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派遣勇者の進む道
114.結界
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■首都セントレア 皇都大教会
~第10次派遣3日目~
精霊の加護を受ける森の民-エルフ-。だが、彼らが暮らす森は教皇による国を包む結界によってドリーミアの中にありながら、断絶されているという。争いを防ぐためと教皇は言っていたが、すべての外国との交流も完全に止まっているのだろうか?神託の中に『異なる種に慈しみを』という文句があったが、エルフが異なる種だとして・・・他には居ないのか?
「セレナ教皇、エルフ以外に異なる種は居ないのですか?結界の外も含めてですが」
「結界の外には異形の者たちが暮らしています。異形の者たちとは長い間争いが続いていました。昔の教皇が結界を作った理由はその争いを止めるためです」
「異形の者たちと言うのは具体的には?」
「・・・獣の姿をした人々と伝えられています」
-獣人みたいな人?獣?
「ドリーミアの中でも、獣の人々を人としてみるか、獣としてみるかは考えがわかれていました。彼らとの争いだけでなく、ドリーミアの中にも争いが起こっていたのです」
「なるほど、ですが、神託には『異なる種に慈しみを』とかかれています。神は異なる種への慈悲を求めているのでは無いでしょうか?」
「貴方たちがそのように考えるならその通りなのでしょう。この神託は皆さんに与えられた物です。私の考え方をお伝えするのは相応しくないのです。勇者はその心のままに・・・、神が私に告げた神託でもそのようになっていますからね」
その件も自分達で答えを出すしかないのか。しかし、結界を解いてもらわないと外の国とは交流が出来ないが・・・、まずは洞窟にある聖教石で転移をしないと先に進めないようだ。
「セレナ教皇、突然押しかけたのに、色々教えてくださって、今日はありがとうございました」
「そのようなことは気にされる必要はありません。あなた方は会いたいときに私やボルクを訪ねてくだされば良いのです。いつでもお待ちしていますので」
教皇は口元だけを上げた綺麗な笑みでタケル達を見送ってくれた。
■スタートス聖教会 宿泊所 食堂
教皇の話を聞いてタケルは既に洞窟の聖教石を使って転移をして見るつもりだったが、メンバーのみんなと相談してから結論を出すことにした。
タケルがスタートスに戻ってきた時には、ちょうど夕食の用意が出来ていて、メンバーが食堂に集まり出していたところだった。既にミレーヌの肉料理を前に座っていたコーヘイが食堂に入ると声を掛けてきた。
「タケルさん、お帰りなさい。皇都はどうだったんですか?」
「うん、みんなが揃ったら詳しく説明するけどね、エルフが居るらしいよ」
「エルフ!?」
ダイスケ達が揃ったところで洞窟探索が無事に終った乾杯をする。
「では、無事に聖教石の回収が終ったことと、新たな扉が開かれたこと祝ってカンパーイ!」
5人でエールの入ったカップをぶつける。
「それで、新たな扉? あの石板と聖教石って結局何なんですか?」
「ダイスケ君、聞いて驚くな。あの聖教石の部屋はエルフの森への扉なのだよ」
「「エルフ!?」」
ダイスケとマユミが大声を上げた。タケルは石板の文字の意味と教皇から聞いた話を4人に説明した。
「結界?ですか? 本当なんでしょうかね?」
「俺は無条件で信じている。確認する方法も無いけど、魔法がある国だからね。国のトップが言っている以上、疑うだけの理由もないし」
「それで、あの聖教石から飛んで行くつもりなんですか?」
「俺はそうしようと思ってるけど、全員では行かない方が良いかな?」
「どうしてですか、何かに襲われるかもしれないから全員の方が良いんじゃないですか?」
「それはコーヘイの言う通りだけど、あそこから転移するのは今まで俺がやった転移魔法とは全く違うからね。今までは行ったことのある所にしか転移してないけど、あそこから行く先は何処かわからない初めて行く場所。だから、下手をすると戻って来られない場所に行くかもしれない」
「戻ってこられない場所・・・、でも時間が来れば強制的に戻れるんじゃないんですか?」
「結界の向こうなら、西條さんの魔法でも戻れないかもしれないからね。ダイスケの言う通り時間が来ればいつものように戻れるのかもしれないけど、もし全員で行って万一全員戻れないと・・・ね?」
「この世界から勇者が居なくなる?」
「そう、だからリーダーであるコーヘイは絶対に残ってもらう必要があるんだ」
「・・・」
4人も時間が来て戻れないという意味を理解したようだ、その場合は永遠に現世に戻れないかもしれない。
「僕とタケルで行こう」
「「「!」」」
他の3人はアキラさんが自分から行くと言い出したのに驚いていたが、タケルには意外ではなかった。タケルもアキラさんと二人が良いと思っていたし、アキラさんにもその考えが伝わっていると信じていた。
「じゃあ、アキラさん、それでお願いします。念のために焼酎を持って行くことにしましょう」
「そうだね、全部持っていこう」
アキラさんがニッコリと笑ってくれた。
「二人だけで行くんですか?俺も行きますよ?」
「うん、ダイスケの気持ちはありがたいけど。とりあえず二人で行って来るよ。言った先から転移魔法でスタートスに戻れたらすぐに連れて行くからさ。無駄にリスクを増やす必要も無いでしょ」
「わかりました。こっちで待ってます」
「二人とも怖くは無いんですか?」
「どうかな・・・、マユミが言う怖いってのはあんまり無いかな。この世界に来てかなり麻痺してきたかもしれない。アキラさんはどうです?」
「うん、僕は怖くはないよ。戻れなくても困らないし」
それも悲しい話だが、タケルもそう思っていた。戻れなかったら・・・家族も居ないし大丈夫だろう。
だが、マリンダのことは・・・
~第10次派遣3日目~
精霊の加護を受ける森の民-エルフ-。だが、彼らが暮らす森は教皇による国を包む結界によってドリーミアの中にありながら、断絶されているという。争いを防ぐためと教皇は言っていたが、すべての外国との交流も完全に止まっているのだろうか?神託の中に『異なる種に慈しみを』という文句があったが、エルフが異なる種だとして・・・他には居ないのか?
「セレナ教皇、エルフ以外に異なる種は居ないのですか?結界の外も含めてですが」
「結界の外には異形の者たちが暮らしています。異形の者たちとは長い間争いが続いていました。昔の教皇が結界を作った理由はその争いを止めるためです」
「異形の者たちと言うのは具体的には?」
「・・・獣の姿をした人々と伝えられています」
-獣人みたいな人?獣?
「ドリーミアの中でも、獣の人々を人としてみるか、獣としてみるかは考えがわかれていました。彼らとの争いだけでなく、ドリーミアの中にも争いが起こっていたのです」
「なるほど、ですが、神託には『異なる種に慈しみを』とかかれています。神は異なる種への慈悲を求めているのでは無いでしょうか?」
「貴方たちがそのように考えるならその通りなのでしょう。この神託は皆さんに与えられた物です。私の考え方をお伝えするのは相応しくないのです。勇者はその心のままに・・・、神が私に告げた神託でもそのようになっていますからね」
その件も自分達で答えを出すしかないのか。しかし、結界を解いてもらわないと外の国とは交流が出来ないが・・・、まずは洞窟にある聖教石で転移をしないと先に進めないようだ。
「セレナ教皇、突然押しかけたのに、色々教えてくださって、今日はありがとうございました」
「そのようなことは気にされる必要はありません。あなた方は会いたいときに私やボルクを訪ねてくだされば良いのです。いつでもお待ちしていますので」
教皇は口元だけを上げた綺麗な笑みでタケル達を見送ってくれた。
■スタートス聖教会 宿泊所 食堂
教皇の話を聞いてタケルは既に洞窟の聖教石を使って転移をして見るつもりだったが、メンバーのみんなと相談してから結論を出すことにした。
タケルがスタートスに戻ってきた時には、ちょうど夕食の用意が出来ていて、メンバーが食堂に集まり出していたところだった。既にミレーヌの肉料理を前に座っていたコーヘイが食堂に入ると声を掛けてきた。
「タケルさん、お帰りなさい。皇都はどうだったんですか?」
「うん、みんなが揃ったら詳しく説明するけどね、エルフが居るらしいよ」
「エルフ!?」
ダイスケ達が揃ったところで洞窟探索が無事に終った乾杯をする。
「では、無事に聖教石の回収が終ったことと、新たな扉が開かれたこと祝ってカンパーイ!」
5人でエールの入ったカップをぶつける。
「それで、新たな扉? あの石板と聖教石って結局何なんですか?」
「ダイスケ君、聞いて驚くな。あの聖教石の部屋はエルフの森への扉なのだよ」
「「エルフ!?」」
ダイスケとマユミが大声を上げた。タケルは石板の文字の意味と教皇から聞いた話を4人に説明した。
「結界?ですか? 本当なんでしょうかね?」
「俺は無条件で信じている。確認する方法も無いけど、魔法がある国だからね。国のトップが言っている以上、疑うだけの理由もないし」
「それで、あの聖教石から飛んで行くつもりなんですか?」
「俺はそうしようと思ってるけど、全員では行かない方が良いかな?」
「どうしてですか、何かに襲われるかもしれないから全員の方が良いんじゃないですか?」
「それはコーヘイの言う通りだけど、あそこから転移するのは今まで俺がやった転移魔法とは全く違うからね。今までは行ったことのある所にしか転移してないけど、あそこから行く先は何処かわからない初めて行く場所。だから、下手をすると戻って来られない場所に行くかもしれない」
「戻ってこられない場所・・・、でも時間が来れば強制的に戻れるんじゃないんですか?」
「結界の向こうなら、西條さんの魔法でも戻れないかもしれないからね。ダイスケの言う通り時間が来ればいつものように戻れるのかもしれないけど、もし全員で行って万一全員戻れないと・・・ね?」
「この世界から勇者が居なくなる?」
「そう、だからリーダーであるコーヘイは絶対に残ってもらう必要があるんだ」
「・・・」
4人も時間が来て戻れないという意味を理解したようだ、その場合は永遠に現世に戻れないかもしれない。
「僕とタケルで行こう」
「「「!」」」
他の3人はアキラさんが自分から行くと言い出したのに驚いていたが、タケルには意外ではなかった。タケルもアキラさんと二人が良いと思っていたし、アキラさんにもその考えが伝わっていると信じていた。
「じゃあ、アキラさん、それでお願いします。念のために焼酎を持って行くことにしましょう」
「そうだね、全部持っていこう」
アキラさんがニッコリと笑ってくれた。
「二人だけで行くんですか?俺も行きますよ?」
「うん、ダイスケの気持ちはありがたいけど。とりあえず二人で行って来るよ。言った先から転移魔法でスタートスに戻れたらすぐに連れて行くからさ。無駄にリスクを増やす必要も無いでしょ」
「わかりました。こっちで待ってます」
「二人とも怖くは無いんですか?」
「どうかな・・・、マユミが言う怖いってのはあんまり無いかな。この世界に来てかなり麻痺してきたかもしれない。アキラさんはどうです?」
「うん、僕は怖くはないよ。戻れなくても困らないし」
それも悲しい話だが、タケルもそう思っていた。戻れなかったら・・・家族も居ないし大丈夫だろう。
だが、マリンダのことは・・・
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