それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

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勇者候補たちの想い

30.西方州都 ムーアの町

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■西方大教会 入り口

ギレンに連れられて教会の外に出ると、パウエルと言う武術士を紹介された。
武具工房までパウエルが案内してくれるそうだ。

「馬車を手配いたしましたので、こちらで武具の店へ参りましょう。」
「どのぐらい時間がかかりますか?」
「10分程度かと。」
「でしたら、歩いていきます。町の中を見たいので」

パウエルはギレンの顔を見たが、頷いたので馬車に去るように指示した。

教会のまえはは大きな広場になっていて中央に泉があった。
多くの人が水を汲んだり飲んだりしている。

広場の周りには露天がたくさん出ていて、色んな物を販売している。
焼いた肉串なども売っていて、良いにおいが漂っている。

教会は大通りの突き当たりに立っていたが、左右にも大きな道が走っている。
周囲の建物も石造りで2階建て以上が多く、スタートスの町並みとは比べ物にならない。

パウエルに連れられて歩く大通りは石畳で加工されていた。
両側には読めない文字の看板がぶら下がる店が並んでいる。
(文字は翻訳できないのか)

一番驚いたのは、ガラスが入っている窓がいくつかあったことだ。
スタートスでは窓ガラスは見たことが無かった。
ランプにガラスを使っているが、透明度が低くいびつだったので、この世界では板ガラスは無いと思い込んでいた。

大通りが途切れる場所に武具工房があった。
扉を開けて中に入ると、左右の壁際に槍や剣等が並べられている。
正面に大きなテーブルがあり、その向こう側にがっしりした背の低い男が居た。
男は入ってきたパウエルたちを見て、テーブルの上に細い木の棒を置いた。

「パウエル武術士、今日はどんなご用件で?」
「勇者様ば魔法武具のことで教えて欲しいと言うことで、お連れした。」
「勇者様・・・、魔法武具?・・・」
男が眉間にしわを寄せる。

「こちらの勇者様は、スタートスからお越しになった方だ。」
「スタートス? そいつはまた辺ぴなところにもいらっしゃるんですね。」
男の顔が笑顔に変わった。

「ようこそ、あっしは武具士のハリスって言います。お見知りおきを。」
「スタートスから来たタケルです、よろしくお願いします。」

「で、聞きたいことってのは何ですかい?」
タケルは聖教石の加工方法と魔法武具がどのように作られるかを尋ねた。

「武具の種類にもよるんですけどね、まずは聖教石に付加したい魔法の祈りを捧げて、決まった魔法の種類を発動しやすくします。こいつは教会魔法士様のお仕事です。」
「俺たちは、使い手がどんな風に魔法を発動させたいのかを聞いて、武器に都合の良い場所へ聖教石を取り付けるんですが、武器の性能を落とさずに一番良い場所へ取り付けるのが、ミソですかね。」

「槍の場合ならどうなります?」
「槍ですか? あんまり使う人はいないですけど、穂先の近くになりますね。槍は柄の部分も攻撃や防御で使うんで、どこに取り付けても聖教石が割れる心配があります。剣だと握りの部分を加工することがほとんどですね。」

「作ってもらうには、どのぐらい費用がかかりますか?」
「ここの武具は全て教会からの依頼なんで、金はいらないです。あっし達は教会からお給金や食事をいただいてますから。」
「ただ、加工された聖教石を用意するのが一番大変だと思いますよ、オズボーン様に下賜(かし)していただく必要がありますからね。」

最後に両手剣、レイピア、槍を持ってきて、取りつける場所と聖教石の大きさをハリスに教えてもらった。

「ハリスさん、ありがとうございました。また、来ますのでよろしくお願いします。」


工房の外へ出ると、パウエルがタケル達に用意した館へ案内すると言うのでついて行く。
教会まで戻って右へ曲がり10分ぐらい歩いたところに、石造りの大きな2階建の建物があった。

中に入ると1階は居間兼食堂で大きなテーブルセットの横にソファーがあり、壁には暖炉もある。
奥は厨房と洗面する区画になっている。

2階の寝室はスタートスの3倍はある広さだ、ベッドも大きく柔らかかった。
窓にはガラスも入っている。
(居心地はこっちの方が間違いなく良いだろう)
(帰ったら、スタートスにもリビングを作ろう)

「こちらの館は、大司教様がお客様をおもてなしになる別邸になります。皇都から枢機卿が起こしになる際などに使われるものです。」
「勇者様には快適にお過ごしいただきたいと、大司教様が特別にご用意されたものです。」
パウエルがうやうやしく、館の案内を終えた。

館の次はギレンの待つ昼食会場へ向かった。
昼食会場は教会近くのこぎれいなレストランだった。
テーブルにはクロスが掛けられ、花も飾ってある。

「勇者様、どうぞこちらへ。のどが渇いてらっしゃいませんか?酒の用意もしておりますので、遠慮なくどうぞ。」
「昼は飲まないので、お気持ちだけで結構です。」
ギレンは怪訝そうな顔をした。

「館の方はいかがでしたか、この町でもっとも快適な宿所をご用意させていただきました。」
「確かに立派な館でしたね。お心遣いを感謝します。」
「では、ムーアに移っていただけると言うことで。」
「いや、もう少し考えます。当面は、必要なときにこちらに来るようにします。」

「必要なとき・・・とおっしゃられても、私もいつも転移魔法でお迎えに上がれるわけではございませんので。」
「そこはご迷惑をかけないようにしますので、お気になさらずに。」

「?・・・そうですか。ところで、武具工房は参考になりましたか?」
「ええ、良い勉強になりました。 ハリスさんに武具の加工をお願いしようと思っています。問題はないですか?」

「それはもう、勇者様のご希望であればいかようにも。ただ、もし聖教石が必要でしたらオズボーン司教様へお申し出ください。加工した聖教石は司教様の許しなく、持ち出すことが出来ませんので。」
「わかりました、聖教石が必要になったらお願いします。」

昼食はパン、スープ、焼き野菜、肉のシチューでどれもスタートスよりは味が濃くて美味しかった。
(バターとかマヨネーズは無いけどね)

午前中に自分の目的が達成できたので、そろそろ帰るとギレンに伝えた。

「司教様はぜひご一緒に夕食をと申しております、良い果実酒もご用意させてもらっておりますので、せめて夜まではこちらにとどまりください。」
「いえ、戻って新しい魔法に挑戦したいのでこれで失礼します。ごちそうさまでした。また来ますから、司教にはよろしくお伝えください。」
引き止めるギレンに一礼して席を立った。

「ところで、転移の間は好きに使っても良いんでしょうか?」
「勇者様ですから、いかようにも・・何にお使いになるのですか?」
「アシーネ様にお祈りを捧げます。」

ギレンと一緒に教会の転移の間へ向かう。
「集中したいので、部屋で一人にしてもらえますか? 祈りが通じれば私は居なくなっているはずです。」
「まさか、転移の魔法を・・・、無茶です! 簡単に出来るようなものでは・・・。」
「アシーネ様にお願いするだけですから、祈りが通じなければそれまでの話です。」
そういって、一人で部屋に入り扉を閉めた。

部屋の中央へ立ち、荷物の中から持ってきた30cmぐらいの聖教石を取り出した。
目を閉じて頭の中でスタートス聖教会の転移の間を描き、両手で聖教石を頭の上にかざして祈りを捧げる。
(アシーネ様、光の力をお貸しください。)
(スタートス聖教会の転移の間に我の身を!)

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