それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

文字の大きさ
19 / 183
勇者を目指して

17.神に愛されし男 タケル 前編

しおりを挟む
■ スタートス 聖教会 宿舎

異世界二日目の朝は自分で起きる事ができた。
昨晩も熟睡できたようだ、けだるさが心地よい。
ベッドから起き上がると背中や腕が筋肉痛でこわばっている。
顔を洗いに宿舎を出て井戸へ向かった、夜明け直後で外はまだ薄暗い。
(やっぱり、歯ブラシ欲しい。)口をゆすぎながら考える。

そのまま、空き地で柔軟体操をしてから、太陽に向かってお祈りをすることにした。
(グレン様、昨日はありがとうございました。)
(これからの魔法でお願いがございます。)
(私の手のひらが指し示す方向に炎の力をお与えください。)
(引き続きグレン様のご加護をお願いいたします。)

神との対話を追え、部屋に戻ったタケルは朝食までの時間で弓を使ったトレーニングを行うことにした。(8倍ルールだし、50回でいいだろう。)
左右の手を変えながら10回づつ、5セット弓を引き絞る。
最後の方は手が震えてしまい、引いた状態を保てないが何とかやりきった。

4人で朝食を終え、聖教会にいたマリンダさんと一緒に今日も空き地に向かう。
「昨日の炎の魔法をもう少し強く、そして長くできるようにいたしましょう。」
「神への祈りを深く、静かに行うことで実現できるはずです」
今日も美しいマリンダが皆へ各自の練習を促す。

集中力が必要なので、それぞれ距離を置いて練習を始めた。
みんな目を閉じて、祈りをささげている。
アキラさんをコッソリ見ていると、声は小さいが祈った後に「ファイア」とちゃんと言っている。出てきた炎は昨日より大きく感じるし、見ている間は消えなかった。

タケルも自分の修練を行うことにした。
目標は大きさと炎を出す位置をコントロールすることにした。

3人から一番遠い場所まで移動して、両足を半歩開いてから右手を上げた。
手のひらを上にし、炎の大きさをイメージした祈りを捧げる。
「ファイア」 つぶやくタケルの右手の上に、イメージ通りの炎が立ち上がる。
更に頭の中で炎を上に上昇させるイメージを描くと、目の前の炎も真っ直ぐ1メートルぐらい上に移動した。
手のひらを左右に動かすと、炎がちゃんと左右についてくる。
つづけて、炎が前へ移動するイメージを描いたが、炎は少し前に移動して、すぐに消えてしまった。
(グレン様ありがとうございました。)
(でも、まだ戦いには使えない。グレン様にもっとイメージを伝えないと。)

タケルはブツブツ言いながら、神への対話を続けた。
(是非、離れた場所に思い通りの炎をお願いいたします)
他人が見ると、チョットやばい人のようだが、本人は真剣極まりない。

もう一度場所を変えて、昨日槍の練習をした的の前へ移動した。
槍で構える位置よりさらに10mぐらい後方に右足を半歩引いて立った。
頭の中で前方の的が燃えるイメージを描き、右手のひらを前方に向け押し出す。
「ファイア!」大きめの声で叫んだ。

右手の先の麻袋に炎が現れた! 成功だ!
タケルは画像のように目の前の状況を頭に焼き付け、右手を下ろした。

右手をおろした先にあった炎は小さくなったが、麻袋の表面がまだ燃えている。
あわてて、井戸へ走り手桶に水を汲んできて、麻袋を消火した。
(そりゃあ、引火したら消えないよね)と一人で反省するタケルにマリンダが歩み寄った。

「マリンダさん、申し訳ありません。調子に乗りました。」
「大丈夫です、タケル様。それよりも凄いお力ですね。修練をはじめて二日で離れた場所に炎を実現されるなんて・・。炎の魔法は、私がお教えできることは無いようです。」少し残念そうに見えるのはタケルの勘違いだろうか。

タケルは3人を集めて、どんなイメージでやっているかを伝えた。
「できるだけ、神様とお話するようにしてる。それと、具体的に炎の場所と体の位置関係をイメージすると炎が動くようになった。俺の場合は手のひらの延長線上でイメージして、手のひらをその方向に動かすことで、神様がOKしてくれたって感じ。」
神様からの返事はないが、タケルなりに結果でOKと解釈した。

3人は散らばって、また自主練を再開し始めた。
「マリンダさん、昨日教えてくれた泉はどっちになりますか?」
「少し歩くと小川に出ますので、そこを上流に向かうとたどり着きます。行かれるのでしたら、ご一緒いたしましょうか?」方角を指差しながら、タケルを見つめる。
「いえ、一人で行きたいので、今回はご遠慮します。」
(美女とデートも魅力的だけど、チョット目的があるからなぁ)

タケルは部屋へ戻り、手ぬぐいと槍を取ってきた。
3人に一人で泉まで行くことを伝え、マリンダが教えてくれた方向へ歩き出す。
教会と逆方向に100メートルほど進むと小川が流れていた。

暖かい日差しと、のどかな風景の中を歩きながら、神様について考える。
(グレン様とはすばらしい関係が構築できた)
(マリンダは魔法には相性があるって言ってたよな)
(俺がワテル様にお願いしたら、グレン様が焼きもち焼くかな?)

取りとめも無く考えているうちに、小川につながっている泉が見えてきた。
直径20メートルぐらいだろうか、池というほど大きくは無い。
上流に川は見えないので、湧き水が出ているのだろう。

泉のほとりで、タケルは槍と手ぬぐいを地面に置き、肩膝をついて祈りをささげた。
(グレン様、これからワテル様へお祈りします。)
(決してグレン様への感謝を忘れたわけではございません。)
(水の神ワテル様、異世界からきた勇者候補のタケルです。)
(魔竜を討伐するために、ワテル様のお力をお貸しください)

肩膝のまま泉の水を両手で救い、改めてワテル様に祈りをささげる。
(ワテル様 「ウォーター」と言いますので、手のひらの水を球状にして、頭の高さままで浮かしてください。)

立ち上がったタケルは手のひらに水を入れたまま、つぶやいた
「ウォーター」。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...