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勇者候補たちの想い
97.北の洞窟 前編
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■シベル大森林北の洞窟
~第9次派遣2日目~
お風呂完成式典で前夜遅くまで飲んでいたタケル達は、昼前ぐらいに転移で洞窟前までやってきた。
今日は行ける所まで行っておいて、洞窟内に転移ポイントを作るのが目標だ。
もちろん魔法石が見つかれば一番良いのだが。
「今日もダイスケ先頭でお願い。新しい刀でガンガン行ってよ。アキラさん、ナカジーで最後が俺ね」
「任せてください。今の俺に切れないものは無い気がしてます」
確かにあの刀を持てば誰でもその気になるだろう。
「だけど、洞窟の開封? 入り口作るのはアキラさんにお願いしますね。ゴッドブローは無しで」
「わかった」
アキラさんはいつもの短い返事で不自然に積み上げられた平らな岩の前に立った。
軽く首を回してから、拳で岩との距離を測っている。
右足を半歩引いて、クラウチングスタイルで拳を顔の前に上げる。
拳には愛用のメリケンサックが装着されて鈍く光っていた。
無造作に引かれた右拳が一閃して岩に叩きつけられた!
-バッガーァ―――ン!!- -バラ-バラ-バラ-バラ-バラ!
「イタッ!」
凄まじい轟音と共に岩の破片と砂埃があたりに飛び散った。
タケルにも細かい岩が手足に当たって痛みを覚えた。
アキラさんはいつの間にか更にパワーアップしていたようだ。
「チョット、アキラさん痛いよ。岩があっちこっちに飛んできた!」
ナカジーがお怒りなのも当然です。
「もっと、離れとくべきだったね。みんな怪我はしてない?」
4人とも大きな怪我などはしていなかったようだ。
岩を見ると、いや、岩があったはずの場所を見ると、下に岩の残骸はあったが高さ2メートルぐらいの大きな入り口が出来上がっていた。
洞窟探検の始まりだ。
洞窟の中は今まで入った中でも一番広かった。
天井は5メートルぐらいあると思う、少し進むと幅も広がっていくようだ。
聖教石ランプの光が届く範囲は限られていて、天井も壁も影になっている部分が多い。
「ダイスケ、刀は抜いてずっと炎を出しといてよ、俺も槍の炎を出しっぱなしにするから」
「了解っス」
二人とも炎を出しっぱなしにすると、周囲がかなり明るくなった。
タケルはヤリを上に持ち上げて天井を確認する。
何とか炎の明るさで見えるが、でこぼこしているところは影になって判らない。
「広いから歩きやすいけど、影になっているところから何が出てくるか判らないから気をつけてね。それと、今日は出てきたやつは全部やっつけるから、そのつもりでヨロシク」
この洞窟も神の試練なら逃げていてはダメだろう。
自分達の力を見せないと恩恵が得られないはずだ。
過去の経験からそんな風にタケルは信じていた。
神の試練は50メートルも行かないうちにやってきた。
「あ痛ッ! チクショウ!」
先頭のダイスケが足元に刀を振り回した。
刀の炎で浮かび上がったのは、トカゲのような魔獣だ。
胴体だけで1メートルぐらいあるが、ダイスケのブーツに噛み付いている。
「クソッ!!」
-ブジュッ! - ゲェー!!-
ダイスケが刀を上から突き刺して、ようやく噛んでいた足から口を離した。
刀が刺さったままのトカゲは尻尾をぶんぶん振り回していたが、やがて動かなくなった。
「ダイスケ、大丈夫?」
「いや、ちょっとヤバイです」
今度のヤバイは危ないほうの意味だろう。
近寄ってみると、右足のブーツの外まで血が滲んでいる。
結構深く牙が刺さったのだろう。
「ナカジー、光のロッドで治療して」
「任せて!」
ナカジーは腰に刺したロッドを抜いて、ダイスケの足へ向けた・
「癒しの光を!」
温かい空気がナカジーからダイスケに流れる。
「ウァ! 痛くなくなった!・・・立っても全然痛くないです! ナカジーさん、ありがとうございます。やっぱ、治療も前より上達してますよね!?」
「任せてよ♪ 私はもはや完璧な魔法少女なんだからね♪」
少女・・・40前のはずだが。
それはおいといても、今までに無い大ケガだ、やはり油断できない。
「みんな、死ぬかもしれないぐらいの覚悟が無いと大ケガするからね」
かなり脅してみたが3人とも頷いた。
それなりに理解はしてくれているようだ。
足元で死んでいるトカゲは尻尾まで入れると2メートル近い。
口の中には全てが犬歯のような尖った歯が並んでいる。
色は黒っぽいが体表が凍りで覆われていた。
こいつも氷獣の一種だ。
次の試練も直ぐに来た。
立ち上がったダイスケを先頭にカーブした角を曲がった瞬間に壁から何かが飛び出した!
-ギャォッ!-
「ウヮアッ!」
ダイスケは刀で振り払ったが、刀は当たらずに影がアキラさんに向かった。
アキラさんは無造作に左ジャブで空中を飛んできた物を壁にたたき付けた!
- バチーン!!-
壁にたたきつけられた影はピクリとも動かずに地面に落ちた。
50cmぐらいの狸のような獣のようだ。
近寄ってみると、岩を掴みやすい大きな爪と耳まで裂けた口から牙が出ている。
タヌキと言うより、羽のない蝙蝠が大きくなった感じだろうか?
爪も牙も人間の体を切り裂くには充分な大きさと形だ。
「ダイスケ、怪我は無かった?」
「ええ、今度は大丈夫です」
「曲がり角は何かが出てくることを前提にしてから曲がって」
「わかりました!」
返事は良いが先頭のままで大丈夫だろうか?
多少の心配を抱えたまま、更に洞窟の奥へと進む。
~第9次派遣2日目~
お風呂完成式典で前夜遅くまで飲んでいたタケル達は、昼前ぐらいに転移で洞窟前までやってきた。
今日は行ける所まで行っておいて、洞窟内に転移ポイントを作るのが目標だ。
もちろん魔法石が見つかれば一番良いのだが。
「今日もダイスケ先頭でお願い。新しい刀でガンガン行ってよ。アキラさん、ナカジーで最後が俺ね」
「任せてください。今の俺に切れないものは無い気がしてます」
確かにあの刀を持てば誰でもその気になるだろう。
「だけど、洞窟の開封? 入り口作るのはアキラさんにお願いしますね。ゴッドブローは無しで」
「わかった」
アキラさんはいつもの短い返事で不自然に積み上げられた平らな岩の前に立った。
軽く首を回してから、拳で岩との距離を測っている。
右足を半歩引いて、クラウチングスタイルで拳を顔の前に上げる。
拳には愛用のメリケンサックが装着されて鈍く光っていた。
無造作に引かれた右拳が一閃して岩に叩きつけられた!
-バッガーァ―――ン!!- -バラ-バラ-バラ-バラ-バラ!
「イタッ!」
凄まじい轟音と共に岩の破片と砂埃があたりに飛び散った。
タケルにも細かい岩が手足に当たって痛みを覚えた。
アキラさんはいつの間にか更にパワーアップしていたようだ。
「チョット、アキラさん痛いよ。岩があっちこっちに飛んできた!」
ナカジーがお怒りなのも当然です。
「もっと、離れとくべきだったね。みんな怪我はしてない?」
4人とも大きな怪我などはしていなかったようだ。
岩を見ると、いや、岩があったはずの場所を見ると、下に岩の残骸はあったが高さ2メートルぐらいの大きな入り口が出来上がっていた。
洞窟探検の始まりだ。
洞窟の中は今まで入った中でも一番広かった。
天井は5メートルぐらいあると思う、少し進むと幅も広がっていくようだ。
聖教石ランプの光が届く範囲は限られていて、天井も壁も影になっている部分が多い。
「ダイスケ、刀は抜いてずっと炎を出しといてよ、俺も槍の炎を出しっぱなしにするから」
「了解っス」
二人とも炎を出しっぱなしにすると、周囲がかなり明るくなった。
タケルはヤリを上に持ち上げて天井を確認する。
何とか炎の明るさで見えるが、でこぼこしているところは影になって判らない。
「広いから歩きやすいけど、影になっているところから何が出てくるか判らないから気をつけてね。それと、今日は出てきたやつは全部やっつけるから、そのつもりでヨロシク」
この洞窟も神の試練なら逃げていてはダメだろう。
自分達の力を見せないと恩恵が得られないはずだ。
過去の経験からそんな風にタケルは信じていた。
神の試練は50メートルも行かないうちにやってきた。
「あ痛ッ! チクショウ!」
先頭のダイスケが足元に刀を振り回した。
刀の炎で浮かび上がったのは、トカゲのような魔獣だ。
胴体だけで1メートルぐらいあるが、ダイスケのブーツに噛み付いている。
「クソッ!!」
-ブジュッ! - ゲェー!!-
ダイスケが刀を上から突き刺して、ようやく噛んでいた足から口を離した。
刀が刺さったままのトカゲは尻尾をぶんぶん振り回していたが、やがて動かなくなった。
「ダイスケ、大丈夫?」
「いや、ちょっとヤバイです」
今度のヤバイは危ないほうの意味だろう。
近寄ってみると、右足のブーツの外まで血が滲んでいる。
結構深く牙が刺さったのだろう。
「ナカジー、光のロッドで治療して」
「任せて!」
ナカジーは腰に刺したロッドを抜いて、ダイスケの足へ向けた・
「癒しの光を!」
温かい空気がナカジーからダイスケに流れる。
「ウァ! 痛くなくなった!・・・立っても全然痛くないです! ナカジーさん、ありがとうございます。やっぱ、治療も前より上達してますよね!?」
「任せてよ♪ 私はもはや完璧な魔法少女なんだからね♪」
少女・・・40前のはずだが。
それはおいといても、今までに無い大ケガだ、やはり油断できない。
「みんな、死ぬかもしれないぐらいの覚悟が無いと大ケガするからね」
かなり脅してみたが3人とも頷いた。
それなりに理解はしてくれているようだ。
足元で死んでいるトカゲは尻尾まで入れると2メートル近い。
口の中には全てが犬歯のような尖った歯が並んでいる。
色は黒っぽいが体表が凍りで覆われていた。
こいつも氷獣の一種だ。
次の試練も直ぐに来た。
立ち上がったダイスケを先頭にカーブした角を曲がった瞬間に壁から何かが飛び出した!
-ギャォッ!-
「ウヮアッ!」
ダイスケは刀で振り払ったが、刀は当たらずに影がアキラさんに向かった。
アキラさんは無造作に左ジャブで空中を飛んできた物を壁にたたき付けた!
- バチーン!!-
壁にたたきつけられた影はピクリとも動かずに地面に落ちた。
50cmぐらいの狸のような獣のようだ。
近寄ってみると、岩を掴みやすい大きな爪と耳まで裂けた口から牙が出ている。
タヌキと言うより、羽のない蝙蝠が大きくなった感じだろうか?
爪も牙も人間の体を切り裂くには充分な大きさと形だ。
「ダイスケ、怪我は無かった?」
「ええ、今度は大丈夫です」
「曲がり角は何かが出てくることを前提にしてから曲がって」
「わかりました!」
返事は良いが先頭のままで大丈夫だろうか?
多少の心配を抱えたまま、更に洞窟の奥へと進む。
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