それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

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勇者候補たちの想い

92.南方州の異変

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■西方州都 ムーア   
~第8次派遣2日目~

今日は朝から3人でムーアへ飛んできた。
やることは三つ予定している。

武具職人ハリスへのバパスの魔法武具を見せに行く。
レンブラントに風聖教石の追加分を届ける。
最後にオズボーンが用意した家をナカジー達に見せる。

教会士トリオのことを考えると、嘘でもムーアを拠点としたほうが良いと枢機卿はそんな事を言っていたがタケルはまだどうするかを悩んでいた。
一度、ナカジーに建物を見てもらって意見を聞いてみたかったのだ。

■ハリス武具工房

「おぉッ! 久しぶりですね、スタートスの勇者様!」

「ご無沙汰しています、ハリスさん。パパスさんの魔法武具ができたのでお見せしに来ました」

タケルは、万能魔法剣、炎の刀、炎の槍を作業台の上に並べた。

「そいつは、わざわざ・・・、やっぱり師匠はスゲェなぁ」

剣を鞘から抜いて感心している。

「こっちは見たこと無い素材だな・・・、どうやって作ったか聞いてますかい?」

炎の刀の刀身を見ているハリスに炎魔石の件を説明した。

「魔法石?ですか、聞いたことも無かったですね」

「効果をお見せしましょう、でも、教会の人には内緒でお願いします」

タケルは炎の刀を受け取り、みんなから離れて構えた。

「ファイア」

刀身を炎が覆った!

「この炎は消さない限りずっと出すことが可能です、使用者の魔法力も減らないから疲れることも無いんですよ」

「そんな刀が・・・」

「こっちの槍も同じです、炎を出しっぱなしにして、必要な時に炎の穂先を伸ばすことが出来ます」

「・・・」

ハリスは絶句していた。
今までの武器の常識を突き破っているのだろう。

「それもこれも、ハリスさんがパパスさんを紹介してくれたおかげです。本当にありがとうございました」

「いえいえ、あっしは何にも。でもお役に立てたならうれしいですよ。これからも何でも言ってください」

■レンブラント商会

タケル達三人はいつもの応接間に通された。

「タケル様、今日はどうされましたか?」

「はい、船で使う風の聖教石が出来たのでお持ちしました」

「それはわざわざありがとうございます、金貨が必要になりましたか?」

「いえ、いつもどおり帳簿で結構です」

「わかりました、そのようにさせていただきます。それから、先日はイースタン様の件でタケル様達に了承も取らずにご紹介することになってしまい、誠に申し訳ございませんでした。いかんせん先方は私どもの上得意ですので、お断りする訳には参りませんでした」

「いえ、お気になさらずに。私達もイースタンさんにお食事をご馳走になって色々お話を伺えたのは良かったと思ってますから」

取引の力関係では圧倒的にイースタンが上なのだろう。

「話は変わりますが、南方州の件をお聞きになられていますか?」

「いえ、何も。何かあったんですか?」

-土魔法の件で、南の司教は、今はそれどころでは無いと枢機卿が言っていたか。

「あちらとの、人や物の交流が止まってしまっているのですよ。どうやら南の大司教が皇都のやり方に納得されていないようで・・・」

「それは、教会内での反乱のようなものですか?」

「反乱とまでは行かないのでしょうが、分派のようなことを考えているのかもしれません」

-良くわからないな。教会の人間に確認してみよう。

「では、レンブラントさんの商いにも影響が?」

「今はそれほどでもありませんが、長引くと影響があると思います」

-戦争の無いこの国での内紛、魔竜復活と何か関係があるのかな?

レンブラントに礼を言って商会を出たタケル達は、大通りを西方大教会に向かって歩き出した。

「ねえ、さっきの聖教石でお金いっぱいもらったんでしょ?」

「そうだね、金貨16枚だから、1億6000万円ぐらいかな?」

「!・・・、あんな石で!?」

「そう、あんな石で」

「じゃあ、なんか買っても良い?」

「良いよ、何が欲しいの?」

「特に無いんだけど、せっかくお金があったら使いたいじゃない」

「あんまり変なものじゃなければ何でも買って良いよ」

「ありがと♪」

ナカジーは通りの店を覗きながら歩き出した。

「アキラさんは欲しいものありますか?」

だまって首が横に振られた。好対照の二人だ。

ナカジーは結局屋台の串焼きだけで満足した。
この町には欲しいものが無かったようだ。

「今度また皇都に行こうよ、あそこの方がいいものいっぱいあるし」

-確かに品揃えが全然違った。

成果のない買い物をした3人はオズボーンが用意した勇者用の館に到着した。

扉に鍵は掛っていなかった、開けると中に人がいたがタケルのことを知っていたので、下見に来たと伝えて、中を見せてもらうことにした。

「やっぱり、こっちのほうが立派ね。暖炉とかもあるし、金持ちって感じがするわ」

「寝室も見に行こうか」

「わぁ、ガラス窓があるのね、こっちだと窓があるだけで感動するわね。あんまり無いから」

確かに窓がないと光が入ってこないので、夜明けもわかり難かった。

「やっぱり、こっちに来たほうが良いかな?」

「私は今のままで良いと思うわ」

「どうして?」

「うん、やっぱり一番の理由はミレーヌかな。いなくなると寂しがると思うの」

「そうか、ナカジーもそう思うんだ。 でも教会士トリオを戻してあげたいんだよね」

「そっちは大丈夫みたいよ。ここの教会から離れてのびのびやってる感じだから」

「そうなの?」

「うん、そろそろお風呂ができるって嬉しそうに昨日も話してた。私達がなんであんなものを欲しがっているのか興味があるみたい」

そうだったのか、だったら今のままスタートスにいることにしよう。
次回来た時には待望の風呂ができているはずだ。

風呂はスタートスの名物になるかもしれない。
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