それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

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派遣勇者の進む道

118.精霊の谷

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■エルフの里?
 ~第10次派遣4日目~

「待ちなさい」

 シルバーに連れられて外へ向かおうとしたタケル達を、ドワーフの老人が始めて口を開いて呼び止めた。

「精霊の谷へ向かうなら、我らの戦士を連れて行きなさい」
「貴方!リーシャをこの者たちと一緒に行かせるつもりなのですか!?」
「うむ、精霊の里に外の者だけで行かせる訳にはいかんだろうが」
「ですが、リーシャは・・・」
「構わぬ、誰かリーシャを呼んで来るのじゃ」

 ドワーフの老人は、小屋の外で控えている誰かに向かって指示を出したようだ。タケルには理由が良くわからないが、リーシャと言う戦士を同行させようとしてくれている。監視をさせるつもりなのだろうか?

 暗い小屋の中で沈黙のまま座って待っていると、小走りに走ってくる複数の足音と共に、一人のエルフが入ってきた。細身の女エルフに見える、短めの金髪に帽子を被り、背には大きめの弓と矢筒を背負っている。顔立ちはエルフの長老に似ているような気がするが、種族的なものかもしれない。

「長老、こいつらが外の民ですか!なんで、こんな奴らを精霊の谷に!」

 小屋に入ってくるなり、詰問調で長老に食ってかかる勢いだった。来る途中で呼ばれた経緯を聞かされているようだが、不満があるらしい。

「うむ、そうじゃ。この者たちなら精霊の谷へ行くことができるはずじゃ。お前も同行して、我らの風を取り戻すのに力を合わせるのじゃ」
「私は嫌です!外の者の力を借りるのは絶対に許せません!」
「ふむ、ならばお前の力だけで、精霊の谷へ行くことができるのか?そして、風を取り返せるのか? 既に何百年も谷を探して彷徨っているお前にそのようなことを言う資格は無い」
「・・・ですが!」

 - 何百年?やはりエルフは長寿なのか・・・

「お前が親のことで、外の者を許せないのは承知しておる。じゃが、この里のために力を貸さんのなら、お前は戦士ではない。お前の親ならば必ずそう言ったじゃろう」
「・・・」
「リーシャよ、戦士としての務めを果たすのじゃ、そしてこの里へ精霊の加護を再びもたらすために、そこの者たちと力を合わせよ」
「・・・判りました、戦士としての務めを果たします。それで、どのように精霊の谷を見つけるのですか?」
「お前は、この者たちと神獣に付いていけばよい。さすれば導かれるであろう」

 親に関する件でドリーミアの人に恨みがあるようが、最終的には長老の指示に従ってくれたようだ。タケルにとって役に立つかどうかは判らないが、こちらから断るのは無理がある。円満に同行してもらうしかないだろう。

「リーシャさん、私はスタートスの勇者タケルです、こちらはアキラさん、外に居るのがシルバーです。精霊の谷までよろしくお願いしますね」
「・・・」

 リーシャは笑顔で挨拶したタケルを無視して、冷ややかな目を向けてくる。笑顔の無いエルフは美人でも少し怖かった。

「じゃあ、早めに出かけましょう。日が暮れると動けなくなりますからね。では、行ってきます」

 気まずい雰囲気を断ち切るように、タケルはアキラさんを伴って小屋の外に出て行った。シルバーは少し先でタケル達を待っていたが、すぐに先導を始めてくれた。周りには小屋に入ったときよりも多くのエルフが集まっている。入るときは気が付かなかったが、ドワーフも人垣の後ろの方にかなり居るようだ。

 シルバーはタケル達を北東の方向に連れて行こうとしている。太陽の方向からすると転移で到着した場所はここから見て北西に当たる場所のはずだった。踏み分けられていない下草が生えている森の中で、足をとられながらシルバーについて行く。後ろをチラッと見るとリーシャは距離を置いているが、冷たい表情のまま付いて来ている。代わりばえのしない森の景色の中を1時間ぐらい歩くと、ようやく森の終り-霧の入り口に到着した。

「待て、何故ここから霧の中に入るのだ?この辺りから外を目指したこともあるが、何処にもたどり着かずに戻ってくるだけだぞ」

 後ろからリーシャに聞かれたが、タケルに判るわけが無い。

「それは、このシルバーがここだと思っているからですね。私達を皆さんの里に連れてきたのもシルバーですから、霧の中でも正しく進めると信じています」
「・・・」

 リーシャは不満のようだが構っている時間がもったいない。シルバーは霧が濃くなる手前で振り向いて、タケル達を待っている。

「じゃあ、進みますので、離れていると迷子になるから、しっかり付いてきてくださいよ」
「誰が迷子になど!」

 プライドの高いエルフは無視することにして、タケル達はどんどん霧の奥に進んで行く。すぐに上下左右全てが白い世界になる。3メートルぐらい向こうにシルバーの尻尾がかろうじて見えているので、ひたすら尻尾を追いかける。しばらく歩くと、足元からは下草が消えて、小石の散らばる乾いた土ばかりの地面に変化していた。傾斜の無い緩やかな斜面を30分程登ったところでダイスケから借りた機械式時計をみると、15時過ぎになっている。このままだと、16時に強制的に日本へ戻るか、ここで野宿をしないといけないかもしれない。そう思ったときに、前方、そして両側にも何かがあるのが薄っすらと見えてきた。

 シルバーが止ってオスワリをしたところまで行くと、目の前にあるのは岩・・・、いや、土壁のようなものだ。表面を手で触るとざらざらした土の感触がするが、槍の穂先で突いても削れない固さがある。土壁沿いに右へ10メートルほど行くと、固い岩の山肌があった。上を見ても、霧で何処までの高さがあるのか全く判らない。左に戻って行くと、土壁は両方の山肌に30メートルぐらいの幅で立っているようだ。

- 谷を塞ぐ岩。間違いない、これのことだろう。

 だが、これは岩ではない、表面は工学的な直線ではないにせよ平坦になっているから土で作られた壁だ。上は見えないが10メートル以上の高さはあるだろう。叩いた手応えからして、厚みもかなりある。建設機材やダイナマイトがないと壊すのは無理だろう。

ダイナマイト・・・

「リーシャさん、この岩がどのぐらいの高さがあるか判りますか?」
「・・・」

 霧にかすんで見えるリーシャは返事をしなかったが、おもむろに背中の弓を下ろしてすぐに矢を番えて土壁へ放った。1本、2本、3本・・・

「お前の背丈で10人分ぐらいだろう」

 矢が当たらなかった高さで判断したようだ、さすが戦士!しかし、17メートルぐらいの高さがあるという事は、壊した時に上から崩れてくる土砂が心配だ。ここは二人のタイミングを合わせる必要がある。

「アキラさん、久しぶりに本気でやって貰って良いですか?死なないケガなら私が治療しますので」
「うん、この壁を壊せば良いんだよね?」

 アキラさんも土壁を触ってタケルと同じ答えにたどり着いていたようだ。
 本気の拳を見せてもらうことにしよう。
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