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派遣勇者の進む道
147.風の谷
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■エルフの里
~第13次派遣2日目~
ノルドの作業小屋はパパスの小屋を一回り小さくした感じだった。奥に煙突とつながっている炉があって、その前に大きな金床が置いてある。手前の作業台はノルドの背丈に合わせた低い位置にあり、その上には金槌等の作業道具が綺麗に並べられていた。
「ノルドさん、こんにちは。お約束の鉱石をたくさんお持ちしました」
「うむ、待っておったよ」
ノルドの作業台の横に持ってきたリュックのまま鉱石を並べて置いた。
「ほう、これが全部・・・、うむ、パパスの所にあったものと同じじゃな」
「ええ、ボルケーノ鉱石です。良い鉱石だと聞いていたので」
「うむ、それで、儂は何を作ればよいのじゃ?」
「パパスさんとも相談したんですけど、包丁ではノルドさんの腕前がもったいないので、短めの山刀を作ってもらえないでしょうか? 獲物の革を剥いだりするのに使うものです」
「良かろう。どのぐらいの長さが良いのか?」
タケルは手の幅で刃渡り30㎝ぐらいを示した。
「ふむ、1日1本か2本を作って行くことにしよう」
「わかりました、私は4日に1度は来るようにします」
「ああ、楽しみに待っておるよ」
ノルドが作ったものが出来上がればレンブラントの所で扱ってもらうつもりだ。山刀以外にも需要がありそうなものがあれば品数を増やして、エルフ印の高級品としてブランド化したいと思っていた。鍛冶仕事以外でも革製品等の加工ができるらしいので、それはノルド以外のエルフと相談している。
§
ノルドの小屋に鉱石を届けた後はコーヘイ達三人をスタートスに送り届けて、タケルは一人でエルフの里に戻って来た。今日は風の谷に行って風の精霊と対話をするつもりだった。
一人でと言っても森の中では迷うってしまうので、谷の入り口まではリーシャが連れて行ってくれた。
「ここから先は一人で行くよ」
タケルは谷の入り口で先を歩くリーシャを呼び止めた。
「そうか、ならば私はこのあたりで待っておく。暗くなるまでには戻って来るのだろう?」
「うん、そんなに時間はかからないと思うけど、暗くなったら一度もどるよ」
「ならば、夜はお前たちの村に行けるな」
「あ、ああ・・・」
ダイスケに借りた時計は14時すぎだから、日暮れまで掛かるとは思っていなかった。だが、その後にリーシャをスタートスへ・・・?
谷の奥からは今日も気持ちの良い風が森に向かって吹いて来る。霧が無くなった谷を改めて見ると、両側は切り立った断崖になっていた。山の一部をV字型に切り取ったかのようだった。
途中でアキラさんが破壊した土の壁の跡も明るい日差しの下で見ることが出来た。壁は土台の部分以外は全て砕け散っている。土台を横から見ると1メートル以上の厚さがあるのが判る。材質は北の洞窟で戦ったゴーレムと同じように土を固めたものだが、石と同程度の硬さがあるようだった。
-これを拳で・・・
改めてゴッド―ブローの破壊力に驚きながら、奥へ進んで行くと少しずつ風が強くなってきた。歩きながら頭の中でヒメと話をしてみる
-ヒメは風の精霊は知っているの? それにヒメは水の精霊なの?
-セイレイ? あなた達が私の事をどう呼ぶのかは知りません。ですが、ここにも神の使いがいるようですね。
なるほど、精霊と言うのも人間が勝手にそう呼んでいるだけと言う事だ。だったら面倒なので精霊と言う事にしておこう。
-風の精霊が居るのがなぜわかるの? ヒメは話が出来るのかな?
-いえ、それは・・・居るのが判るとしか言えません。
神の使いと言っても友達同士では無いようだ。谷は草木が生えていない土の地面が続き、徐々に奥に向かって狭くなってきた。日差しが入り難い場所が陰になって暗くなっている。
歩き続きていると谷の奥に大きな石があるのが見えてきた。近づくにつれて石は一つでは無く、大きな石が積み上げられている物であることが判った。
-祭壇?
巨大な岩石を土台にして上に積み上げてある。周りをまわってみると高さ5メートル程の小さなピラミッドのような形をしていた。中に入れるような入り口は特にない。それでも、天然の物でないことは一目瞭然だった。他にランドマーク的なものは無いから、風の精霊に関する何かであるのは間違いないはずだ。
タケルは石の表面を手で触った・・・、ピラミッドの上に何かが浮かび上がってきた。
-へえー。今度の勇者は君なんだね?
ヒメと同じように頭の中に話しかけて来たのは、ピラミッドの上に浮かんでいる白と黄色ば混ざった球体のようなものからのようだ。
-えーと、あなたは風の精霊ですか?
-そう、森の中の人々は僕の事をそう呼んでいるね。
姫と同じように頭の中で話しかけると会話が成立する。考えている事も全部伝わっているのかもしれないが、話しかけたことにしか答えは帰って来ない。
-私はタケルと言います。あなたは何とお呼びすればよいですか?
-僕の名前は・・・、昔の勇者はブーンって呼んでた。
-では、ブーンさん。私は風の精霊の加護を得るためにエルフにこの腕輪を作ってもらいました。
-ふーん、チョット見せてよ。
「ウワッ!」
ピラミッドの上に浮いていた球体が消えて、目の前に全裸の子供が現れて腕輪を触った。タケルは突然の事に驚いて思わず声を上げてしまった。
-そんなに驚かなくても・・・、僕たちは君たちに合わせて姿を変えているだけだよ。
-そうだったんですか・・・
-綺麗に作ってもらったね。エルフの想いがしっかりと込められている。
-エルフの長老が私のために手をかけて作ってくれました。
-それで、君はこの腕輪で何がしたいの?
何がしたいのか? いや、何が出来るのかを聞き来たはずなんだが、質問に質問が返ってきた。
-そうですねぇ、風の力で空を飛ぶことが出来るでしょうか?
「ワァ―アーーーーー!!」
頭で伝えた瞬間にタケルの体は風に巻き上げられて空高く舞い上がった!恐怖のあまり大きな声で叫び続けてしまう。地面から30メートル以上も高い場所で上昇が止まった。うつ伏せになったタケルの体に下から強い風が吹き続けて、重力と風の力が拮抗しているようだ。
-大丈夫、僕が風を操ってるから落ちたりしないよ。
-は、はい、ありがとうございます。
-飛ぶっていうのはこれで良いんだよね?
-ええ、そうですが。自分で操るにはどうすればいいんでしょうか?
-やりたいことを腕輪に覚えさせるから、次からは自分で考えればその通りになるよ。
-じゃあ、横に動いたり姿勢を変えたりするのは・・・
「ワアー!!」
タケルはまたもや絶叫してしまった。いきなり真横に体が動き始めて崖に向かって飛んで行く。
-大丈夫だよ。横はこんな感じで、前と後ろもやっておこう。
ブーンは頭の中でタケルに話しかけながら、タケルを風の力で前後左右に動かし始めた。
「ちょ、チョット待ってくださーい! ウ、ウワー!!」
誰も見ていない谷の中では風の力で飛ばされ続けるタケルの悲鳴がしばらく続いていた。
~第13次派遣2日目~
ノルドの作業小屋はパパスの小屋を一回り小さくした感じだった。奥に煙突とつながっている炉があって、その前に大きな金床が置いてある。手前の作業台はノルドの背丈に合わせた低い位置にあり、その上には金槌等の作業道具が綺麗に並べられていた。
「ノルドさん、こんにちは。お約束の鉱石をたくさんお持ちしました」
「うむ、待っておったよ」
ノルドの作業台の横に持ってきたリュックのまま鉱石を並べて置いた。
「ほう、これが全部・・・、うむ、パパスの所にあったものと同じじゃな」
「ええ、ボルケーノ鉱石です。良い鉱石だと聞いていたので」
「うむ、それで、儂は何を作ればよいのじゃ?」
「パパスさんとも相談したんですけど、包丁ではノルドさんの腕前がもったいないので、短めの山刀を作ってもらえないでしょうか? 獲物の革を剥いだりするのに使うものです」
「良かろう。どのぐらいの長さが良いのか?」
タケルは手の幅で刃渡り30㎝ぐらいを示した。
「ふむ、1日1本か2本を作って行くことにしよう」
「わかりました、私は4日に1度は来るようにします」
「ああ、楽しみに待っておるよ」
ノルドが作ったものが出来上がればレンブラントの所で扱ってもらうつもりだ。山刀以外にも需要がありそうなものがあれば品数を増やして、エルフ印の高級品としてブランド化したいと思っていた。鍛冶仕事以外でも革製品等の加工ができるらしいので、それはノルド以外のエルフと相談している。
§
ノルドの小屋に鉱石を届けた後はコーヘイ達三人をスタートスに送り届けて、タケルは一人でエルフの里に戻って来た。今日は風の谷に行って風の精霊と対話をするつもりだった。
一人でと言っても森の中では迷うってしまうので、谷の入り口まではリーシャが連れて行ってくれた。
「ここから先は一人で行くよ」
タケルは谷の入り口で先を歩くリーシャを呼び止めた。
「そうか、ならば私はこのあたりで待っておく。暗くなるまでには戻って来るのだろう?」
「うん、そんなに時間はかからないと思うけど、暗くなったら一度もどるよ」
「ならば、夜はお前たちの村に行けるな」
「あ、ああ・・・」
ダイスケに借りた時計は14時すぎだから、日暮れまで掛かるとは思っていなかった。だが、その後にリーシャをスタートスへ・・・?
谷の奥からは今日も気持ちの良い風が森に向かって吹いて来る。霧が無くなった谷を改めて見ると、両側は切り立った断崖になっていた。山の一部をV字型に切り取ったかのようだった。
途中でアキラさんが破壊した土の壁の跡も明るい日差しの下で見ることが出来た。壁は土台の部分以外は全て砕け散っている。土台を横から見ると1メートル以上の厚さがあるのが判る。材質は北の洞窟で戦ったゴーレムと同じように土を固めたものだが、石と同程度の硬さがあるようだった。
-これを拳で・・・
改めてゴッド―ブローの破壊力に驚きながら、奥へ進んで行くと少しずつ風が強くなってきた。歩きながら頭の中でヒメと話をしてみる
-ヒメは風の精霊は知っているの? それにヒメは水の精霊なの?
-セイレイ? あなた達が私の事をどう呼ぶのかは知りません。ですが、ここにも神の使いがいるようですね。
なるほど、精霊と言うのも人間が勝手にそう呼んでいるだけと言う事だ。だったら面倒なので精霊と言う事にしておこう。
-風の精霊が居るのがなぜわかるの? ヒメは話が出来るのかな?
-いえ、それは・・・居るのが判るとしか言えません。
神の使いと言っても友達同士では無いようだ。谷は草木が生えていない土の地面が続き、徐々に奥に向かって狭くなってきた。日差しが入り難い場所が陰になって暗くなっている。
歩き続きていると谷の奥に大きな石があるのが見えてきた。近づくにつれて石は一つでは無く、大きな石が積み上げられている物であることが判った。
-祭壇?
巨大な岩石を土台にして上に積み上げてある。周りをまわってみると高さ5メートル程の小さなピラミッドのような形をしていた。中に入れるような入り口は特にない。それでも、天然の物でないことは一目瞭然だった。他にランドマーク的なものは無いから、風の精霊に関する何かであるのは間違いないはずだ。
タケルは石の表面を手で触った・・・、ピラミッドの上に何かが浮かび上がってきた。
-へえー。今度の勇者は君なんだね?
ヒメと同じように頭の中に話しかけて来たのは、ピラミッドの上に浮かんでいる白と黄色ば混ざった球体のようなものからのようだ。
-えーと、あなたは風の精霊ですか?
-そう、森の中の人々は僕の事をそう呼んでいるね。
姫と同じように頭の中で話しかけると会話が成立する。考えている事も全部伝わっているのかもしれないが、話しかけたことにしか答えは帰って来ない。
-私はタケルと言います。あなたは何とお呼びすればよいですか?
-僕の名前は・・・、昔の勇者はブーンって呼んでた。
-では、ブーンさん。私は風の精霊の加護を得るためにエルフにこの腕輪を作ってもらいました。
-ふーん、チョット見せてよ。
「ウワッ!」
ピラミッドの上に浮いていた球体が消えて、目の前に全裸の子供が現れて腕輪を触った。タケルは突然の事に驚いて思わず声を上げてしまった。
-そんなに驚かなくても・・・、僕たちは君たちに合わせて姿を変えているだけだよ。
-そうだったんですか・・・
-綺麗に作ってもらったね。エルフの想いがしっかりと込められている。
-エルフの長老が私のために手をかけて作ってくれました。
-それで、君はこの腕輪で何がしたいの?
何がしたいのか? いや、何が出来るのかを聞き来たはずなんだが、質問に質問が返ってきた。
-そうですねぇ、風の力で空を飛ぶことが出来るでしょうか?
「ワァ―アーーーーー!!」
頭で伝えた瞬間にタケルの体は風に巻き上げられて空高く舞い上がった!恐怖のあまり大きな声で叫び続けてしまう。地面から30メートル以上も高い場所で上昇が止まった。うつ伏せになったタケルの体に下から強い風が吹き続けて、重力と風の力が拮抗しているようだ。
-大丈夫、僕が風を操ってるから落ちたりしないよ。
-は、はい、ありがとうございます。
-飛ぶっていうのはこれで良いんだよね?
-ええ、そうですが。自分で操るにはどうすればいいんでしょうか?
-やりたいことを腕輪に覚えさせるから、次からは自分で考えればその通りになるよ。
-じゃあ、横に動いたり姿勢を変えたりするのは・・・
「ワアー!!」
タケルはまたもや絶叫してしまった。いきなり真横に体が動き始めて崖に向かって飛んで行く。
-大丈夫だよ。横はこんな感じで、前と後ろもやっておこう。
ブーンは頭の中でタケルに話しかけながら、タケルを風の力で前後左右に動かし始めた。
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