それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

文字の大きさ
114 / 183
派遣勇者の進む道

112.石板の文字

しおりを挟む
■スタートス近郊 聖教石の洞窟
 ~第10次派遣3日目~

 洞窟の奥に立てられていた聖教石は三重の五角形を描いている。高さは内側が50cmぐらいで一番外は1メートルぐらいの大きな物だった。それに石の色が教会にある聖教石は加工されていないものだが、ここにあるのは綺麗な黄金色になっている。タケルが光聖教石に加工したときと同じ色だった。

「ここも教会が作った部屋なんですかね?」
「違うよ。この洞窟は来るたびに形を変える神の試練だから、この部屋は神が用意したものだ」

 コーヘイの疑問に対して自分に言い聞かせるようにタケルは返事をしたが、神の試練だとしたら何なのだろうか?

「ほんなら、ここからも教会に飛んでいけるんですかね?」

 マユミと同じことをタケルも考えていたが、何か違うような気がする。それにさっきの石板のこともあるから、転移魔法を試すのは少し不安だ。何処に行くかの保証が出来ない。

「教会に行けるかも知れないけど少し心配だね。石板に書いてあった文字を確認してからどうするかを決めよう。今日は俺の転移ポイントを使って、一旦スタートスに戻ろう」

■スタートス聖教会 司祭執務室

 転移魔法でスタートスに戻ったタケルは気になる石板の写しを持って、マリンダの所に向かった。読んでもらうと、言い回しが古い表現だが訓話のようなことが書いてあると言う。

『自らを鍛え強き力を』
『力あるものは正しき心を』
『異なる智は大いなる恵みを』
『異なる種に慈しみを』
『精霊の加護は再び得られん』

 何となく精神論みたいな話に聞こえたが、最後の精霊の加護が気になる。魔竜討伐に役に立つ物なら、なんとか手に入れておきたい。

「ノックスさんは精霊の加護って何のことだかわかりますか?」
「いえ、私もわかりかねます。精霊・・・、この世界では聞きなれない言葉ですが、石板の文字は古語こごで書かれていましたので、古の伝承にあるのかもしれません」

 -古の伝承・・・、誰に聞くのが良いのだろうか?

 戻ってから西條に聞いても良いが、気になるので早く情報が欲しい。まだ、日が落ちていないし、皇都に行って枢機卿に聞いてみることにしよう。知っている中では一番偉い人だし、知識も豊富な筈だ。

「ノックスさん、今からマリンダさんを2時間ほど借りても良いですか?」
「ええ、もちろん構いませんが、どうされるのですか?」
「はい、石板の内容について枢機卿に教えて貰いに行こうかと」
「「!」」
「お約束のお手紙などは出されてないのですよね?」
「ええ、でも大丈夫なはずですよ」

 ノックスはノンアポで枢機卿を訪問するのが信じられないようだった。マリンダもあまり嬉しそうな顔はしなかった。やはり国の№2に会うのは緊張するのかもしれない。

■首都セントレア 皇都大教会

 皇都の大教会は日が沈む前だったが、ホールの人影はいつもより少ないようだ。この時間から尋ねてくる人はあまりいないのだろう。いつものようにマリンダに事務室へ行って枢機卿が居るかを聞いてきてもらう。あまり待たされること無くマリンダは教会士と一緒に戻ってきて、そのまま枢機卿の部屋へ連れて行ってもらえることになった。

 ボルク枢機卿は大きな部屋の奥から立ち上がり、前回と同じ愛想のよさでタケル達を迎えてくれた。

「タケル殿、お越しいただけて嬉しくおもいます。お元気にされていますか?」
「はい、おかげさまで。教会の皆さんには大変良くしていただいています」
「そうですか、それは何よりです。それで今日はどのようなご用件ですか?」
「ええ、じつは・・・」

 タケルは聖教石の洞窟とそこにあった石板の話をしてから、文字を写し取った紙をボルク枢機卿に見せた。

『自らを鍛え強き力を』
『力あるものは正しき心を』
『異なる智は大いなる恵みを』
『異なる種に慈しみを』
『精霊の加護は再び得られる』

「なるほど、これは神託の一つでしょうな。ですが・・・、具体的な意味は私にも判りません。多少の心当たりはありますが、神託を読み解くのは教皇の役割ですので、私が口を挟むわけにも参りませんので」

 なるほど、神のお告げは教皇が読み解かないと、異なった解釈が広がってマズイことになるのかもしれないな。

「じゃあ、教皇様に内容を聞いておいてもらえますか?」
「・・・いえ、せっかくですから今から聞きに行きましょう。今なら午後のお祈りと夕食の間で、お時間が空いていると思いますので」
「良いんですか?私達が教皇様に突然会いに行っても?」

 横のマリンダは緊張しすぎて顔が痙攣し始めていた。

「ええ、教皇はタケル殿が来ることを知っているはずですから、大丈夫です」
「どう言う意味なんでしょう!?」
「文字通りの意味ですよ。教皇はアシーネ神の代理を務めるお方です、この国で起こる多くのことを神の目を通じてご存知ですから、勇者様が何をされているかも当然ご存知です。ですので、石板の意味を聞きに来るのをお待ちになっているはずです」

全部知っている?
じゃあ、俺とマリンダのあんなこととかも!?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

処理中です...