それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

文字の大きさ
112 / 183
派遣勇者の進む道

110.新メンバーでの聖教石洞窟 中編

しおりを挟む
■スタートス近郊 聖教石の洞窟
 ~第10次派遣3日目~

 ダイスケとコーヘイの雰囲気は微妙な感じだが、二人並んで更に洞窟の奥へと進んでいく。天井のスライム、ムカデ、蝙蝠はマユミが出す炎のおかげで見逃すことなく、先制攻撃で焼き払い、足元の暗がりからヤマアラシが何匹か飛び出してきたヤツは、コーヘイ中心にあっさりとやっつけて1時間ほど奥まで進んだ。

 何度かあった分かれ道を全て右に進んできた洞窟は大きさを変えずに少しずつ下っているように感じた。進んでいくに連れて北の洞窟と同じように空気の重さを感じてくるようになったところで、大きな空間が現れた。

 マユミとタケルであちこちに炎を放つと、大きな空間はテニスコート二つ分ぐらいある長方形の部屋になっていて、それぞれの壁から通路が繋がっていることが判る。

「此処もとりあえず右に行くけど、その前にここに転移ポイントを作っておくよ。万一戻る時に一旦ここまで戻れるようにしておこう」

 タケルがリュックから、光聖教石を取り出そうと下に置くと同時に、メンバーに緊張が走って、コーヘイが声を上げた。

「タケルさん、デカイ! 来ます!」

 コーヘイが見ている左の通路から出て来たイノシシが、蹄の音を洞窟内に響き渡らせて突っ込んでくるのが見えた。

「コーヘイ、そいつは任せた! アキラさん、右の洞窟を見といて、俺は向かいを警戒するから!」

 北の洞窟と同じなら同時に出てくる可能性がある。タケルは槍を右腰に構えて、コーヘイに突っ込んでくるイノシシを視野に入れながら、奥の通路を睨んでいた。

 コーヘイは突っ込んできたイノシシの右へ踏み込みながら、左腰に構えた両手剣で鼻先から胴体を一気に切り払った。

 イノシシは絶叫しながら、さっきまでコーヘイがいた空間を走りすぎた後に横倒しになった。視界の片隅でコーヘイの動きを確認していたタケルの前方の洞窟から、そして右の洞窟からも一回り大きなイノシシが飛び出してきたのが見えた。アキラさんに任せた右のやつは無視して、タケルは前に踏み込んで、槍を一気に前に突き出しながら叫んだ。

「ファイアーランス!!」

 突き出された槍から細く強い炎の穂先が伸びて、イノシシの胸を突き抜けた。イノシシは、その場で痙攣しながら動きを止めて地響きと共に横倒しになった。右側からは大きな肉をまな板に叩き付けたような激しい音が響いてくる。目をやると、肉片と化したイノシシがアキラさんの前で横たわっている。

 他に飛び出してこないか、洞窟の奥に炎を放って確認したが、飛び出してきたやつら以外はいないようだ。タケルの前で倒れているイノシシは全長3メートルを超えているだろう。血だらけの口から出ている牙だけで20cmぐらいある。槍の穂先が上手く心臓を貫いたのだろう、大量の血溜まりが大きな毛皮の下に広がってきた。

「まだ、来るかも知れないから、周りを警戒しといてね」

 タケルは五つの光聖教石(転移用)を入ってきた通路の横に埋めて、転移ポイントを作ってから、4人のところへ戻った。

「これから、もっと色々出てくるはずだから、気をつけてよ。それと、曲がり角があったら、必ず止まって」

 先頭の二人はしっかり頷いてくれた。タケルは安全策として曲がり角での新しい戦法を試してみようと思っていた。大きな空間から右に繋がっている洞窟も今までと同じ広さだったが、50メートルほど先で左に曲がっていた。先頭のふたりが角の10メートル程手前で止まってくれたので、追いついたタケルはマユミから炎のロッドを貸してもらった。

「どないしはるんですか?」

「うん、見えないところは焼いてから進んでいこうと思ってる。マユミは代わりに俺の槍を持っていてよ、この槍からも炎が出せるから、ロッドと同じように使ってみて」

「はぁ・・・」

 マユミは怪訝な顔をしながらもロッドと槍を交換してくれた。タケルは左に曲がる曲がり角にロッドを向けて神に祈りを捧げた。

-グレン様、ウィン様、指し示した場所からロッドを振る方向へ炎の風を与えてください。

「ファイアウィンド!」

 掛け声と共にロッドを左へ素早く振ると、曲がり角から見ない左の洞窟に向かって、大きな火炎風が迸った!

「「「えぇーー!!」」」

 ダイスケ達は何も無い場所からいきなり火炎風が噴出したことに驚愕の叫びを上げた。

「何ですのん!? 今の?どないしたら、あんなん出来るんですか?」

 マユミは驚きながらも興味があるようだ。

「ああ、応用編だね。風が色んなところから出せることがわかったから、火炎風を離れた場所から出してみた。これなら安全に先制攻撃とか牽制に役立つでしょ」

「私にもできますかね?」

「まずは、風魔法を自由に操れるようになることかな、風が何処からでも飛ばせるようになれば、マユミなら楽勝でしょ」

「頑張ります!」

「マユミ、タケルさんの真似をしてたら、大変なことになるよ、普通じゃないからね」


「俺もそう思います、同じようになれると思うとヘコミますからね」

 コーヘイとダイスケが息を合わせて、マユミにアドバイスを送ってくれたが、何事も本人次第だろう、やる気があればそのうち出来るはずだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...