのだ!」
「陛下、お慎みください。公使がお困りになります。」
-なんじゃ、ハンスはつまらん。
-わが親友を自慢するチャンスじゃのに。
「触っても、本当によろしいのでしょうか?」
「触ってみたいのか!?」
-ハンスめ、触りたいのではないか。
「陛下のお許しをいただけるのであれば。是非」
「もちろん許す! 白虎よ側へ行ってやれ。」
わが親友は少し面倒くさそうだが、ゆっくりと公使の元へ行って横になってくれる。
公使はびくつきながらも背を撫でておる。
うむ、怖がる必要はないのだ。
すごく良いやつなのだから。
「これは、すばらしい毛並みでございますね。絹よりもなめらかでございます。」
「そうであろう、白虎の毛並みに勝るものは無いと余も思っておる。」
「陛下、ありがとうございました。小国の公使ごときにこのような栄誉を与えていただき、心より感謝申し上げます。」
「気にするでない、余も貴殿の教えに深く感謝する。だが、もし今後同じような噂を聞けば、『白虎は人に牙を向けたことが無い。』 そのように、伝えてくれればありがたい。こやつの名誉に関わるでな。」
「ありがたく、承りました。」
うむ、白虎は前足しか使わん。
牙を使うのは、黒狼じゃからな。
しっかり訂正しておかねば。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる