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派遣勇者の進む道
113.ドリーミアの教皇
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■首都セントレア 皇都大教会
~第10次派遣3日目~
枢機卿のボルクはタケル達を連れて、廊下を奥へと進んだ。突き当りには両開きの大きな扉があり、ノックをして返事を待たずに入っていく。
「猊下、スタートスの勇者様をお連れしました。猊下にお聞きになりたいことがあるそうです」
部屋には壁一面においてある書籍と突き当たりに大きな机、その後ろには別室に繋がる扉があったが、猊下と呼ばれた女性は手前のソファに座ったまま、じっとタケルを見つめていた。女性はボルク達とそれほど年齢は変わらないように見えるが細面で長い睫の美しい女性だった。何処と無くマリンダに面立ちが似ている。そのマリンダはタケルの後ろで隠れるように小さくなっていた。教皇はボルクの言葉を放置して、1分以上もタケルを見つめた後にようやく口を開いた。
「なるほど、そう言うことですか。どうぞ、お掛けください、私が教皇のセレナです。皆さんのご活躍は聞いていますよ。どうやら神託が下ったようですね」
タケルは全てを見透かすような目つきと物言いの教皇を前にして、この国に来て初めて緊張する相手に出会ったと感じていた。
「はじめまして、スタートスの勇者タケルです。教会の方々にはいつもお世話になっています。神託かどうかは判らないのですが、洞窟で石板の文字を見つけたので、意味を教えていただこうとボルク枢機卿のところに来たのです」
「こちらが、その石板の文字を写し取った物です」
ボルクはタケルが持ってきた紙をテーブルの上に広げてセレナの前に滑らせた。セレナは一瞥しただけで、何も言わずにタケルを見つめ返した。
「言葉の意味は聞かれたと思いますが、貴方たちはどのように解釈したのですか?」
内容を教えてもらいに来たタケルへ逆に質問が飛んでくるとは思っていなかったので、とっさに答えは思いつかなかった。
-訓話みたいなことを守れば、精霊の加護が得られる・・・、そう言う話だったが。
「内容については私にはわかりませんでした。ですが、精霊の加護と言うものがあって、それが魔竜討伐に役立つならその加護を得たいと思っています」
セレナは答えを聞いて、また黙り込んでタケルを見つめている。沈黙が重くのしかかるが、不思議と悪意や敵意のようなものは全く感じなかった。
「やはり、そう言うことなのでしょう。神は私にではなく、この神託をあなた方に伝えたのには理由があるようですね」
「私達に? 理由?」
タケルは何が言いたいのか全く判らなかったが、セレナは少し笑みを浮かべながら説明を続けてくれた。
「貴方たちには関係の無い話かもしれませんが、この国について私の口からお話をさせていただいたほうが良いようです。この話は私以外ならボルクとサイオン殿ぐらいしか知らない話になります」
「この国は戦争も無く長い平和が続いていていますが、それは、私達歴代の教皇が神の力を借りてドリーミア全体に結界を張り、外からの進入を許さない様にしているからなのです。外から船で入ろうとする全ての者は、霧で迷って進路を失いもとの場所へ戻ることになります」
「結界を張ったのは長く続いた争いを嫌った古の教皇の判断ですが、これにより異なる種の者たちとの交流も一切途絶えてしまっています。その中にはドリーミアの中にありながら、迷える森の中に暮らしている精霊の加護を得た者たちも含まれているのです」
「神託では異なる種、精霊の加護を得ることを告げていますが、教会を・・・、いえ、国を任されている私には結界を解くことが簡単には出来ないのですよ」
なんだか壮大な話になっているが、精霊の加護を得るためには結界を解く必要があるが、教会として、いや国としてはそれができないという事のようだ。
「そうすると、精霊の加護を得るのは難しいという事でしょうか?」
「そうですね、難しい・・・、確かにその通りですが、不可能ではないのでしょう。あなた方はこの石板を見つけた洞窟で他のものも見つけたはずです。あなた方に力と知恵があれば、私が結界を解かなくても貴方たちは精霊の加護を得られる。神託はそのように貴方たちを導いているのです」
-他の物といえば転移する聖教石のことか!?
「洞窟の中には教会にあるような転移の間がありました。あそこから転移すれば良いと言うことでしょうか?」
「それは私にも判りません、何処に転移するのか?そもそも転移ができるのか?いずれも、貴方たちが考えて答えを出す必要のあることです。ですが、神託をあなた方に直接下されるぐらいですから、神は私よりも貴方たちを信頼されているはずですよ」
最後は美しい笑顔で言ってくれたが、かなり重たいプレッシャーをタケルは感じていた。何処に行くか判らない転移の間を使ってまで、精霊の加護を得るべきなのか?その答え自体を自分達で出さなければならない。
「教皇は精霊の加護を得た民がどのような人たちなのか知っているのですか?」
「記録では、森の民-エルフ-と言われる人々です」
エルフ!? この世界に存在したのか!?
「彼らは風の精霊に愛され、森を自分達の国だと理解していましたので、森に入る人間たちを許さなかったようです」
「彼らが居るはずの迷える森ですが、元々はどの辺りにあったのですか?」
「シベル大森林です。いまでも其処にあるはずですが、結界による霧の中で誰もたどり着けず、そして外に出られないようになっているのです」
帰ってメンバーと相談して決めるしかないな。
行くべきか、見送るべきか・・・、だが、エルフが居るなら会ってみたい。
タケルの中では、行ってみたいと言う願望の方が大きくなっていた。
~第10次派遣3日目~
枢機卿のボルクはタケル達を連れて、廊下を奥へと進んだ。突き当りには両開きの大きな扉があり、ノックをして返事を待たずに入っていく。
「猊下、スタートスの勇者様をお連れしました。猊下にお聞きになりたいことがあるそうです」
部屋には壁一面においてある書籍と突き当たりに大きな机、その後ろには別室に繋がる扉があったが、猊下と呼ばれた女性は手前のソファに座ったまま、じっとタケルを見つめていた。女性はボルク達とそれほど年齢は変わらないように見えるが細面で長い睫の美しい女性だった。何処と無くマリンダに面立ちが似ている。そのマリンダはタケルの後ろで隠れるように小さくなっていた。教皇はボルクの言葉を放置して、1分以上もタケルを見つめた後にようやく口を開いた。
「なるほど、そう言うことですか。どうぞ、お掛けください、私が教皇のセレナです。皆さんのご活躍は聞いていますよ。どうやら神託が下ったようですね」
タケルは全てを見透かすような目つきと物言いの教皇を前にして、この国に来て初めて緊張する相手に出会ったと感じていた。
「はじめまして、スタートスの勇者タケルです。教会の方々にはいつもお世話になっています。神託かどうかは判らないのですが、洞窟で石板の文字を見つけたので、意味を教えていただこうとボルク枢機卿のところに来たのです」
「こちらが、その石板の文字を写し取った物です」
ボルクはタケルが持ってきた紙をテーブルの上に広げてセレナの前に滑らせた。セレナは一瞥しただけで、何も言わずにタケルを見つめ返した。
「言葉の意味は聞かれたと思いますが、貴方たちはどのように解釈したのですか?」
内容を教えてもらいに来たタケルへ逆に質問が飛んでくるとは思っていなかったので、とっさに答えは思いつかなかった。
-訓話みたいなことを守れば、精霊の加護が得られる・・・、そう言う話だったが。
「内容については私にはわかりませんでした。ですが、精霊の加護と言うものがあって、それが魔竜討伐に役立つならその加護を得たいと思っています」
セレナは答えを聞いて、また黙り込んでタケルを見つめている。沈黙が重くのしかかるが、不思議と悪意や敵意のようなものは全く感じなかった。
「やはり、そう言うことなのでしょう。神は私にではなく、この神託をあなた方に伝えたのには理由があるようですね」
「私達に? 理由?」
タケルは何が言いたいのか全く判らなかったが、セレナは少し笑みを浮かべながら説明を続けてくれた。
「貴方たちには関係の無い話かもしれませんが、この国について私の口からお話をさせていただいたほうが良いようです。この話は私以外ならボルクとサイオン殿ぐらいしか知らない話になります」
「この国は戦争も無く長い平和が続いていていますが、それは、私達歴代の教皇が神の力を借りてドリーミア全体に結界を張り、外からの進入を許さない様にしているからなのです。外から船で入ろうとする全ての者は、霧で迷って進路を失いもとの場所へ戻ることになります」
「結界を張ったのは長く続いた争いを嫌った古の教皇の判断ですが、これにより異なる種の者たちとの交流も一切途絶えてしまっています。その中にはドリーミアの中にありながら、迷える森の中に暮らしている精霊の加護を得た者たちも含まれているのです」
「神託では異なる種、精霊の加護を得ることを告げていますが、教会を・・・、いえ、国を任されている私には結界を解くことが簡単には出来ないのですよ」
なんだか壮大な話になっているが、精霊の加護を得るためには結界を解く必要があるが、教会として、いや国としてはそれができないという事のようだ。
「そうすると、精霊の加護を得るのは難しいという事でしょうか?」
「そうですね、難しい・・・、確かにその通りですが、不可能ではないのでしょう。あなた方はこの石板を見つけた洞窟で他のものも見つけたはずです。あなた方に力と知恵があれば、私が結界を解かなくても貴方たちは精霊の加護を得られる。神託はそのように貴方たちを導いているのです」
-他の物といえば転移する聖教石のことか!?
「洞窟の中には教会にあるような転移の間がありました。あそこから転移すれば良いと言うことでしょうか?」
「それは私にも判りません、何処に転移するのか?そもそも転移ができるのか?いずれも、貴方たちが考えて答えを出す必要のあることです。ですが、神託をあなた方に直接下されるぐらいですから、神は私よりも貴方たちを信頼されているはずですよ」
最後は美しい笑顔で言ってくれたが、かなり重たいプレッシャーをタケルは感じていた。何処に行くか判らない転移の間を使ってまで、精霊の加護を得るべきなのか?その答え自体を自分達で出さなければならない。
「教皇は精霊の加護を得た民がどのような人たちなのか知っているのですか?」
「記録では、森の民-エルフ-と言われる人々です」
エルフ!? この世界に存在したのか!?
「彼らは風の精霊に愛され、森を自分達の国だと理解していましたので、森に入る人間たちを許さなかったようです」
「彼らが居るはずの迷える森ですが、元々はどの辺りにあったのですか?」
「シベル大森林です。いまでも其処にあるはずですが、結界による霧の中で誰もたどり着けず、そして外に出られないようになっているのです」
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タケルの中では、行ってみたいと言う願望の方が大きくなっていた。
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