それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

文字の大きさ
21 / 183
勇者を目指して

19.今後のシフト編成

しおりを挟む
■スタートス 聖教会裏 空き地

タケルは頭の中で、イメージを描いてつぶやいた。
「ウォーター。」

「ワァッ!」 3人が歓声を上げる。
タケルの手の上に直径50センチぐらいの球体が浮かんでいる。

「きれい。」ナカジーがつぶやきながら傍(そば)によって来た。
「水、だよね。」と言いながら、目の前にある水球にひとさし指を刺した。
水球の表面に波紋が走り、指先は球体の中に透けて見えている。
「水だ、ちゃんと濡れてる。」と指を抜いたナカジーは目を丸くした。

水球を浮かべたまま後ろに下がって、今度は水球を高く上昇させた。
そのまま、目をつぶってワテル様に新しいイメージをお祈りする。
(ワテル様 直径を今の水球の10倍にしてください)  

「キャッ!」と言う悲鳴を聞いて、タケルが目を開けると頭上の水球がイメージ通り巨大化していた。
(ありがとうございました、ワテル様)
タケルは感謝の祈りをささげ、手を下に下ろす。
頭上の水球が消滅した。

「何スカ、それ。もう無茶苦茶ですよ。ヤバ過ぎ。」ダイスケが引きつった笑みで寄ってくる。
ナカジーは黙って首を横に振っている。
アキラさんはニコニコしていた。

「これでお風呂の水は解決だね。」ニヤッと笑って3人を見た。

ダイスケに聞かれたので、泉でのプロセスを説明した。
「考え方は炎の神様と同じだと思ってる。しっかりお願いして、イメージを伝えるってこと。今回は自分自身に雑念が入ったと思ったから、『水ごり』ってカタチでワテル様に誠意を見せたつもり。結局は信じる心と神への対話じゃないかな?」話していて、宗教の勧誘をしているような気になってきた。

2人は首を捻りながら自主練に戻っていった。
タケル一人が上手く行き過ぎて、少しヤッカミがあるのかもしれない。

その場をマリンダに任せて、自分の部屋へ槍と手ぬぐいを置きに戻った。

ついでに、厨房をのぞいてミレーヌの旦那にケモノの毛を何種類か分けてもらいたいとお願いする。
色々説明したが、結局ミレーヌは、「旦那に直接言って欲しい」となって、夜には旦那を食堂に連れてきてくれることになった。

魔法練習後の昼食で、先に帰るナカジーに日本へ戻ってからのことを話した。
「連絡先を西條さんに託けてもらっていいかな?」
「あたしの連絡先は高いわよ~ん。」女性ならではの返しが飛んできた。
「まあ、西條さんに聞けば良いんだけど、一応礼儀としてね。」タケルはサラリと流して、3人に続けた。
「それと、次回持ってくるものは各自負担の無い範囲で適当にヨロシクね。」

「ところで、今後のローテーションだけど、3人は月~金はフルに入るって考えでいい?」
「俺は、来週から試験があるんで、かなり不定期になると思います。」
「私は大丈夫よ。当分は月~金で問題なし。」
アキラさんは黙って頷いている。
「それなら、帰って西條さんと相談するけど、月金はこのメンバーをベースにシフト組んで、ダイスケ君が休みの日はこの3人で行くか、ピンチヒッター入れるかにするけどOK?」
3人とも頷く。
「いずれにせよ、現世の1日でこっちは8日過ぎちゃうからね、一年は現世の1ヵ月半だし、あっという間に魔竜復活ですよ、みなさん。」
「というわけで、来月ぐらいまではできるだけシフトに参加してもらえるとありがたいです。」シフト管理の努めを頑張ってみた。

昼食後はブラックモアが防具の説明をすると言うので、4人で倉庫について行った。
この世界では、全身を金属で包むような鎧は無かった、大きな盾もない。
多くの防具が皮をベースに、主要箇所を金属でカバーするものだった。
結局4人とも、籠手(こて)と胸当て、皮帽子を選択することになった。

防具を装着した後に、木剣と木の棒を使った練習に移る。
ダンスチームのダイスケとアキラさんは、木剣を持って昨日のステップをおさらいする。

突きチームのタケルとナカジーへのお題は「立会い」だった。

「今日は、ナカジー様が攻め手で、木剣でタケル様の胴を本気で突いてください。多少のケガはマリンダが治療しますので、遠慮なくお願いします。」
「タケル様は攻撃せずに、槍代わりの棍棒でナカジー様の剣をひたすら払いのけてください。レイピアの間合いに入られてしまった後の防御訓練になります。」

ブラックモアの説明を聞いて、ナカジーはハイテンションになった。
「なんか、楽しくなってきたわ~。魔法の分取り返すから、覚悟してね。」とやる気満々。
(何を取り返すのやら)と思ったが、先に帰るナカジーには多めに修練をして欲しい。

ブラックモアの指導で、ナカジーは円を描くようにタケルの周りを回り、フェイントを入れながら飛び掛ってくる。

タケルは腰を落として飛び込んでくる瞬間に剣を払いのけるだけだ、最初のうちは踏み込みも甘く、飛んでくる予測も簡単で、らくらくと棍棒で木剣を弾き返せた。

ところが、途中でブラックモアが何度かナカジーに耳打ちをするうちに、常に小刻みに足を動かし始めてフェイントが上手くなって、踏み込みも早くなってきた。
木剣を払えずに、体の近くでかわす回数が増えてきた。

100回ぐらい突きをかわして、お互い疲れたところで、ナカジーの会心の一撃がヒットした。
剣先だけのフェイントに引っかかり、棍棒の払いが空振りになったところを、鋭く踏み込む。

タケルは体を捻って避けたが、きれいに伸びてきた木剣をかわしきれずに、剣先がみぞおちの上辺りに入った。
「グフッ」呼気が漏れた。皮の胸当ての上だがかなり痛い。

「ヤッタァー!!」胸を押さえるタケルを見て、ナカジーは小躍りして喜んでる。
(ヒドイ奴だなぁ)と思いながら、胸を押さえたまま後ずさった。

「ナカジー様お見事でした。フェイントも踏み込みも理想通りです。突きもきれいに伸び切ってスピードがありました。」ブラックモアが淡々と講評を述べている。
講評を聞くナカジーを見ると少女のように笑ってブラックモアを見つめている。

まだ胸の痛みが残るタケルには天使が近づいてきた。
「大丈夫でしたか?タケル様」マリンダが見つめている。

「このあたりでしょうか?」マリンダはタケルの胸の辺りを指差す。
「ここですね。」と胸当ての上から、突かれた場所を手で押さえた。
「失礼いたします。」マリンダは胸当ての下から右手を入れて、胸に手を当てた!

驚きで心拍数マックスになったタケルの気持ちを無視して、マリンダが目を閉じた。
胸の痛みは一瞬で消え、すぐにマリンダも離れていった。
「もう、大丈夫ですか?」
「ありがとうございます、もう大丈夫です。」
(俺のハートはヤバイけど。)

一区切りついて少し休憩することにしたタケル達とブラックモアの元に、ノックス司祭とミレーヌが足早に近寄ってきた。

ミレーヌさんにいつもの笑顔が無い。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...