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派遣勇者の進む道
160.土魔法
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■バーン 南方大教会
~第15次派遣4日目~
フィリップ司教は部屋の隅に置いてあった大きな杖を持って、タケル達を教会の裏にある修練場へと連れ出した。地面に草ひとつ生えていない修練場はセントレアの大教会よりも広い敷地だったが、タケル達以外は誰もいなかった。
「お前は先ほどの雨以外も炎や風を使えると言うが、どの程度使えるのか見せてもらえるか?」
フィリップもタケルの魔法を自分の目で見て確認しないと納得出来ないようだ。
「良いですよ。では、炎と風の魔法で・・・、ファイア!」
ロッドも炎の槍も持って来ていなので、タケルは右手を伸ばして5メートルぐらい前方に大きな炎を灯した。
「ほお、なるほど・・・」
「ウィンド!」
そのまま燃え続けている炎に左手を伸ばして、風の魔法をぶつけると火炎風となって炎が長く伸びて行く。
「おぉ!これは凄い・・・、魔法をこのように使うのは初めて見た。これはお前が考えたのか?」
「ええ、炎だけでは魔獣に勝てないので、風と組み合わせて魔獣を倒しています。いつもは道具を使うので、もっと強烈な火炎風ですけどね」
「道具? どのような道具を使うのだ?」
「ロッドと槍ですね、どちらも腕のいい職人に加工してもらったので、少ない魔法力でも凄い威力が出るようになりました」
「その道具もお前たちが考えて作ったのか?」
「そうですよ。ロッドの事は北の司教が教えてくれましたし、炎の石は東の司教が教えてくれました。みんなの知恵と協力でいろんな道具や新しい魔法の使い方を見つけることが出来たのです」
「アイオミやバトラーにも会いに行ったのか・・・、そのような遠い場所まで・・・、お前はひょっとすると転移の魔法も使えるのか!?」
「ええ、使えますよ。ここにも転移の間があると良いんですけどね」
「・・・」
フィリップはタケルを見つめたまま、唇をかみしめていた。
「フィリップさん、どうされたのですか?」
「いや、お主たちが最初からわが町に来てくれておったらと思うてな」
「それは・・・、どうでしょうか?私たちはスタートスと言う小さな町に来たからこそ、今みたいに色々出来たのかもしれませんよ。バーンのように大きな町だったら、全然違う道を歩んだのかもしれません」
置かれた環境の中で人の成長は変わっていく、タケルがスタートスでノックスやマリンダ、ブラックモアと今のメンバーだったから今のタケル達があるのだ。この町に居れば、良し悪しは別にしても違った方向に進んだのは間違いないだろう。
「確かにそうだな。・・・うむ、では土の魔法をまずは見せてやろう」
フィリップはタケル達に背を向けて持っていた大きな杖を軽く地面に着けた。タケルは自分達の足元から振動が伝わってくるのを感じると、フィリップの目の前の地面が盛り上がりだして、一気に高さ3メートル幅2メートルぐらいの土壁が出来た。
-これが土魔法! ある程度予想していたけど・・・、こんなに早く!
「凄いですね、一瞬で壁が出来るんですか。触っても良いですか?」
「もちろん構わん」
タケルが壁の表面を触ると土と言うよりは岩ぐらいの硬さや密度があるような気がした。壁の厚さも50㎝ぐらいあって拳で軽く叩くとコンコンと音がする。
「これは洞窟のと同じだね」
横にいたアキラさんが触りながら感想を言ってくれたが、その通りだった。洞窟のゴーレムもこんな素材だった・・・、と言う事はやはりあれも土魔法なのか?
「大きさや硬さも自由に作れるんですか?」
「できる・・・が、簡単では無いぞ。ここまで操れるのはわしと副司教の二人だけだろう」
「何かコツみたいなものがありますか?」
「コツか・・・、大地に触れて祈りを捧げるだけじゃな」
-ドリーミアの魔法あるあるだな。呪文や魔法陣が無いまま、祈るだけで実現できる魔法・・・、それならここに聞きに来る意味も無かったのか?
「その杖はどういう役割を果たしているのでしょうか?」
「ふむ、これを通じて大地に語り掛けるようにしておる。若い頃は地面に手をついておったがな」
「何か特別な木や加工があるのでしょうか?」
「いや、これは私が最初に居た教会を立て直すときに出た廃材を加工したものだ。何も珍しいものでない」
-土魔法も聖教石の力はいらないのだろうか?
「土魔法も聖教石があった方が、ガイン様に祈りが届きやすいでしょうか?」
「無論じゃ。わしも胸の聖教石の力が無ければ、力を十分には発揮できん。最初は土を小さく盛り上げるところから練習を始めるのが良いだろう」
-だったら先に聖教石を・・・
タケルは加工していない聖教石を腰の巾着から取り出して片膝を地面に着いた。聖教石を地面においてその上に両手を重ねて置く。
「一体何をするつもりだ?」
フィリップの問いかけを無視して、目を瞑ってから聖教石に向けて祈りを捧げる。
-土の神ガイン様 魔竜討伐にお力を貸してください。
タケルの両手から暖かい空気のような流れが聖教石を通じて大地に流れて行くのが感じられた。しばらくすると逆に大地から聖教石を通じてタケルの体に流れが戻って来た。タケルは自分の体に何かのエネルギーがみなぎったような不思議な感覚になっていた。
土の神もタケルの願いを聞き届けてくれたようだ。透明だった聖教石が濃い茶色に変色している。
「それは聖教石だな? どうして色が変わったのだ?」
「フィリップさんは自分で聖教石の加工はしないのですか?」
「土魔法でそれをするものは居ない・・・、いや、居なかった。まさか、今の短時間で土の聖教石を作ったと言うのか!?」
「ええ、私は聖教石を加工するのが得意なので、先に土魔法の聖教石を作ってみました。ガイン様も力を貸してくれるそうです」
「お前は神と話ができるのか!?」
「そう言うわけではないのですが、私の声は聞こえていると信じています」
「声が聞えている・・・」
「では、そろそろやってみましょうか」
タケルは頭の中で土壁を作り出すイメージを描きながら、地面に置いた土聖教石の上に両手を置いて叫んだ。
「グランドウォール!」
~第15次派遣4日目~
フィリップ司教は部屋の隅に置いてあった大きな杖を持って、タケル達を教会の裏にある修練場へと連れ出した。地面に草ひとつ生えていない修練場はセントレアの大教会よりも広い敷地だったが、タケル達以外は誰もいなかった。
「お前は先ほどの雨以外も炎や風を使えると言うが、どの程度使えるのか見せてもらえるか?」
フィリップもタケルの魔法を自分の目で見て確認しないと納得出来ないようだ。
「良いですよ。では、炎と風の魔法で・・・、ファイア!」
ロッドも炎の槍も持って来ていなので、タケルは右手を伸ばして5メートルぐらい前方に大きな炎を灯した。
「ほお、なるほど・・・」
「ウィンド!」
そのまま燃え続けている炎に左手を伸ばして、風の魔法をぶつけると火炎風となって炎が長く伸びて行く。
「おぉ!これは凄い・・・、魔法をこのように使うのは初めて見た。これはお前が考えたのか?」
「ええ、炎だけでは魔獣に勝てないので、風と組み合わせて魔獣を倒しています。いつもは道具を使うので、もっと強烈な火炎風ですけどね」
「道具? どのような道具を使うのだ?」
「ロッドと槍ですね、どちらも腕のいい職人に加工してもらったので、少ない魔法力でも凄い威力が出るようになりました」
「その道具もお前たちが考えて作ったのか?」
「そうですよ。ロッドの事は北の司教が教えてくれましたし、炎の石は東の司教が教えてくれました。みんなの知恵と協力でいろんな道具や新しい魔法の使い方を見つけることが出来たのです」
「アイオミやバトラーにも会いに行ったのか・・・、そのような遠い場所まで・・・、お前はひょっとすると転移の魔法も使えるのか!?」
「ええ、使えますよ。ここにも転移の間があると良いんですけどね」
「・・・」
フィリップはタケルを見つめたまま、唇をかみしめていた。
「フィリップさん、どうされたのですか?」
「いや、お主たちが最初からわが町に来てくれておったらと思うてな」
「それは・・・、どうでしょうか?私たちはスタートスと言う小さな町に来たからこそ、今みたいに色々出来たのかもしれませんよ。バーンのように大きな町だったら、全然違う道を歩んだのかもしれません」
置かれた環境の中で人の成長は変わっていく、タケルがスタートスでノックスやマリンダ、ブラックモアと今のメンバーだったから今のタケル達があるのだ。この町に居れば、良し悪しは別にしても違った方向に進んだのは間違いないだろう。
「確かにそうだな。・・・うむ、では土の魔法をまずは見せてやろう」
フィリップはタケル達に背を向けて持っていた大きな杖を軽く地面に着けた。タケルは自分達の足元から振動が伝わってくるのを感じると、フィリップの目の前の地面が盛り上がりだして、一気に高さ3メートル幅2メートルぐらいの土壁が出来た。
-これが土魔法! ある程度予想していたけど・・・、こんなに早く!
「凄いですね、一瞬で壁が出来るんですか。触っても良いですか?」
「もちろん構わん」
タケルが壁の表面を触ると土と言うよりは岩ぐらいの硬さや密度があるような気がした。壁の厚さも50㎝ぐらいあって拳で軽く叩くとコンコンと音がする。
「これは洞窟のと同じだね」
横にいたアキラさんが触りながら感想を言ってくれたが、その通りだった。洞窟のゴーレムもこんな素材だった・・・、と言う事はやはりあれも土魔法なのか?
「大きさや硬さも自由に作れるんですか?」
「できる・・・が、簡単では無いぞ。ここまで操れるのはわしと副司教の二人だけだろう」
「何かコツみたいなものがありますか?」
「コツか・・・、大地に触れて祈りを捧げるだけじゃな」
-ドリーミアの魔法あるあるだな。呪文や魔法陣が無いまま、祈るだけで実現できる魔法・・・、それならここに聞きに来る意味も無かったのか?
「その杖はどういう役割を果たしているのでしょうか?」
「ふむ、これを通じて大地に語り掛けるようにしておる。若い頃は地面に手をついておったがな」
「何か特別な木や加工があるのでしょうか?」
「いや、これは私が最初に居た教会を立て直すときに出た廃材を加工したものだ。何も珍しいものでない」
-土魔法も聖教石の力はいらないのだろうか?
「土魔法も聖教石があった方が、ガイン様に祈りが届きやすいでしょうか?」
「無論じゃ。わしも胸の聖教石の力が無ければ、力を十分には発揮できん。最初は土を小さく盛り上げるところから練習を始めるのが良いだろう」
-だったら先に聖教石を・・・
タケルは加工していない聖教石を腰の巾着から取り出して片膝を地面に着いた。聖教石を地面においてその上に両手を重ねて置く。
「一体何をするつもりだ?」
フィリップの問いかけを無視して、目を瞑ってから聖教石に向けて祈りを捧げる。
-土の神ガイン様 魔竜討伐にお力を貸してください。
タケルの両手から暖かい空気のような流れが聖教石を通じて大地に流れて行くのが感じられた。しばらくすると逆に大地から聖教石を通じてタケルの体に流れが戻って来た。タケルは自分の体に何かのエネルギーがみなぎったような不思議な感覚になっていた。
土の神もタケルの願いを聞き届けてくれたようだ。透明だった聖教石が濃い茶色に変色している。
「それは聖教石だな? どうして色が変わったのだ?」
「フィリップさんは自分で聖教石の加工はしないのですか?」
「土魔法でそれをするものは居ない・・・、いや、居なかった。まさか、今の短時間で土の聖教石を作ったと言うのか!?」
「ええ、私は聖教石を加工するのが得意なので、先に土魔法の聖教石を作ってみました。ガイン様も力を貸してくれるそうです」
「お前は神と話ができるのか!?」
「そう言うわけではないのですが、私の声は聞こえていると信じています」
「声が聞えている・・・」
「では、そろそろやってみましょうか」
タケルは頭の中で土壁を作り出すイメージを描きながら、地面に置いた土聖教石の上に両手を置いて叫んだ。
「グランドウォール!」
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