それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

文字の大きさ
124 / 183
派遣勇者の進む道

122.ノルド

しおりを挟む
■パパスの小屋

 ドワーフの長老の名前はノルドと言った。ノルドは大勢のエルフ達が見守る小屋の前でタケルが聖教石を埋めていくのをエルフの長老と並んで黙って見ている。

「コーヘイ以外はここで待っててよ。できれば、エルフの人たちとできるだけ仲良くなって、色々と話を聞いておいてくれると助かる」

 ダイスケとマユミは嬉しそうにうなずいている。エルフと話ができるのが楽しみなのだろう。ノルドを聖教石の中に呼び入れてコーヘイと3人で並ぶ。

「ジャンプ」

 周囲の景色が一瞬で変わってもノルドは驚かなかった。いや、驚いているのかもしれないのだが、表情や声に出ることは無かった。興味深そうにあたりを見回してからタケルを見上げた。並んで立つとノルドの身長はタケル達の腰より少し高いぐらいだから120㎝ほどのようだ。

「ここはボルケーノ火山の近くにある武具職人の工房になります。鉱石と道具をこの工房で見ていただいて、必要な物を揃えましょう」
「うむ、おぬしの魔法とやらも空を飛べるのかと思ったが違うんじゃな」
「ええ、空は飛んでいないと思いますが。神へ祈れば願いの場所へ連れて行ってくれます」
「なるほど、おぬしたちの神はおぬしを大事にしておるのじゃな」

 驚いたことにマリンダ達と同じことを言う。タケルが神に愛されているのは、種族が違っても同じように判るようだ。

 工房になっている大きい小屋から金属を叩く音が聞えてくる。今日もパパスは仕事をしているようだ。小屋の扉を開けるといつものように笑顔で迎えてくれた。

「おお、勇者様か。待ってたよ、頼まれた剣は出来てるぜ」

 かなとこの前から立ち上がって、大きな作業台に置いてあった刀を取り上げてコーヘイに手渡した。

「注文通りに作ったはずだが、不都合があれば遠慮なく言ってくれ。打ち直すからよ」
「ありがとうございます・・・、これは素晴らしいです。想像以上に・・・」

 コーヘイは刀を鞘から抜いて、外から差し込む日の光に当てて刀身の反りと輝きに見入っている。

「パパスさん、いつもありがとうございます。お願いばかりで申し訳ないのですが、別のお願いがあるんです」
「なんだい、改まって。遠慮はいらねえよ、何でも言ってくれ」
「ありがとうございます。実はこちらの方が私に特別な道具を作ってくれるのですが、材料と道具を貸していただきたいのです」

 パパスはタケルの話を聞いて難しい顔をして腕を組んだ。

「道具か・・・、材料は構わねぇが、道具は貸すもんじゃあねえからなぁ。それで、何の道具を貸してほしいんだい?」
「ノルドさん、道具はどれが必要になるんでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待てよ。この爺さん、い、いやこの人はノルドって名前なのかい!?」
「ええ、そう聞いています」
「・・・、確かに・・・俺たちの神様と同じ姿だな・・・」

 パパスはノルドを上から下まで見ているが、ノルドは表情を変えずにパパスを見返している。

「パパスさん、神様と言うのは?」
「あ、ああ、俺たち武具職人で鍛冶をやる者たちの間では、大昔に鍛冶を教えてくれた神様が森の中に住んでたって言い伝えがあるんだ。その神様が作る武具は強く、軽く、そして丈夫だったらしい。だから、俺たちは武具を作るときはその神様に祈りながら、火を起こして槌をふるってるんだよ。その神様の名前がノルド様で、背は低いが長いひげを・・・」

「ノルドさんは神様なんですか?」
「わしは森の民ノルドだ、おぬしたちの神などではない」
「それでも、昔は人に鍛冶師仕事を教えたりもしていたんですか?」
「多くは無いが、森に来たものでしばらく居ついておったものはおるな」
「ところでノルドさんはお幾つなんですか?」

 タケルは興味があったことを聞いてみた。エルフは長寿と聞くがこの世界のドワーフはどうなのだろう?
「わし等は人のように年を数えたりはせぬ。じゃが、魔竜の復活は10回ほどあったはずじゃ」

 -3000年? 長寿っていうより不死?

「ノルド様、ここにある道具は好きなように持って行っていただいて結構です。足りないものがあれば、何でも言ってくだせぇ」

 パパスの中では神様確定となったようだ。

「そうじゃな、鉱石をまずは見せてもらおうか・・・」

 ノルドは鉱石と工房にある道具と鉱石を確認しながら、タケルにはわからない話をパパスとしばらく続けていた。

「うむ、この小屋には道具がそろっておるな。ここでお前の腕輪を作ってやろう」
「ここですか? ですけど、何日か掛かるんですよね?」
「うむ、10日ほどは掛かるはずじゃ」
「私がいる間は森から送り迎えができますが、いないときは森で待っておくことで良いでしょうか?」
「いや、わしのことは気にせんでよい。この近くの森で寝泊まりすれば良いでな」
「いえいえ、ノルド様。ここで仕事をされるなら、きたねえ所ですが俺の家にぜひ泊まってくだせえ」
「ふむ、わしはそれでもかまわん」

 上手くまとまったようだが、泊まり込みなら差し入れが必要だな。

「じゃあ、ちょっと買い出しに行ってきますね。1時間ぐらいで戻ってきますけど。ノルドさんは何か欲しいものはありますか?」
「うむ、ならば酒を買って来てくれ、久しく外の者が作る酒を飲んでおらん」
「わかりました。たくさん買ってきますよ」

 ドワーフが酒飲みという伝説も事実のようだな。概ね俺たちの伝説とこの世界は同じなのだろうか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...